25.「コネクトの凄さはここだ」
今回のエピソードの時系列は、5.「スキルタイプ」の直接の続きとなります。
まだ五話を読んでいない方、もしくは、五話の内容なんて忘れちゃったよ~という方は五話を読んでから
本エピソードを読むことをオススメです。
「……いや、使えない」
「え?」
意味が分からず、言葉が詰まった。
「残念なことだが、【コネクト】は四つの中で唯一、魔術を使うことができないスキルタイプなんだ」
変なおっさんに刺されて、この白き世界に来た俺は何者かと話していた。その何者かによると、俺はこれから新しい世界で生きていくらしい。その世界では、魔術がある世界であることとそれを扱うための魔力のスキルタイプを教えてくれるとのことだった。だが、俺が持つスキルタイプ・コネクトは魔術が使えないスキルタイプらしい。
「いや、正確に言うと、コネクトは魔術をいくら勉強しても自力で修得できないスキルタイプなんだよ。他のスキルタイプと違ってね」
「なっなんじゃそりゃ~!! 使えねぇ糞雑魚スキルタイプじゃねぇかよ。いくら珍しいからってなりたくねぇよ! え、あの、スキルタイプって奴をなんとか他三つのどれかに変えられないんですか!?」
「おっ、落ち着きたまえ。いきなりびっくりさせて悪いが、話の途中だよ。それにまずスキルタイプというのは血液型のように原則、変わることはない。〝スキルタイプを変える魔術〟みたいな魔術を開発できれば、変わるということもあるかもしれないが、そんな例外のケースを考えなければ、スキルタイプは生涯変わらないものと考えてくれ」
正直、ガッカリした。珍しいスキルタイプだというから特別性を感じ興奮したというのに、魔術を使えないなんて……新しき世界でも結局俺はまた不遇な人生を歩むのか?
「落ち込まないでくれ。話の途中と言っただろう? コネクトは魔術をいくら勉強しても自力で修得できないが、魔術を使えるようにする方法がたった一つだけあるのだよ」
「えっ、なんだ。それ最初に言ってくださいよ~でっ、その方法とは何ですか? どうすれば魔術を使えるようになるのですか?」
「うん。その方法はね。他のスキルタイプから魔力を貰うことで魔術を使えるようになるんだ。まずは以下のコネクトの基本特性を頭に入れてくれたまえ。」
何者かに教えられたコネクトの基本特性とは、以下四つだ。
一、自身の魔力だけでは魔術へと出力できないスキルタイプであること
二、他者から魔力を貰うこと(コネクトへと魔力を渡す者を以後、〝譲渡者〟と呼ぶ)でその魔力を解析し、譲渡者と同じ魔術を行使できる。なお、コネクトが魔術を行使する際は、コネクトの魔力が減る。譲渡者の魔力が減ることはない
三、譲渡者が死亡するか譲渡者が渡した魔力を返却してほしいと強く願えば、渡した魔力は触れずとも譲渡者の元へと戻る
四、コネクトへの魔力の渡し方は、譲渡の意思を持って触れるだけでいい。ただし、触れて渡すだけなら渡す分だけ魔力が足されるだけだが、譲渡の際にコネクトに対して奉仕の度合が強ければ強いほど、単純な足し算ではなく、渡した魔力以上にコネクトの魔力は大幅に強化される
……なんか、コネクトってえらく複雑なんだな。他のスキルタイプもこうなのか? と俺は頭痛くなる思いになった。メモとか残せればいいのに。
「二、の他者から魔力を貰うことで魔術を使えるようになるルールだが、まずコネクト以外のスキルタイプがどうやって魔術を修得しているか説明しよう」
「通常、魔術を修得しようと考えるなら、師や先生から直接教えて貰うか、魔導書(魔術を学ぶ者を導くための技術書)などで学ぶのが定番だ。中には、ゼロから新たな魔術を開発する者だっている」
「魔術を修得するということは、その技術を自身の魔力に刻むことを意味する。修行し、論理を理解し、そうやって、血肉と化すように自身の魔力に刻めるようになるまで励むのだ。やがて、魔力で習った(あるいは開発した)技術を再現できるようになれば、それは魔術を修得したことを意味する」
「ゆえに、魔術を使えるようになった者は、魔力そのものに修得した魔術が保持していることになる」
「……なんか難しく言われていて、よくわかんないけど、要するに魔力という箱の中に魔術を入れているということですか? コネクトの魔力は、魔術を入れる箱になっていないけど、他人から魔力を貰えれば、貰った箱の中身の魔術を使えるということですか?」
「そうだね。その解釈でいいよ。どういうわけかコネクトは自身の魔力だけでは、魔術を入れることができない。その代わりに他者から魔力を譲渡されることで魔力が混ざりコネクトの魔力そのものに変質が起きるんだ。この変質された魔力で魔術を行使できる。コネクトの凄さはここだ」
「凄さって……」
急にコネクトを褒める。何者。まるで自分が褒められているようで悪い気がしない……あれ? もしかしてコイツの手のひらで踊らされている? 俺?
俺は必要以上に興奮して騙されないように、うまい話には裏があるという言葉を頭の中で反復しながら、慎重に何者かの話を聞こうと思った。