梅雨前線停滞中-5
すみません。一回間違えて削除してしまいましたが、パワーアップをして、復活させましたので
しばらく俺たちは走り続けていたが、それはマイが自動車が急ブレーキをかけたように、止まったことで終わった。俺は、呼吸がかなり乱れていたが、マイを見ても、そんなに疲れた様子は無かった。
「はぁはぁ…おい、マイ…。お前ってそんなに体力あったか…?」
「ん?うーーん…クラスの中では真ん中辺りってところかしら」
「じゃあ、なぜそんなに余裕そうなんだ」
「ああ、そういうことね。それなら、簡単よ。私は魔力を少しずつ消費させながら走っていたからこんなものじゃダウンなんかしないわよ」
魔力。そんなものが俺にもあったら走る時、マイみたいに楽で良さそうだ。
「…なあ、俺にもその魔力ってやつは使えないのか?」
「今は無理よ。だってあんたには魔力なんて無いじゃない。だけれど」
マイは自分の制服の内ポケットから何か石のようなものを取り出した。それは、氷のような…もう氷そのもののようにも見えなくはない。直径10センチメートルぐらいのそれは不思議な青光を放っている。とても綺麗な石だった。一瞬だけ見せられれば、宝石と間違えてしまうかもしれない。
マイはそれを俺に見せ付けた後、すぐにまた制服の内ポケットに戻した。
「凍石っていうのよ。まあ、ほかにもいろいろあるんだけれど、こういうものを魔石っていって、持っているだけで、自分が魔力を使うことができるんだから。私のは氷属性の魔力が使える石だから、氷属性の魔術と基本魔術しか使えないんだけれど」
「なるほど。なら、その魔石ってどこにあるんだ」
マイは、目を細めてきた。ん?俺なんか変なこと言ったか?
「あんたが…魔石持っていても、ろくなことに使わない気がする」
「な」
そんなわけがないだろう、と言おうとしたがよくよく考えてみた。ああ、確かにさっき、俺は魔力を使えば楽して走れるだとか思ったな。
マイは、すぐに元の表情にもどして、
「まあでも、あんたのろくなことって言っても、たぶん規模の小さいことだと思うから、魔石のありかを教えてやってもいいわ」
なぜか、上から目線だった。そして、規模の小さいことだとは何だ。確かにそうだが、むかつく発言だな!それ。
「…それのしても、あんたはこの世界に来てもあまり驚かないわね」
「ああ、それは俺がもうこの世界の雰囲気に慣れたからな」
「慣れるの早っ!…まあいいわ。それより、もう街の中に入るための入口すぐそこだから、入るわよ」
うん、そんなツッコミしないでほしい。なんだか、俺が周りの人間と違うみたいじゃないか。
マイは、それからまた前に進んで手を前にかざした。
「なあ入口ってどこにあ」
「だまって」
……はい黙ります。本日二回目であります…。俺がここまで心の中で謝るの初めてだ。あくまで心の中で、なんだがな。もし、心の中の声が、マイに聞こえていたら、あいつは俺が謝りまくっているのに気がついて、調子に乗るかもしれないので、相手の心の中を読むような魔術がマイに使えなくて良かったぜ。
マイは、目を開けたまま詠唱を始めた。
「閉ざされし扉よ我らをこの中に入れなさい」
この中といっても、ここには何もないんだが?と問おうとしたが、またうっさい黙れだとか言われそうだったので、もう少し後のほうに問おうと思う。くそう、自由に発言できないのがたまーに癪に障るな。
周りの変化が全くない中、マイが俺の手を引いてきた。
「ちょっとまて、入口ってどこにあるんだ?」
するとマイは前を向きながら、
「ここにあるわよ。まあ結界壁が貼られているから、魔力を持っていなきゃ見えないんだけどね」
その声は楽しそうな声だった。
「じゃあ、入るからしっかりつかまってて。普通の魔力も何も持っていない人がこの中に入ろうとすると、跳ねかえされて入れないから、私があんたに魔力を少しずつ送りながら入るわよ」
「ああ、分かった」
「目を閉じて、一点に集中して」
俺はマイに言われたとおりに、目を閉じ、どこに集中すればいいか全く持って分からなかったが、集中した。すると、俺の手がマイから何か流れてくるような変な感覚を味わった。だがそれもすぐに消え、マイが俺の手を引きながら進む。10歩ほど進んで、また立ち止った。
「もう目を開けてもいいわ。驚かないでよ」
俺の推測だと、もうここは街の中だと思う。
俺は、目を開けた。
そこは、砂漠なんかじゃなかった。夜で、人は皆寝ているのか、ほとんど見当たらず、物音すら聞こえなかったが、砂漠なんかじゃなかった。ちゃんと、木も生えていて、建物があって、空気が寂しくなんかなかった。街だった。俺たちは街の中の入口付近に突っ立っていた。別に推測通りだったんで、驚かなくてもよかったのだが、なんかマイを不機嫌にしそうだったのでとりあえず驚く。
「…ここは、本当に街なのか。…すごいなこの世界は」
予想通り、マイの機嫌はさらに良くなったようで、声がさっきよりも僅かに弾んでいる。
「すごいでしょ!」
「すごいな」
滅多に楽しいと思わないこの俺が、少しだけ微笑んだ。この世界もそんなに悪くないかもな。まあ、だからと言って、元の世界に帰りたくないという訳じゃあないんだが。比率で言うと、異世界2、俺たちの世界5ぐらいの差はまだあるしな。だが、それでも楽しい…楽しいぜ!
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「それで、これからどうするんだ?ここが異世界だとしても、夜はさすがに皆寝てるんだろ?魔術師探しは明日にして俺はもう眠くてくたくたなんだが」
俺は、欠伸をして、周囲を見渡した。人間の声など聞こえてこない。それに明かりすらほとんど無い状態なのだ。寝ていないのだとしたら、この街は誰もいない廃れた街だということになる。それだと、街があっても人がいないので、まったく持って魔術師探しも出来ず、俺たちは無意味な行動をしていたことになる。それだと、俺はたぶんキレるぞ。
「寝床は…そうね…あ、あそこのホテルなんかどうかしら。あ、もちろん別部屋ね」
そんなの分かっている。も、もし、俺とこいつが同じ部屋で寝たとしても、こ、こんなことやあんなことをするわけなんて、な、ないからな!!…すまん。取り乱してしまった。
俺は、そのホテルを見上げた。見上げたというのは、俺の世界の日本で言う東京○ワーほどではないが、高かったからだ。そのホテルは、窓なんか無く、入口しかなかった。それに、地震があったら崩れそうだな。しかし、そこで俺はまた気がついた。ここまで高い建物をたくさん建てているというと、俺達の世界みたいに地震が無いのだと推測できる。すると、プレートか何かも無いのか。噴火も無いのか。良さそうだなここは。
「なあ、ここって地震か何か起こったりしないのか」
返ってきた答えは…ジャジャジャジャーン!!
「起こったりするに決まっているじゃない」
はい? 訳分からん。それなら、なぜこんなにも高い建物が建てられるんだ? だーれーかー、教えてくれ。ハジメ君はただいま混乱中であります!
俺が混乱しているのを、マイは見抜いたのか、軽く笑いながら、
「まあ、ここは結界壁で守られているから、地震の影響で建物が崩壊したりしないんだけれどね。それより、ホテルの中に入るわよ」
「金はかからないのか」
「む。向こうの世界とごっちゃにしないで。この世界は、自分の持っている魔力の強さによって、物を買ったり、ホテルに泊まったりするんだから」
なんだその差別は!?そうなると、魔力をまったくもって、持っていない俺は、何もできないじゃないかー!……ん?待てよ…。
「おい。そうなると、魔力の持っていない俺はどうなるんだ。俺の部屋はホテルは用意してくれるのか?」
「はっ!!そ、そうだったわ!!あんたは魔力なんて持っていないんだった!!」
「ということはだな…俺は野宿か…」
俺がそういう発言をすると、マイにはよほど落ち込んでいるように見えたようで、顔を少し赤らめながら(暗くて俺には見えないんだが)、
「し、仕方ないわね…。わ、私と部屋が一緒でよければ……。た、ただし、へ、へ、変なことはするんじゃないわよっ!したら、死刑だからねっ!」
物凄く声が上ずっているな。それに、死刑…か。ハ○ヒ発言やめないか。この小説が削除されてもいいのか。俺は、別にどうでもも良いが、作者が困るだろう。…ん、俺は何を考えているんだ?まあ良いが。
「いいのか、お前の部屋を使って。ありがとな」
俺は、マイのさっきの発言をスルーして、普通に話した。マイも、安堵の息を吐いて、
「ど、どういたしましちぇ」
最後を噛んだ。
しかも、それに本人は気がついていないらしく、俺もそこまで追及するのは可愛そうだと思い、マイをホテルに促した。
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そして、ホテルの中へ入ると、なんともKYで、ベッドが一つしかなくて、間違えても二人で使うわけにもいかず、誰がそのベッドを使うかで軽く口論になった。
「わ、私は、魔力で体が冷えないようにすることが出来るから、あ、あんたがそこで寝なさい!」
「そういうわけにもいかないだろう。俺がベッドで寝て、か弱い女の子が、布団も敷いていないところで、寝るなんて俺には想像すら出来ん」
「わ、私がか弱いですって!?」
「ああ、か弱い女の子だ。俺から見れば、お前はか弱い女の子だ」
「う、うぅ……。わ、分かったわよ!このベッドは私が使えばいいんでしょっ!」
「ああ、お願いする」
ほかにも口論になったことがある。それは、
「おい、マイ。お前が先に風呂はいれ」
「はあ!?何でそうなんのよ。普通はあんたが先でしょ!」
「俺が入ったきたなーい汗やら垢やらが混じった風呂を、お前は入りたいのか」
「う、ううううう……。わ、分かったわよ!!私が先にはいるっ!」
とまあこんなそんなあんなで騒がしい夜は終了し、朝になった。
いやあ、この小説をかくのはたのしいですねw