梅雨前線停滞中-4
更新スピード早っと思われた方もいるでしょうが(いままでは週1ペースで約1000文字で現在は毎日ペースで約3000~4000文字)気合入れてますんでしばらくはこれが続くと思います。
「……ん、ぁ?」
俺は冷たい風が頬に当たって目を覚ました。今は6月のはずなのに、冬に吹く北風みたいな冷たさに軽く体が冷えていた。しかも、目を開けなくとも分かるくらい暗いようで、夜と推測できた。
ここはどこだ。なぜ気を失っていた?とりあえず、俺は何か重たいものを身体に乗せて横たわっているということを理解した。それは、少しだけ暖かかった。それは何か。目を開けてじっくり見ようと心に決め、目を開けてそれを見てみる。見てうわっと声を上げそうになってしまった。正確にいえば、俺はそれを見たのではなく、そいつを見た、だった。
「マ、イ……?」
マイは俺にぴったりと密着した状態で動かない。生きているか確かめてみると、呼吸は一応していたので、生きていることは確認できる。どうやら、マイは気を失っているだけのようだ。
マイの茶色のやわらかい髪の毛が俺の首に当たってこそばゆい。
それにしても、この状態は……なんかやばい……。何がやばいのかというと、周りから見れば、いい年頃の男と女が抱き合っているように見えるというところがやばい。この状態を誰か学校関係者に見られたりでもしたら、即座に退学決定だろう。まずは、勘違いされないように俺を掴んでいるマイの両手を俺の身体から離そう。
俺は、マイの肩を掴んで俺を掴んでいる両手を俺の身体から離そうとした。しかし、予想以上に俺の身体を接着剤のように力強く掴んで動かないので離そうにもどうやっても離すことができなかった。ヤヴァイ。
「………んー?」
マイが怪訝そうな表情でうっすらと目を開けた。や、やばいっっ!マジで終わった!!
マイは今度は、はっきりと目を開け、俺の眼を凝視して数秒間。
「きゃあああああああああああああああああああああああああッッ!!」
生まれて初めて、こんなに大きな叫び声を聞いた。雷の轟音よりもでかいのではないかと思わず錯覚してしまう。恐ろしい絶叫だった。もう二度と聞きたくもないな。
「このバカッ!!」
俺は、思いっきり往復ビンタをされ、顔のいたるところに存在している紅葉が赤くてきれいでした……、ぱちぱち。
物理的ダメージ10、精神的ダメージ5億だ。そこで、弁解に入る。
「…勘違いするな。あの時お前が俺に抱きついてきて…そういえばここはどこだ?」
弁解に入っている途中、ここがどこか理解できていないことに俺自身が気がついて、聞いてみる。
マイは、不機嫌ゲージMAX状態なようでこちらをじっと睨みつけてくる。そこまで、睨みつけられると迫力はないものの、恐怖を少々感じる。感じてしまう。いやあ、恐ろしやー。
「その前に、謝ることがあるんじゃないかしら?大体、あの時あんたが来なければこんなことにはならなかったのよ!」
「ごめんなさい」
本当はそちら様がさっきに抱きついてきたんでございますよと、言おうとは思っていたんだが、それは言い訳に過ぎないだとかそんなの関係ないだとか言われそうで時間を食ってしまうので、俺にしては珍しく潔く(俺は悪くないのだが!)、謝った。
マイはもう少しだけ俺を睨んで、そして、ぷいっと明後日の方向を向くと、
「ここは、…異世界って言えばわかるかしら?」
「…なるほど異世界ねえ…ってはあ!?」
「そう。ここは異世界なの。信じられないかもしれないけれどね、異世界なのよ」
只今、絶賛脳内整理整頓中…。まったく理解できん。意味分からん。
「ちょっと待て!異世界なんてものはあるのか?そんな世界が存在するのか?仮にするのだとしても、どうやってここまで来た!」
俺は混乱しすぎていて、少しだけ声を荒げた。自分の声を聞かずとも、俺は焦っているということが手に取ったように分かる。ここが異世界だとしたら、どうやって元の世界に戻る。もし戻れないんだとしたら俺はどうなってしまうんだ!?
「…ここは異世界!ここに来た方法は私がここに次元移動するように魔術を発動したから!」
「…そうか、なら戻ることもできるんだな?」
俺がそう問うた。そうか。あの時抱きついてきたのは、俺も含めてこの世界にあの仮面女から逃げるためだったのか。それなら、俺の方が悪かったのかもしれないな。
それよりもなによりも、マイは押し黙っている。答えることができないようだ。ということは、つまり、
「もど、れないのか…?」
「……」
マイは、無言だったが最後の力を振り絞ったかのような顔をして、恐る恐るというように、こくりと1度だけ頷いた。
そうか…、と俺が落胆するとマイはあわてて「でも」と付け足した。
「私の魔力は少ないから私だけじゃ無理。だけれどこの世界の住民である程度魔力を持っている人がいれば何とかできる」
俺はその元の世界に帰れるという可能性がある解に幾分、安心しつつ、顔をしかめた。
「この世界の住民と言われてもだな…」
俺は周りを見渡したが、辺り一面砂漠のような場所しかないように見えるんだが…。俺の目の錯覚か?空を見上げると、青くてでこぼこした星が見える。おそらく、俺達の世界で言う月のようなものなんだと俺は思う。しかし、それ以外に星は何も見えない。無だった。これによって俺は、ここが異世界なんだと初めて実感させられた。
「周りには町も家も木も、ましてや植物すらないんだが」
「それなら大丈夫よ。安心して」
マイは俺とは正反対の方向に指をかざして、目を閉じる。
「なにをしてい」
「ちょっとだまって。集中できない」
……。
はい、黙ります。すみませんでした。と俺がいう訳が無いだろう。俺はとりあえず、そこまで丁寧に謝らずにああそうかとだけいい、手を擦り合わせた。なぜ手を擦り合わせたかと言うと、さっきまで、変な気分になっていて(忘れたいのでどんなのだったかは知らんということにしておく)、緊張していたお陰か、寒さなどまったく持って感じられなかったんだが、今になって寒気がしてきたもんで手を擦り合わせたのだ。ああ、寒い。と声に出したいぜ(これ重要)。
しばらくして、マイがクリッとした目をパチリと開けたかと思うと、俺の手を握ってきて、引っ張ってきた。その手はやわらかくて暖かかった。それに俺は対応できずに、躓きかけた。
「こっちよ!こっちに国があるわ!」
「本当にこっちで本当にあってるんだろうな」
マイは俺の手を引き、走りながらにこっと笑って、
「もちろん!私に任せなさい!」
その時のマイの楽しそうな可愛らしい笑顔を見て、俺は|僅かに心臓の鼓動を高めてしまった。すまない……誰か今の言葉を二重棒線で取り消してくれ。
今日はもう更新するつもりはありません。また明日~~
忘れてた。えと、感想待ってまーーす。