梅雨前線停滞中-3
ここから話が面白くなっていきますw
校門というのはどこの学校にもあるだろう。校門が無い学校というのは、おそらく日本には無いと俺は思う。だが、今俺は校門が無ければよかったと思ってしまう羽目にあっていた。考えてみよう。校門は何に使われるか。それはもちろん、学校の出入り口であり、学校の中へ通れるように開けたり、通れなくするように閉めたりするための門だ。しかし、それだけではない。確かに教師たちによればそうかもしれないが俺たち生徒によればそうではないのだ。俺たち生徒にとっては、いっしょに帰る友人を待つための場所なのだ。
なぜ、こんなことを述べているかって?それはだな……。
「言え」
「うお!?」
さすがの俺も突然すぎる出来事で驚いた。雨が一時的に降っていない中で、何せ、校門を出た瞬間、突然後ろから腕で首を軽くだが閉められたからだ。しかし、最初は驚いたもののすぐに誰が俺の首を絞めているのかは分かっているので、肘打ちを前回よりも幾分強くした。
「グホォ!!」
スネー○モドキもとい、西車は本気で脇腹を抱え込んで痛そうにしている。が、すぐに立ち直った。……相変わらず自然治癒能力は物凄いな。普通の人間ではないのではないかと疑問に思ってしまう程、西車の回復力は俺たちのとは桁違いだ。
俺は、少々呆れながらも声を発した。
「で、今回は何の用なんだ?」
本当はそんなこと聞かなくても大体予想がつく。おそらく、今日の2時限目の英語の授業での出来事のことだろう。
「おまい、2時限目の時に―――」
やはりそうだ。それでだ。西車はこういうのだろう。マイとどんだけ仲良いんだよ!俺にもそのコツを教えてくれと。今回はポテトはいないらしく、西車の暴走を止めることはできなさそうだ。誰か代用は……。いない。仕方が無い。諦めてこいつの質問に答えてやるか。どうせ、マイのことだろうしな。
「どうやって、秋色とあんなに仲良くできたんだ?教えろおおおおッッ!!」
うむ。予想外だ。そんな質問が来るとは1ミクロンたりとも思っていなかった。とりあえず、用意しておいた回答が無意味な物と化してしまったので、思考を巡らす。そして、最高の回答を思いついた。
「仲良くしていないまる」
シンが軽く笑っていたが俺はかまわず、西車にさよならも言わずに立ち去ろうとした。が。
「まってぇぇええい!おまいは、おまいってやつは!!まさか無意識的に、あんなことが出来てしまうのか!?すげえええええ!!」
肩を捕まれた。
……。
反応できない。これはボケたというより、ただの天然なのではないか。
「うるさい」
とりあえず、保険にそう言葉を言い放って、そそくさと立ち去ろうとした。が。
「まてええぇぇぇえい!!弟子にしてくれー!!」
「はあぁ!?」
こればかりは、俺も立ち止まってしまう。どういうことだ。なぜそうなる。まったく分からん。訳分からん。とりあえず、驚きのあまり、脱力した。
「もう一度おまいに言うぞおお!!弟子にしてくれー!!弟子にしてくれないというんなら」
西車は、俺の黒プラス青色サブバッグを自慢の底力で奪い取ると、ハンマー投げのようにて、思いっきり投げた。そして、俺のサブバッグは、運がいいのやら悪いのやら、丁度空いていた窓口から教室の中に入っていた。しかもそこは、俺のクラスだった。なんてことをしてやがる!
「弟子にしてくれないんならこんなことしちゃうぞおお!!良いのかああ!!」
「いやもうされた……って、ふざけんな西車!何、あ、やっちまったぜーでもまあいいっかみたいな顔してんだ。いいか?よーく耳カッポじって聞け。俺はお前の師匠には絶対にならん!!」
元からこんなやつの師匠になる気はそうそうなかったが。というより、何の師匠なんだよ。そんな訳分からん師弟関係なんて俺は築き上げたくないぞ。
シンは「とって来ましょうか?」と聞いてきた。普通ならよろしく頼むってところなんだが、今はそんな気分ではない。
俺は、冷静に考えてみた。もし、これで俺が自分のサブバッグを取りに行けば、西車から離れることが出来ると。
俺は、シンの方へ向き、西車のほうをわざとじろじろ見ながら、
「シン。すまないが、俺が自分で取ってくる。なぜかは、分かるだろ?」
「……あっそういうことですか。なるほど。やはり、あなたは探偵に向いているのではないでしょうか?」
「はあ?お前までもが意味の分からない事を…」
「いえいえ、ただあなたの勘の鋭さと思考力の良さを高く評価しただけですよ。ふふ」
お前がさっき、俺が西車を見てなぜだか分かるだろと聞いただけで理解できた推理力の方が物凄い評価を受けても良いぐらいのレベルのものなんだけれどな。まあどうでもいい。
「よし、じゃあこいつ頼む」
「わかりました。何とか、頑張って差し上げましょう」
西車がまた俺を掴もうとするが、シンが西車の腕をばしっと掴んでその動きを止めた。
「ちょっとまてえええいい!!加納!おまいはそれでいいのかああ!!それで本当にいいのかかああああ!!」何がだよ。
西車の必死の叫びに応える訳が無く、俺は背を向けて校門から校舎に逆走をする。今気がついたんだが、俺は結構西車が苦手だった。
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1年4組まで行くために、俺は廊下を走っているか歩いているか分からない、いわゆる早歩きというやつをしていた。そして、あっという間に1年4組、俺の教室直前までつくとなぜか声が聞こえてくる。それもどこかで聞いたことがある声なんだが。
「あんたが――だった―――ね!早く―――の世界に戻りなさい!」
「なん――こと―――?」
なんて言っているかよく聞こえなかったので、もう少し耳を澄ましてみる。
「あなたは、誰の許可を取らないでこの世界に来ていいと思ってんの?この世界にはまだ魔術も発展していない幼い世界なのに」
間違いない。この声は、マイの声だ。ただ、魔術だのこの世界に来ていいのかだの訳の分らんことばかり言っているがな。今日は訳の分らんことが多い。それの原因はおそらくこいつだと思う。なぜだか?簡単なことだ。いつも訳の分らんことの中心にいるのは、マイだったからな。
そして、今も。
「…だからなの。分かりませんか?だからこそ、この世界を変えなくてはいけないってことぐらい分からない?」
なんだなんだ。この世界を変える……だと?俺は僅かに、緊張を高めた。
その後、マイの声が聞こえなかった。
「あら? 反論できないんですね。それじゃあ私は」
「待ちなさい」
「今度は何?」
「ここで私はあなたを捕まえる。もし捕まえられなくたとしても、上からその場合はあなたを殺してもいいって許可を得ているんだから!」
「あなたが私を殺す?面白いこと言うんですね」
……おいおいこれは、本当でやばいんじゃないか。俺はどうする。どうしたい?
もちろんこのままここを立ち去ることはできるが、本当にそれでいいのか?俺が立ち去ったら、こいつらはどうなる?俺のいやな予感が的中すれば、こいつらは殺人事件かなんかを起こすかもしれない。どうすればいい。そんなのは1+1はいくつかと聞かれて、2と答えるぐらい簡単なことだ。
こいつらを止める!!
「おい!何があったかは知らんがお前ら何やってんだ!」
俺は、サブバッグのことなんか二の次三の次にして、1年4組の中に入った。中にいたのは、マイと…千と千尋の神○しの中のカオ○シのような仮面をかぶっている1人の人間だった。その仮面をかぶっている人間は、さっき聞いた声からしておそらく女性だろう。その仮面女は杖のようなものを持っている。
俺が教室の中に入ってきたのが、予想外だったのかマイと仮面女はこちらを見たまま数秒間固まっていた。マイは驚いているのが分かるが、仮面女は仮面のせいで顔が隠れて表情が見えない。
しばらく経って、マイが震えているような声を発した。
「あんた…どうして…」
それは、なんだか悲しそうだった。
仮面女が不敵な笑みを浮かべて(たぶん)、
「…うふふ。私は、この子を魔術で苦しめたらあなたはどういう反応をするか知りたくなりました」
マイは、一目散に俺のほうへ駆け寄ってきた。そして、俺の身体と密着する。というより、抱きついてきたという表現のほうが正しいだろう。
「うお!?な、なんなんだ!」
俺は驚きのあまり、声をあげるがその声は、マイの大声によってかき消された。
「異次元の世界よ扉を開け私達を連れていきなさい!!」
ふわりと、浮いたような感じだった。それから、世界が反転したような奇妙な感覚に俺はとらわれながら、気を失った。
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教室に一人残された仮面女は、自分の仮面を剥ぎ取って、……消した。そして、持っていた杖のようなものも消し、深呼吸をしてから、ポーチからかわいらしい蛙型のケータイを取り出す。
「―――様、残念ですが逃げられました。…はい。朝垣マイに。それと、少年が、いえ、加納ハジメという者も…え?全部見てた?それなら話は早いですね。…これからどうしましょうか。…はいわかりました。私もあちらの世界に行ってまいります。…はい。さようなら。―――様」
元仮面女は、蛙型のケータイをポーチの中にしまい、不敵に微笑んだ。そして、静かに誰に向かって言っているのか分からないがこう言い放った。
「……うふふ。今行きますから、私を楽しませてくださいね。異次元の世界よ扉を開け私達を連れていきなさい」
この世界からその女性は消えた。
いやあ、どんどんうpしていきますよー
感想よろしくお願いします