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【連載版】確かに幼馴染みをかわいいと褒め続けてきたのは俺だが、ここまで自己肯定感爆上がりするとは思ってなかったんだ  作者: りんご飴ツイン


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第十話 中学校時代 その四

 

 体育祭。

 全学年をクラスごとに色分けしての対抗戦なので、中には全学年の代表者を集めての種目もある。


 その中でもラストの全学年男女混合リレー。

 点数配分も高いこともあって一番盛り上がる種目だ。


 中学二年。

 活気盛んな奴が多い我がクラスは勝ちに気満々であり、だからこそ誰がどの種目に参加するか話し合う場からすでに熱くなっていた。


『よっしゃあー! 今年は我らが赤組が優勝するぞォおお!!』


『『『おおおおおおっ!!』』』


 絵に描いたようなスポーツ万能男子、二年の男の中でも一番運動神経が抜群な黒川陽炎の号令から種目決めは始まった。


 意外にも中心に立っている黒川陽炎は周囲を見ているというか、クラスメイトのポテンシャルと希望双方を配慮して、勝利だけを目指すのではなくできるだけみんなが楽しめるよう、しかもそれを悟られないよう自然な形で誘導していた。……何なら事前にお友達に協力してもらうよう頼んでいたのかもしれない。


 カースト上位。

 スポーツ万能。しかも才能だけじゃなくて気配りも完璧なイケメン様ってわけだ。


『それじゃあ、亀山はっと。意外と器用だからパン食い競争とかどうだ? 去年は一着だったしな! 今年も華麗に決めてくれると嬉しいんだが』


 黒川はそう声をかけてきた。

 良く覚えているもんだと感心する。去年も同じクラスだったにしても、普通そこまで親しくもない奴のことなんて普通そう覚えていないだろうに。


 まあ事前に調べておいたのかもしれねえが、それでもだ。


 多分少し前までの俺なら頷いていた。

 パン食い競争。これなら他の純粋な運動神経が問われる種目よりも俺みたいな凡人にだって勝ち目がある。


 無難にやり過ごすには最適だ。

 絶対に何か一つだけでも参加しなければならないというルールがあるなら、才能に左右される純粋な勝負を選んで順当に負けて恥をかく必要もない。


 少し前までの俺ならそう考えたはずだ。

 だけどこの時の俺は違う。


『俺、全学年男女混合リレーに出たいんだ』


 その俺の発言にどよめきが走った。

 何でお前なんかが、と言葉にせずともクラスの大半の連中が考えているのが伝わってきたんだ。


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 リレーの枠は各学年男女が一人ずつ。

 つまり今のところ男の枠が一つ空いていたが、それは目の前の黒川のものだと誰も何も言わずとも悟っていた。


 本気で勝ちにいくならそれが当然の選択だ。

 雪菜の人気を考えれば雪菜と同じ種目に出たいと男が殺到することもあっただろうに、黒川には勝てるわけないと諦めるくらいには、だ。


 わかっている。

 それが普通だ。


 それでも俺は望んでしまった。

 雪菜のそばにいるためには、黒川のような男に勝たないといけねえんだ。


『あー、うん。そうか、うん、何だなんだ、亀山ってばやる気満々じゃないかっ。そうだよな、せっかくの体育祭、ド派手にかましたいよな、はは、ははは』


 黒川はいい奴なんだろう。

 俺を傷つけずにどうにか諦めさせるにはどうしようかと、そんな風に悩んでいるのが伝わってくる。


 これが例の五人組や繭香とのアレソレでやり合ったあの野郎みたいに根っからの悪党なら俺も心置きなくぶつかることができたが、心までイケメンだとやりにくい。


 それでも。

 譲る気はなかったが。


『誰も立候補しないなら、俺でいいと思うんだが』


『あーいや、ほら、俺もリレー希望だったんだ。だから、ここはいっちょ譲ってくれるとすっごく嬉しいな』


『嫌だ』


『ま、まあまあ、そう言わずに、な?』


『絶対に嫌だ』


 それでも今になって振り返ってみると、馬鹿なことをしたと思う。気持ちだけが先走って空回りしていたんだ。


『おいこら亀山っ。あんまり調子に乗るなよっ! てめえみたいなのが黒川を押し退けてリレーに出れる身分だとでも思ってんのか!?』


『ちょいちょい、落ち着けって、なっ?』


 黒川の友達がそう言うのも当然だった。

 止めに入った黒川は本当に人間ができている。

 この時は俺が完全に間違っていたんだ。


 このままだったらせっかくの体育祭が台無しになっていたかもしれない。


 そこで声をあげたのが雪菜だった。


『ふっふん。男なら欲しいものは力づくでぶんどってこそだよねっ。というわけで、大和と黒川どっちが足が速いか対決しようっ。勝ったほうがリレーに参加する。その結果に後からごちゃごちゃ文句をつけない! さあ、これでどう!?』


『……、そうだな』


 本当に空回りしていた。

 この頃の俺は黒歴史に他ならない。


『黒川。俺と勝負してくれ』


『そうは言っても俺と亀山とじゃ……いやまあ、亀山がそれでいいなら仕方ないか。よし、勝負しよう!』


 結果?

 もちろん完敗したな。


 ……本当振り返って頭が痛くなる。

 俺は物語の主人公とか世界を救うヒーローとかじゃねえんだ。いきなり覚醒してカースト上位に勝つとかそんな展開あるわけねえだろ、ちくしょう!!

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