表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壱の魔術  作者: 川犬
第1章
7/38

梅雨前線停滞中-6

今回はもうネタのかたまりです。

 朝になって、鳥のさえずりが……聞こえず、目覚まし時計が…無いので鳴る以前の問題で、部屋が……寒かった。寒いのは俺だけだ。なんたって、昨日俺はマイに、ベッドを譲ったからな。


 それで、カーペットのようなものは敷いてあるが俺は床で寝て、朝起きたら体がかちんこちん状態だったというわけである。ああ、寒い。


 しかし、完全に何もかぶらないで寝たというわけでも無さそうだ。マイが俺が寝ている時にかけてくれたのか、薄い毛布が1枚俺にかぶせられていた。その毛布を畳みながら、起き上る。


 ベッドの方に目を向けるとマイはまだ寝ていた。


 そういえばここは異世界アナザーワールドなんだっけな。やっぱり、あんまりこの世界アナザーワールドには居たくは無い、と俺は思った。


 なぜなら、朝に滅法弱いはずのこの俺が、起きた時間を確認するために腕時計(日本時間)を見ると5時だったからである。早く起きてしまったのは、この氷づけにされたような寒さが原因だと思考する。これは確実だ。


 俺は、マイを起こす気にもならず、かといってここから立ち去ろうとも思えなかったので、とりあえず、二度寝しようと決心し試みたが、予想通り、寒さで寝付けなかった。なんだここは、南極か北極か?そんなわけでも無い。


 寒くて目が覚めたからといって、眠くないとはいえない。実のところをいうと、あまり寝ていないので目が虚ろ状態で頭がぼーっとしている。どこか暖かいところでもう少しで良いから寝ないと、死ぬ…。


 俺は、昨日から1度もしていないトイレに行きたくなって、とりあえず、面倒くさいながらも、立ち上がり、用を済ませに行った。


 それから、くらくら状態で戻ってきて、ベッド・・・の暖かい布団の中・・・・にもぐりこんで寝た。眠すぎる……。


 そこで俺は意識を失った。


@@@@@


「きゃあああぁぁああっっ!!死になさい!!死刑よ死刑!!」といってマイは俺の首を絞めて、俺の生命の危機がヤヴァク………という事態にはなってなかった。


 今日の朝、早朝に俺はトイレに行って確かにベッドの暖かい布団の中に間違えて入って寝てしまったのだが、起きたのが俺の方が早かったらしく、目が5時に覚めて以来、俺は目を覚ました。まず目に入ったのが、マイの寝顔だった。


「うおっ!」


 驚きのあまり、声に出してしまって口をチャックを閉めるように完全に封鎖した。危ない。もう少し大きな声を出したりでもしていたら、マイが起きて本当に殺されてしまうところだ。


 マイに寝顔は写真に収めたくなるくらい可愛かった。人形のような鼻に、閉じているクリッとした目に、柔らかそうな唇。それに、マイの甘い吐息が俺の鼻にかかってくる。流石の俺も、顔を赤くした。やばいなこの状況。はて、どうすればよいだろうか。とりあえず、首でも吊ってこようかな。


 という冗談は置いといて、俺はそろーっとこのベッドから抜け出し、元の自分が寝ていた場所まで戻った。心拍数が上がりきったままで下がらない。マジでくたばる●秒前だ。


「う……ん?」


 マイの寝ぼけている声が聞こえてきた。それから、マイはむくっと起き上がり、俺は即座に偽装安眠モード突入だ。


「んー……。ハジメ……?何寝ているフリをしてんのよ」


 俺の心臓は破裂寸前まで活発に動き出した。


 ばれてるばれてるばれてるっ!!終わった。死亡フラグたった!!ああ、まだやりたいこといっぱいあったのにな、もう少し生きたかったな。


 マイにばれていると知りつつも、俺は寝たフリをし続けた。奇跡よおおおお、起こってくれええええ!!


 そんな俺の悲痛な願望がかなったのか、マイ様は大きな欠伸をした後に、感情のこもっていない声でこういった。


「…起きてるわけ無い…か」


 俺は、呼吸を整えながらも、耳をマイの方へ傾ける。


 マイがベッドから降りてどこかへ移動する音が聞こえてきた。扉を開ける音が聞こえ、扉が閉まる音が聞こえると、俺は大きな大きな深呼吸を一回して、起き上がった。


 本当に死ぬかと思った。生きてて、良かったあーーーー!!やばすぐる。生きれることってこんなにすばらしかったんだああ!!あははっ、あははっ!……すまない。何度も取り乱して本当にすまない。もう一度言う。すまない。もうしません。


「…やっぱりおきてたわね」


 俺の真後ろからマイの声が聞こえてきた。……え? え? え? 俺の頭の中でサイレンが鳴り響いているぞ。


 俺は、ごくりと息を飲み込み、おそるおそるゆっくりと、扇風機が周りに風を行き渡らせるために左右に動くように、スローモーションでウィーンと振り返った。


 …マイが仁王立ちでこちらを見下していた。いやあ、身分が違うように思えてくる。…土下座ふくじゅうこういでもして謝ろうか。


「…えとー、マイさん、その、えと、えー」


「なんで、さん付けなのよ。気持ち悪い」


「マイ、すまなかった!悪気は無いんだ!このとおりだ、ははぁっ!」


「ちょっ! なんで土下座なんてすんのよ!? 気持ち悪いわ、やめなさい!今のあんたなんかおかしいわよ。それとも寝ぼけているの?なんだか、口調も変わってるし!」


 俺は、とりあえず土下座ふくじゅうこういをやめて、マイの顔を女王様を見るような眼で見て、

「マイ様!えっと、だって、お前のベッドに……」


「ん?何のこと?それに今度は様付け!?ほんとにどうしちゃったのよ!」


 はあ…。


 どうやら、マイは本当に俺が誤って(寝ぼけて)、マイと同じベッドに横になったことに気が付いていないようだった。命拾いをした俺は立ち上がる。


「ならいいか。で?何の用だ、マイ」


「と、突然いつもの口調に戻ったわね……。まあいいわ。これから、食事しに行くから、あんたを起こそうと思っていたんだけれど、起きてたからその必要もなくなったわ」


「ちょっとまて。どうして俺が起きてるってわかったんだ?」


「ん?簡単なことよ。だってあんた、わた、私が……いえ、なんでもないわ。そんなことよりもほら早く!」


 明らかにマイの視線が俺の横に丁寧に畳んである毛布に集中していたため、俺は、マイの意図が簡単にわかった。


 だが、俺も鬼じゃない。ここは、言わないでおこう。そう、毛布は、普通に俺が寝ていたら、こんな風に畳まれた状態で俺の横に毛布が置いてあるわけがないのである。


 それを疑問に思って、名探偵マイは指摘してこようとしてきたのだろう。正確には、指摘しようとして、もし指摘したらマイ自身が俺に毛布を掛けてあげたことがばれてしまうがために指摘をやめた、であるが。


 そんなことよりも、

「ああ、分かった。朝食を食いに行こうか。で?どこに行くんだ」


「うーん…。どうしようかしらね…。とりあえず、このホテルから外に出て、あんたの世界で言うレストランにでも行ってみる?」


「分かった。じゃあいこう。すぐ行こう」


 なぜ、俺がそんな急がすように話したかというと理由はいたって簡単だ。5時にいったん起きたせいで、腹の調子が少しだけ狂い、しかも、昨日は何も口にすらしておらず、とにかく腹が減っているからである。


 そして、今の時間が日本時間で言う午前9時だからだ。胃が食べ物を欲している悲鳴がたまに聞こえてくる。マッチ売り○少女のように可愛そうだな、俺の胃。


@@@@@


 俺とマイは、ホテルの外に出た。外の雰囲気は昨日の夜(深夜?)とは比べ物にならないぐらいに、活気づいている。とにかく見えるのは人。人。人。人口密度が高すぎて、ヒートアイランド現象を起こしているぐらいだ。暑い暑い。


 ここは、別にハリーポ○ターのような街ではなかった。皆が移動手段に使っているのは、車……は流石にあり得るはずがなく、ホウキでもなく、魔法の絨毯でもなかった。馬車のようなものだった。いや、正確には馬ではなく、何か別の生物なんだが。


 ここにいる人々は、なんだか昔の西洋人の服装に似ている。流石に、サムライのようなやつはいないが、西洋人のようなやつはごろごろいたのだ。服装はもちろんいろいろだ。ただ見たことがない服だったがな。俺たちは制服のままだったので、その中では明らかに目立っていた。皆の視線がズキズキ、ズキズキ、グッサッグッサ刺さってくる。そんなことをマイは全く気にしていないようでキョロキョロと辺りを見渡し、近くの建物を指差した。


「あ、あそこなんてどう?」


 俺はその建物を観察した。ちょうド派手な看板らしきものが立てられてて、「BONOBO」と書かれていた。猿ですかこのレストランは。別に、今は腹がめちゃくちゃ腹が減っているので、どこでもいい。ということでここに決定だ。


「別にいいんじゃないのか。それでは早く入ろう」


「え、えぇ……。あんたまさか、めちゃくちゃお腹すいてる?」


「ギクッ」


「いや、そんな効果音を声に出さなくてもいいんだけれど……。それじゃあ、中に入るわよ」


「あ、あぁ。は、入ろう」


 俺は、マイに腹が減っていることが見抜かれたことに少々驚きつつ、「BONOBO」の中に入った。



次回予告!

やっと次回に動きが少しだけ見えてきます。まあ、「裏の」なんですがね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ