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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第4章社陸幻鏡という女

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17.「三角縁神獣鏡」 中編

 すみません。

 前半・後半の二本で投稿する予定でしたが、結果的に前編・中編・後編の三本に分けて投稿することになりました。

 後編は、早ければ明日投稿予定です。

「くっ!? アービー! ザルド! 手を貸せ!!」

「「!? わかった!!」」


 ゲルメズは焦った声で二人を呼び、アービーとザルドは咄嗟に隣へ並び立った。


「ハァ!」

水蛙クルバーゲー

雷蠍アグラブ


 ゲルメズのアタシュ・バフラムと炎のトカゲ。そこへアービーのアイスウォーター魔術、ザルドのサンダー魔術が加わる。三つの力が重なり合い、私様が跳ね返した炎は相殺された。


「……まさか、反撃型カウンター魔術の使い手までいたとは……厄介だ」


 そう、これが三角縁神獣鏡の武器としての性能。

 この鏡は〝カウンター魔術〟――別名「反撃型魔術」と呼ばれる特性を持つ。

 カウンター魔術とは、攻撃を受けたことで発動条件が満たされ、倍以上の威力ダメージにして跳ね返す魔術だ。

 条件を満たさない限り発動しない点で言えば、罪と罰式(トラップ)魔術にも似ている。


「しかし、即座に気づいて対処するとは……伊達に修羅場を潜っていないようだな、貴様らオーガ族も」


 今までの雑魚敵かませなら、初見殺しのように一撃で倒せていた。だがゲルメズは瞬時に対応してみせた。

 ゲルメズたちはしばらく動かず、私様たちを睨みつけている。


「……どうした? 来ないのか? 下等な人間族と見下していたのに、怖気づいたか?」

「……」

「幻……あいつら、カウンター魔術に警戒して、中々動けないみたいだね」


 そう、ゲルメズたちは私様のカウンター魔術を知った今、もはや不用意に攻撃を仕掛けられなくなったのだ。

 戦況は互いに睨み合ったまま、膠着こうちゃくする。


(やはり一度にまとめて倒すのは難しい……それなら――まず、()からだ)

「そういえばだが――貴様らに言いたいことがあった」

「何だ?」

「どうしたの、幻?」


 ゲルメズと久奈子が反応する。

 私様は、()()()()のため――挑発するようにダエーワ・ファミリーへ言葉を投げかけた。


「貴様らはまるで、オーガ族のために人間族を殺しているように言っていたが……本当は、〝自分たちだけ〟のためだろう?」

「――なんですって?」


 アービーが食いつく。


「そのメンバーの少なさが何よりの証拠だ。オーガ族は太古ならまだしも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と聞く。人間族との戦いで絶滅の危機に陥ったことで、なおさら考え方は変わったはずだ」

「つまり、もし聞いた通りの種族であるなら、オーガ族の大半は貴様らのような過激な考えには賛同しない――大方、オーガ族から煙たがられ、追放されたクチだろう?」

「……」


 図星なのか、ゲルメズは黙り込む。


「だからメンバーもたった五名。だからこんな辺境でひっそり暮らしている。本当にオーガ族が貴様らに協力的なら、もっと仲間はいるし、人間族と戦争を仕掛ける方法などいくらでもあるはずだ」

「……えーと、つまりオーガ族から見ても、あいつらダエーワ・ファミリーは迷惑ってこと?」

「ああ、久奈子。そういうことだ」


 久奈子の一言に、アービーの顔は憤怒に染まる。


「ふざけんな! 正しいのは私たちダエーワ・ファミリー! 間違っているのは頭の固い族長どもだ!! この行いは、オーガ族が神族になるための必要な試練!!」

「そうだ! オーガ族は長い歴史の中で――卑劣な人間族によって牙を抜かれ、腑抜けとなった! 我らはその目を覚まさせるために戦っているのだ!」


 ヒーラーのサブズを守る形で一歩下がっていたシヤーフも、ついに激昂した。


「落ち着け! これはあの女の罠だ。怒らせて攻撃を誘い、カウンター魔術で跳ね返す算段だ……このままでは相手の思うつぼだぞ!」


 ゲルメズが意図を理解し、仲間を宥めようとする。

 だが、私様はさらに挑発を重ねた。


「おっと、図星のようだな……感情でしか返せないところや――私様のカウンター魔術にビビッて攻撃できないところを見るに――貴様らも案外大したことないな!!」

「なにぃ!?」


 ザルドまでが食いつく。

 いいぞ、皆の意識が私様に集まっている。あとひと押し――もう少しで()を倒せる。

 私様は二枚の鏡を人差し指でピザ回しのように、クルクルと回す。


「……この際、真実を教えてやろう。オーガ族の大半は、人間族が消えることよりも……貴様らダエーワ・ファミリーが消えることを望んでいる! つまり貴様らの殺戮は、まったくの無駄なのだ!!」


 私様のトドメの一言で、シヤーフの表情は爆発した。


「ふざけるな! こうなれば――俺のファントム魔術で、キサマらに地獄を見せてやる!!」

「乗るな、シヤーフ!!!」


 ゲルメズが怒鳴る。だがシヤーフは耳を貸さず、前に踏み出した。


「いいや、そろそろ俺にも戦わせろ! 下等な人間族ごときのファントム魔術より、俺の方が上のはずだ!!」

「アービーから聞いたぞ。キサマらもファントム魔術の使い手らしいな? ならば――どちらが上か、勝負だ!!」


 シヤーフはメンバーの誰よりも前へ出た。


(かかったな!)


 私様は回している二枚の鏡を、さらに勢いづけて回転させた。

 クルクルクルクルクルクルクルクルクルクルクルクルクルクル――ッ!


「久奈子、タクティクスBでいくぞ」


 私様は背後の久奈子に向け、低く小声で合図する。


「! わかったBね」


 久奈子も、ダエーワ・ファミリーに聞こえないほどの声で応えた。

 そして――シヤーフがファントム魔術を発動しようと、指をパチンと鳴らしかけたその瞬間。


「フンッ!」


 私様は二枚の鏡を、ブーメランのように鋭く投げ放った。


「「「「「!?」」」」」


 突如の行動に、ダエーワ・ファミリーの面々は驚愕した。

 シュルルルルル――ッ!


「そこだ! 金印!!」


 鏡の軌道が狙い通りの位置に差しかかった瞬間、私様は両手からフラッシュ魔術を放つ。

 鏡から反射された二本の金色の光線ビームは、シヤーフの耳の穴とサブズの額へと、まさに命中した。

 シヤーフとサブズはその場に即死する。


「なっ!? しまった、ヒーラーが狙いか!」

「サブズ――っ!!」

「ま、まさか……跳弾のように命中させるとは……」


 そう――これこそが、私様の()()

 ヒーラーのサブズを狙うため、奴らを挑発し続け、意識をすべて私様に向けさせたのだ。

 おかげで、サブズを取り囲む防御は薄くなった。

 まあ、ついでにシヤーフまで倒せたのは、嬉しい誤算だったがな。

 すぐさま次の段階へ移る。


「今だ、久奈子!!」

「ええ!! くらえ、金印!!」


 ――ピカッ!!

 今度は久奈子が、私様の背後からフラッシュ魔術を発動する。

 しかし、今回のフラッシュ魔術は、攻撃のためではない。


「……なに!? 今度は目くらましか?」

まぶっ!?」

「うぐっ!?」


 そう――光の輝度きどを強め、奴らの視界を一時的に封じたのだ。

 これがタクティクスB。

 視界を封じた状態で、一気に決着をつける戦術である。

 シュルシュル――ガシッ!

 鏡が手元へと戻った私様は宣言する。


「チャンスだ! 残り三体――このまま畳み掛けるぞ!」



 オーガ族を主人公にした追放系って、「なろう」に存在するのでしょうか?


 補足)

 反撃型カウンター魔術。

 用語だけでいえば初出は、創世記第1章 真実教編・9.「火天かてん」のエピソードになります。

 ここから登場させるまでに、ずいぶん時間がかかってしまいました。

 https://ncode.syosetu.com/n0711js/10/

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