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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第3章月の星団編

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【総集編】第一章から第三章までのストーリーまとめ⑥ ※ネタバレあり

 これにて総集編終わりです!! やはり後編はボリューミーになっています……

 第3章月の星団編・後編

 ヴェダたちから月の星団という教団の存在を知らされ、一日が経った。早朝――インチキ教祖は緊急に、タウンの全信者を広場へと集めた。

 インチキ教祖「急に呼んで悪いな。この全体集会も俺がタウンの長に就任して以来久しぶりだな」

 インチキ教祖「一部の者は知っているだろうが、昨日うちの信者が月の星団という名の武闘派教団に襲われた。幸い皆無事に帰れたので良かった。が、問題はここからだ」

 そして、インチキ教祖は月の星団から突きつけられた要求を全信者に伝えた。


 一つ――タウンの全員が月の星団に改宗すること。

 二つ――改宗を拒むならば、タウンそのものを差し出し、住民は立ち退くこと。

 それ以外に選択肢はなく、応じなければ戦いになると――。


 インチキ教祖「……つまり、俺たちに残された道は二つ。〝降伏〟か……〝戦争〟か。選ばなければならない」


 インチキタウンの信者その一「月の星団って何? 自分世間に疎くて……」

 インチキタウンの信者その二「戦争!? 戦争なんてヤダよ! でも外の世界も安全じゃないし、このタウンから出たくないなー」

 インチキタウンの信者その三「いくらなんでも急過ぎるだろう! 誰だよ! あっちの信者を殺した奴。なあ、真犯人突き出して貰えば許して貰えないかなぁ?」

 インチキタウンの信者その四「逃げるなら今のうちよね?」


 当然のように広場は動揺でざわめきに包まれた。 そんな群衆を見渡し、インチキ教祖は静かに口を開いた。

 インチキ教祖「俺がこの宗教インチキを立ち上げたのは、インチキ教祖としてハッピーライフを送るためだ」

 インチキ教祖「ハッピーライフを送るのは、教祖の俺だけじゃない、インチキの信者、信じていなくてもこのインチキタウンに住む者は俺にとって信者だ。つまりここにいる皆全員にハッピーライフを本気で送らせたい」

 インチキ教祖「だからこそ、戦いによって大勢の犠牲が出るのは、できれば避けたい。犠牲はハッピーライフと相反するものと考えているからだ」

 インチキ教祖「もしここにいる()()が、命が惜しくてタウンから出たいならそれを尊重しよう。全員出ていくなら俺もついていく。皆で新天地を探そうじゃないか!!」

 インチキ教祖「だが」

 インチキ教祖「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がいるなら……信者ソイツの思いを実現させることはハッピーライフにつながる。信者ソイツのために教祖として俺もタウンに残って戦おう。もちろん俺が残るからといって、皆も残れと言うつもりはない。前から言っている通り、タウンからはいつでも出てもいい。皆には皆のハッピーライフがある。よく考えるんだ」


 インチキ教祖に問われる信者たち。だが、皆が皆そんな簡単に答えを出せるわけではなかった。「降伏か、戦うか」――その二択は重すぎて、広場は深い沈黙に沈んでいく。誰もが悩み、口をつぐみ、ただ時間だけが過ぎていった。

 そのとき――

 アルファイ「インチキ教祖……あなたに聞きたいことがある」

 ひとりの信者が口を開いた。――いや、正確には、前の長ザスジーの忠実な信徒、アルファイ・ダーウィンだった。

 アルファイ「あなたは……マスターを殺したのか?」

 インチキ教祖「……真実を知りたいか?」

 アルファイ「ああ……」

 その瞳には怒りも憎しみもなかった。あるのはただ、真実と向き合おうとする意思。

 インチキ教祖は、その思いを正面から受け止めた。


 インチキ教祖「直接は手を掛けていない……が、俺が殺したようなものだ」

 インチキ教祖「ザスジーは死んでいる」

 インチキ教祖はアルファイの意思を汲み取り、真実を告げた。

 アルファイ「……ワタシが今も生きているのは、ザスジー(マスター)のおかげだ。マスターがいなければ、ワタシは命を絶っていただろう」

 アルファイ「ワタシはマスターの信徒であってあなたの信者ではない。この思いは誰になんと言われようとも変えるつもりはない……たとえどんなにマスターが酷い人間だったとしても」

 そしてアルファイは決意する。

 アルファイ「マスターが作ったこのタウンをよそ者が滅茶苦茶にするのは、許せない。そしてインチキ教祖。お前がマスターとは違う道を目指すというなら……この目で見せてもらう」

 アルファイ「ワタシはこのタウンを守るために月の星団と戦う!!!」

 アルファイは、力強く「タウンを守る」と宣言した。


 すると――

 ドラゴン族のルーベンスが立ち上がった。

 ルーベンス「オレもタウンに残ろう! インチキ教祖、アルファイ」

 その力強い声に、信者たちの胸にも火が灯る。


 インチキタウンの信者その五「そうだ……今逃げたらこの先も敵が現れるたびに、逃げの繰り返しになる気がする……俺も逃げずに、残るぞ!」

 インチキタウンの信者その六「ああ! インチキ教祖。ルーベンス。インチキタウンの力を月の星団に見せてやろうぜ!」

 インチキタウンの信者その七「要求って、要するにこのタウンが欲しいだけでしょ? 『殺された信者のためだ~』とか立派な理由で取り繕っているけど……冷静に考えたらムカムカしてきた……なんで侵略者の思い通りにならないといけないのよ!」

 インチキタウンの信者その八「このタウン以上にいい環境が見つかるとは限らないし……インチキ教祖がいるならまあ勝てるっしょ!」


 次々と戦う意志を示す信者たち。

 理由は違えど――「タウンを守る」という思いは、インチキ教祖、アルファイ、そして多くのインチキタウンの信者たちに共通していた。

 インチキ教祖「具体的な戦術はおいおい考えよう。……だが、勝つ方法ならあるぞ。それは――」

 そして、タウンを守る道を選んだ信者に向けて、インチキ教祖は()()()()を実行する。


 ・インチキタウンVS月の星団 開戦

 タウンを守るために戦う道を選んだインチキタウン。

 そして――戦いの火蓋は切って落とされた。

 タウンへと攻め寄せる月の星団。それを迎え撃つインチキタウン。

 激しい攻防が繰り広げられ、戦場は混沌と化していた。


 一方その頃 ――五行緑月の野営地

 戦場から離れた野営地のテント。そこにイブリースは五行緑月を召集していた。

 突然の呼び出しに、イブリースを除く五行緑月の面々は当然困惑していた。 開戦の最中でありながら、戦場への参加を制止するイブリースの真意を、誰一人として掴みかねていたのである。

 イブリース「ワタクシたち五行緑月ももちろん戦場に参ります。ですが、その前にどうしてもやっておくことがあるのよ」

 イブリース「この戦争が起きたキッカケ……相次あいつぐ委ねる者が殺されている事件。その真犯人についてよ」

 イブリース「犯人はあなただ……ハサン・アッ=サイヤード。礼拝の称号を持つあなたよ」

 イブリース「いいえ、〝ディオネロ帝国のスパイ〟こう言っておきましょうか? ハサン?」

 イブリースはすべてを見抜いていた。

 ハサンの正体、そしてなぜ彼がインチキタウンと月の星団を戦わせようとしたのかを。

 それでもなお、イブリースがハサンの思惑どおりタウンと戦う道を選んだのは、〝教団の繁栄〟と〝資源の確保〟のためであった。

 そして今――裏切り者、いや、初めからディオネロ帝国のスパイであったハサンを、イブリースは粛清する。

 そして裏切り者いや、もとからディオネロ帝国のスパイのハサンを粛清するイブリース。

 五行緑月がタウンへと向かおうとした、そのとき――


 インチキ教祖「雷音」

 月の星団の指導者イブリースを討つべく、インチキ教祖は自ら突撃を仕掛けていた。

 放たれた不意打ちの雷電系魔術を、イブリースは楽々と躱す。

 イブリース「あなたね。敵の頭目でもあり、インチキタウンの長でもあり、インシュレイティド・チャリティ教の教祖の――」

 インチキ教祖「ああ。俺のことはインチキ教祖と呼んでくれ」

 こうして、インチキ教祖とイブリース。教祖ボス同士の戦いが始まろうとしていた。


 そして、イブリースを除く五行緑月はタウンへと攻め寄せていった。

 サラーフ「すいけんのリチャードだな?」

 リチャード「よろしくな。あんたと会うのが初めてだが、よーく知っているよ。せいきょうびょうのサラーフだろ?」

 サラーフ「フッ。懐かしいな。その異名。だが、今の異名は、〝巡礼〟のサラーフ。月の星団、五行緑月の一員だ」

 こうして、リチャードとサラーフの戦いが始まろうとしていた。


 ヴェダ「あのアミーラというオーク。雰囲気からして、イブンよりもかなり強そうッス……だから、アタシたちがイブンをなんとかするッス。姐さんは、アミーラをお願いしてもいいッスか?」

 ジュダス「わかったわ……イブン(そっち)はお願いする……でもヴェダ、無理はしないでね」

 こうして、ヴェダと仲間たちはイブンと、ジュダスはアミーラと戦いを始めろうとしていた。


 ・五行緑月との決着

 インチキ教祖が月の星団に「勝つ方法」にして秘策とは、コネクトの特性、〝魔力譲渡〟だった。

 しかし、インチキ教祖の魔力譲渡の活用方法は、真実教教祖・ウンコウ・ガンダーラや、前のタウンの長・ノオウ・ザスジーとは異なる。

 彼は信者の魔力を独占するのではなく、分配することでタウン全体の戦力を底上げしていくのだった。

 インチキ教祖「オールラウンドの者は、インファイターとヒーラーの魔力を持つことが、インファイターの者はオールラウンドとヒーラーの魔力を持つことが、そしてヒーラーの者はオールラウンドとインファイターの魔力を持つことができる!!!」

 これにより、一人につき一つのスキルタイプしか持てないはずが、全てのスキルタイプを兼ね備えられるようになった。

 月の星団と互角以上の戦いを繰り広げられるインチキタウン。

 そして、月の星団の最大の戦力である五行緑月との戦いでは――


 サラーフ「まったく、お前ばっかり喋りやがって……どうしてくれるんだ?」

 リチャード「悪りぃ、悪りぃ。続きは……続きは、死後の世界で聞こうじゃねぇか」

 サラーフ「わ、私とお前では、信じる宗教は違う……のに、会えると?」

 リチャード「さ、さぁ……そ、その辺は……か、神とやらが、なンとかしてしてくれる……さ」

 こうして、リチャードとサラーフは相打ちとなった。


 ルーベンス「コォ・キュ・ウ――火竜の(ドラゴンブレス・)息吹(レッド)

 イブン「くそぉ……これだからヒーラーは嫌いだぁあああああ」

 ヴェダ「数の暴力でこっちが勝ちッス」

 ルーベンスの力も借り、ヴェダたちはイブンに勝利した。


 ジュダス「私の勝ちね……最期に言い残すことがあるなら、聞いてから、トドメを刺してあげるわ」

 アミーラ「へへ。これで最期か……なら仕方ない。ど、どうせ死ぬならやるだけやってから……死のう」

 アミーラ「ボクだって負けられないんだ――限界突破バルザフ

 互角の戦いを繰り広げるジュダスとアミーラ。ジュダスがあと一歩のところで、アミーラは切り札の魔術を発動する。

 限界を超える肉体強化系魔術により、アミーラの身体は崩れながらもジュダスを追い詰めた。

 ジュダス(ごめんなさい。インくん……ごめんなさい。ヴェダ……ごめんなさい。タウンの皆)

 ジュダス(パパ……ママ……私はここまでです)

 策が尽きたジュダスは敗北を悟るが――

 アミーラ「誤算だったよ……魔術の持続時間は残っているけど……肝心のボクの身体が耐えられていなかった。鍛えが足りなかったんだなぁ……」

 アミーラ「さようなら。母さん……父さん……みんな」

 ジュダスにトドメを刺す寸前、アミーラの身体は塵となり、風に吹かれて消えていった。


 イブリース「イ……インチキきょうそおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 インチキ教祖「天鼓雷音」

 残り少ない魔力の中、インチキ教祖は雷電系の上級魔術をイブリースにぶつける。

 イブリース「ぐわあああああああああああ!!」

 その咆哮と共に、イブリースの身体は焼け焦げ、ついに――地に伏す。

 インチキ教祖「ハァ……ハァ……苦戦したが――」

 インチキ教祖「この戦い……俺の勝ちだ、イブリース」

 激しい戦いの果て、インチキ教祖はイブリースに勝利したと思われた。


 ・イブリースの覚悟

 イブリースは目を覚ました。

 イブリース「そうよ……ワタクシはあの日決めたのだ……二度と神を裏切らないと……戦争を始めた責任として、ワタクシは……ワタクシだけは最後まで戦う!」

 イブリースもまた、前の世界からこの新しき世界に転生した者だった。

 新しき世界で出会ったオーク族の女性――五行緑月のアミーラの母親との出会いと別れを思い返し、彼は己の信仰を貫くため、インチキ教祖との再戦を決意する。

 タウンに向かう途中、一命を取りとめたイブンと、ヴェダによって生き返ったアミーラと再会した。


 イブリース「イブン、次の指導者はあなたに託すわ。ワタクシとは違う道を……あなたなりのやり方で、委ねる者たちを導きなさい……これは、前任の指導者としての()()よ」

 イブン「イブリース……」

 イブリースはイブンに月の星団を託す。

 そしてアミーラには――

 イブリース「アミーラ、あなたにも……伝えたいことがあるわ、でも、その前に――」

 ガシッ。

 イブリースはアミーラを、そっと抱きしめた。

 アミーラ「え、イ、イブリース!? な、なにを……///」

 イブリース「年頃の女性に対して失礼かもしれないが……ワタクシのわがままを許してくれ……()よ」

 イブリース「ワタクシは最後まで教えを信じる道を選ぶ……それしか選べなかった。けれど、あなたには――ワタクシとは違う道を選んで欲しい。これが、ワタクシの第二の望みよ」

 アミーラ「第二……? じゃあ、一番は?」

 イブリース「第一の望みは、ワタクシなんかに縛られず、あなたには、あなたの人生を歩んで欲しい……これこそが最大の望みよ」

 イブリースは父として、我が子アミーラに最期の言葉を伝えた。


 そして再び、インチキ教祖と出会うイブリース。

 イブリース「インチキきょうそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 イブリース「まだよォ!」

 イブリース「まだ終わっていない!! あなたとの決着は!!!」

 こうして、インチキ教祖とイブリース、最後の戦いが始まった。


 ・インチキタウンVS月の星団 終戦

 月の星団との戦いから一夜明けた頃……

 ヴェダとジュダスはイブンと別れの挨拶をした。敵として出会った者たちも、今では穏やかに言葉を交わせる関係になっていた。

 イブン「……アミーラのこと、よろしくお願いいたします……彼女が月の星団から離れる以上、頼れるのはあなたたちしかいません」

 ジュダス「ええ……わかっているわ」

 イブン「最後に……一つだけ」

 イブン「〝ディオネロ帝国には気を付けてください〟。今回の戦い、我々の勝利を、月の星団も、そしてディオネロ帝国も、そう信じて疑っていなかったはずです。……ですが、現実は、あなたたちが我々を退けた」

 イブン「――ディオネロ帝国は今後、あなたたちインチキタウンをマークするでしょう……」

 そう言い残すと、イブンはもう何も言わずに、月の星団の本拠地へと歩き出していった。


 一方その頃、インチキ教祖はイブリースの形見の剣のもとへ向かった。そこには、イブリースの娘アミーラがいた。

 イブリースとの戦いで生き残ったインチキ教祖は、イブリースの遺言をアミーラに伝える。

 それは、この戦いをイブリースの死をもって終わらせてほしいこと、そして、アミーラをひとりにしないため、タウンで彼女を住まわせてほしいという願いだった。

 アミーラの答えは……

 アミーラ「ボクは……ボクなりに、自分の人生を歩いていく。でも、母も父も決して忘れない。それもまた、ボクなりの選びたい人生だから」

 アミーラ「……それで、よかったら、このタウンにいてもいいかな? 敵として出会ったボクだけど……」

 インチキ教祖「ああ。歓迎するよ……ようこそインチキタウンへ」

 インチキタウン、月の星団。双方共に犠牲を伴った戦いは、イブリースの死をもって終わった。

 そして新たにインチキタウンの信者になったアミーラと共に、インチキ教祖とインチキタウンは今日も歩みを進めていく。


 これにて、第一章から第三章までの総集編は終了です。

 色々と削っても長くなってしまい、申し訳ございません。

 この総集編で、今までのストーリーの流れを思い出していただけた方も、またこれから第一章、第二章、第三章を読む方の参考になればと思い、まとめて書きました。

 総集編といっても、一部わかりやすくするためにセリフを改変している箇所がありますので、果たして「総集編」と呼べるかは少し疑問ですが……。


 さて、そろそろ第四章の準備もしなければなりません。

 異世界インチキ教祖を楽しんでくださっている読者の皆さん、第四章でお会いしましょう!!


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