16.「涅槃寂静」
「えっ?」
ジュダスはウンコウの発言に驚き、その場で動きが止まる。
「はぁ?」
インチキ教祖もウンコウの言い分に冷や水を浴びたように、笑いを止める。やがてウンコウはウンチクを語るように人差し指を振りながら話す。
「つまりだ。おぬしが余を試したように余もおぬしを試したのだ。余はおぬしの善意を信じたかったのじゃ。余を疑い、試したことを懺悔してくれることを願ってチャンスを与えたのじゃ」
「だが、おぬしは、あろうことか余を間違えたことにして、いんちきだと貶めた。もうこれではおぬしに救いは与えられんのう」
ウンコウの滅茶苦茶な言い分にインチキ教祖は呆れたような表情に変える。
「はあ? お前そりゃない――」
「涅槃寂静」
インチキ教祖の反論を封じるかのように、ウンコウは、右手の掌を前に向けた施無畏印と呼ばれる手の形で魔術を唱えた。
「うぐっ!」
インチキ教祖は金縛りにあったかのように喋ることも身動きも取れない状態にされた。
(なんだぁ!? 口も動かないし、体の言うことが聞かねぇ……これがウンコウの魔術か! まるで見えざる巨大な手に掴まれたような気分だ!!)
「おっと、おぬしのような不埒な小童とこれ以上語るつもりはないわ」
ウンコウは右手をかざしたまま一方的に話す。
そしてウンコウは、右手を斜め上に向けると、同時にインチキ教祖も天井付近まで体が浮いた。
(コ、コイツ……まさか信者たちの前で、俺を殺す気なのか……!?)
流石に信者たちの目の前で、手を下すはずがないだろうと高をくくっていたインチキ教祖も生命の危機を感じていた。焦りの色が露骨に見える状態となっていた。そんな表情を見てウンコウは溜飲を下げるかのようにフッと笑う。
「案ずるな小童よ。真実教では殺生が禁じられている。ゆえに余がおぬしの命を絶つことはない。説法会を妨害したお前には、この場を立ち去ってもらうだけだ」
ウンコウはニヤケながら話を続ける。
「だが……吹っ飛ばした先で当たり所が悪ければ……不運な結果になるかもしれんのう……そうなっても余の関与するところではない。ひとえに鍛えが足りないおぬしの脆さが招いた結果じゃ」
「ではさらばじゃ。おぬしの顔なぞ二度と見たくないわ」
ウンコウは右手を払う動作をすると、それと同時にインチキ教祖は勢いよく右に吹っ飛ばされ、窓を破り、はるか彼方へと退場されることになった。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
インチキ教祖は声も出せないまま、消えていったのであった。
ウンコウはインチキ教祖を飛ばした後、ハァと息を吐いた後、首を振りながら喋る。
「まったく、余が間違えるはずがなかろう。コネクトというのは、持って生まれれば、王や神になれるとされる程の伝説のスキルタイプだ。あんな小物がコネクトなわけがないのに余が間違えたと豪語しおって……」
「なぁ、家族たちよ。おぬしたちも余が間違えたと勘違いしていないよな?」
ウンコウから話題を振られて、それまで唖然としていた教徒たちは戸惑った。だが、ウンコウの発言を聞き、インチキ教祖を騙すために芝居をしていたと解釈し、やがてホッと安堵するような表情へと変わっていた。
「流石です! ウンコウ様!! ただスキルタイプを当てるのではなく、間違えたように見せかけ、奴の真実をあぶりだすとは……ウンコウ様の思量深さにはいつも驚かされます」
「確かにおかしいと思ったのよ! あんな人がコネクトなんて~。でもこれでスッキリしたわ」
「ウンコウ様は間違えなかった! 真実教万歳!!」
周りの教徒たちは都合よく解釈できる方を選び笑顔で拍手した。ジュダスも周りと合わせ笑顔で拍手したが、その笑顔はどこか引きつっていた。
「とんだ邪魔に入ったのう。このまま説法会の続きと行きたいところじゃが……先ほどの小童のせいで、おぬしたちの中で邪念が入りこんだかもしれん」
「説法会は中止じゃ。この後の時間は、家族たちは本日の食事は抜きで極限まで修行じゃ。悪いが今日は寝かせないぞ。やがて家族の一員となる在家の教徒たちよ。本日中に真実教説法集全部復習すること。サボったら真実への道は遠のくぞ。また、この後お布施の増額もオススメする。お布施はおぬしたちの自由意志じゃが、増額せねば、やがて小童の邪念に魂全て毒され、死ねば地獄の苦しみが待っているかもしれんがな」
ウンコウからの決定に中には嫌そうな顔をした教徒もいたが、すぐに顔を元に戻した。ウンコウに知られれば教育室行きとなりたっぷりシゴかれることになるからだ。
「では、少し早いが合唱で終わりにしようぞ」
ウンコウと教徒たちは合唱する。波乱に満ちた説法会は閉会となった。
説法会編はこれにて終了です。
インチキ教祖はどうなったのでしょうか?
明日も20時40分頃続きを投稿します。




