25.「腹の探りあい」 後半
そして後半、いよいよインチキ教祖のターン。
インチキ教祖の真意とは――!?
「……アミーラ、気づいたか?」
俺は幻鏡に視線を送りつつ、隣のアミーラにボソッと語りかける。
「……うん、間違いない。彼女が侵入者だ」
アミーラもやはり気づいていた。社陸幻鏡――あの女がプーランの目を欺き、このタウンに潜り込んだ者だと。
確信に至る明確な根拠はない。
ただ、なんとなくだが、彼女なら門番に見つからず、結界系魔術をすり抜けることもできそうな実力があるように思えたのだ。
あの、見つめられると惑わされそうな黄緑と紫色のオッドアイが、そう感じさせるのか……。
「……一人って言っていたけど、どうだ? 他に仲間はいなさそうか?」
「……その言葉は本当かもね。この辺りで、彼女以外に部外者の匂いは嗅ぎ取れなかったよ」
アミーラがそう言うなら間違いないだろう。
一体、彼女は何の目的でタウンに入ったんだろう?
先ほどの他愛もない雑談――あれは、幻鏡とやらの目的を少しでも探ろうとしていたのだ。
いや……もし幻鏡も俺たちの腹を探っていたのなら――これは腹の探り合いということか。
だが、結局、俺たちは幻鏡の本当の目的を知ることはできなかった。
「……どうする? もう少し泳がせておくか? 今のところ目立った悪事はしていないし……」
「……そうしよう。彼女の匂いは覚えた。香水、体臭、そしておそらく喫煙者だ――タバコの匂いもした。ボクならいつでも彼女を追跡できる」
流石はアミーラ。頼りになる。
「……よし、ここは治安部のリーダーであるお前の判断に任せる。だが、ヤバくなりそうならいつでも俺を呼んでくれよ?」
「ああ、わかったよ」
俺とアミーラが幻鏡を遠くから見ていると、まるで見透かされたように、幻鏡が振り返った。
社陸幻鏡――そう名乗った彼女は、俺とアミーラをじっと見つめたまま、ふっと不敵な笑みを浮かべる。
そして雑踏の中へと入り、消えていった。
まるで煙が、跡形もなく溶けていくように。
「いや、お前ら戦わんのかい!」
――というツッコミが聞こえてきそうですが、今回はまだ腹の探り合いフェーズ。
次回以降、しばらくは幻鏡の視点で物語が進んでいく予定です。




