12.「今から俺がたった一つの質問をあいつにする。それで暴いてやるよ」
壇上に真実一路という文字が描かれた扁額がある道場。インチキ教祖とジュダスは会場の中央のあたりに並んで座っていた。
ジュダス含め、教徒たちは正座してウンコウを待つ中、インチキ教祖だけがあぐらを組んで座っていた。
皆が黒服のカンフーのような服装を着ている中、インチキ教祖だけ現実世界からずっと私服のままだったので、一人だけ目立つ状況だ。しかし、インチキ教祖はそんな状況に気にも留めず。
「なあ、ウンコウとやらはいつ頃出てくるんだ? ジュダス」
「そろそろのはずよ……来たわ。おしゃべりはそれくらいでお願いします」
ジュダスがそう言うのと同時に壇上にカンフーのような白い服装を来た坊主頭の中年男性が現れた。教徒皆が黒服の中、その男性だけが唯一白服だった。その者がこの教団の中で、特別な地位にいることは明白だった。
「あれがウンコウって奴か。だが集落で見た、黄金像と見た目がかけ離れていないか? 黄金像は筋骨隆々で長身でたくましい顔つきだったが、あのおっさんは服装からみてもわかるくらいデブだし、身長も小さめだし、顔もお世辞にも美形とは言えなそうだな。つーかあの黄金像美化されすぎだろ。それともあの黄金像は別人をモデルにしているのか?」
インチキ教祖による悪口と言えるウンコウへの評価でジュダスのみならずインチキ教祖の周りにいる教徒は顔をしかめる。ウンコウの前で雑談するわけにもいかないので、咎める者は誰もいないが。
ウンコウは壇上の中央にインチキ教祖と同じく、あぐらを組んで座り込んだ。やがて口を開き。
「おはよう。余のかわいい家族(出家教徒)たちよ。そしていずれ家族の一員となる在家の教徒たちよ」
「「「「「「おはようございます。ウンコウ・ガンダーラ様」」」」」」
ウンコウが挨拶をすると、教徒たちは大きな声で一斉に挨拶を交わすのだった。
「うむ。元気な挨拶でなによりじゃ。いつも言っておるが、元気に挨拶をすること。これも幸福になるために必要な真実じゃ。真実への道はそう簡単に辿り着く道ではないが、その調子で修行に励むことじゃ」
ウンコウは誇らしげに語る。
なんらかの魔術を使用しているのだろうか、マイクみたいな拡声器はないが、ウンコウの声は大声でなくとも会場全体に聞こえる状態であった。
「それじゃあいつものをやってみようじゃ」
ウンコウが掛け声を掛けるとウンコウと教徒たちは一斉に両手を胸の高さまで上げ、親指と他の指の先を合わせて輪を作る手の形を作った。
これは転法輪印と呼ばれる印相の一つである。
するとウンコウと教徒たちは、同時に声を合わせ。
「行くぞ! 真実への道
あ~あ、愛の真実教
しゅう~、修行するぞ真実教
う~う、ウンコウ様は間違えない
私の人生ウンコウ様に捧げよう~
万歳! 真実教! 栄光あれ! 真実教! 不滅であれ! 真実教!」
インチキ教祖は啞然として見ていた。ウンコウとジュダス含め教徒たちが謎の歌を歌い終えたらインチキ教祖はさっそくジュダスに声を掛けることにした。
「今のナニ? コレ?」
「今のは声明といって平たく言えば、真実教の歌です。皆でこれを歌ってからウンコウ様より本日の真実を教えて貰えるのです」
ウンコウは、何やらマントラのようなものを小声で唱えながら瞑想をしていた。しばらくすると。
「ヤムウム!」
と何やら叫び、一人の教徒に向けて指を差す。指を差された教徒が「はい!」と返事する。
「ヤムウム! おぬしは涅槃寂静の術をついに修得できたそうだな! どうだ違うか?」
「間違いありません。ウンコウ様。まだ誰にも話していなかったというのに。なぜそれを?」
「真実を極めた余に見抜けぬものはない。ヤムウムよくぞやったぞ! その調子で修行に励むがよい」
「ハハアッ! お褒めに預かり光栄です。このヤムウムさらなる修行に励むことを約束します」
ヤムウムと呼ばれた教徒は、ウンコウに感謝するように頭を下げるのだった。
ウンコウはヤムウムの態度に笑顔で頷く。しかし、ウンコウは急に仏頂面となり今度は二人の教徒に向けて指を差して呼ぶ。
「ウンタラ!」と呼ぶと男性教徒が「はい!」と返事をする。
「そしてカンタラ!」と呼ぶと今度は女性教徒が「はい!」と返事をする。
「おぬしらがなぜ呼ばれたのかわかっているな?」
「そ、それは…………」
ウンタラと呼ばれた男性教徒は言いづらそうな雰囲気だった。カンタラと呼ばれた女性教徒もウンコウの問いかけに言いづらそうな雰囲気だった。
「言いづらいなら余から当てようか? おぬしらは休憩時間の合間に道場を抜け出して、二人きりで会っているようだな。どうだ違うか?」
周りの教徒は驚いていた。真実への道を極めるには煩悩を断ち切ることが必要だ。男女別れて、住むことを徹底しているというのに、見えないところで恋愛関係になっているなら、それは重大な戒律違反を意味するからだ。
「この件については、何人かの家族も目撃しているぞ。弁明があるなら聞いてやるぞ。最も当然余には真実が分かっているじゃがな」
ウンコウは釘を刺すような言い方でウンタラとカンタラにプレッシャーをかける。その言葉にウンタラは。
「申し訳ございません。ウンコウ様。真実に誓ってもいいますが、カンタラとは共に散歩し会話をしているだけです。それ以上にやましいことは一切ありません!」
ウンコウは疑うような眼差しになる。
「何度も言うが、余には当然真実が分かっている。が、ここにいる家族たちがその言葉を信じるとでも?」
「ウンタラの言うことは本当です! 申し訳ございません。ウンコウ様! 皆さま! 私からウンタラに会うように誘ったのです! 彼は教えに従い断ろうとしたのですが、寂しさのあまり私から無理強いする形に……なので罪が重いのは彼より私です! せめて彼だけでも許してもらえないでしょうか!」
ポロポロと涙を流しながら懇願するカンタラ。
「いえ、断れきれなかった私も同罪です。ウンコウ様。身勝手で申し訳ございませんが、どんな罰でも受けます。ですから破門だけはどうか。破門するならせめて私を。彼女だけでも許してもらえないでしょうか?」
土下座するウンタラとカンタラ。その態度にウンコウは仏頂面の表情から慈悲のような表情へと変わる。
「もうよい。ウンタラとカンタラ。顔をあげなさい。おぬしらはカップルで三か月前に出家したばっかだったな?」
「真実教の修行は大変厳しい。未熟なおぬしたちが癒しを求めて、煩悩が生じたのは、同情できるところもある」
「「ウンコウ様」」
ウンコウから寄り添うような言葉に顔をあげるウンタラとカンタラ。
「しかし、教えに背こうとしたのは真実。これを看過することはできない。おぬしらにはそれ相応の措置を与えねばな」
「まずウンタラ! おぬしは教育室行きじゃ。自分が犯した過ちと向き合いたっぷりとシゴいて貰え」
「そしてカンタラ。おぬしにはより相応しい特別な修行がある。今夜余の部屋に来い。余自らおぬしに修行をつけてやるぞ」
ウンタラとカンタラは、「ハハアッ!」と返事をし、再度頭を下げるのだった。
「言っておくが、これは罰ではない。むしろ救済じゃ。おぬしらの過ちで真実への道から遠ざかってしまったからな。これを少しでも近づき直すために行う救済策じゃ。余に感謝するんじゃぞ? それと今後は二人きりで会うことは許さない。これ以上真実への道を遠ざかってしまったら、余でも救済できなくなるからな。わかってくれるな二人共?」
「「ハハアッ! ありがとうございます。ウンコウ様。」」と二人は返事をするのだった。
ジュダスはウンコウが教徒の真実を見抜くさまを見て興奮するのだった。
「ね! 凄いでしょう? ウンコウ様は? ああやって、ウンコウ様の前ではなんでも真実を見抜くんだから。ウンコウ様の前では、悪いことなんてできないんだから。あなたも考え直してくれた?」
ジュダスからの問いかけにインチキ教祖は、鼻で笑うのだった。
「フン! とんだ茶番だ。この程度なら簡単なトリックだ。洞窟に入る前の時でも話しただろう? 信者が秘密にしていることを教祖が見抜いているように見えるが、あれは他の信者からタレコミを受けていたら再現可能だ」
「ウンコウの奴。あの男女が夜な夜な会っていることは他の信者も目撃してるって言っていただろう? おそらく目撃してる信者から聞いたというところだろう」
「ヤムウムだっけ? その信者の涅槃なんちゃらという術もウンコウ自身がどこかで目撃したか、やはり他の信者が目撃したのをウンコウが聞いたんだろうよ」
一向にウンコウを信じようとしないインチキ教祖に対して、顔をしかめるジュダス。インチキ教祖は話を続ける。
「でも俺が言っていることだって今のところただの言いがかりだ。ウンコウがいんちきである証拠にならない。だがら、今から俺がたった一つの質問をあいつにする。その一つの質問で暴いてやるよ。あいつのいんちきっぷりを。あいつは真実なんて見抜いていねえってところを」
インチキ教祖は立ち上がった。
「ではそろそろ本題の説法に入ろう。本日のテーマは真実の瞑想とその神髄じゃ。まずは通常の瞑想と真実の瞑想その違いから説明を~うん? なんじゃ?」
ウンコウは自分のところに向かってくるインチキ教祖に気付いた。
ジュダスは歩いていったインチキ教祖に啞然とし、止めに行くか迷っていた。周りの教徒たちもインチキ教祖に困惑していた。
「ウンコウさん。お会いできて光栄です。あなたの真実眼お見事です。あなたならば、一目でどんなことでも見分けることができるんですね?」
「……左様じゃ。見たところおぬしは人間で見ない顔じゃな。悪いが今は説法会の途中じゃ。質疑応答なら説法会の終わりに設けているので、席にお戻り願いたい」
「悪いな。アンタが本当にどんな真実でも見抜けるなら……今すぐ試させて貰おう」
インチキ教祖は左手の親指を自分に指しながら次の質問をした。
「一つクイズを出すぜ。この俺のスキルタイプを当ててみろよ」
遂に対峙するインチキ教祖と教祖ウンコウ・ガンダーラ!
ちなみに真実教の歌は結構悩みながら作り上げました。
2025/05/25
youtubeチャンネルで、今回の真実教の歌をAIさんに歌ってもらいました。
興味がある方はこちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=NOWdRBhzJ9k




