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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第4章社陸幻鏡という女

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26.「インチキ教祖を殺す」 後半

 久奈子の幽霊ゴースト!? それとも……

「な……ん……で?」

「あたしが死んだのに……幻だけは未だに生き残っている――なんで、幻だけが生きているの?」

「幻は何のために生きているの? カルトを狩る元カルト教祖……それが社陸幻鏡という女でしょう? なら、死ぬまでその存在意義を示し続けないと……」


 頭でわかっている。

 これはファントムだ。久奈子がここにいるはずなどない。

 そもそも、久奈子がこんなことを言うはずもない。

 敵からファントム魔術をくらっていない限り、これは――私様の頭が生み出した虚像ファントムだ。


「精々悩み、あがき、もがき、そして苦しむといい。そなたも鬼道の使い手……やがて妾様たちと同じく、鬼の道へと堕ちるその時まで……」


 また現れた。あの女、私様の母のファントムだ。


「幻は、カルトを狩る元カルト教祖」

「その両の瞳も、いずれは濁るでしょう……鏡のような娘よ……」


 久奈子と母のファントムが、呪いのように私様へ語りかける。

 私様は何を見せられている? いや……私様はこのファントムを自身で生みだして、いったい何がしたい?

 両者のファントムが私様の肩に手を置き、耳元で囁く。

「――あんたはカルトを狩る元カルト教祖。鬼の道へと堕ちろ」と。

 そのとき、外から明るい声が飛び込んできた。


「社陸さん! 今、兄貴と話していたッスけど、良かったらタウンの出口まで乗せてやるって言っているッスよ!!」


 ヴェダが、いい話をするように私様に語りかける。


「ああ、オレなら一飛びで行ける! 入口はどこだ? 教えてくれればそこまで乗せてやろう」


 ルーベンスまで笑いながら話しかけてくる。


 その答えに、私様は静かに言った。


「……いや、いい。私様はまだこのタウンから出るわけにはいかない――やることがあるからだ」

「やることッスか?」


 ヴェダが尋ねる。


「ああ……インチキ教祖を殺す。私様はそのためにこのタウンに侵入したのだ。無断でな」


「インチキ教祖を殺す!? タウンに侵入した!? おい、どういうことだ?」


 驚愕するルーベンス。


「……社陸さん、冗談言うにしても笑えないッスよ……」


 ヴェダは戸惑っている。今の言葉を冗談だと信じたいのだろう。

 私様だって驚いている。急な心境の変化に、自分でも戸惑っていた。


「本気だ。私様がインチキ教祖を殺すというなら……貴様らはどうする?」


 もう演技はしまいだ。

 ここからは正々堂々、インチキ教祖を探し出し、狩る。

 それがこの新しき世界での、私様の存在意義だ。

 邪魔する者がいるなら、誰であろうと倒す。


「ヴェダ、離れていろ! ここはオレが対処する!!」


 ルーベンスはヴェダに指示を飛ばし、彼女を安全な場所へ退かせた。周囲には住民の姿はほとんどなく、戦うには申し分ない場所だ。

 ルーベンスは戦闘の構えを取りつつ、低く告げる。


「社陸幻鏡とやら……オマエはタウンへ無断での侵入――住居侵入罪、そしてインチキ教祖の殺害予告――脅迫罪により、治安部のオレが逮捕する!」


 続けざまに、ゆっくりと音を刻むように言った。


「オマエには、この魔術で速攻やっつけてやろう……チッチッチッチ」

(チッチッチッチ――特殊な呼吸。あれがドラゴン族特有の魔術の構えというやつか)


 私様は静かに武器を取り出す。


「三角縁神獣鏡」


 ルーベンスが口元に雷を溜め、魔術を放つ。


「チッチッチッチ――雷竜の(ドラゴンブレス・)息吹(イエロー)

 ――バリバリ!


 音を置き去りにするほどの速さで、激しい雷光が一瞬にして迫る。

 ――キュィイイイイイイイイインン!!

 鏡にルーベンスのサンダー魔術がぶつかると、その雷光はまるで掃除機のように一瞬で吸い込まれた。


「なっ、オマエ、反撃型魔術の使い――」

「まずは一体目。終わりだ……ルーベンス!」

 ――バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!


 カウンター魔術で跳ね返された力は倍以上となり、巨大な雷光がルーベンスへ直撃しようとした。

 その瞬間――

 巨大な雷光の軌道に、()()()飛び込んできた。


「イプシロン・アックス」

 ブオオオオオオオオオオオオオオオン!!!


 雷光は突如として掻き消え、その衝撃で濃い煙が立ち込めた。


「なに!?」

「ふぅ、危なかったね……ルーベンス、怪我はないかい?」


 その声は、私様の記憶に刻まれている。最初にインチキ教祖と会ったとき、隣にいたあのオーク族だ。


「貴様……アミーラか?」


 煙が晴れると、姿を現したのは予想通りアミーラだった。

 だが彼女の手には見慣れぬ武器が握られている。長い棒の両端に両刃斧が備えられ、棒には三つの節があり、それらは鎖で繋がれていた。

 あの武器は――


「ヌンチャク――いや、三節混というやつか!?」

「そうだよ」


 アミーラが着地する。鎖の音がジャラジャラと響いた。


「両刃斧と三節棍を合体させた武器――これこそがボクの武器、〝イプシロン・アックス〟だ」



 次回、幻鏡VSアミーラ

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