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壱の魔術  作者: 川犬
第2章
31/38

無魔術師-14

また一ヶ月ほど間を開けてしまいましたね。。。

でもまあ、無事テストやら漢検やら模試やら、すべて終わってくれたので、それで良しとします。あ、いやさせてくださいw

@@@@@



 キュイにまたがってる途中、俺はできるだけわかりやすく且詳しく、マイに今回のことについて説明した。マイは、「ふーん、そうだったの」だと言って、意外と普通な顔をして納得していた。


 本当に意外だな。俺は、てっきり激怒してルフィーナを刺し殺すのだとばかり思っていたのだが。いや、そこまではさすがにないか。


「でもね、」


 マイは、付け足すように言葉をつづける。


 お、刺し殺すか? ってバカか俺は。そんなわけないだろう、とさっき思ったばかりなのに。


「コノハに謝りなさい。あんたも、人でしょ? それだったら、謝る義務ぐらいはあるんじゃないかしら」


 ルフィーナを見ると、ルフィーナは目を細めて、口を閉じたままだった。


 まずいような気がする。


 それから、少しの間があり、ルフィーナはふっと微笑み、

「そうだな。そういえば、謝罪してなかったな。――すまなかった、コノハ」


 コノハは、俺の予想とは反した行動をした。


「いえ……、謝るのは、こっちです。ごめんなさい、ごめんなさい……」


 これは予想外だった。コノハは、一体何に対して謝ったのだろうか。それを俺は聞こうとしたが、口を開けたところで止めた。聞いちゃいけないことかもしれない。ほらマイだって、何も聞こうとしていないじゃないか。いや、もうすでになぜ謝ってるのか知っているのかもしれない。だが、俺はそれでも聞かなかった。


 何か、悪いような気がしたからだ。なんでだろうな。


「はいはい、じゃ、この話はもう終わり! もうすぐ、着くわよ!」


 マイが、さっさとこの重たらしい空気を入れ替え、

 そうして、あっという間にオルタースに到着した。



@@@@@change



「え? ルフィーナは、戻らないの!?」


「ああ。もう向こうでの任務は果たしたのでな」


 オルタースについて、いろいろと変えるための準備を済ませ、国王からの謝罪伝言がきて、ひと段落ついたところで、マイとコノハとハジメは、あの世界に戻ることとなったが、我は戻らないと言った。別に、戻ったってあんなところに我の居場所なんてないし、この世界のほうが居心地が幾分良い。向こうの世界は、我には少しハードルが高すぎる。学校では、同級生どころか、他の学年の生徒に。囲まれるどころが、押しつぶされそうになり、……我はこれ以上耐えられん。戻りたくはないというのが、本音だ。


「……分かったわ。それじゃあ、神判隊ジャッジメントポリスのお仕事がんばってね。それじゃまた」


 マイは、我に握手を求めてきた。我は、何の迷いもなく、その手を握り、離した。


 そしてまた会えると確信したような表情で、消えた。


「ルフィーナ、もうコノハをどうこうしようとするなよ」


 ハジメは、まだ我を許していないのか、少々口調が厳しかったが、それも仕方がないことだ。


「ああ、わかってる」


「それじゃあな」


 ハジメは最後になってやっと許してくれたようでふっと微笑んで、消えた。


「ルフィーナさん……。本当にごめんなさい……。でも、私には何もできないことだったんです。私は、下のものですから……」


 コノハ……。コノハは、我のすべてを見透かしているようだった。それもそうだろうな。なんといったって、コノハは『ゼロ』のメンバーなんだからな。知ってて当然……だな。


「お前が気にすることではない」


「はいです……。それじゃあ、さよなら」


 最後まで本当に悲しそうな目をしたまま、コノハは消えた。


 ……、安心しろ。おまえたちとは、きっとまた、会える日が来るだろう。



 残念ながら、敵としてなのだが。



 我は一息ついた後に、すぐにとある方向をぎろりと睨んだ。


「おい、シン。いつまでそこでこそこそしてるんだ。いい加減出て来い」


 周りに人間がいたなら、おそらくその人たちは我のことを怪奇そうな目で見ることだろう。ここは、オルタースの唯一の出入り口。周りには、建物なんてものはまだあまりないところだ。だから、怪奇そうな目で見てくるに決まっている。


 我は、しばらく睨み続けた。


「出て来いと言ってるんだ、我を待たせるな」


 初めから、知っていた。シンが我のことを尾行しているということを。マイではなく・・・・・・、我を尾行しているということを……。理由だってわかっている。それは、相手の組織に、我の、我の弟がいたからだ。


「ばれていましたか」


 何かの魔術を使っていたようで、シンはそれを解除して我の正面にいきなり姿を現した。ニヤケ顔で。


「当たり前だ。初めから、わかっていた」


「でしょうね」


 我は、強い視線をシンに浴びせる。シンは、相変わらずにやにやしていた。


 そこで、我の脳内ですべてが何の予期もなく、すべてがつながった。


 ……ふざけてる。この国はふざけている。いや、この国の上部のニンゲンドモが、ふざけているんだ。

 今回の任務に、なぜ我を起用したのかがわかった。


「それよりも、」


「なんだ?」


 それは、

「弟、あれでよかったのですか」


 ……そう、弟が相手の組織にいたことが上部のニンゲンドモは知っていたから、いや、厳密に言うと、オルタースに幾度となくドラゴンを使って攻撃してきたのが、我の弟だと判明したから、だから、我に弟と接触するように仕組んだ。


 ふざけてる……!


「……うるさい」


「弟を殺してよかったのですか」


「うるさい黙れ!!」


 シンは、近くの数少ない建物に寄りかかり、

「まあ、でも感謝してますから。ありがとうございます。これで、例の裏組織の情報が増えました。しかし、もうすでに、あの基地は抜け殻なんですがね」


 クフフ、と笑い声が聞こえてくる。


「……? どういうことだ」


 我は少し冷静を取り戻して、それから、聞いた。


 まさか……、もうすでにあいつらに感づかれていて、それで、それで、それで――、

「そのままの意味ですよ。事前にあの方たちは避難していましたよ」


「……お前は、それを見て、なぜ追わなかった」


 我は、シンを睨む眼力を強めた。


「私の任務は、あなたを監視することでしたから。もう終わりましたがね」


「………………」


 我は、戦闘態勢に入る。


 いつもは、こんなことじゃ、頭に血が上ったりしない。……今日の我は、いつもよりも何かがおかしいようだ。それも、当たり前だな。1つ足りないのだから。今日、1つ大切な物を失ったのだから。それも、自分の手で。だから、シンが憎くてたまらない。


 そんな我の様子をシンは困笑しながら、

「っと、無駄な争いは、よしましょう。ほら、ハジメ君やマイさんやコノハさんをあのループ魔術がかかったところから、出してあげたのですから、これでチャラです」


 ハジメ達を助けたのもこいつだったのか。……くそ。


 我は、力を抜いた。すぐに、冷静さを取り戻す。


「……分かった。だが、次はないと思え」


 本当は、今すぐ殺したい気分だ。だが、『ゼロ』の連中をわざと逃したのも事実なのだが、ハジメ達を救ったのもこれまた事実。だから、我はやめることにした。


 シンは、にやりと含み笑いをした。


「ふふふ、それでは」


 そして、フッと消える。


 我は、誰もいない街中で、ひとり立ち尽くしていた。手に力を入れすぎて、血が流れてきている。それは、恐ろしく痛いものであったが、今の我にはそんなものどうでもいいことだ。本当に。


「……ッゥゥウッ! アァア……ァ」


 それから、我は女の子のように、ボロボロ泣いた。




@@@@@change



 早朝。早朝になってしまっていた。俺は、ベッドの横の小さな小さなスペースで立って、「はあ……」と溜息をついた。


 体のあちこちが未だに痛い。深い傷などは負ってないものの、かすり傷があったり、あざができていたりと、俺の体がネトゲ生活をずっと続けているやつの体ように悲鳴を上げていた。


 そこで、俺は、ベッド上で、帰ってきてから即効おやすみモードに突入しやがったマイとコノハを麻薬中毒者もびっくりなくらいの虚ろな目で見る。


「…………」


 また厄介事に巻き込まれた……。でもまあ、こいつらがまた何かの事件に巻き込まれることなんて予測していたんだがな。なぜかって? そりゃあ、まだコノハが所属していた『ゼロ』の連中は捕まっていないんだぜ? だから、いつかコノハが襲われるような感じになることは予期できていたんだ。それを俺がすぐに守ってやれなかった。それで、ここまでの大ごとになった。それだけの話なんだろうな……。


 もう、さすがにないよな。コノハが危険にさらされるようなことが。マイが危険にさらされるようなことが。……いや、やっぱり、まだあるのかもしれない。そしたらその時、俺はこいつらを守れるのだろうか。今回みたいにうまくいくのだろうか。そうとは限らない。……ッ。


 そんな感じで、俺がマイとコノハを見ながら自問自答を繰り返していると、パチリとマイの目が開いた。そして、目があった。


 即効、思考が遮断された。


「……えと、おはよう」


 ぎろりと、睨まれる。


「何。私の寝顔を見てんのよ」


 ひぃ。


 はて、……どうこたえましょうか。俺が、マイとコノハのことについて自問自答を繰り返しながら、ずっと見ていたと答えても信じてもらえない可能性が高い。いや、間違いなく、「うそつけしね」のような類の言葉をゲリラ豪雨のように浴びせてくるだろう。俺に限らず誰だって、びしょぬれにはなりたくない。


「偶然だ。たまたま目があっただけさ」

 と、俺は言おうと思ったが、それもやめた。「うそつけさっきからずっとみてたでしょカス」だとか言われる可能性だってあるしな。


 俺は、なにも答えることができず、しばらく時間が経った。


 マイは、何を思ったか、俺から目をそらした。


「……私の寝顔どうだった?」


「は?」


 マイは突然意味不明な言葉を発してきた。今までの会話から、どのようにしたらこの文が読まれるのだろうか。……虚を突かれた。


 これで、不細工だったとか言ったら、殴られるの確定で、可愛いと言っても殴られるの確定だな。くそう……仕方がない。ここは間を取って、

「……普通だったぞ」


「……あっそう!」


 そうおっしゃられながら、マイは俺を蹴った。下から上に蹴り上げてきた……!


「ガッフウ!? な、何すんだよ!!」


 予想以上に痛かったもんで、俺は涙目になりながら、マイを軽くにらむ。


 と別方向から、もぞもぞと体を動かす音が聞こえてきて、

「むにゅむにゅ……ん……どうしたんですか……?」


 コノハが起きてしまった。それをいいことに、マイはコノハに小声で何かをつぶやく。コノハの眠たそうな目が見開いて、俺のほうを見てきた。


「ハジメ君!」


「は、はい!」


「最低です!」


「は、はい?」


 マイの野郎。一体何を吹き込んだんだ! あのとってもとってもやさしいコノハが俺の敵になり、お前の見方になるなんて……!


 俺は、後ずさりしようとしたが、少ししたところで背中は壁と密着たーいむだ。


 うあああああ!?!?!? 嫌な予感がする!!!


 マイとコノハが立ち上がり、俺のほうへゆらりゆらりと歩み寄ってくる。お前ら、Tウイ○スにでも感染されたか!




 このとき、俺は恐怖なんて微塵も感じてなかった。むしろ、楽しくって楽しくってこれがずっと続けばいいとさえ思っていた。


 ふん。平和だな。本当に。



@@@@@change



 ろうそくが、灯されている一室。そこに、4人が再び集合していた。


「あの裏組織は『ゼロ』と言うそうだ……」


 上品やせ男は、小さなため息を上品に吐く。


「『ゼロ』だと……! 一体何が目的だというのだ!」


 コロイは、ばんばんとテーブルをたたいた後、頭を抱えた。


 その隣で、眼鏡男は、コロイにわずかに憐れんだ視線を浴びせながら、


「『ゼロ』と言えば……やはり、無魔術師のことなのでは……?」


「!? そういえばそうだな!」


 白髪男は、手を額にやり、

「ついにあいつらも無魔術師の存在に感づいたか……」


「無魔術師、つまり、ハジメの存在をか……」


 上品やせ男も脱力気味になる。


「これは、即急に処置せねばならんな。誰かいい案はあるか」


 白髪男が自信ありげに手を挙げる。


「私にいい案がある」




 To Be Continued...

今回で、無魔術師終わりましたねw

次回からは、第3章に突入ですw

第3章のタイトルは……次回まで明かしません。でもまあ、これだけは言えるでしょう。

次回は、7月7日の話だあああ!!!

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