13.「おぬしのスキルタイプは」
「なんじゃと!? おぬしのスキルタイプじゃと?」
「ああ。本当にあんたが一目でどんなことでも見抜けると言うなら、初対面の俺のスキルタイプでも見分けることができるはずだ。もちろん、魔術は発動しない。ノーヒントで当てて貰おう」
インチキ教祖から突然クイズを問われ眉をひそめるウンコウ。
インチキ教祖は白き世界で教えられていたことを振り返っていた。
―自分がどのスキルタイプに該当するか、これを見分けるには、ある程度魔術を学ぶことが必要なのだ。なぜならどの魔術が得意、不得意かを調べていくことでスキルタイプはおのずと判明するからだ―
「(この世界に来る前、あの白き世界でわけわからん奴に教わった。スキルタイプを見分けるには原則、魔術を学び、どの魔術が得意か不得意かを分析することで自分のスキルタイプを理解していくものらしい。これは、道場に行く途中、ジュダスにも確認をとったことだ。付け加えるなら、ジュダス曰く親のスキルタイプは遺伝しやすい傾向もあるから、そちらも判断材料の一つになるとか)」
「(つまり何を言いたいのかというと、『他人からあなたのスキルタイプはこれです』みたいな百パーセント証明する手段はないということだ)」
ジュダスはインチキ教祖のクイズに寝耳に水だった。他の教徒も同様だろう。
今まで教徒誰一人、ウンコウにそのような質問をしてこなかったからだ。というのも真実教の教えの一つに、〝教祖ウンコウを試してはいけない〟という教えがあるからだ。また、真実を極めたウンコウを疑うことは許されない。なぜなら彼の言動は全て正しいとされているからだ。
説法会の終わりの質疑応答でさえ、質問が許されているのは、説法での不明点、教えに関する不明点に限定される。
「おぬし……余を試すというのか」
ウンコウの発言にとある教徒が口をはさむ。
「貴様ぁ!! ウンコウ様を疑う気か!? しかもあろうことかウンコウ様を試そうとするとは、真実教の教えに背く気かぁぁぁ!」
一人の教徒の抗議に対して、他の教徒も同調してインチキ教祖を責める。
「そうだ。そうだ。お前は説法会を妨害している。今すぐ道場から出てけよ!」
「家族たちの言う通りじゃ。冷やかし目的ならお帰り願いたい。真実と向き合う気もない者に余が教える価値もない」
インチキ教祖の誘いに乗る気がないウンコウに対し、インチキ教祖は尚も喰らいつく。
「なぜ俺のクイズに答えない? 外れるのが怖いからか? 信者の前にいんちきな教祖だとバレるのが怖いんだろう? なあ。ウンコウさんよう?」
インチキ教祖による一方的な言い掛かりに教徒たちの抗議は増していく。
ジュダスは不思議と、他の教徒たちのようにインチキ教祖に怒りを感じなかった。それよりもウンコウがインチキ教祖のスキルタイプを当てられるかに興味があった。
「(ウンコウ様が、本当に全ての真実を見通しなら、さっさとインチキさんのスキルタイプを当てれば話は終わりだ。だが、問題はウンコウ様がインチキさんの話に乗るかどうか。私としては乗ってほしい)」
ジュダスが事態を見守るとジュダスの隣に座っていた女性教徒がジュダスに話しかけてきた。
「ねえ。ジュダス。あの人、ジュダスが連れてきた人でしょ? ジュダスならあの人のスキルタイプがわかるんじゃない?」
「えっ? ええ。あの人のスキルタイプはコネクトだとお仰っていましたよ」
出家教徒で知り合いの者なので、特に黙っている理由がないと思い、ジュダスはインチキ教祖のスキルタイプを教えた。そしてこれは話していないが、洞窟でのインチキ教祖とのやり取りの中で、彼がコネクトであると確信に至る理由がジュダスにはあった。
ジュダスの話を聞いた女性教徒は希少なコネクトなことに驚いたのか、「コネクト……!」と一瞬つぶやき、目を大きくした。その後、その女性教徒は少し離れたとこに座っている男性教徒に何か合図を送っているように見えた。
そして男性教徒は首を縦に振ると、今度はウンコウに向かって何か合図を送っているように見えた。さらには、ウンコウがその男性教徒の合図を一瞬見たのをジュダスは目撃した。ジュダスは一連の流れを目撃し驚いていた。
「(まさか……今のお話をウンコウ様に教えた!? いや、そんな馬鹿な……)」
教徒からの抗議に物ともしないインチキ教祖に対して、ウンコウはあきれたようにハァと息を吐く。
「もし、おぬしのスキルタイプを見破ったらおぬしはどうするかね?」
「あなたがホンモノだと認めましょう。そして入信してやるよ。いきなり出家信者までなってやろうか? その代わり、あなたが間違えたら、真実なんて極めてない嘘っぱちの教祖だと認めるな?」
「良いだろう。余は真実を極めた者。ゆえに余が間違えることはあり得ないからな」
インチキ教祖からの挑戦を受けるウンコウに周りの教徒はドッっと驚く。
「家族たちよ。騒ぐではない。余を試すことは教えに背くことであるが、服装から見てもわかる通り、彼は教徒ではないのだ。よって、そもそも教えに背いていない。それに彼も憐れなのだ。他者に騙された経験でもあるのか、真実を教えても、このように受け入れない者もいる。しかし、余は見捨てることなく救いの手を差し伸べようではないか」
ウンコウのパフォーマンスに周りの信者は興奮する。
「流石です! ウンコウ様。ウンコウ様の寛大な態度に敬服いたします!」
「お前! ウンコウ様の慈悲に感謝しろよ。」
周りの教徒たちが静かになってきたところで、ウンコウがマントラのようなものを小声で唱えながら瞑想をする。
しばらくすると、目をカッと大きく開いた。
「見抜いたぞ。おぬしのスキルタイプを……」
ウンコウはそうつぶやくとゆっくりとインチキ教祖に向けて指を差しこう断言した。
「おぬしのスキルタイプはコネクトだ。どうだ違うか?」
明日21時続きを投稿します