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異世界に転生した俺はインチキ教祖としてハッピーライフを目指す  作者: 朝月夜
第3章月の星団編

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26.「決まりだな」

 武器転送魔術。

 おれのハウンスカル・メイス、ジュダスちゃんの龍門飛鳥、そして、サラーフのシャムシール――

 これらの武器はすべて、武器転送魔術によって手元に呼び出しているもンだ。

 魔術を発動する際は、手を大きく広げ、武器の名前を唱える。すると掌から魔法陣が展開され、武器を取り出すことができる。

 この魔術は、時空系魔術、別名タイムスペース魔術に分類される。

 術者の魔力によって形成された亜空間が収納スペースとなり、そこにしまっておける仕組みだ。

 もちろん、何でも無制限にしまえるわけじゃねぇ。武器の出し入れには魔力を消費するし、格納できる物の重量、大きさ、数量にも明確な制限がある。だが、それを補って余りある利点が存在するンだ。

 たとえば、持ち運びが困難な大型武器であっても、この魔術を使えば楽に携帯可能だ。さらに、戦闘前に武器を奪われたり破壊されたりする心配もなくなる。武器を「必要な時に、確実に」手元に呼び出せるという安心感は、戦いにおいて大きなアドバンテージとなるンだ。


 ちなみにだが、おれみたいなインファイターは、肉体強化系魔術が得意でそれ以外の魔術が苦手という特性上、戦い方が、一辺倒ワンパターンになりやすい。

 だからこそ、この武器転送魔術を覚えることで、武器によっては同じインファイターでも差別化を図っているンだ。そういう事情から、オールラウンドのみならず、インファイターもヒーラーもこの魔術を覚えている者は多い。


「どうした巡礼? 攻めないのか?」


「……」


 まるで隙がねぇ。が、向こうからすれば、おれもも同じく隙を見せていない。膠着状態ってやつだな。仕方ねえ――


「こっちから仕掛けるぜ! 雷の子(ボアネルゲ)


 オールラウンドの魔力を持つことによって、雷電系魔術の魔力消費もコスパよく使えるようになった。おれは相棒ぶきに纏った雷の力をより強めて、奴に全力で踏み込む!

 さあ、どうでる。


雷電装束アースィファ


 奴は突如、雷のトーブを着用した。こいつもこの魔術を使えるのか!?


 ガキンッ!


 なっ! 奴は、片手の鉤爪を立てて、おれのメイスを軽々と受け止めやがった。

 そして、もう片方の鉤爪で高速の突きをする。おれは奴が突きをする前から咄嗟に後退したからそれを躱した。だが、奴の攻撃は止まらない。今度は雷速で、おれの背後に回った。

 その背後からの攻撃は、おれの相棒ぶきで防いだ。

 鉤爪ぶき相棒ぶきの激突の衝撃でお互いズザザザザと地面を削りながら後退する。


「全身を雷で纏う術。他の委ねる者たちも使っていたぜ。それで圧倒的なスピードを出せるからたいしたもンだ。雷電系と肉体強化系の複合魔術か!?」


「……雷電装束アースィファは経験済みか。ならば、単純なスピードでは押し切れないか。これならどうだ。嵐風装束ハブーブ


 今度は、風のトーブを纏った。まずい、嵐風系魔術を使うということは――

 ザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザン

 奴は、十本の爪を操り、乱舞するかのごとく、斬撃を次々と飛ばしてくる。

 躱しきれない程の物量。おれは雷の子(ボアネルゲ)でなんとか相殺する。


「(嵐風装束ハブーブ、おそらく嵐風系と肉体強化系の複合魔術。嵐のような疾風しっぷう怒濤どとうな斬撃は、肉体強化系も組み合わせることで、実現している。こういうシンプルに強力な遠距離攻撃で攻められるのが、一番きついンだよな)」


「(とはいっても、このままだとおれが疲れて、玉ねぎのみじん切りのように、木っ端微塵となる……仕方ねぇ。ちょいと、魔力を使うが、あの魔術の出番だ!)」


消えぬ炎(グリークファイア)


 おれは、相棒ぶきに炎火系魔術を纏う。そして、おれはその場で、素振りするだけで、その炎は火の粉のようにまき散らして、辺りを火の海と化す。

 そして、その火力は、奴の嵐の斬撃を防ぐ防御にもなった。


「オラァ!」


 おれはそのまま、奴に向かってフルスイングする。大規模な爆炎の津波が奴に向かう。そして、奴がいた場所まで飲み込む。


「(これで、仕留めた! なンて思っていねぇ。奴が、嵐風系魔術を纏うということは、空を飛ぶことも可能かもしれねぇ! となれば、逃げるのは真上か!?)」


 おれは空を見る。だが、奴の姿が見えねぇ。なら横に飛んで逃げたのか!? 

 おれは左右、そして背後などありとあらゆる場所を見るが、奴の姿が一向に見えねぇ。奴はどこ行った? まさか今の魔術で仕留めたはずがない。そンな簡単に倒せる相手なら、どれほど良かったか。


 クンクン――。


 奴の匂いを察知した。――これは。


「そうか! 地中からか!」


 奴が、地中からこっちに近づいて来るのが、匂いでわかった。このやり方は、先のゴブリン族もしていたな。なるほど。委ねる者たちはこの魔術があるから、短時間で、地下から侵入したというわけか。

 そのスピードは、地中をモグラのように掘って進んでいるというより、水を得た魚のように、スイスイと地中を泳いでやがる。

 だが、これはチャンスだ! 奴が地中にいるうちに、この魔術で捕える。


「ジュダスちゃん! あんたの魔術を使わせて貰うぜ!! 地空界」


 土砂系魔術の上級魔術。この魔術で()とは比べ物にならないほどの規模で地形操作をする。そして奴を捕えた!


「~~~~ッッ!?」


 奴を地面へと噴出させ、そして、固めた巨大な土で身体を覆い、動けないように拘束する。


「へっ。喋ることも動くこともままならないだろう? つまり今は魔術が発動出来ないってことだ。インファイターの筋力をもってしても、拘束を解くには、時間がかかるはずだ! くらえ、グリークファ」


「ッッッッなんの! シャムシール発射」


 カチッ


 ボウッ!


「なにぃいいい!?」


 奴は、力づくで顔と左手だけ土から出す。そして、カチッっと、何かの仕組みを作動する音を発した後、なんと、左の鉤爪から五本の爪が矢のように飛び出したのだ!


「ぐおおッ!」


 不意の攻撃で、おれは避けられず、五本の爪がそのまま突き刺さる。そして、その衝撃で、後方の木にぶつかるまで吹っ飛んだ。


 おれは飛ばされた爪を見る。よくよく見れば、その爪は、ワイヤーみたいな鉄の糸が鉤爪と繋がれていた。


「なるほど……このワイヤーがあれば、爪を飛ばしても、回収できるってワケか……釣竿のように」


「それだけではない」


 カチッ


 キュィィィィィイイイイン!


 奴は、また何かの仕組みを作動する音を発した後、今度は、そのワイヤーを縮小し、奴が土の拘束を解いて、そのままおれに向かってくる。


「なっ!? ワイヤー移動までできるのか!?」


 おれは急いで、爪を抜こうとする。だが、その爪は思ったより、深く刺さっていて中々抜けない。

 仕方ねぇ。おれは手刀で、爪を折って、そして脱出する。


 ズバァアアン!


 間一髪、奴の鉤爪からの攻撃を避けた。おれの背後にあった木は容赦なく、五本の爪によって引き裂かれた。


「ほう……この技を躱すとは中々やる。流石だ、酔犬のリチャード」


「あんたもな。まさか鉤爪から爪を飛ばすとは考えなかったぜ。考え方は悪くないが、その爪に麻痺性の毒でも塗っておくべきだったな。そしたら、今の攻撃は当たっていただろうに」


「あいにく、毒を塗って戦うのは私の流儀ではない。友だったならそうしただろうが……私には私なりの戦い方がある」


「へえ。流儀とか戦い方にこだわるタイプか……損な性格しているなぁ。戦いなンて勝てればいいじゃねぇか」


「友にもよく言われた。だが、私は、誰に何と言われようが、流儀を変えるつもりはない」


 まったく、頑固な奴だ……いや、戦士として、この頑固さがあるからこそ、奴は強くなれたのかもしれねぇ。そういう男は嫌いじゃねぇ。後、奴と呼ぶのも失礼だな。巡礼、いや、サラーフを一人の戦士として、敬意を表すべきだ。


 ポタ……ポタ。手刀で折った爪の欠片かけらは今も刺さったままだ。その刺さった箇所から、僅かに血が滴り落ちる。一方サラーフの方は、ダメージはないが、左の鉤爪の切っ先は折れたので、戦力は少しダウンしているはずだ。


嵐風装束ハブーブ


 ボウッ!


 サラーフは風のトーブを纏い、右の鉤爪を先ほどと同じように、おれに向けて飛ばす。嵐風系魔術が纏っていることにより、その貫通力は凄まじい。


「させるか! 聖風霊プニューマ


 おれも相棒ぶきに嵐風系魔術を纏ってその攻撃をはじく。


「まだだ! 雷電装束アースィファ


 サラーフはなんと、()()()()()()()()()()()、雷のトーブを重ね着しやがった!

 そして、奴は切っ先が折れた左の鉤爪を突如、左へ向いたまま飛ばす。

 そして――。


「ハア!」


 そして、思いっきり、左手を振る。すると、雷と嵐を纏った爪が横から迫る。


「(なっ!? こんな使い方をするのか! ここは避けて、いや!!)」


 すぐにそばまで迫る斬撃。一瞬の判断ミスが命取りになる選択で、おれが出した決断とは――


「サン・サーラァァアア!!! ジュダスちゃん本当にアリガト――」


 ジュダスちゃんが覚えている魔術をまた使った。この魔術は魔力を増やす肉体強化系魔術で、本来は、おれのようなインファイターが使うとより効果が強くなる。

 増やした膨大な魔力を右腕に纏い、そして、サラーフの斬撃を受け止める。


「なっ!? 受け止めただと!?」


「オラァ!」


 おれはサラーフが動揺した隙に、左手でワイヤーを掴み、思いっきり引っ張る。そして、今度は、サラーフがおれに引き寄せられる。


「これで終わりだ!! 消えぬ炎(グリークファイア)


 そして、左手で相棒ぶきを思いっきり振る。そして、引き寄せられたサラーフの顔面に強打した!!


「(決まった!!)」


 サン・サーラで、魔力を増やした上に、おれの魔術の中で、トップクラスに攻撃力が高い、消えぬ炎(グリークファイア)のコンボ。これをくらって、生きているはずが――


炎火装束ジャハンナム


 サラーフは、いつの間にか火のトーブを着ていた。


 そして、消えぬ炎(グリークファイア)による炎火系魔術のダメージを軽減し、おれの相棒ぶきによる強打を顔面で受け止めやがった。


「まずは一回だ」


 炎を纏った右の鉤爪がおれの心臓を突き刺す。そこから膨大な火力が、おれの体内を燃やし尽くす。


「ぐおおおおお! ち、ちくしょう」


 おれは残った力で、リチャードを思いっきり蹴る。右腕に深く刺さった左の鉤爪と心臓に突き刺さった右の鉤爪をすぽっと抜けさせて吹っ飛ばす。


「ぐっ!? 回復系魔術を……駄目だ。まだ上手く使えねぇ……」


 おれは力尽きて倒れた。


「ハァ……ハァ。まだだ。お前らが蘇生魔術を使えることは知っているぞ」


「へぇ……流石にそろそろバレているか」


 一度、()()()()()は、怪我を全回復させて蘇る。


「どいうわけか知らないが……お前らは全スキルタイプの特徴を兼ね備えているらしい。ハァ。先ほど仕留めたゴーレム族や獣人族もそうだった。倒すには、二度殺さないといけないらしい……だが、これで一回目だ」


 サラーフは息切れしながら、解説する。顔面に受けたダメージも大きいが、それ以上に強力な魔術の使い過ぎで、魔力が少ないことによる症状が出ている。だが、かく言うおれも蘇生魔術を使ったおかげで、魔力はかなり失われている。


「ハァ……ハァ。ここからが正念場だ」


「ハァ……ハァ。ああ。サラーフあんたの言う通りだ」


 お互いに弱っている。決着は近い。あいつが生粋の戦士なら次の提案をしてみるか。


「なぁ……もうちまちました戦いはやめようぜ。余裕もねぇしよ。一撃で決めようじゃねぇか」


「男なら好きだろう? 全力で、最強の一撃をぶつけ合って決める戦いがよ」


「受けてたとう……と言いたいが、リチャード、あなたはそう言って、私を騙すつもりではないだろうな?」


「はっ、おれだって元とはいえ、騎士だったンだ!! 元騎士道の誇りをかけてセコイことはしねえ」


「私だって、戦士道としての誇りがある……」


「「決まりだな」」


 お互い意見が一致する。

 そして、正真正銘最後の攻撃を準備し合う。


「サン・サーラ! 消えぬ炎(グリークファイア)!! そして雷の子(ボアネルゲ)!!!」


 まずは、蘇生魔術を使ったことによって失った魔力を増やし続ける。そして、増やした魔力をその分、炎と雷を強化させる。


 一方、サラーフは――


雷電装束アースィファ嵐風装束ハブーブ炎火装束ジャハンナム土砂装束サフラーウ……氷水装束ザムザム


 サラーフはわんこそばのように次々と魔術を発動して雷、風、火、土、水のトーブを盛っていく……ちくしょう。サラーフがおれと同じイヌ科だったなら「(わんこ)だけにね」って綺麗なオチが言えたンだがな。ネコ科なのが悔しいぜ。


「リチャード、そろそろあなたの本気を見せて貰えないだろうか……本気のあなたは、酒を飲みながら戦うと聞いている」


「そのことなら安心しろ。確かに本気のときは、お酒を飲む。だが、()()()のときは、お酒を絶つ。今がその時だ」


 おれは、スキットルの中のお酒を相棒ぶきに全てかける。アルコールによって、その炎はより燃え上がる。


「なるほど……なら最後に私の名を伝えよう……本名の方だ。私の名はサラーフ・ガジ」


「おれはリチャード・モロサスだ。よろしく」


 お互いに準備はできた。両者見つめあう。


「(頼むぜ! 相棒……いや、息子よ。父ちゃんのフルパワーをお前に乗せて必ず勝つ!!)」


 おれは心の中でそう宣言し、息子とともに渾身の力(フルパワー)でサラーフへ挑む。サラーフもおれと同時に飛び出る。


 全力で、最強の一撃がぶつかり合う。



 前半武器転送魔術の解説が長くてすみません。


 補足)第二章のザスジーの「ザスジー・バイブル」トーマスの「ロンギヌス」も武器転送魔術で武器を取り出していました。

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