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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第4章社陸幻鏡という女

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5.「ターニングポイント」 後編

(曽根弥が私様に惚れている!? そんな馬鹿な……。いや、確かに曽根弥のあの目には、ただならぬ思いを感じさせているが……あれは私様を〝女〟として見ている、そんな単純なものではない気がする)


 私様には、生まれてこのかた男女の恋愛というものを経験したことがない。

 幼少の頃から教祖の娘として世間に避けられていたし、私様自身も教えによって男女の関わりを遠ざけるよう徹底してきた。かといって、母のように愛用の(グッド・)男性従者ルッキングガイを作ろうなどという気にもなれない。


 それでも、男性オトコたちが私様に向ける目の種類くらいは判別できているつもりだ。

 教団施設に住む出家男性従者は、私様の愛用の(グッド・)男性従者ルッキングガイになろうと日々容姿を磨き、あからさまに私様へ媚びを売ってくる。その熱心さは、私様に惚れているからではなく、むしろ「次期教祖の傍に仕える」という地位と安泰を得るための算段にすぎない。


 実際、教団内では男性従者が女性従者より地位を得やすい傾向がある。曽根弥に匹敵するほど教団に尽くしてきた泉生が、曽根弥と比べ冷遇されてきたのも決して無関係ではないだろう。

 だが――曽根弥だけは違った。

 私様の愛人になりたいとか、性的な目で見つめているとかは、私様からは感じない。上手く言語化できないが、あの目は何か別の感情を孕んでいると思う。


「フフフ、泉生からすれば曽根弥はたった一人の夫なのでしょうけど、妾様にとっては百人以上いる愛用の(グッド・)男性従者ルッキングガイの一人に過ぎない。一人くらい減っても問題ないわ」

「むしろ、妾様からの泉生への最後の慈悲よ。愛する男に殺されるなら、泉生も本望でしょう」


 だが、今はそんな詳しい事情を説明している場合ではない。〝泉生殺害計画〟――それはあまりに危うすぎる。今すぐ止めねばならない。


「母! 冷静になりましょう!! 今そんな事件を起こしてどうするのですか!? ますます世間から教団へのバッシングは増えるばかりです! 場合によっては、警察も本格的に介入し、教団壊滅の危機も――」

「馬鹿ね。だから曽根弥に〝自発的に〟殺させるよう仕向けているのでしょう? 夫婦関係のもつれ、曽根弥の勝手な暴走――そう言い切れば、教団は無関係だとできるのよ。いくら叩かれようが、ほとぼりはそのうち冷めるわ」

「そんな……。それに今まで貢献してきた曽根弥を、そんな形で切り捨てるなんて……」


 曽根弥が殺人事件を起こす。殺される予定の泉生、そしてそれを嘲笑う母。

 私様の胸には、複雑な思いが渦巻く。このままじっとしていてよいのだろうか。私様に、何かできることは――ないのだろうか。

 だが――そんな迷いに沈む私様へ、母は冷たく告げた。


「娘よ……そなたごときが今さら何をしようとしても、無駄よ。曽根弥は鬼道の教えを信じ、確固たる意志で動いている。そして、そなたを手に入れるためにも執着しているのだ」

「そなたにできることは……曽根弥が刑務所から出たときに引き取るくらいかしら。一応、娘をあげると約束したことだし。もっとも、出る頃には老人になっているだろうから、欲しくもないでしょうけどね」

「さて……もうすぐ、朝の会の時間。化粧メイク直しせねば……話は以上よ。そなたもそろそろ出なさい」


 母は門番を呼び、私様に退出を促す。私様はモヤモヤを抱えたまま部屋をあとにした。


(本当に……このままで良いのだろうか……)


 だが、私様は結局、曽根弥を止めるための行動を何一つしなかった。

 だが……今にして振り返ると、ここがターニングポイントだった。

 あの時、私様が曽根弥の行動を止めていれば……あんな結末を迎えることはなかったかもしれない。

 私様も、母も、そして泉生すら、予想だにしていなかっただろう。

 まさか、曽根弥が教団と無関係な一般人の男性を殺すなどとは――夢にも思わなかったのだ。

 運命の歯車は少しずつ狂っていったのだ……


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