24.「アイツがインチキ教祖か!?」 後半
「どいてもらおう!」
私様は無理にでも雑踏をかき分け、前に出る。
この新しき世界で目覚めた、私様の才能――オーラの判別分析法。
それによって、その者がどれほどの強者かを、一目である程度見極められる。
すると――横から姿が見えた。おそらくインチキ教祖の姿だ――。
(ア、アイツがインチキ教祖か!? 漂うあのオーラ……アフリマン・ゲルメズ級か!?)
インチキ教祖――種族も性別も見た目もわからなかったが、一目でソイツだと直感した。
見た目は、灰色が混ざった暗い緑の肌、中性的な顔立ち、茶色のマッシュショートに軽装の弓兵服、そして、ゲルメズ並みの身長とオーラ……間違いない。あの豚人族がインチキ教祖だ。
私様は確信した。
以前戦ったゲルメズに匹敵、いやそれ以上のオーラの強さ――奴がインチキ教祖である証拠だ。
(なるほど……たしかにアイツなら、六百を超える信者を率いてもおかしくない……その凄みはある)
(まさか女オーク族だとは思わなかったが……)
予想とは違ったが、見た目を確認した私様は納得した。中性的な顔立ちだが、女性であることは直感でわかる。
(相手にとって不足なし! 戦えば手強そうだ……)
私様がインチキ教祖を見つめていたら、目が合った。
「あれ? 見慣れない顔のような……インちゃん」
「ん? なんだ、アミーラ?」
「あの化粧の濃い紫髪の人間族も……タウンの信者だっけ?」
(なっ、アミーラだと!? 奴がインチキ教祖じゃなかったのか!?)
私様がインチキ教祖と思っていたオーク族は、「アミーラ」と呼ばれていた。
そして、アミーラは隣にいる者に喋りかけている。
前方にアミーラがいるため姿は隠れているが……「インちゃん」……間違いない。アミーラの隣にいる者こそが、本物のインチキ教祖だろう。
(一体……どれほどの大物だと言うのか? あのアミーラすらも信者として従わせるほどの者とは!?)
すると、アミーラの隣から、本物のインチキ教祖がひょいと姿を現した。
その者は――
(……えっ!?)
(ア……アイツが、インチキ教祖……なのか)
(オーラちっさ……)
正直、拍子抜けした。
見た目は、白衣に黄金の羽織をまとった黒髪の人間族の男性。そこまでは良い。
問題は、そのオーラの小ささだ。
今まで戦ってきた中で、最弱のカルト教祖レウコス・カルポースよりも小さいオーラだった。
(えっ、あ、あれが本当にインチキ教祖なのか!?)
私様は自分を疑った。
――そうだ、もう一度、よぉーく目を凝らして見てみよう。
きっと、もう一度見れば、インチキ教祖の真のオーラがわかるはずだ。
一度、目を閉じて深く息を吐く。
そして――再び、インチキ教祖を見つめた。
うーん……やはり、オーラは小さい。
(ああ、そうか。もしかしたら人違いかもしれないな……あのオーラで六百を超える信者を率いるのは無理があるだろう……)
私様が、人違いの可能性を考えていると――
「いや……タウンの信者じゃないな……お客さんか。一応、挨拶しておくか」
インチキ教祖らしき、オーラ小さな人間が私様のほうへ歩み寄ってくる。
「やあ! そこのオッドアイの女性さん、本日はこのタウンに来てくれてありがとう。俺はこのタウンの長をやっている者だ。俺のことは〝インチキ教祖〟と呼んでくれ」
(……えっ? マジ!?)
こうして、私様は自らをインチキ教祖と名乗るその男と出会った。
(しかし……気のせいか? この顔……どこかで、私様は……見たことがある気がするのだが)
近くで見るほどに、インチキ教祖の顔に見覚えがあるような感覚が強くなる。
初対面のはずなのに、初対面ではないような、不思議な感覚が胸をかすめた。
幻鏡は、なぜインチキ教祖の顔に見覚えがあるのでしょうか?




