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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第4章社陸幻鏡という女

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25.「腹の探りあい」 前半

 すみません、また例によって文章が長くなってしまったため、前半と後半に分けて投稿します。

 後半は、もう少し時間を置いてから投稿します。


 今回は幻鏡のターンです。

(……う〜〜ん、どこで出会ったのだ? 確かに見たことがあるような……どこかですれ違ったとか?)


 私様がインチキ教祖の顔をじっと見つめていると、相手はやや不審そうな顔になった。


「どうした? 俺の顔に何かついているのか?」

「あっ、いえいえ! ()()……その、〝インチキ教祖〟という名前のインパクトに驚いただけですわ! それに、まさかタウンの長がこんなにイケメンの方だとは思わなくて!」


 とりあえず、冗談を混ぜてお茶を濁すことにした。


「イ、イケメン!? あっ、そうか……イケメン……か。えへへ……あなたみたいな美人さんにそう言われると〜〜なんだか悪い気がしないなぁ〜〜///」

「生まれて三十五年……これが、モテ期というやつか――。世の女性たちもとうとう、俺の魅力に気づいてきたということに……」


 私様のお世辞に対して、インチキ教祖はまさかの露骨な照れ顔を見せた。


「……インちゃん、明らかにお世辞を言っているだけだよ……」


 隣のアミーラでさえ呆れたように呟く。


「オホホ、お世辞なんて、そんなことないですわ♡」

(……あっ、コイツ、ちょろいな)


 思った以上に単純そうな男で、私様はますます拍子抜けした。


「……まっ、俺がイケメンなのは当然として――どうだ? このタウン、楽しめているか? えーっと、あなたの名前は?」

「あっ、これは申し遅れました。私の名前は、社陸しゃりく幻鏡げんきょうと申しますわ。ええ、このタウンでは、店の品揃えも豊富ですし、いろんな異種族の方がいて、本当に賑やかで楽しい場所ですわ!」

「社陸幻鏡さん、か……そうか、楽しそうで何よりだ」


 そして、インチキ教祖は軽い調子で尋ねてきた。


「――ところで、あなた。〝一人〟で来たのか? このタウンには、どういう目的で?」

「……何? 一人……どういう意味ですか?」


 一人。

 その言葉に、思わず反応してしまった。

 今はたしかに一人だけれど、少し前までは――隣に久奈子がいた。それを思い出し、胸の奥がチクリと疼いた。


「……あっ、いや、お連れの方もいたら一応ご挨拶しておこうかな〜〜って。別に悪気があったわけじゃないんだ。もし気を悪くしたなら、すまない」


 しまった。つい、ムキになってしまったかもしれない。


「いえいえ。女の一人旅も、なかなか楽しいものですわ。このタウンも、親切な方がたくさんいますし……ね」

「そうだろう? ボクも一ヶ月とちょっと前にこのタウンに来たばかりの新参者だけど……ほんと、温かい奴らばっかりでさ。居心地いいよ」


 今度は隣のアミーラが会話に入ってきた。


「あら? そうなんですか? 興味深いですね……アミーラさんから見て、このタウンはどんな場所ですか?」

「ああ……それはね~~」


 アミーラが語っている間、私様は思う。


(このまま雑談を続けていたら、私様が侵入者だと気づかれるかもしれない……いや、もうすでに気づかれているかもな)


 危険を感じながらも、私様は会話を切らなかった。

 その理由は、従来からの目的であるインチキタウンがどんな教団なのかを調べること、そしてインチキ教祖――こいつがどんな人物なのかを見極めるためだった。


 つまり、この雑談こそが腹を探るためのもの。

 いや……もし彼らも私様の腹を探っているのなら――これは腹の探り合いということか。


「ああ、すまない……俺とアミーラも用事があるのでな〜〜。まあ、今日はこのタウンを楽しんでいってくれ!」


 しばらく話しているうちに、インチキ教祖の方から会話を打ち切ってきた。

 ……そうだな、あまり長く話し込むのも不自然かもしれない。


「ええ、インチキ教祖さん、アミーラさん。本日は誠にありがとうございましたわ。お目にかかれて光栄でしたわ」


 そう言ってインチキ教祖たちと別れ、私様は思う。


(結局……インチキ教祖のことは何もわからなかったな……会話した印象では、とても六百を超える信者の教祖ボスとは思えない……)


 だが――


(もし、今までの会話がすべて演技だったとしたら? あの小物そうなオーラも、チョロそうな印象も、全部が本当の実力を隠す擬態だったとしたら?)

「フフ……それならば、大したタマだ」


 私様は振り返り、遠くにいるインチキ教祖とアミーラの姿を見た。

 ……ほら、やっぱり、私様が侵入者だと気づいている。

 遠くからじっと注がれるその視線に、私様の直感がそう告げていた。



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