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第七話 中学校時代 その一

 

 俺たちの公立中学は私立に行く奴らを除いて二つの小学校の卒業生が合流する形になっている。


 そして俺たちの小学校の卒業生よりも、もう片方の小学校の卒業生が倍以上。


 そうなると、だ。

 一クラスごとの比率はもう片方の小学校の卒業生が多めになるわけで、つまり過去に雪菜が嫌がらせを受けていたことを知らない奴らにしてみればとんでもない美少女が突然やってくることになるわけだ。



『向こうの小学校出身の野郎ども、大興奮だったな。これが余計な悪意を抜きにした真っ当な評価ってわけだ。少しは自分のかわいさに気づいたか?』


『…………、』



『おいおい、今日も教室の外まで雪菜を見に野次馬が集まってやがる。日に日にかわいくなっているから当然かもしれねえが』


『…………、』



『下駄箱がラブレターで埋まるとかファンタジーに片足突っ込んでいるな。まあこれ全部に返事しないといけねえってのはちょっと面倒そうだが。かわいく生まれたのも良いことばっかりじゃないのかもな』


『…………、』



 まあ、あれだ。

 小学校ではまだ遠慮があった。これまで嫌がらせしていたのにとか、そこまではなくても見て見ぬフリをしてきたから見る目は変わっても露骨に近づいてくる奴はそう多くなかったんだ。


 だけど中学では違う。

 そういう負い目のない奴らが純粋に褒めちぎって、じゃんじゃんラブレターまで送って好意をむき出しにしていたんだ。


 そうやってまっさらな状態から真っ当に評価してくれる環境に放り込まれた結果──


『ふ、ふふふ』


『雪菜?』


『私は可愛い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これなら、うん。このままあの人たちが嫌がらせなんて二度とできないくらい大勢を味方に引き込んでしまえば大和が巻き込まれて怪我をすることもない!!』


 雪菜はいつか一緒に買った白のワンピースを靡かせてこう宣言したんだ。


『今の私ならできる。もう二度と誰も逆らえないくらい可愛くなってやるから!!』


『そっか。いやまあ、今でも文句のつけようがねえくらいかわいいとは思うんだがな』


『や、大和はそうやっていつも、うぅっ。ありがとうっ。すっごく嬉しいわよ!!』


 顔を真っ赤にして照れたように叫ぶ雪菜。

 この頃まではまだそんな反応が出てきていたんだよな。


 今?

 自分が可愛いのは当然だと胸を張って君臨しているからな。流石に今更こんな反応はしないだろ、多分。



 ーーー☆ーーー



『おはようっ。今日も可愛い雪菜ちゃんだよっ!』


 そんなこんなで中学に進学してしばらくしたら今のようなキャラになっていたっけか。最初の頃は照れがあったのか、目が泳いでいたし、助けを求めるように俺を見ることも少なくなかったが、これも味方を増やすためと積極的に中学内の生徒に絡んでいった。


 半年もすれば同級生はおろか上級生さえも雪菜の周りに集まるようになっていた。この頃には雪菜を嫌悪しているのはあの五人組グループくらいだったと思う。


 日に日にかわいく成長していくのもそうだが、ネットで色々と調べて人に可愛く見られる方法を取り入れたりしていたのもプラスしていたはずだ。


 加えて自分に自身がもてるようになったからか、これまでよりも積極的に活動していくことで運動神経が良さや頭の良さが目立つようになり、まさしく貶すための隙なんてどこにもなくなった。


 早かった。

 気がつけばカースト上位も上位、中学校内でも燦然と輝く高嶺の花になって、五人組の嫌がらせグループなんて手も足も出ない存在になっていたんだ。


 もちろん運動神経とか頭の出来とかそんなもん平均レベルの俺じゃ足元にも及ばないくらい。



『大和? どうかした?』


『……、別に。どうもしてねえよ』



 守っているつもりだった。

 だけど俺が何もしなくても、恵まれに恵まれている雪菜はあんなしょーもない嫌がらせしかできない連中を蹴散らしていたはずだ。


 だって、雪菜が嫌がらせから解放されたのは雪菜自身の素養と頑張りのおかげだったんだから。


 雪菜を守る。

 そのために何か特別なことなんてできていなかった。


 結局のところ、自己満足でしかなかったんだ。



 ーーー☆ーーー



 そして中学二年。

 この頃から同じクラスになった委員長──桜島繭香と色々あったが、長くなるので置いておくとして、だ。


 雪菜との距離感をどうするべきか考え出したのはこの辺りだったと思う。


 小学生のように純粋なままではいられない。

 住む世界が違う。そういうのを意識してしまったからこそ。

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