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28.「余がカルト教祖になったからこそ」

 お袋と親父も、カルト宗教にはハマっていたなぁ。借金までしてまで、多額のお布施をし、貧乏な暮らしを強いられ、おかげで満足に食事もとれない日々じゃった。

 家に息子の余がいるというのに、教団の幹部に喜んで抱かれるお袋。そしてそれをありがたがる親父。馬鹿な奴らじゃ。宗教に利用されるということはここまで愚かになれるものなのか!? 人間という者は。


 じゃが、裏を返せば、宗教を利用する側は、いくらでも馬鹿から貪れるということじゃ。なら余は。


 ◇


 余が捕まり、その生い立ちがニュースとして世間に晒された。すると、中には、こんなことを言ってくる者もおったわ。


 ――家族の絆が破壊された痛みがわかるはずなのに……なぜ、カルト教祖になった!? 被害者に罪悪感はないのか!?


 ――カルトが憎いのじゃないのか! 生い立ちが壮絶だったとしても他人を苦しめていい理由にならない!


 ――それだけの人心掌握術。世のために活かせれば、社会に評価されただろうにもったいない


 知ったような口を。くだらん。余はそもそもカルト宗教を憎んでいないし、カルト教祖になったことを一度たりとも後悔したことがないわ。


 両親のような馬鹿な信者で私腹を肥やし、やりたい放題できるカルト宗教の旨みを知れたのだから、むしろ感謝しているくらいじゃ。


 それにな~にが、家族の絆じゃ。反吐が出る。教徒を真実教に依存させ、多くの家族が壊れた姿を見た余だからこそ断言できる。そんなのはまやかしだ。それこそ宗教のようにいんちきなものなのじゃ。


 余がカルト教祖になったからこそ、多くの尊敬を集め、王や神のような気分になれた。


 余がカルト教祖になったからこそ、低学歴の余でも高学歴の教徒を思う存分、あごで使えた。

 高学歴の教徒たちは、たいてい親の教育という名の命令に忠実だった。反抗期もなく言われた通りに勉強するような奴らじゃ。ゆえに余が親代わりになれば、余の命令に忠実に従ってくれる。実に使える駒だったぞ。


 余がカルト教祖になったからこそ、百人以上の女性教徒を愛人にした。学歴もなく、高給な仕事もつける可能性が少ない余なんぞ、普通は女に見向きもされない。カルト教祖だから、多くの女を抱けたのじゃ。


 余がカルト教祖になったからこそ、余を馬鹿にする者や邪魔者を排除できた。ざまぁみろじゃ。


 全ての幸せは余がカルト教祖になったからこそ得られたのじゃ。余は宗教に使われる信者なんてごめんじゃ。宗教を使う教祖としてこれからも宗教を利用し続けてやる。これが余じゃ。これが余の生き方なのじゃ。


 例え、どんなに生まれ変わっても余は生き方を変えん。何度でも真実教教祖として君臨してやる……たとえ、地獄に堕ちたとしても……


 ◇


「君のようなタイプは珍しいな。スキルタイプもそうだが、前の世界と同じ生き方を選ぶなんてね」


 白き世界。この何者かは余にそう言った。この何者かによると、余はこれから魔術が使える世界に転生されるらしい。別の世界とはいえ、魔術が実在したとはな。


「新しき世界では君が今まで得た実績、人脈、財力そういったものは一切引き継がれない。引き継がれるのは、知識、知恵、そして記憶の3点だ。色々と不便かもしれないが、これは生き方を変えるチャンスでもある。君のように新しき世界に転生する人間は一握りだが、たいていの人間は違った生き方を選ぼうとする」


「怠惰、消極的行動、あるいは不運によって前の世界で頑張れなかった者や志半ばで散っていった者は新しき世界では主体的に生きようとする。反対に過度な競争社会や落ち着けることがなかった人生を歩んだ者は、新しき世界ではスローライフを送ろうとする者だっている」


「前の世界で君を知っている者と会うことは早々ないはずだ。それでも君は同じ生き方を選ぶというのか?」


「……余が同じ生き方を選ぶ理由は二つだ」


「一つ。一度選んだ、人の生き方は変えられない。生き方を決めたということは、その人の本質を意味する。生き方を無理に変えようとしてもどこかでひずみが生じるじゃろう。それが余にとっての真実じゃ」


「二つ。余はカルト教祖の生き方こそが素晴らしいと考えるからじゃ。嫌なことは全て信者に押し付け、余は思う存分やりたい放題で生きる。余はこの生き方でありたいのだ。変えるなんてとんでもない」


 そうじゃ。前の世界でも余は親から貰った本名を捨て、カルト教祖の名で生きてきた。新しき世界とやらも余はカルト教祖として、教徒から全てを搾取してやりたい放題で生きていくのじゃ。


「余はXXXXXじゃない。真実教教祖。ウンコウ・ガンダーラじゃ」


「新しき世界とやらでも、余はウンコウ・ガンダーラとして君臨し続ける! これが余の選ぶ幸せじゃ!!」



 こうして新しき世界でも彼は真実教教祖として生きる道を選択した。

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