24.「アイツがインチキ教祖か!?」 前半
すみません、また例によって文章が長くなってしまったため、前半と後半に分けて投稿します。
後半は、もう少し時間を置いてから投稿します。
今回は幻鏡のターンです。
「さあ〜〜らっしゃい、らっしゃい!
安いよ安いよ、当店自慢の豊富な品揃え! 見てびっくり、買ってびっくりの大安売り!
……おっと、そこの紫髪でオッドアイの美人さん! 良かったら、ぜひ覗いていきませんか?」
私様――幻鏡がインチキタウンの雑踏を歩いていると、声を張り上げる商人に呼び止められた。
振り向けば、それは獣人族ネコ科。白い毛並みに首鈴を揺らし、衣服には金色の小判の柄。まるで〝生きた招き猫〟といった風情である。
「……フフ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。どれどれ、せっかくだから私様が見てやろうじゃないか」
その猫商人の口上にまんまと乗せられ、私様はずらりと並ぶ品々へと視線を移した。
ちなみに今の私様は、天岩戸の魔術を解いている。
つまり――透明人間ではなく、誰にでも見える状態だ。
魔術を解いた理由。それはインチキタウンの〝開放性〟にある。
カルト教祖が支配するタウン――その言葉からイメージされるものは、信者が逃げられない閉鎖的な場所、そして部外者が簡単に入れない排他性な空間だろう。
しかし、このインチキタウンは真逆だった。
信者は自由にタウンを出入りできる開放性を持ち、私様のような部外者も、門番による簡単な調査(名前・持ち物・危険な魔術の確認)を通せば、あっさりとタウンへ入れる。融和性に満ちた場所なのだ。
これは長であるインチキ教祖の方針らしい。
(もしかしたら……わざわざ潜入しなくてもよかったかもな)
そう考えた私様は、魔力の節約も兼ねて天岩戸を解いたのだ。
だからこそ今、部外者の私様がこの辺をうろうろしていても、住民にとってはごく当たり前の光景。
誰もそれを〝侵入者〟だとは疑いもしない。
(豊富な品揃え――たしかに言うだけのことはあるな……)
品揃えは、回復薬、時空系魔術による携帯用テント、魔装具、携帯食、地図と、実に多彩だ。
(値段も悪くない……本当に安いし、いくつかはそのまま買いたいくらいだ)
しかも、この一店に限った話ではない。周囲には屋台も立ち並び、香ばしい匂いと共に食欲を誘う品々が並んでいる。食べ歩きにも良さそうで、まるで祭りのような賑わいだ。
プライベートで過ごすなら、悪くない場所かもしれない……
(おっと、目的を忘れてはならない――私様はここに遊びに来たのではない! インチキタウンとインチキ教祖の正体を探りに来たのだ!! お祭り気分は捨てろ!!)
気を引き締め直し、私は再び調査に意識を戻した。
「毎度あり~~っ!!」
……とはいえ、結局は買い物をしてしまったのだが。
タイムスペース魔術による携帯用テントと、魔力回復に効く「マナレバー」と呼ばれる肉を購入した。
これでも抑えた方だ。もし――久奈子が一緒なら、きっと両手いっぱいに買い込んでいたに違いない。
そうしてマナレバーを頬張りながら、インチキタウンを進むと――
「おっ、インチキ教祖とアミーラさんじゃん! ふたりともデートですかい?」
「また会議サボっているのかよ、インチキ教祖」
「あれ? アミーラっていつの間に、新しいハーレム要員になったの?」
「ってことは、三人目のハーレム要員?」
後方でざわざわと騒がしくなってきた。
だが、今の言葉は聞き捨てならん。
(……インチキ教祖、だと!?)
今回の目的であるインチキ教祖。奴が近くにいるというのだ。
幻鏡とインチキ教祖……運命の二人が、ついに邂逅!?




