【総集編】第一章から第三章までのストーリーまとめ③ ※ネタバレあり
第2章ザスジータウン編・前編
インチキ教祖「ハァ~。信者全然増えねなぁ~」
ジュダス「インくん、やっぱり、宗教名を変える案も考えたらどうでしょうか? あと、略すものもだめですよ。『俺のことはインチキ教祖と呼んでくれ』なんて、インチキと言われたら悪い印象しか持たれないし……」
インチキ教祖が新しき世界に来てから三ヶ月後。インチキ教祖と最初の信者ジュダス・トルカは、宗教「インチキ」の布教に苦戦していた。
そんな布教の旅の途中――
「おい。そこのエルフちゃん。よろしければ、俺たちと一緒に遊ばない?」
ゲームに出てくるような雑魚敵キャラの、ザ・ならず者集団が声をかけてきた。
インチキ教祖「ハイハイ。雷音」
ズギャギャギャ!
ザ・ならず者集団「「「「「ぎゃあああ!」」」」」
インチキ教祖の雷電系魔術で、あっという間に倒した。(正確にはジュダスが覚えていた魔術だが)
すると――
褐色系エルフ族「助けてくれてありがとうッス! アタシの名はヴェダ・タンハーと申します」
インチキ教祖たちは、ザ・ならず者集団に捕まっていたエルフ族ヴェダと出会った。
そこで自己紹介を交わしていると……
生き残りのザ・ならず者集団「よくもやりやがったな! くらえ、毒矢だ!」
ザクッ
インチキ教祖「ぐっ……」
生き残りのザ・ならず者集団「ハァハァ……お前が悪いんだぜ? 俺たちは人間なら殺すつもりは無かったってのによ……これで終わりだ」
ジュダス「終わりなのはお前だ」
グサッ
最後に生き残ったザ・ならず者集団のメンバーはジュダスによって倒された。
しかし、インチキ教祖は肉体の傷は回復系魔術で癒したものの、毒の治療には苦戦していた。
そんなとき――
ヴェダ「ならアタシが治しましょうか? 助けていただいたお礼としてもアタシに治させてくださいッス」
ヴェダ「アタシのスキルタイプは【ヒーラー】ッス」
【用語解説】
・ヒーラー
スキルタイプの一つ。回復系魔術が得意で他の魔術は苦手という特徴がある。しかし、その回復系魔術クオリティの高さは、他のスキルタイプのそれと比べると追随を許さない。
また、他のスキルタイプに比べて生まれつき魔力の総量が多いという特徴も持つ。
ヴェダ「回復系魔術の一つ……治療泉!!」
ヴェダがそう唱えると、水を思わせるアクアブルーのオーラが彼女の手から放たれた。そしてインチキ教祖の身体全体を包み込み、やがて毒は癒えていった。
インチキ教祖「ヴェダありがとう! 助かった」
ヴェダ「いやぁいやぁ~助けてくれたお礼として当然の対応ッス……ハッ!」
ヴェダは何かを思い出したかのように、急に表情を変えた。
ヴェダ「し、しまったッス。……こんなところにいては駄目なんだ……早く! 早く! 〝マスター〟のところに戻らないと……〝タウン〟はどこッス!?」
そう言いながら、ヴェダはガクガクと震えていた。その表情は怯えに歪んでいた。
ヴェダはタウンに戻りたいと言い、明らかにマスターという人物を怖がっている様子だった。インチキ教祖たちはヴェダの異様な反応に困惑しつつも、さっきのようなザ・ならず者集団に攫われないように、タウンまで付き添うことにした。
そうこうしてインチキ教祖御一行は、ついにタウンに辿り着いた――
ヴェダ「……あそこの集落ッス」
そこは面積15km²ほどの巨大なタウン。その名は〝ザスジータウン〟。多種多様な種族が共存する夢の楽園とされている。
ヴェダ「ここまで送って頂きありがとうございました。あとは皆にバレないように戻る必要があるため、本当に本当にお別れッス」
ヴェダと別れ、インチキ教祖とジュダスが二人きりになった頃、インチキ教祖はジュダスに胸の内を明かした。
インチキ教祖「結局何も言わなかったよな。ヴェダ。怯えていた理由もそうだし、ザスジータウンとやらがどんなところか。余所者は歓迎されないから絶対に入らない方がいいってさ。そればかり言っていたな」
ジュダス「「どちらにしてもよ。ヴェダさんを思うなら、今は落ち着いてザスジータウンやヴェダさんを調査した方が良いと思うわ」
インチキ教祖は悩む。そして思い出す、ヴェダのあの言葉。
ヴェダ「――インチキ!? 変な名前ッスね。まぁ、インチキ教祖さんとジュダスさんがいる宗教なら入信しても良いッスよ。けど、出家とかできないッス。だって、アタシは……タウンが自分の居場所だから……―」
悩んだ彼が下す決断は――
インチキ教祖「……ジュダスよ。改めて言うまでもないが、俺が自分の宗教インチキを立ち上げたのは、ハッピーライフを送るためだ」
インチキ教祖「だが、教祖だけが幸せになれればいいとは考えていない。教祖も幸せにそして教祖に着いてきてくれる信者も幸せにする。それが俺にとって教祖のあり方だ」
インチキ教祖「「ヴェダは信者になってもいいと言ったのだ。軽はずみで言ったとしても、俺にとってヴェダはもう信者だ」
インチキ教祖「……ザスジータウンに入るぞ。タウンがどんな場所か、ヴェダがどこにいるか探すんだ!」
ジュダス「……相変わらず強引な人。まあ、付き合いますよ」
インチキ教祖とジュダスは、ザスジータウンへと足を踏み入れることにした。
・ザスジータウンの中
タウンの住民「ようこそ……ザスジータウンへ……私は案内者のマミー・テレッサです」
番人である褐色系エルフ族のプーラン・デックから通行を許可されたインチキ教祖とジュダスは、同じく褐色系エルフ族の案内者マミー・テレッサに、訪問者用の宿泊施設まで案内されることになった。
しかし、そのタウンはどこか不気味だった。
余所者であるインチキ教祖たちを歓迎する雰囲気はなく、かといって排他的でもない。しかも、そこの住民たちは〝漢方薬〟と呼ばれる不思議な粉を日常的に摂取していた。
マミー「と~ってもいい薬♡ えへっ♡」
次にインチキ教祖たちは、ドラゴン族のルーベンスにタクシーのように乗り込み、いよいよマスターのもとへ直接案内されるのだった。
・インチキ教祖とタウンの長にしてマスターと呼ばれる男との出会い
インチキ教祖「「……お前がマスターか?」
ザスジー「いかにも! 我輩がマスターと呼ばれている者だ! 申し遅れたな!! 我輩の名はノオウ・ザスジーだ。このザスジータウンの長をやっている」
インチキ教祖と同じ人間族で、身長は190cmありそうな体格。司祭平服のような真っ黒なコートと黒いサングラス、そして黒髪の長髪の男性がそこにいた。
大げさすぎるほどの歓迎ムードに、インチキ教祖とジュダスはザスジーへの疑念をますます深めていった。
ザスジー「握手しよう! ミスター・インチキ教祖とミス・ジュダストルカ」
握手を求めるザスジーに、インチキ教祖とジュダスは魔術を仕掛けられる可能性を考え、握手を拒んだ。
しかし、握手を断られてもザスジーは怒る気配もなく、二人と会話を続けた。
ザスジー「我輩には夢がある。それは全ての種族が手を取り合い、共存していく楽園をここに築くことだ」
ザスジー「だが、その夢を妨害する奴らがいる。人間至上主義者にして、狩人集団〝狩人たち〟だ」
インチキ教祖とジュダスは話を聞くうちに、ヴェダを攫った連中が狩人たちであることに気づいた。
ザスジーがこのタウンの住民をカルト教祖のように支配していることに薄々感づいていたインチキ教祖とジュダス。しかし、証拠がないこととヴェダの居場所の手がかりもないため、一旦宿泊施設へ戻ることにした。
・宿泊施設にて
深夜、インチキ教祖とジュダスは男女の人間族に襲われた。
しかし、二人は無事に返り討ちにした。その男女の服装は狩人たちのものだった。
本来、タウンと敵対関係にあるはずの狩人たちがタウンに侵入したら大騒ぎになるはずだ。
しかも、インチキ教祖とジュダスを狙っていたことから、誰かの指示があった可能性が高い。
インチキ教祖「ザスジーが手引きしてこいつらを中に入れた。そして、俺たちを襲わせた。俺たちの部屋の場所だってザスジーから聞いていたなら辻褄が合う」
インチキ教祖はザ・シーカーズとザスジーが繋がっていることに気づく。その証拠を手に入れ、住民たちに真実を伝えれば、ザスジーの支配を終わらせられるかもしれないと考えた。
ジュダス「なら、こいつらのアジトで探りましょう。私が持つ魔術ならそれを探せることもできる」
ジュダスの提案を信じ、インチキ教祖とジュダスはザスジータウンを一度出ることにした。その行き先はもちろん、ザ・シーカーズのアジトだ。
インチキ教祖(俺たちはザ・シーカーズのアジトに向けてタウンを一度出る……ヴェダすまない。後で必ず戻るからな。それまで無事で待っていてくれ)
インチキ教祖は心の中でヴェダに約束し、タウンを後にした。
次回、創世第2章ザスジータウン編・後編の総集編!!
やっぱり一話で纏められなかったよ……




