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壱の魔術  作者: 川犬
第2章
21/38

無魔術師-4

予定どおりに更新完了

@@@@@change



 青年はでこぼこした星しかない闇色の暗黒夜空にドラゴンに乗って飛んでいた。気温は10度前後で、寒期の今では当たり前の温度だ。その寒さに慣れている青年は真剣な表情で前方を見据えていた。


 そこは、なにもなかった・・・・・・・。ただ砂漠が続いているだけだ。だが、青年は確かに何かを目でとらえていた。


「見つけちゃった」


 ドラゴンがキュウ?と声を発したが、青年は何も答えなかった。それが日常茶飯事での出来事なのか、ドラゴンの――キュイのほうもサファイア色の目をその砂漠が続いているはずの場所に戻した。


 青年は砂地だけでしかない場所を指差す。


「キュイ、その位置に攻撃を」


 キュウゥゥゥ!!と、キュイは吠え、周りの空気を瞬間的に吸い込んだ。息を吸い込むだけで爆音が聞こえる。恐ろしく大きい音だった。


 そのキュイの肺にたまった空気は一気に外に吐き出された。それが風の塊となり、刃と化す。


 そして―――


 異常なぐらいの音を立てて、風の塊は、砂漠には当たらず、空中に・・・当たった。


 その部分の空中が、突如、空間がゆがんで変色した。


 そこには何もなかったはずだ。だが、大きな町のようなものが現れた。


 その町は結界壁ディフェンスウォールのおかげで無傷のようだったが、青年は苦々しく、にやりと笑った。この町を破壊することが彼の目的・・・・ではない。


「これで、オルタースは犯人である僕を突き止めるために、神判隊ジャッジメントポリスを動かすだろうね」


 青年は、小さなため息をついて、キュイと共にそこから飛び去った。



@@@@@change



 街の中は夜だった。どこの国もそうだが、夜は必ずと言っていいほどに静寂に包まれる。静かなの

は、皆が寝ているからではなく、特殊な魔術で半径1メートル以上音源から離れるとそれが何も聞こえなくなり、姿すら見えないようにしてあるので、冷風以外の音はほぼ聞こえない。


 ただし、例外があり、それは王族や貴族と呼ばれる上人には適用されなかった。他にも、裏組織に所属する人々の中のリーダー格の者にも適用されない。これは、彼らが自らその音源から一定値離れると音が聞こえなくなる魔術を解除する力を持っているからだ。


 そんな静寂に包まれているこの国、オルタースの中心部にある立派な王城で、小さな臨時の会議が行われていた。


 とある一室。暗黒に包まれた部屋を照らすものはキャンドル10本。なぜそこで光系魔術を使用しないかというと、理由があった。


 この会議は、誰にも知られてはいけないくらい重要なもので、緊急事態の時にだけ開かれる臨時会議である。


「――相手の意図がわからん!」


 頭のてっぺんの髪の毛が少ない老人が円形のテーブルをバン、と叩いた。いらだたせたその声には焦りが含まれていた。そこへ、白髪の老人が手で制す。


「コロイ、落ち着け。野良ドラゴンが攻撃してきただけかもしれないだろ」


「だが!…いや、それはありえない!野良ドラゴンがあそこまで強力な風球を使うことはできない!結界壁ディフェンスウォールにひびが入るほどの」


「それはそうだが」


 うんざりとした口調で、白髪の老人は答えていた。


「最近結成したといわれている裏組織の奇襲なのでは?」


 眼鏡のようなものを掛けているまだ若い男性はそのような可能性を述べた。


 白髪の老人は、腕を組む。


「確かにあり得なくはない。だが、何のためにだ」


 眼鏡男は笑った。


「コノハを取り戻すためでは?それに、噂ではオルタース破滅計画・・・・・・・・・を立てているというしな」


「そうだ!きっとそうだ!」


 さっき、コロイと呼ばれた髪薄男はバンバンテーブルをたたきながら、応対する。


「そろそろ、コノハから情報を聞き出す時がきたであろう。では、神判隊ジャッジメントポリスのルフィーナを使うことにしようではないか。あのものなら、マイやハジメと面識がある」


 上品そうなしぐさでがりがりにやせている男が皆に提案する。


 コロイは大きな声で、

「ちょっとまて!この場合、シンに任せたほうがいいと思う!」


「それはやめておいたほうがいいのでは?」


「なぜだ!」


「後で使うために、この際とっておいたほうが最良の判断なのでは?ハジメとやらの監視人物を使うと後が面倒になる」


 コロイは、頭を抱えた。


「…そうだな。了解した!では、私が伝えておこう!」


 上品やせ男は、一息開けて大きな声で、

「それでは、これにて臨時会議を終了する」


 ふっ、とろうそくの灯が消えて、辺りが闇に包まれた。その中で、ごたごたと部屋から出ていく音が聞こえてきて、静まり返った。


 すべてが決まったその時だった。



@@@@@change



 西風高校の1年3組の中で、俺は腕を組んで、面倒くさそうな表情をして生徒たちがある一人の新たな転校生に集まっている光景を見ていた。いや、実際かなりめんどうくさい。そりゃもう、ゴジ○を3分以内に倒せと言われているぐらいにだ。


 今は、2時限目が終わって、休み時間中だ。だから、俺はマイと一緒にルフィーナにこの世界に来た理由を聞くために3組にきたのだが、


 ……ねえ?


「ルフィーナさんってどこの国からきたの?教えて教えてー!!」「あ、それ、私も知りたーーい」「俺も知りてえ」「うちもうちもー」


「お前たち、ちょっと、ま、っ!!押すな!我の腕がいでててて!!」


 見ての通り大人気なのである。ほらほら、俺の隣にいるマイも金魚みたいに口をパクパクさせておりますぞー?


 とまあ、俺と、その俺の隣にいるマイは、ルフィーナがこの学校の1年3組に転校してきて、それでなぜここに来たのかを聞こうと思っていたのだが…聞けない。なにしろ、ルフィーナに興味津々なやつらがわんさか蟻のように集まってきているから近寄ることすらできない。


 おそらく、ルフィーナがこんなにも人気があるのは、名前が外人で、赤髪であり、容姿がオ☆ト★ナだからなのだろうが、少しばかり人気ありすぎやしないか?クラス全員が集まってくることも無いのだがな。ほらほら、スネ○クみたいなやつとかジャガイモみたいなやつとか。


 ……ん?


 俺は目を凝らしてみた。よーく見ると今どこかで見たことがあるようなやつがいたようないなかったような。


「ルフィーナ!!おまいって、Sか?Mか?どっちが好きかぁああ!!」


「お前は初対面の人に向かって何を言ってるんだ!」


 ほらこの爆音。このツッコミ。


「おい、西車。それと、ポテト。おまえたちまでここに来ていたのか」


 俺が、半ばあきれ顔でルフィーナに集っている人間の中からそいつらの名前を呼んだ。


「答えてくれぇ!!」「だまれ!」


 …………。残念なことに、異様なくらいにうるさいこの教室で俺の声が入り込む余地はなかった。そう、声が届かなかったのだ。悲しいぜ。


 俺は腕を組んだ。さて、どうしたものか。


「はあ…。これじゃ無理だわ。仕方がない、またあとで来ましょ」


 隣で俺と同様に難しそうな表情をして、腕を組んでいるマイがあきらめの言葉を言い放った。


 これはもう、仕方がないな。人がいすぎる。人口密度が異常に高い。


 俺はくるりと1年4組の方向へと向き直る。


「そうだな。戻ろう。…えーと、次は古典か。また、プリントしてこなきゃならないのか」


 このお嬢様マイのためにプリントするんだ。感謝しろよー。


「…っ!い、いいわよ、そんなことしなくても!」


 今、歩きだそうとしていた俺の足がぴたりと止まった。


「いいのか?じゃあ、お前教科書はどうするんだ?いろいろなことがあってまだ持ってないんだろ」


 こいつは、転校してきてからすぐに、学校が謎の洪水の影響(俺のせい)で、休校になってしまい、まだ教科書とやらとかを教師から受け取ってもらってなかったんじゃないのか。昨日だって、俺にカセカセヨコセコノヤローだとか言ってきたしな。


「仕方がないから、今回はあんたに、その、み、み、み…」


 み?ミラ○ケッソといいたいのか?…いや、さすがにそれはない。それではいったい何だ?


 俺はマイのほうへ向いて様子を見てみた。


 マイは、肩に力を入れているのか、肩が上にあがっていた。緊張か?だが、何に対して。


「み、なんだ?」


「み、み、…見せてもらうんだから!」


「ほう、じゃあ俺の隣へ来い」


 そんなことに対しても緊張するなんて、よほどの恥ずかしがり屋なんだな、マイは。


「…わ、わかってる。ほら、戻るわよ」


「ああ」


 珍しい。やっとのことで、シンに近づくことを決心したのか。


 それで、俺とマイは3組から立ち去ろうとした。が。


「おい、ハジメ。ちょっと待て」


 冷静なルフィーナの声が聞こえてきた。俺の足がぴたりと止まり、振り返る。本日二度目である。ちょっと面倒くさいのである。


「なんだ?」


 俺は、質問の嵐に埋もれかけているルフィーナに近寄った。マイも俺の後ろからついてくる。


 埋もれかけているルフィーナは制服の内ポケットから必死になって、いつの手紙らしきものを取り出した。周囲の人間は、それでもお構いなしにルフィーナに質問の嵐をぶちまけている。…ルフィーナ信者だとか出てきそうな勢いだな。


 ルフィーナは、手紙らしきものを俺に、無理やり押し付けてきた。そういうと、言葉が悪いが、文字通り押し付けてきた。そりゃだって、人ごみが押し寄せてきているから、丁寧に渡すことなんてできないしな。


 俺は、ルフィーナから受け取った手紙を見て、それから、再びルフィーナの顔を見た。


「「…………」」


 一応言っておくが、これは俺とルフィーナが見つめあったって表現じゃない。周囲のルフィーナ信者どもが、一斉に俺のほうを無言で見てきたのだ。ある意味ホラーだ。ヤメテ、怖い。


 一人がこう言ってきた。


「ルフィたんから、手紙をもらったぞこいつ」


 そのニックネームはないだろう。しかもまだ、ルフィーナが転校してきて一日目だぞ。


 それからまたもう一人。


「俺たちのルフィたんを取り戻せー!!」


 それから、全員。


「「オッーーッッ!!」」


 俺ダッシュ。


「ちょっとまて!なんでそうなるんだ!?お前達おかしいぞ、おかしいぞォォーーッ!??」


 大体、俺達のルフィたんって何事だ。何度も心の中でつぶやくが、まだルフィーナは転校し仕立だぞ。


 マイは、俺の背中姿を見て、ぽかんと口をあけている。そして、「ばかね」と言い放って、教室へ去って行った。つまり見捨てられた。


 俺の後ろには、ルフィーナ信者が20名ほど。多すぎだろこれ。


 とにかく、3組内だけで逃げ回っていると確実に捕まること確定なので、廊下へと出ようとする。

 すると、後ろから、ルフィーナの声が聞こえてきた。


「それを、コノハに我からといって、渡しておくんだぞー?」


「なるほどコノハにか。わかった。わかったからタスケテクレェェェェッッ!!!」


「自分の力で何とかしてみろ。それではまたな」


 今のルフィーナの言葉を俺は脳内で自動変換した。


 …ピピピ。


 『いやだ』


 よし見捨てられた。さっさと逃げよう!



@@@@@



 そんな訳で、俺は悪戦苦闘しながら、廊下あたりをしばらく逃げ続けていると、突然救済の音色が聞こえてきた。


 キーンコーンカーンコーン。


 別名、学校のチャイム。3時限目の始まり。今だけ授業が最高と思える!


 さっきから、俺を追いかけてきたやつらを『ルフィーナ信者の集う会』だということにしておいて、それでそいつらは全員舌打ちをたくさんしながら、それぞれの教室へとチリチリになっていく。これでとりあえずは、一時的に一件落着だ。オーケーオーケー、アイムオーケー。俺、生きてるよ。


「ふう…。この学校は賑やか過ぎだ、まったく」


 俺は、汗をぬぐった。


 俺の独り言は、誰にも聞かれずに、それで俺は、自らも教室に戻った。

この小説、第一章は実はプロット書いていませんww(オイ


それで物語が微妙になってしまったので、第二章はきちんと書きました。


そんな、小説をこれからもよろしくお願いします



次回予告(なんとなく今回から書いていこうかな)

手紙の内容が――!?

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