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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第3章月の星団編

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37.「インファイターの優位性」

 インチキ教祖視点。


 インチキ教祖とイブリースの最終決戦!!

限界突破バルザフ


 ボウッ!


 イブリースが魔術名を唱えた瞬間、彼の身体から水蒸気爆発のような現象が発生した。発せられた蒸気は、塔のように天へと高く立ち昇っていく。

 なんだ――!? あれは一体何の魔術だ? 肉体強化系? 氷水系? それとも炎火系に属する魔術なのか――?


「死力魔術!?」


「そんな……イブリースまで使えるッスか!?」


 隣のジュダスとヴェダが、驚愕と共にあの魔術を認識しているような反応を見せる。

 死力魔術? なんだそれは?

 だが、その疑問を二人に投げかける前に、蒸気はすぐに収まり、イブリースの姿があらわになった。

 遠目で細部までは見えないものの――なんだか、全身が以前よりも青みを帯びて見える……。


「蒸気の収まりが早い……それに、イブリースの身体の崩壊も見られない……まさか、アミーラよりも使いこなしているというの?」


 ジュダスの驚きの声が耳に届く。魔術に関しては、いつもジュダスに聞くのが一番だが、今はそんな余裕はない。

 それよりも、イブリースを倒すことが先決だ。あの魔術、ヤバイ気がする。


「天鼓雷音」


 先ほどイブリースを倒した魔術を再び放つ。

 雷の獅子が、稲妻の如き速さでイブリースへと突進する――が。

 イブリースは避けようともしない。そのまま、雷の獅子に正面から突っ込んだ!

 そして――内側から食い破るように、獅子は霧散むさんした。


「なに!?」


 バリバリッ!


 遅れた雷の音が鳴り響く。

 そして、イブリースは一直線に、最短距離で俺の元へ突っ込んでくる!

 なんだ、あの速さは!!


「くっ、千風」


 千の風の斬撃を放つ――が、イブリースはそれすら避けず、そのまま斬撃に突っ込んでくる。

 風の刃が触れた瞬間、まるで折れたかのように、次々と斬撃が砕け散っていく――!

 これすらも効かないのか!? 俺の魔術が通用しない!? 


「教祖! あの魔術で強化されたイブリースは、魔術が効かなくなるッス!! それと――」


 強化……! 肉体強化系魔術か!? 魔術が効かないだと!? そんな馬鹿な――!

 脳裏を駆ける断片的なキーワード。


「地空界」


 ならば、物理的に近づけさせなければいい。

 地形操作で、イブリースの進路に巨大な落とし穴――崖のような深淵を築き上げる!

 だが、イブリースは難なくジャンプし、崖を越えてこちらへ向かってくる!

 ――やはり! そう来るか!? 飛び越えるのは、予想できていたぜ!!

 宙を舞うイブリースが、こちらに飛びかかってくる。距離はわずか数メートル――!


「サン・サーラ! 涅槃寂静!!」


 サン・サーラで魔力を増幅しつつ、涅槃寂静を放つ。

 魔術が効かない……そんなことがあるもんか! 

 もし、あれが、肉体強化系魔術なら、おそらくは、防御力か耐久力を大幅にパワーアップしているだけ。ならば、それを上回る魔術パワーをぶつければいい!

 魔力で構成された巨大な手が、イブリースを掴み――その勢いをわずかに減速させる!

 だが、イブリースはその拘束を物ともせず、左手のぬきをこちらに突き立てる!


「止まれェェェェ――!!」


「貫けェェェェ――!!」


 止めようとする俺と、突破しようとするイブリース。

 互いの叫びが、空中でぶつかり合う!


 グサッ!


 イブリースの貫手は、涅槃寂静を放つ俺の右手を少し貫いた。

 だが少しだけだ。そこでイブリースの動きは、空中で止まった。


「!?」


ゴーレム族(ゴーレム)の腕貫(・アーム)


 ゴーレム族の魔術で、左腕を強化。そして、サン・サーラによって今なお膨れ上がる大量の魔力を、その左腕に収束させ――


 ボウ! 


 そのまま、イブリースのみぞおちを貫く!!

 左腕は背中まで達し、完全に突き抜けた――!


「……ぐはっ!?」


 ポタ……ポタ……


 血が、イブリースの腹から俺の左腕を伝い、滴り落ちた。

 その目から生気が消え、まぶたが閉じられようとしている――

 ――終わった。俺は一瞬ホッとした。

 そして、そのわずかな安堵が、油断を生んだ。

 この時、

 この時、ジュダスとの、とある会話を思い出していた。

 あれは、タウンへ向かう前、二人きりで旅をしていた頃のこと――


 ◇


「インくん、ちょっと聞いてくれる? コネクトの魔力譲渡についてなんだけど」


「ん? どしたん話聞こうか?」


 ジュダスは俺の反応を確認してから、話を続けた。


「他三つのスキルタイプから魔力譲渡を受ければ、全スキルタイプの力をも兼ね備えるとされるけど……」


「けど?」


「それは正確ではない気がする……」


 思ってもみなかった言葉に、俺は戸惑った。


「なんだよ、それはどういう意味だ?」


「上位互換だっけ? インくんの表現に合わせると、()()()()()()()()だけは、コネクトは上位互換になりえない可能性があるのよ」


 ジュダスは引き続き話を続けた。


「オールラウンドから魔力を貰えば、その者が覚えている魔術をまるごと引き継げる」


「ヒーラーからなら、回復系魔術をヒーラー並みに扱えるようになる。さらに魔力譲渡を繰り返せば、魔力量はヒーラーすら超えることもある」


「つまり、コネクトは、オールラウンドとヒーラーの上位互換になりえるということだな?」


「ええ、でも――インファイターだけは違うのよ」


「!?」


 俺の中で何かが引っかかった。


「インくん。おさらいだけど、スキルタイプ・インファイターの特徴は?」


「生まれつき強靭な肉体を持つかつ肉体強化系魔術を得意とするスキルタイプだろ?」


「正解。インファイターから魔力を貰えば、肉体強化系魔術をインファイター並みに扱えるようになるでしょう……でも、〝生まれつき強靭な肉体〟。これに関しては引き継げないと思う……コネクトは魔力の特質(スキルタイプ)を引き継げても、体質を引き継げるわけではないから」


「これが、コネクトがインファイターの上位互換になりえないと思う理由よ」


「なるほど……」


 俺はジュダスの言い分に妙に納得した。


「肉体の強さは、本家を超えられないということか……これがインファイターの優位性……」


「ええ。強いインファイターは不死身のような生命力、鋼鉄の身体を持つ上で、肉体強化系魔術を使う……戦闘向きのスキルタイプと呼ばれる所以ゆえんね」


 この当時、俺はまだインファイターと戦ったことがなかった。

 だから、ジュダスの言葉も何となくでしか理解していなかった。


「まあ、そもそもコネクトが、他三つのスキルタイプの上位互換かと言われたら、甚だ疑問だわ、だって魔力譲渡を受けても尚、魔導書とかで、魔術を自力で覚えることはできないし。魔術の開発もできないから。そこは、コネクトの特質というか、デメリットは解消されないところなのよね~~」


「~~そういう細かいところを見れば、果たしてコネクトが本当に全てのスキルタイプの上位互換になるかと言えば~~」


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


 そこから先は、ジュダスがいつものように細かい理屈を延々と喋りだし――俺は半分聞き流していた。

 ……たまに、ジュダスってこういうとこあるんだよなぁ~~


 ◇


 過去のジュダスとの会話――

 生まれつき強靭な肉体を持つかつ肉体強化系魔術を得意とするスキルタイプ――

 普通ならこれで死んでいるような攻撃でも――インファイターの魔力を持つコネクトでも死んでいるような攻撃だったとしても――

 インファイターなら死なない可能性がある?

 その可能性が一瞬にして頭をよぎった。

 イブリースのまぶたが閉じられる――

 だが、


 カッ!


 閉じたはずのまぶたが、鋭く開かれた。その目には、消えたはずの生気が蘇っている。


 ギロッ!


 イブリースの視線が、俺を貫く。

 そして、左の貫手を俺の右手から抜き――


 グサッ!


「~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」


 俺は痛みに悲鳴を上げることができなかった。

 なぜなら、今度の貫手は――

 俺の喉を貫いていたのだから。


「くっ! 外したか?」


 残念そうにイブリースが呟く。

 これでも……これでも運が良かった。

 今の貫手は額を狙っていた。涅槃寂静で軌道を逸らさなければ、確実に死んでいたはずだ。


 ポタ……ポタ……


 血が、俺の喉からイブリースの左手を伝い、滴り落ちた。


「次だ……次で仕留める」


 イブリースはそう言い放ち、右手を貫手の形に構えた。


「(まずい!)」


 俺は左腕を抜こうとするが――


「(抜けない!?)」


 イブリースが腹筋に力を入れ、俺の左腕をしっかりと拘束していた。


「(本当にヤバイ!!)」


 イブリースの貫手が正拳突きのように、一度胸の位置まで引かれる。

 涅槃寂静のおかげで動きはスローモーションのように遅くなっているが、あの一撃が放たれたら、今度こそ終わりだ。

 だからこそ、右手の涅槃寂静は解けない。この魔術で、速すぎるイブリースの動きを抑えているのだから。

 だが、左腕は今もイブリースの腹筋に縛られている――


「て゛ん゛ぎ゛ゅ゛う゛う゛う゛ぁ゛い゛お゛ん゛」


 俺は左手からその場に留まるように、天鼓雷音を発動する。


 ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ


 イブリースの身体と俺の身体ごと、雷電系魔術で感電させる。

 俺は自動回復の力で、感電、回復のループで命をつないでいた。

 だが、イブリースはニヤリとしながら、回復系魔術を使わずに平然と耐えていた。


「あらぁ。喉を潰したおかげで、魔術名を唱えることができないようね!」


 そう。イブリースに喉を潰されたせいで、魔術名がきちんと発声できない。

 魔術とは、一つ、魔術名を唱えることと。二つ、正しい構えもしくは血の代償理論に従うこと。この二つを同時に満たすことで、初めて100パーセントの威力を発揮できる。ゆえに、どちらか一つを封じられると、発揮できる魔術の威力は半分ほどに落ちてしまうのだ。


「(舐めるな! サン・サーラは今も発動中だ!!)」


 唱えられないなら、魔力の消費を増やして威力を補う。


「ぐぅううううううううう!?」


 流石のイブリースもこれには効く。だが、それは俺も同じで、ダメージは大きい。

 それでも、イブリースの攻撃を受けたら俺は終わる。だからこそ、自滅に近い選択を取らざるを得ないのだ。

 だが、涅槃寂静と天鼓雷音の妨害があっても、右腕の動きは止まらない。


「これで、終わりよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 イブリースが叫び、右の貫手が今、俺に迫る――!!



 補足)限界突破バルザフについて

 ・アミーラの場合

 暴走する力の負荷に身体が耐えきれず、魔術の持続時間を終える前に力尽きてしまう


 ・イブリースの場合

 暴走する力の負荷に身体が耐えきれる上、コントロールし、魔術の持続時間まで身体を維持することができる


【作者からのお願い】

 お布施のように、このあとがきの下にある『☆☆☆☆☆のマーク』を、ポチッと押していただけないでしょうか?


 あなたに宗教インチキの御加護があらんことを!


 第三章も残り二話!!

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