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壱の魔術  作者: 川犬
第2章
26/38

無魔術師-9

こんな時間に…だとか言わないでーw

@@@@@change



 私は、異世界に時空移動した。そうして、きょろきょろと騒がしいこの国を不思議そうに見回って、兵士にハジメというものは知らない?と聞いたところ、なぜか捕えられた。それで、ドタバタ暴れるもむなしく、あっさりと捕まり、ある場所に連行された。その場所とは、オルタースの外。


 そこには、ルフィーナが深刻そうな表情で、こちらを見ていた。


 ルフィーナは、兵士に向かって、こう言った。


「御苦労」


 私は、さっき暴れていたおかげで、息が上がっていたが、そんなもの気にしてられなかった。


 …どういうこと?ルフィーナが兵士に私を連れてきたことに対して、礼を言うなんて…。ということは、ルフィーナは私に何かするつもりなのかしら。


 ………。


 兵士は、私を地面に立たせて、それで去って行った。


 私は、ルフィーナを睨みつけた。ルフィーナは、私の視線に気がつくと真剣な表情になった。


「いま大変なことになっているんだ」


「え?」


 本当に真剣な表情で言われたので、思わず、疑問形になってしまった。


「諸事情あって、ハジメとコノハをこちらへと連れてきていたのだが、何者かに連れ去られた」


「…詳しく教えて」


 さっきの思っていたことを、脳内の端っこに移動させた。それよりも、大事なことがあるから。


「ああ。今から20分ほど前のことなんだが―――」


 ルフィーナは、淡々と話しだした。


「ハジメとコノハをこちらで保護していたのだが、この国へ侵入する者がいて、そいつに連れ去られた。それで、侵入者は目撃情報を統括してまとめたところ、おそらくこの国が気に入らないという人々が集団化した組織が最近結成された奴の中の誰かだということがわかった。それで、今そのものの手がかりを探している」


 ハジメとコノハが連れ去られた…。


 冷静になれば、おかしな点に私は気がつくことができたかもしれないのだが、今はそうはしていられない。ハジメとコノハに何らかの危険が迫っている。ただそれだけで、心のポンプは激しく動き出す。


「私も…」


「ん?」


 私は、きりりとした目で、ルフィーナを見た。


「それなら、私も手伝うわ!」


 そういうことを、私がしなきゃ誰がするっていうのよ!上等よ!やってやろうじゃない!その裏組織をつぶしてやるんだから!


「いい心がけだ」


 私は、ルフィーナを見ずに、砂漠が続いている遠く遠くを見ていた。


 その時、ルフィーナは口の両端をわずかに吊り上げていた。



@@@@@change



 寒い。今は、もうすぐ春から夏に移行する時期なのだが、熱いのでも蒸し暑いのでもなく、ただ寒い。その理由は、まあお分かりだろうが、ここが異世界アナザーワールドだからだ。確か前回来たときも、寒かった。しかし、前回よりも今回のほうが異常に寒い。なんだこれと、言わざるを得ない寒さだ。まったくなんだこれ。


 だが、俺にはその寒い理由というものを元から理解していた。


 ビュウゥゥゥゥ…。


 冷たい風が俺の頬に当たる。命中率100パーセントで当たる。それは寒いを通り越して、痛いに変化していた。


 そう、ここは、空なのだ。俺とコノハと1名の青年(俺たちを助けてくれた)はドラゴンに乗っていて、ドラゴンは只今飛行中である。


 ………………。


 誰も口を開かない。俺は気まずいので真っ暗で1つを例外にして何もない夜空を眺めていた。ちらっと青年の顔を俺が見ると、青年はこちらを見ていた。


 なんだなんだ。俺の顔にゴミでも付いているのか…?そんなわけないか。


「どうして、助けてくれたんだ?」


 俺は、この無言地帯から脱出しようと試みた。


 青年は、俺の声を聞くなり、「それは、コノハが僕たちの組織『ゼロ』のメンバーの一人だからだよ」と即答してくれた。なんだ、それを言いたくて、俺をじっと見てきたのか。照れるじゃないか、はっはっは。…ああ、一応言っておくが、今の一言は別に俺はBLだ!ということではないので気を付けてほしい。


「そうか。…そういや、お前なんていう名前なんだ?」


 一瞬、再び沈黙ワールドにINするところだったが、なんとかしなくて済んだ。危ない危ない。


「僕?僕はね、レイド。レイド・ドラエバ」


 やはり、外人みたいな名前だ。あ、いや、正確に言うと異世界人か。


 俺は、暇そうにしているコノハに話を振る。


「コノハ、お前は『ゼロ』に所属していたのか」


「…私が所属していた頃は、そんな組織名なんてありませんでした。でも、レイドは、この組織の中にいたので、この組織に所属していたことは、間違いありません」


「そうか」


 レイドとやらを見てみたが、どうやら悪い奴じゃなさそうだ。しかし、悪い奴じゃないとは言っても、1つ引っかかる点がある。


「じゃあ、俺の世界ヤングワールドでコノハが召喚石サモンズストーンを自分の命を捨ててまでも使おうとしたのはなんだ?」


 レイドは、ゆっくりと口を開いた。


「それは――」


「上からの命令です!そうですよね、レイド君?」


「…うん。そうだね」


 ……途中から、コノハが乱入してきて、無理やりに、頷かせようとしているように見えた。


 何かある。俺の心に少しだけ霧がかかった。本当に上からの命令なのだろうか。俺にはそうは見えない。コノハは、上からの命令だけで、死という覚悟ができているのだろうか。あやしいものだ。



@@@@@



 しばらくして、ドラゴン(キュイというらしい)が飛行をやめて、地面に降り立ったので、俺とコノハとレイドは、キュイから降りた。


 周りを見渡してみるが、相変わらずあたり一面砂漠だ。建物どころか、草すら生えていない。


 そんなさらっさらの砂の上を俺たちは、歩いている。


 俺は、前を歩いているコノハとレイドを見た。…どうやら、どこに行くのかもわからず、ただ黙々と歩いているのは俺だけのようだ。そこん所、少し悲しい。


「あ、そうだ」


 歩きながら、レイドはこちらを振り向かずに、言葉を発した。


「ん?」


 くるりとレイドは、半転した。そして、後ろ歩きになりながら、

「その恰好じゃ、完全に怪しまれるよ」


「ん?この恰好がどうし…あ!」


 自分の格好を見てから、思わず声をあげてしまった。


 オルタースの国の兵士の鎧。腰には剣。ぎらりぎらり。


 ………。


「すまない。何か、これの替えはないか?」


「あるよ。ほら」


 レイドは、手を上にかざすと、ぼとぼとと衣服類が大量に落ちてきた。その数、およそ100枚。多すぎだ。そんなにいらない。


「好きなの選んでいいよ」


 俺は、わかったと言いつつ、大量の衣服類をあさった。


 がさごそと衣服をあさる大合唱だけが、しばらく聞こえる。決して、いい音色ではないのでご注意くださいだ。


「決まった?」


「よし、それじゃあこれにするか」


「どれどれ?」


「これだ」


 俺は、レイドに青っぽい衣服を見せた。なぜ、そのように衣服の説明を簡略化したのかというと、この世界アナザーワールドの衣服が俺の世界ヤングワールドの衣服とは、盛大に異なっていたからである。説明しづらい。


「へ、へえ…、ずいぶんと変わってるね…」


「そ、そうですね…、変わってますね…」


 俺が選んだ衣服は、どうやらこの世界では大変変わっている代物らしい。まあ、価値観の違いなどがいろいろあるだろうから、俺はこの青っぽい衣服から変更するなんてことはしない。何せ、面倒だからな。


 ……?ん?まてよ…?


 俺は、重大なことに気がついて、衣服を持って、「……」状態になった。沈黙、完全沈黙。


「なあ……、どこで着替えればいいんだ?」


 その言葉を聞いて、レイドは、それは考えてなかったと俺を追い詰め、コノハが紅潮したことにより、俺は地獄へ落ちた。いや、落とされた。イヤアアアアアアアアアア!!


「そ、その、私は後ろ向いてます!」


 コノハは、手を頬に当てながら、俺が視界に入らないところまで回転する。うむ、124度左回転したな。まあ、そんなことはどうでもいい。ただの字数稼ぎだ。…ん?またなんか俺へんなこと言ったな。皆、気にしないでくれ。今のは、独り言だ。


「それじゃあ、着替えるぞ」


 なるべく早く、俺は着替える。スポッと、鎧を脱ぎ棄て、ササッと青っぽい衣服を着る。わずか、1分ですべてを済ませた。


「コノハ、もういいぞ。着替えた」


「は、はいです」


 コノハは、130度ほど右回転した。6度多い。


 コノハの近くで待機していたレイドは、立ち上がって、

「それじゃあ、もう行こう。すぐそこだから」



@@@@@change



 一方、『ゼロ』の本拠地では、リーダーである鬚を長く真下に伸ばしている男が、通信魔術である意思疎通テレパシーをとある青年としていた。


『――いいか?そのハジメというものは、危険だ。いったんこちらに連れてきて、泊まらせてから、夜寝ている隙に暗殺しろ。今度は失敗は許されない!あのコノハのようにな!』


『はい。大丈夫です。暗殺ぐらい、たやすいものですよ』


今眠い

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