無魔術師-10
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私は、オルタースの外の砂漠地帯にルフィーナとともにいた。ハジメがどこに連れ去られたか不明なんだけれど、ルフィーナはそれは大丈夫だといった。
「何か、ハジメの所持品があればいい。それで、」
ルフィーナは、軽防具の中から、ある石を取り出した。
それは魔石。石の中に、泡が入り込んでいるところを見ると、弱泡石だ。
ハジメの魔石は……、同じ弱泡石。ということはまさか……!
「ハジメの魔石だ」
「それで、…探知を使えばいいのね!」
探知というのは、基本魔術の中でも、結構難しい分類に入る魔術で、見つけたい人の何かを持っていれば、そのにおいでその人の居場所を直感的に導くという魔術。
「ああ、そうすればハジメの居場所は突き止められるだろう。それと、裏組織の本拠地も」
私は、少しだけ安心した。これで…なんとかなるかもしれない。でも、まだ完全な安心は、できない。だって、相手はオルタースを憎む人々が集まった組織なんだから、ハジメを人質にするかもしれないじゃない! いや……もっと最悪なことになる可能性も無くはないわ……。
私は、まっすぐとルフィーナを見て、
「今すぐ行くわよ! 手遅れになる前に!」
「分かった。今すぐ行くとしよう」
私は、気づいていなかった。それも当り前。でも、さっきの会話におかしな点が1つあったことに気がつかなければいけなかった。
どうして、ルフィーナがそのハジメの魔石を持っているのかを。
「空間移動はできるか」
「あたりまえじゃない」
それから、ルフィーナは、探知を使った。
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ルフィーナとマイのやり取りを建物に隠れて、見ている者がいた。
……なぜ、私が隠れながら、マイさんとルフィーナさんを監視しているかというとですね、神判隊の上の者から頼まれたからなんです。別に、私の本意が私を動かしているわけではありません。ただ、面白い展開になってきましたね。今回の事件は、すぐには解決できなさそうです。まあ、私が加わって手伝ってもいいのですが、マイさんに実は、異世界の人でした、だなんて言えるはずがないですからね。ばれたら、いろいろと面倒です。
おや。私が、心の中でいろいろと呟いているうちに、動きがありました。マイさんとルフィーナさんが、探知の魔術を使ったようです。それで、……今度は、空間移動ですか。
それでは、私も行くとしましょう。
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俺は、辺りを見渡した。
ここは、もうすでに『ゼロ』の本拠地内で、……あまりにも広くてゴージャスな感じの部屋に入った。レイドに、今日はもう疲れただろうからここで寝泊まりしてと言われて、来てみたもののゴージャス過ぎて落ち着けない。あのオルタースの牢屋(?)よりも高級感あふれている。
そこで、マイルームと比較してみる。俺に家は、まあ広いがそのスペースにベッド3台、テレビ、などで埋め尽くされているので、逆に狭い。それで、この部屋はというと……、ベッド2台、高級そうなテーブル、などなど恐ろしいぐらい素晴らしい。毎日ここに住みたくなってしまう。
と、そこで、俺が感銘に浸っていると、俺の真後ろの扉が開く音がして、
「話はおわりました」
コノハが入ってきた。
コノハは、ついさっき、ここに来る前に、リーダーに一度顔を出しておけと言われたようで、サササッと消えて、それで、今戻ってきた。
「ああ、……ところで、ここゴージャス過ぎないか?」
異常なくらいに広い。
しかし、コノハは、キョトンとした顔で、「どこがですか」と逆に聞き返されてしまった。ということは、つまりあれだ。この世界では、これがデフォルトなのだ。そう思ってくれば来るほど、なんだか損した気分になってくるから、さっさと忘れることにする。忘却○城に行けば、すぐに記憶なんて飛ぶだろう。まあ、行かないが。
俺は、とりあえず、ベッドに腰かけた。さすが、本拠地。ちゃんとベッドを二つ用意してくださる。これなら、前のマイの時のような、ハプニング満載のフラグは立たないだろう。あれは、ある意味死亡フラグだった。もう、あんなものは、経験したくない。というか、忘れたい。……忘れたいこと多いな、俺。
「もう寝るんですか?」
コノハが、俺に近づいて、そう話しかけてきて、俺は首を横に振り、無理やり話題を寝るから、替えることにした。
「いや、まだ寝る気はない。……ところで、元の世界に戻る方法は、やっぱり魔石で戻るしかないのか?」
「……はい。すみませんです。巻き込んじゃって…」
「ん?あ、俺は死なずに元の世界に戻れる可能性があるのなら、別にこれくらいのことどうでもいいぞ」
コノハは、こちらを驚いたように見てきた。何を驚いてるんだ。これぐらい普通のことじゃないか。
「ありがとうございます。…そういわれると、なんだかほっとします」
「礼ならこちらからも言わせてもらう。コノハ、死なないでくれてありがとな」
「ふぇ!?…えと、あのその…はいです」
コノハは、頬を少しだけ赤く染めた。
……。なんだろうこの反応は。俺は、当たり前のことを言っただけだ。なのに、こうもまるで、コノハが俺のことを好きなのかと思わせるようなしぐさをするのは、勘違いするからやめてほしい。まあ、俺とコノハ以外、誰もいないが。
ところで、
「なあ、ひとつだけ聞かせてほしいことがある」
「は、はい?なんですか」
俺の声が真面目な声になったからか、コノハもすぐに真面目モードになる。
「俺とお前は、ちゃんと元の世界に戻れるんだな?」
コノハが、真面目モードから、即効、笑顔モードに切り替わった。なんだ?そんなに変な質問だったのか?
「それは、安心してください。ハジメ君は、ちゃんと戻れます。さっき、話は付けてきました」
そうは言ったものの、コノハの表情はどこか悲しそうだった。
「そうか」
俺は、それ以上の追及はせずに、そのまま横になった。
……。コノハが、お休みなさいと言って、隣のベッドに移動する。
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俺の心臓はバクバクいっていた。それの理由は、コノハが隣のベッドで寝ているからではない。コノハが、隣で寝ている件に関しては、1週間ぐらい元の世界で寝ていたので(とはいっても、マイが強引に俺の部屋にやってきたことが始まりだが)、昔から、適応能力高めな俺は、もう慣れてしまっている。そこではないのだ。
俺は、さっきのコノハの言葉をもう一度よく思い出してみた。
『それは、安心してください。ハジメ君は、ちゃんと戻れます。さっき、話は付けてきました』
ハジメ君は、戻れる。……。
それは、俺だけが戻れるという意味なのだろうか。それとも、コノハも含めて言ったのだろうか。
「……」
コノハが、寝る前に魔術で光っていたらしい天井の光をふっと消してから、しばらく時間が経過していた。コノハは、気持ち良さそうにすやすやと小さな可愛らしい寝息をたてていた。
今コノハに聞くのも迷惑物なので、今日は聞かないこととしよう。明日があるしな。
俺は、昼食以来、何も口にしていないので腹は減っているが、今はそんな贅沢を口ずさむ必要性は皆無だ。さっさと寝よう。
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ハジメとコノハが就寝した30分後。カサッと小さな物音を立てながら、ハジメに近づいている者がいた。そっと、そっと、しかし、徐々にじりじりと。
その者が持っているものが、外のでこぼこの星が放っている微弱な光を反射させている。ギラリと光った。
その者はどこか悲しげに、
「ごめん」
そして、ぎらりと光を放っている鋭利な物をハジメの首に向けて―――
「そこまでだ!」
背後から、怒声が聞こえてきた。
次回、物語は、ぐるぐると動きだします