表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第4章社陸幻鏡という女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/186

4.「お母様」 後編 ※一部に人間関係のドロドロ描写を含みます

 タイトル通りです。※一部に人間関係のドロドロ描写を含みます

「……ぷはー。朝の一服――やっぱりいいわ」


 煙管キセルを吸いながら、部屋にある銅鏡を見つめる母。

 普段は私様以上に濃すぎる化粧メイクをしているのに、今日は化粧が落ちた顔、乱れた髪と服装……間違いない。昨夜も愛用の(グッド・)男性従者ルッキングガイとよろしくやっていたということだろう。

 そして、私様の推測を裏付けるように、寝室から二人の男性が現れた。


「ああ、すんません。照魔ちゃん♡ あと、幻鏡様、自分すぐに抜けますね」

「ああ」


 一人は飄々とした青年の男性、吉野よしの我理がり

 比較的に新参者の従者で、最近は夜になると母の寝室に呼ばれることが多い。


「照魔鏡様……今すぐ抜けます」


 そしてもう一人は中年の男性、池上いけがみ曽根弥そねや

 母が教祖に就任した頃に入った古参の従者で、二十五年以上この教団の施設に暮らし、それなりに地位もある。仕事面でも夜の面でも、母のパートナーと呼んでも差し支えないほどのお気に入りだ。


「幻鏡様……おはようございます」

「……ああ、曽根弥、おはよう」


 曽根弥は、いつものように、まっすぐと私様を見つめて、挨拶をする。

 その瞳は、従者らしく生気のない状態ではあるが、私様を見るときだけは、ちょっぴりと明るく、そして暖かそうな目をしている。

 それは、母を見るような崇拝や畏怖の感情を宿した目ではない気がする。

 なんとなくだが、私様に対して、好意とは違う何かの感情を向けられているように思える。私様自身、それが何かはわからないが。

 だが、曽根弥の見つめるその瞳には――戸惑うところもあるが……悪い気がしないところもある。


「曽根弥、そなたは少しこの部屋に居てくれ。話がある。……我理よ。またな♡ 尚、寝室以外では、敬虔な従者として振る舞うのよ」


「はい! 照魔ちゃん♡ いえ、照魔鏡様!」


 我理はそう答えると、部屋をあとにした。

 そして、部屋には――私様、母、曽根弥の三人となる。


「さて……毎度のことながら、あの脱会支援団体には手を焼いている……特に最近だと、そなたの妻には参っているぞ。あの裏切り者にはな」


 母は、曽根弥に当てつけるように言う。

 曽根弥の妻――池上いけがみ泉生みずき

 彼女は一年前まで、曽根弥と同じく古参の従者だった。だが、敵対する脱会カウンセラーの手助けを受け、マインドコントロールが解けたことで、現在では教団を激しく非難バッシングする側に回っている。

 元古参の従者なだけあり、教団の裏側を熟知しているうえに、かつて経理を担当していたこともあって、金の流れすら把握している。

 そのため、彼女のバッシングは世論からも注目され、さらに夫である曽根弥が今も教団に残っていることから、「悲劇の妻」「夫を取り戻そうとする献身的な女性」としてメディアに取り上げられることもある。


「申し訳ございません。……妻ではなく、〝元妻〟です。戸籍上では離婚しておりませんが、私の中では、もうあの女は妻とは見ておりません」


 本心からか、あるいは母の機嫌を取るためか――いずれにせよ、そう言わざるを得ない立場の曽根弥は、そう返答する。


「フン……あのビッチが。夫を取られた腹いせかしら。形だけの妻の分際のくせに。そなたの夫は、そなた以上にわらわ様の傍におった。身体を重ねた回数だって、妾様の方が圧倒的に上だ」


「……ぷはー。やっぱり、見せつけるように、妻の目の前でいつも夫を侍らせていたのが、良くなかったのかしら? あれが地味に効いていたのかもね、フフ」


 母は煙を吐きながら、そうボソッと呟いた。

 だが、やがて母はニチャァと気味が悪くなるような、下卑た笑みを浮かべた。


「フフ……曽根弥よ、()()()を覚えているな? お前の贖罪のためでもあり、教団と娘の未来のための行動を……」


(例の件? 贖罪? 教団と――私様の未来のための行動だと? 一体、何の話をしている?)


 母は曽根弥に語りかけているが、意味深なその内容に私様は注目する。というより、「私様の話」まで出た以上、無関係ではいられない。


「……はい、もちろんです。照魔鏡様」

「そうか、ならいい。行っていいぞ。そなたは長年、妾様に仕えてくれた……その恩には必ず報いよう」


 母にそう言われ、曽根弥はコクンと頷き、最後に私様を見つめる。

 そして「失礼いたします」と言い残し、部屋をあとにした。


「あ……」


 ()()()について聞きたかったが、肝心の曽根弥が出て行ってしまった。

 そして、部屋には――私様と母、二人きりとなる。

 しばらくの沈黙ののち、母が口を開いた。


「さて……ようやく二人きりになったな……娘よ」


 その声は、静かで、けれども妙に重かった。


「そなたに話がある。今の曽根弥の件についてだが――」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ