無魔術師-12
おまたせでございます!
『お姉ちゃんっ』
僕には姉がいる。いつもいつも、そんな姉に甘えてばかりいて、そんな僕を姉はかわいがってくれた。そんな頼もしく大好きな姉は、何かがあるとすぐ泣きだす僕を慰めてくれたりもした。その時、僕はまだ甘えん坊だった。
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僕は11歳になっていた。姉は14歳で、ずいぶん大人っぽく見える。
僕は、すっかり、小さい頃の僕とはずいぶんと成長していて、姉のことを『姉さん』と呼ぶように変化していた。
10歳の時から、僕は魔術の訓練を始めた。もうすでに1年が経過しているけど、僕は周りの人間たちよりもへたくそだった。初級魔術ですら、上手に使いこなせない大バカ者であった。
ある日、…財産をすべて失った。盗まれたらしい。それで、姉が神判隊に調査をお願いしたのだが、断られていた。
ちょうど、戦争をしていて、僕たちよりもその戦争を優先したのだ。
姉は、何かを決心していた。僕は、何を決心したか知らないはずなのに、なぜだかかなり不安だった。
近くの成金に、僕は預けられた。僕はその時大泣きした。僕の泣き顔を姉は見ないようにして、逃げるように走り去った。
あの頃の僕は、姉が僕を見捨てたんだと思っていたが、1年ぐらいたってなぜ離れていったのか、ここに預けて行ったのか、すべて聞かされた。
そして、僕は誓ったんだ。
これ以上、姉の迷惑にならないように、強くなって、そして、死ぬわけにはいかない、と――
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「キュゥゥゥーーーッッ!」
僕の相棒がやってきた。バッゴォーンッ! と壁を崩壊させながら、僕のもとへ前進してくる。僕の大切な仲間だ。
キュイが前進してくるのをルフィーナは、見ていたけれど、顔の表情を見る限り、余裕が残っていた。
「ここが、お前の組織の本拠地なんだろう? 壁を崩壊させるなんてことしていいのか?」
「そんなの、関係ない……!」
手をキュイに見えるように、動かした。これによって、キュイにどんな攻撃をするか命令する訓練を昔たくさんしてきたんだ。キュイが、行動に出るはずだった。しかし、
「どうした? 何がしたいんだ?」
キュイは、僕と相手の顔を交互に見つめて、そこから動かなかった。
「どうしたんだよ、キュイ! このサインが、どんな攻撃命令か忘れたの!?」
そう叫んでも、キュイはただただ僕の顔を見つめているだけだった。悲しそうに、ただずっと、こちらを見つめている。
「……ッ!」
キュイに裏切られた。仲間だと思っていたのに……! 仲間だと……ッ!
「もういいよ。キュイは、この人を殺したくないんだね? だったら! だったら、僕の力だけでやってみせるよ!」
キュイが裏切った。姉さんと離れ離れになってからは、砂漠の中で弱っていたのを助けてあげて、そのあと、友達として、僕の友達として過ごした日々を忘れてまで!
僕は、シュッとナイフを取り出した。
ルフィーナの表情は変わらなかった。
「お前、ナイフをたくさん持ってるんだな」
「そうさ! 僕は、こんな場面に遭遇することを先に考慮してナイフはたくさん準備しておいたんだ。これで、……誰だか知らないけれど、お前を突き刺すッ!」
「やってみろ」
そこで、僕の脳が沸騰した。
「ウオオオオォォオオオォオオオオッッ!!」
僕は、相手の心臓めがけてナイフを一突きしたが、サッと避けられる。それでも構わず、僕はナイフを振るい続けた。
「動きに無駄がありすぎるな。少し、頭を冷やせ」
相手はそう言いながら、風魔術を発動させた。ゴウッと風が巻き起こり、小さいものなどはすべてその風の渦に吸収されていく。
その風の渦が、塊と化し、僕めがけて弾丸のスピードで、襲ってきた。当然、僕は魔術師でもないので、避けることができず、命中してしまう。それでもなんとか、急所に当たることだけは、免れたようだ。
「ゴフッゥッ!」
力の差は、歴然としていた。相手は、魔術師だ。それも、上級魔術師。勝てるはずがないと、最初からわかっていた。でも、降参するわけにはいかない。もし降参したら、任務失敗でこの組織から抜け出さなければならなくなってしまう。そうすれば、一巻の終わりだ。
姉さんのためにも、僕は生き続けなければならない。死んで……タマルカッ!
「ほう、意外とタフだな。普通なら、その攻撃を受ければ気絶するぞ?」
僕は、無言で相手をにらみつける。そして、ナイフをもう一丁取り出した。
「二刀ならどうかな……?」
「無駄だ」
即答された。でも、その言葉を無視して、僕は再び突っ込む。
「無駄だといっているんだがな」
予想通り簡単に避けられる。そこで僕は、3丁目のナイフを取り出すと同時に相手目掛けて、投げつけた。ナイフは、きれいな直線を描き――
「だから、無駄だといっておるのに」
――風魔術で弾かれた。
僕は、すぐさま相手から距離をとろうとする。だけれど、本当に甘かった。
「風よ刃と化し切り刻め」
「ッ!??」
一瞬の出来事だった。一瞬で、僕は血まみれになった。痛みは、すぐには来なかった。だけれど、数秒後、突然激痛が走ってきた。
「ヴアァァアガァアヴァアヴヴヴアアァアアッッ!!!」
呼吸する暇さえ与えずに、相手は追い討ちを仕掛けてくる。そのたびに僕の心の中の炎が弱まっていく。
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突然風魔術の嵐が止んだ。僕の体力はもうすでに限界値を超えていて、呼吸すらほとんどできない状態だった。体が悲鳴を上げていた。
「ングッ!」
それでも、僕は立ち上がった。
死ぬわけにはいかない死ぬわけにはいかない死ぬわけにはいかない。
「一つ聞くが」
「な……にッ?」
「お前に姉はいたか?」
僕の心臓がドクンと大きな音を上げた。少し血を吐き、それを何とか手でふき取りながら、答えた。
「……いた……よッ。僕の姉さんは、―――――っていうんだ……」
「そうか」
相手の意図が読めなかった。どうしてそんなことを聞くんだろう? というより、どうして僕に姉さんがいるのかなんて、的確に聞いてこられたんだろう?
僕はドサッという音を立てながら、倒れた。もうすでに、カウントダウンが始まっていた。
「お前はレイドだな?」
返答できなかった。僕の名前がなぜ知られてしまっているのかも疑問に思ったけれど、それ以前に、声を出すことすらできない状況だった。
「あの時は、勝手にお前の元から離れてしまってごめんな」
まさか。まさかまさかまさかまさかまさか。いや、そんなはずは……。でも……!
「ネ……え……さン?」
僕は、必死に声を出そうとして、何とか出せた。確認したかった。相手が本当に僕の――
@@@@@change
「ネ……え……さン?」
我の目の先で、血まみれになって倒れている者が必死になって声を発してきていた。
声を発してきたのはいいものの、その後、力が突然抜けていっていた。どうやら、炎が消沈したようだ。
我は、応答がないのはわかっていたが、答えた。
「そうだぞ、レイド」
そして、その場から我は去った。
こんなものじゃ、我はなんともない。どうでもいいことだ。たとえ血のつながった弟だとしても。かわいい弟だとしても。
我は、我自身の手を見た。
手が、
震えていた。
そして、勝手に涙が流れ出してきた。
「な……なんだッ? なんだ?」
声が震えていた。涙をぬぐってもぬぐっても、どんどん湧き出してきた。ぶるぶると体全体が震えだしていた。心がもやもやしていた。
我はいったいどうしたんだというんだ? なぜ泣いている。なぜ震えている。なぜ……!
そこで我は気づいた。取り返しのつかないようなことをしてしまったことに。
『……いた……よッ。僕の姉さんは、ルフィーナっていうんだ……』『ネ……え……さン?』
我は、涙を乱暴にふき取った。何をやったんだ、我は。
「キュウゥイ?」
後ろでドラゴンの声がした。その声がせめてもの救いだった。
我は、後悔していたのだ。ものすごい大罪を犯してしまっていたのだ。……ふん、姉として失格だな。
うーん。どうだったかな?
この話は、あと3,4話ほど続くけど
今回の話は……うーんまだまだだなあ。
てなわけで次回!ハジメ達が――!??
追記:すんません。定期試験と模試と部活の大会が連続であるので、少し、休止いたします;;