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壱の魔術  作者: 川犬
第3章
36/38

7月7日 曇り後――、-5

あけおめことよろーw

この小説を今後もよろしくお願いしますw

@@@@@change


 な、なんなのよ、もう……!


 私は、風呂に肩までつかりながら、考え事をしていた。


 さっきのハジメの言葉を思い出す。


『そそそそれはだな! おまえの……考え事をしていて』


 それを思い出すと、また頬が赤くなるのを感じた。胸がきゅーんと苦しくなる。


 私は、口まで、お湯に沈めた。ぶくぶくと表面から泡が出てくる中、ハジメのこと以外考えることができなくなっていった。


 ディルバのことなんか、頭の中になかった。


 もう少しだけ……、もう少しだけ、この気持ちでいたい。風呂から出たら、きっと、ディルバのことで、この気持ちが薄らぐ。そんなのいや。いや。いや。


 でも。


 この気持ちは一体何? 初めて感じたこの気持ち。今までこんな気持ちになったことは、なかった……。


 もしかしたら、この気持ちは――、

「なに!? それは本当なのか?! おい!」


 ハジメの声が、リビングから聞こえてきた。それで、私の思考は一気に冷める。この気持ちが一体何なのか気づく前だった。


 ……私は、立ち上がった。



@@@@@change



 リビングに戻ると、コノハが、ベッドに座りながら、ボーっと窓の外を眺めていた。


 俺は、つけっぱなしだったテレビを消して、


「どうしたんだ? コノハ」


 コノハはこっちに振り向いた。その目は、生気が抜けていた。


 ……? 俺なんかしたか? さっき、コノハが、俺とマイが会話しているときに来て、い、いや、会話じゃないが、まあとにかく、俺とマイのやり取りをみて、ガーンとなり、ふらふらとリビングに戻っていったかと思うとこうだ。


「……なんでも、ないです」


「な、ならいいんだが」


 コノハは、再び窓の外を向いて、ため息をつきながら、ボーっとしている。


 うーむ。何でもないわけないよな……。だが、なぜそんなに落ち込んでいるのか教えてくれなきゃ、俺も何もできないしな。


 俺は、コノハと少し離れたところに腰かけた。


「……」「……」


 沈黙が続く。


 うお……。こ、この空気は何なんだ? 腰かけてから、身動き一つ取れないのだが。


 と、俺とコノハが黙り込んでいる中、電話機がジリリリリーン! と鳴りだした。蝉といい勝負になりそうだ。


 俺とコノハは、一斉にその電話機に注目し、それから俺は、立ち上がった。


「俺が出る」


「どうぞ」


 コノハの様子は相変わらずだ。まあこの電話のやり取りが終わってから、俺がなんとかするか。


 俺は、受話器を手に取り、耳に当てる。


「もしもし? どなたですか」


 普段、敬語なんて高貴なもんを滅多に使わないから、俺は、少し緊張していた。少しだぞ? 少し。


『ももももももももしもし』


 っふ。読者さんも名前を記さなくても、相手が誰だか分かるだろう。亀井もといオタ教師だ。ごつい体格と、パソコン画面をはあはあしながら見ているイメージが浮かび上がってくる。俺は、そのイメージをすぐに取り消した。


 俺は肩から力を抜いて、

「なんだ?」


 敬語もやめた。


『じじじじじじつは、』


「実は?」


 俺は、これから、オタ教師が言うことは課題が出るだとか、そんなものだろうと思っていた。


 そう。このとき俺は、気を抜きすぎていたのだ。気を抜きすぎて、あいつの存在が薄らいでいた。まだあったこともないあいつが、まさかそんなことをするとは、思ってもみなかった。


 オタ教師の声が聞こえてくる。


 スローモーションで。


『ゆゆゆ湯谷シンさんがが何者かによって、こここここ、こここ殺されました』


 俺は目を見開いたね。びびったよ。心臓が花火のようにはじけるかと思った。


 少しの間の後、俺は――、俺は。


「なに!? それは本当なのか?! おい!」


『ほほほほ本……当……ででです』


「なッ……!」


 絶句。その二文字しか今の俺を表現できる単語はない。



@@@@@



 それから俺は、亀井から電話越しでいろいろ教えられた。


 シンの死因は何らかの刺激を受けて、ショック死したのだということ。シンが倒れていた場所は、俺がいつも登校している道の途中だということ。時間は、午前中で、俺が学校にいる間だってこと。


 俺は完全にノックアウトして、受話器を落とした。


 ……手が震えてやがる。何なんだよこれは。


「ど、どうしたんですか?」


 俺の様子を察して、コノハは、俺が落とした受話器を元に戻しながら、俺にそうたずねてきた。


 俺は、声を出せなかった。ベッドに倒れるように座り込む。


「どうしたのよ!?」


 後方から、どたどたと走っている音と共にマイの声が聞こえてきた。風呂上りで、髪の毛をきれいに乾かしていないのか、若干濡れている。


 いつもなら普通に返答できるのに、やはり、声を出すことができない。脂汗が待ってましたと言わんばかりに、あふれ出してきた。


「……ッく!」


 俺は、すぐさまポケットの中から乱暴に魔石を取り出す。


 弱泡石プチバブルは、弱弱しく石の中の小さな泡が光を発しているのみだった。それをぐっと握る。握り飯にする時の力量ではない。もっと強く、もっと強く。握りつぶそうってぐらい力を込めた。


「ハジメ! どうしたのよ!?」


 俺の手の力がふっと緩んだ。俺は、はっとなって、顔をあげる。お互いの息がかかるぐらいの距離にマイの顔があった。そんなに顔が近いってのに、それを気にしていないぐらいマイは、俺のことを心配してくれているようだ。


 だが俺は、驚かなかった。ただ再び下を向いて、はあ……と溜息をついて、口を開いた。


「シンが、殺された。……あいつにな」


 亀井は、誰がシンを殺したかなんて分からないようであったが、俺には分かる。


 あいつが殺したに決まっている。ディルバが殺したに、決まっている。


 だが、ひとつだけ分からないことがある。なぜ、ディルバが、シンを殺したのか、だ。シンは、魔術師でもないし、異世界から来た人間でもない。そんな一般人・・・を殺す理由が分からない。もしや、俺の友人だからという理由なのだろうか。


 マイは、俺が何を言ったか一瞬理解できなかったしく、首をかしげたが、すぐに理解して、顔を青ざめた。


 マイの後ろにいるコノハも同様の反応を見せた。


「やっぱり……、レイドのいってたことは本当だったってことね……」


「ああ……」


 マイは後ろに下がり、唇をぎゅっと噛み締めている。


 俺は初めて恐怖を覚えた。いや、厳密には二回目だ。一回目は、俺が交通事故にあったときだからな。


 さてさて、このまま永久的に暗い雰囲気で、そのまま時間が過ぎていってしまいそうなんだが、どうすればいいのだろう。


 そう俺が思い始めたころ、コノハが目から涙をにじませながら、

「これ以上……これ以上、巻き込まないために、私たちも何か対抗策を練りましょう」


 苦しそうな表情をしているのに、コノハは冷静だった。


 俺はコノハを見つめた。コノハが、マジで天使に見えてきた。


「さすがだな。コノハみたいなやつがいると、助かるぜ」


「ふふっ……。ありがとうございます」


 マイは、大きく深呼吸をしたかと思うと、若干違和感は残るが、いつもの調子に戻って、

「そうね! ディルバなんかに私達は負けない! だって、コノハにハジメがいるんだから!」


 俺は、軽く微笑んだ。ベッドから立ち上がる。


「そうだな。俺たちは負けない。――ディルバがどんな奴かは知らんが、どんな奴だったとしても、俺たちは負けない!」


 ありがとよ、コノハにマイ。もし、お前たちがこの場にいなかったら、俺はどうなっていたかわからなかったぜ。


 窓の外では、相変わらず、星がたくさん見えた。


 滅茶苦茶きれいに見えた。


 俺には仲間がいる。昔は、いなかった仲間ってのがいる。


 ――それはどんなものなんだい?


 そんなもの分かるだろ。自分で考えろ、質問者。


さてさて、課題がたまってきた

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