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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第3章月の星団編

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【総集編】第一章から第三章までのストーリーまとめ④ ※ネタバレあり

無理やり一話に詰め込んだので、ボリューミーになってます!

 第2章ザスジータウン編・後編

 インチキ教祖がザスジーと接触し、宿泊施設へと戻った頃――その頃、ザスジーは住民たちを集め、ある裁判を開こうとしていた。

 それは、タウンから抜け出したヴェダの罪を糾弾するためのものだった。

 ザスジー「なんで呼ばれたかわかっているな。ヴェダよ。この裁判の目的は、お前がタウンから抜け出した件についてどのような措置をとるか決めるためだ」

 ザスジーが低く、しかし威圧的に告げる。

 ザスジー「それで? なぜタウンから抜け出したことを黙っていたのだ?」

 ヴェダ「抜け出したつもりは……ありません。外で調達部を待っていたら……突然、わ、()()()()連れ去られたのです。そうあのシーカーズ共に。……マスター! やつらがタウンの近くにいたのです!!」


 ヴェダはザスジーにザ・シーカーズに攫われた経緯を説明した。

 タウンと敵対する狩人たち(ザ・シーカーズ)が、タウンのすぐ近くにまで来ていたのだ。

 本来なら、それこそが重大な問題のはずだった。

 だが、当のザスジーは、ザ・シーカーズの存在よりも、ヴェダが外に出たことばかりをしつこく執拗に責め立てた。


 ザスジー「……でっ、それがどうした? 何も考えずにタウンから出たお前は本当に悪くないのか?」

 ザスジー「今回のお前の罪を整理しよう」

 ザスジーはそう宣言すると、何かの魔術を発動するように、左腕を前に伸ばす。そしててのひらを天に向けて大きく広げた。

 ザスジー「ザスジー・バイブル」

 すると魔法陣から鮮血のような赤い色をした分厚い本が一冊現れた。

 ザスジー「お前が犯した罪はザスジータウンからの脱走。これはザスジー・バイブル128の教えに反する。これに対する罰は、我輩が許すまで、ひたすら肉体に痛みを与える刑となるが……」

 ザスジー「正直言って、罰を与えるのも馬鹿馬鹿しくなってきた。改心する見込みのない奴に罰など与えても無意味だからな」

 まるで、ヴェダの罪を見逃すかのような素振りを見せるザスジー。

 だが――

 ヴェダ「マスター! ば……罰を……罰をお願いいたします。どんな罰も受けますから」

 ヴェダは自ら、罰を受けると懇願した。

 ――いや、正確には、それはザスジーによる思考誘導マインドコントロールの結果だった。

 彼女は気づいていた。

 この裁判は、自分の口から「罰を受けたい」と言わなければ終わらないということに。

 ザスジー「()()の皆よ! ヴェダは自ら罰を受けたいと言っているが、皆の判断も聞きたい!! 十一使徒の諸君はどうだ? それ以外の信徒たちもどうだ?」


 傍聴していた住民――いや、信徒たちは、一斉に叫んだ。

 信徒その一「罰だ! ヴェダに制裁を!」

 信徒その二「ザスジー・バイブルの教えに反したものには罰を!!」

 信徒その三「ヴェダを許すな!!!」

 誰一人として、彼女に慈悲の言葉をかける者はいなかった。こうして、ヴェダは〝タウン脱走〟の罪で、正式に罰を受けることとなった。


【用語解説】

 ●ザスジー・バイブル

 ザスジーの〝武器〟であり、タウンの住民(信徒)たちが従うべき〝ルール〟を記した分厚い本。


 一、タウンの住民(信徒)たちが従うべき〝ルール〟について

 タウンの住民(信徒)は、このバイブルに記された教えに従う義務がある。もしルールに反した場合、裁判が開かれ、被告人が自ら「罰を受けたい」と懇願するまで裁判は終わらないという異常な仕組みが取られている(今回の被告人はヴェダ)。


 二、武器としての使用について

 ザスジーは、この本を武器としても使う。

 使いたい魔術が載っているページを辞書のように開き、それによって魔術を発動するという形式。

 魔術のページを開くまでは発動できないというデメリットがあるが、一方で、通常必要とされる〝構え〟を省略できるうえに、魔術の威力もわずかに上昇するというメリットがある。


 ●信徒

 ザスジーがタウンの住民を呼ぶ呼称。

 ザスジーは自らを〝マスター〟と呼ばせ、住民たちもそれを受け入れて崇拝しており、タウン全体が巨大なカルト教団と化しているのが現状である。


 ●十一使徒

 ザスジーによって選ばれた、十一名の幹部クラスの信徒を指す。

 タウンに住む信徒であれば種族を問わず選ばれる可能性があるとされているが、実は、設立から四年間で人間以外の種族が選ばれたことは一度もない。

 なお、「十一使徒」という呼称には正式名称が存在する。

 それは――「十一人の使える信徒」である。

 この正式名称を知るのは、ザスジーただひとり。当の十一使徒たちでさえ、自分たちの〝真の呼び名〟を知らされていない。


 ・罰を受けるヴェダ

 ヴェダ「うぎゃあああああああああああああああああああああああああ」

 刑罰所――ザスジー・バイブルの教えに背いた者を処罰する場所に、ヴェダと罰を与える者たちが集められていた。

 罰を受ける囚人ヴェダ。十一使徒にして監視役のタータイ・ハルピュイア。そして、罰を与えるのは、かつてのヴェダの仲間だった。

 マミー「アンタのせいで! 私たちエルフ族の生活が! 苦しくなるでしょうがッッ!」

 マミーは鎖を鞭のようにヴェダの身体に叩きつけながら、激しく責め立てる。

 マミーがヴェダに怒りを向ける理由――それは、ヴェダが受けている罰とは別に、種族連帯責任のペナルティが課されているからだ。

 つまり、ヴェダが罪を犯したことで、タウンに住むエルフ族全員の生活に、食事・睡眠・自由時間の制限が科されることになる。

 その期限はザスジーの気分次第で決まり、明日までかもしれないし、永遠に続くかもしれない。

 だが、その不満の矛先はザスジーには向かわず、罪を犯した信徒に集中する。

 その結果、信徒たちはかつての仲間や恋人、友人との関係に亀裂が入り、ザスジーとザスジー・バイブルの教えを盲目的に守るようになっていく――まるでカルトに洗脳された信者のように。


 ザスジー(ククク……罰によってヴェダの心は折れた。インチキ教祖とジュダスは、ザ・シーカーズが対処している頃だろう)

 ザスジー(ヴェダを見せしめにすることで、信徒たちはタウンからの脱出を考えなくなる。仮に逃げても、ザ・シーカーズが捕らえるだろう)

 ザスジー(タウンで生きるには、我輩の言う通りに生きるしかないのだ。我輩の支配とザ・シーカーズの恐怖――これらによって、我輩の楽園は守られているのだ)

 ザスジーの心に不安はなかった。そして今夜もいつも通り、気持ちよく過ごした。

 しかし、翌朝――

 ザスジー「ば、馬鹿な……! トーマス――ザ・シーカーズのリーダーの魔力が……我輩の中から、消えた……だと……?」

 それは、ザスジーの支配に初めて生じた綻びの瞬間でもあった。


 ・インチキ教祖VSザスジー 勃発!!

 ザスジーは、ザ・シーカーズのリーダーであるトーマス・ケンタロウスが本当に死んだのか確かめるため、魔術製の電話をかけた。しかし、電話に出た相手は――

 インチキ教祖「ああ俺だ。インチキ教祖だ」

 インチキ教祖「俺たちはトーマスを倒し、ザ・シーカーズも壊滅させた。次はお前の番だ、ザスジー」

 ザスジー「お、お前ぇぇぇぇ」

 ザスジー「フン! 本当にタウンに乗り込む気でいるのか!? 住民六〇〇を超える全勢力を相手に勝つつもりか!? たった一人の人間とたった一匹のエルフ如きで!!」

 インチキ教祖「ああもちろんだ。ザスジー。今からタウンに向かってやるから……それまで首を洗って待ってろ」

 その言葉を最後に、電話は途切れた。

 こうして、インチキ教祖とザスジーの戦いは、本格的に幕を開けたのだった。


 ・直接対決の先に

 インチキ教祖とジュダスは、ザスジーを追い詰めた。しかし、直接対決では彼らに勝てないと悟ったザスジーは――

 ザスジー「いいだろう。我輩は死を受け入れようではないか」

 ザスジー「だが死ぬのは我輩だけじゃない。お前らも信徒たちも全員道連れだ」

 ザスジーの奇策により、あと一歩のところでインチキ教祖たちはザスジーを取り逃がした。

 最悪の状況の中、さらに追い打ちをかけるように――

 ザスジー「我輩と共に天国へと参ろうではないか。ザスジー・バイブル777の教え【起爆曲ダンテ】」

 タウンに住む全信徒とザスジーの身に宿る爆弾が起動される。タウン滅亡までのカウントダウンが、始まったのだ。


 ・インチキ教祖、ジュダス、ヴェダの三位一体

 ヴェダは、信徒につけられた爆弾を解除する方法を見つけた。回復系魔術で、少しずつ信徒たちの爆弾を無効化していくヴェダ。

 だが、残された時間内に、六〇〇を超える住民全員を救うのはほとんど不可能だった。

 そんなとき――

 インチキ教祖「なあ、ヴェダ。お前に聞きたい……本当にタウンの全住民を救いたいのか?」

 ヴェダ「……救いたいッス」

 インチキ教祖「それは命を懸けてもなのか? 寿命を削ってもなのか?」

 ヴェダ「命にかけてもッス。そのためならここで魔力を使い果たして死ぬとしてもみんなを助けたい。これ以上信徒の命をザスジーの思い通りにさせたくない……」

 ヴェダ「そのためなら、寿命くらい削るのなんてへっちゃらッス」

 ヴェダの覚悟を受け取ったインチキ教祖は、彼女にある提案を持ちかけた。

 インチキ教祖「ヴェダ……お前の魔力を俺に渡してくれないか?」

 コネクトによる魔力譲渡によって、ヒーラーであるヴェダの魔力の一部がインチキ教祖とジュダスに渡る。

 さらに、インチキ教祖によって、オールラウンドのジュダスの魔力の一部がヴェダへと流れ込む。

 インチキ教祖「これが俺たちの三位一体トリプルコネクトだ」

 インチキ教祖、ジュダス、ヴェダ――三人は声を揃えて唱える。

 インチキ教祖、ジュダス、ヴェダ「「「サン・サーラからの治療泉ルルド」」」

 それぞれのスキルタイプの魔力と魔術を融合させた三位一体の力で、信徒に仕掛けられたザスジーの爆弾を次々と無効化していった。


 ・ザスジーの死

 タウンの最北部にある小さな教会で、ザスジーはひっそりと身を潜めていた。彼は自身の死を受け入れ、起爆の時を待つだけの身となっていた。

 ザスジー(爆発で死ぬのは一瞬だ。我輩は苦しまずに逝ける……フフ。インチキ教祖よ、この勝負引き分けかな? いや、お前は恐怖と後悔をしながら死んでいくのに対し、我輩は晴れやかな気持ちで死ねるのだ。精神の面で考えれば我輩の勝利ではないか)

 だが、しばらくすると――

 ザスジー「が……はっ……」

 突然、ザスジーはバタリと倒れた。

 ザスジー「こ、これは毒か!? だ、だが……いつ毒を盛られた!? まさか……ジュダスの仕業か?」

 その推測は正しかった。直接対決の際に、ジュダスが毒を仕込んでいたのだ。

 しかし、ザスジーを襲うのは毒だけではなかった。

 ザスジー(うん? な……なん、だか、時間が急に遅――くなった感じがするぅぅぅぅぅぞ?)

 死の恐怖を和らげるために服用した漢方薬が、毒と相乗効果を起こし、ザスジーに一瞬が永遠のように感じられる異常な時間感覚をもたらした。

 そして、ついにザスジーが自ら仕掛けた爆弾の起爆の時が訪れる。

 だが、思惑とは裏腹に、起爆までの苦痛の時間は永遠のように長く感じられた。

 ザスジー(い、嫌だ。我輩は楽に死にたいのだ。どうしてこんな苦しい思いをしないといけないのだ)

 ザスジー(一体、いつになればこの苦しみから解放されるのだぁあああああああああ)

 インチキ教祖、ジュダス、ヴェダの三位一体の救いを受けられなかったザスジーは、地獄のような時間を経てついに命を落とした。


 ・インチキタウン設立へ

 ザスジーを打倒したインチキ教祖たち。しかし、これで全てが終わったわけではなかった。

 ――かつての〝真実教〟のように、教祖が死んでも信者たちがその存在を神格化し、場合によっては〝仇〟としてインチキ教祖に牙を剥く可能性がある。

 タウンとインチキ教祖の戦いは、まだ続いてしまうかもしれないのだ。

 それを防ぐために、インチキ教祖、ジュダス、ヴェダは策を講じた。

 ジュダスがザスジーに変身し、インチキ教祖を正式な後継者としてタウンの長に任命する。

 ザスジーに変身したジュダス「後は任せたぞインチキ教祖」

 こうして〝ザスジーは生きている〟ことにしつつ、表舞台から去らせることで、タウンの混乱を最小限に抑えたのだった。

 そして――

 インチキ教祖「今日から俺がこのタウンの長をやるわけだが……まず初めに言っておく。今までのザスジー・バイブルの教えは全てなかったことにする。今までのルールは忘れろ」

 インチキ教祖「それからもうここは、ザスジータウンではない……このタウンはザスジータウンからインシュレイティド・チャリティ教のタウンへと生まれ変わる。()()シュレイティド・()ャリティ()のタウン……略して……」

 インチキ教祖「このタウンの名は……インチキタウンだ!!!」

 かくして――

 ザスジータウンは、インチキ教祖の手によって〝インチキタウン〟と改名された。

 かつて支配と恐怖の下で歪んでいたこの場所に、今度こそ〝本当の楽園(ハッピーライフ)〟が築かれようとしていた。

 インチキ教祖と住民たち、いや――新たな信者たちとともに。


 次回、第3章月の星団編総集編!

 ……どうせ、次回も 一話で纏められないだろうな


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