梅雨前線停滞中-1
とりあえず、です。はい。
感想よろしくお願いします!!
6月上旬。梅雨に入ってきてまもない頃にそいつは嵐のごとくやってきた。それは、天気予報が一週間ほど雨が続くといった湿っぽい中での出来事で、俺はこの高校に行かずに別の高校に行っておいた方が良かったのかもな、とつい思考してしまうほど面倒くさい出来事だった。
月曜日。俺は入学式当時と変わらず、いつものように教室に行くまでシンといっしょ(むりやり)に登校して教室の中に入った。教室の中はいつにもましてにぎやかだった。
「…………」
俺はシンの声に耳を傾けるのをやめ、黙った。シンは俺がなぜ突然黙ったのか、解釈出来たらしく微苦笑している。いつにもまして。
俺は自分の席の正面に立った。座ることが出来ないのだ。なぜか、そこに見知らぬ少女が居座っているのだから。
「おい。そこをどいてくれないか?俺の席だ、俺が座れないじゃないか」
その声に反応して肩まで伸びている茶色いやわらかそうな髪を揺らしながら少女は振り向く。その少女はかなりの美人、いや美少女だった。とにかく俺が言うくらいだから間違いない。
顔は何から何までどこのパーツも整っていて、特にくりくりした愛くるしい目と人形のような高貴な鼻が印象に残る。優しい笑みを浮かべていたらついこっちも微笑み返してしまうだろう。とにかく、お美しい。
身長は、俺よりテニスボール2個分低い。胸部はきれいに浮かび上がっていた、わけではなく平らではないが一般の女性に比べると少し…。
しかし、その美少女の表情は残念なことにかなり不機嫌そうだった。それは、俺が話しかけたその時からだ。それ以前はつまらなそうな表情だった。
そいつはクリッとした目をこちらに向けて、
「何言ってんの?この席は私の席よ」
「はあ?昨日まで俺が座っていたぞ」
「知らないわよ、そんなの。だって私は今日転校してきたんだもの」
「だろうと思ったぜ。初めてみる顔だからな」
「そうよ。それで先生にここの席に座れって言われたのよ」
……。
面倒だな、このクラスは。「とにかくそこは俺の席だどいてくれ」
「いやよ」「どけ」「や」「どけ」
「あんたもしつこいわね。とにかくここは私の席なの!」
そんな言い合いをこのまま半永久に続けるのかと疑問に思ってしまうくらいにしばらく続けていると困笑しながらシンが、「とりあえず、亀井先生に確認とったらどうです?」とナイスなアイディアを提供してくれた。助かった。ありがとよ。
と心の中で呟いたことにしておこう。
とりあえず、強気な少女の方もそれには了承した。そこで早速職員室に潜入し、亀井を発見、即捕獲した。
@@@@@
「亀井先生!これはどういうことですか!」
外は雨が降り続いている中、これは俺の台詞だ。本当にこの教師が俺のクラスに配属されたことを呪いたい。このオタクが!!
亀井は態度は非常に堅いが、声はふるえていた。
「ななななにが」
「決まってるじゃないですか!なぜ俺の席が転校生と思われるこの人の席になってるんですか!」
亀井はなぜか書類を落とした。それを拾ってやり、もう一度問うた。今度は短縮させてもらう。
「なぜ、この人の席になってるんで……」
短縮しすぎた。その証拠に、隣の美少女までもが疑問符を頭上に点滅させている。俺はとりあえず言い直した。
「なぜ、俺の席がこの人の席になっているんですか!」
「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
なんだかひぐ○し的発言だな、それ。それに、謝られても困るんだが……この教師、よわっ!!
今度は転校生が亀井に攻撃を加えた。
「先生!どういうことなんですか。謝るんじゃなくて解決策を考えてください!……ったく、転校してきて早々にこんなことになるなんて想定外だわ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
なんだか声が震えてきている。そして、硬い表情が崩れ、流星群の如く涙を流しだしやがった。ふざけんてんのかーーー!泣き虫にもほどがあるだろう。というより、ひぐら○やめろ!
「まあまあ、皆さん落ち着いてください。亀井先生は泣きやんでください。ここは、解決策を考えるのが妥当だと思いますよ。泣きやんでください。お願いしますよ」
「……わわわかった。すすすまなかった。解決策は、じゃあ加納の後ろにもう一つ席を作ってそこが朝垣の席だということで」
「いやよ! あっ、い、いやですよ」
朝垣と呼ばれた美少女は敬語を使っていないことに気が付き、電光石火、すぐ訂正。そして、言葉を続けた。
「私はこのうっさいやつが前になんかいるのなんていやです。別の場所にしてください」
俺、そんなにうっさかったか……?たしか、いや確実にそこまで大きい声でこいつに向かって話しかけてもいないし、ましてや怒鳴ってなんかもない。つまり……この転校生さんは、
「俺はそんなにうるさくない!嘘をつくのはよそうか」
「嘘なんか付いてないわよ」
「はて?お前はいつ、俺のことをうるさいと思ったのだろうか?」「今よ、今」
…………。
むかついた。ひじょーにむかついた。シンは苦笑している。亀井はなぜか話に置いてかれている。そんな中俺は、飛型核兵器をここに落とした。
「先生!こいつの席、俺の後ろにしてください!!何かひじょーにむかつきました」
「はぁ!?ちょ、ちょっとなんでそうなるのよ!」
「簡単なことじゃないか転校生さんよ。俺はお前がなんかものすごくむかついた。だから、お前の嫌がることをしようと思ったわけさ。それでだ。俺はお前のことをよく知らない。だからさっきお前が言った『私はこのうっさいやつが前になんかいるのなんていやです。別の場所にしてください』という発言のおかげでお前は俺の後ろにいることを嫌がると判断し、それを実行に移したまでさ」
「ふ、ふ、ふざけんじゃないわよ!なんで私があんたの後ろの席に座んなきゃいけないの!?迷惑よ!!」
迷惑…か。それでいいんだよ。うん。それでいいんです。
シンが眉毛を逆への字に曲げても尚且つ、笑いながらこう言った。
「朝垣さん。それでいいじゃないですか。どうせ、席替えでまた変わるでしょう?」
「うぅ……そ、それは……。……分かったわよ!もうっ!」
朝垣は頬をぷくーっと膨らませている。そして、俺のほうをじっくりと睨みつけてから、去っていってしまった。いったいなんだったんだ。俺は先生のほうへ向き直った。
「ということで、先生、席替えはなるべく延期してください」
突然、話を振られて少々驚いていたが、こくこくと頷いた。ものすごくゴツい人がそんなことをしてもかわいくもなんともないんだが。普通なら、いや、外見からして分かった!だとか任せておけ!と大きな声で元気よく言うのが自然……だろう。例外だ。この人は。
それから俺とシンは時間もあれなので教室へ戻った。
@@@@@
教室に戻ると、マイの自己紹介が終わっていて俺の後ろに空いている席に座っていた。俺の言ったことをなぜか聞いてくれたようだ。変わったやつだな。
まあどうあれ1時限目。まず違和感を感じた。なんだろう。俺の後ろの席からものすごい負のオーラがナイアガラの滝のようにびんびん降り注いでくる。それもそのはずだ。後ろにはマイがいてさっきから機嫌をものすごく悪そうにしているからだ。それ以外の理由なんて何もない。あってはならない。あるはずがない。あるわけがない。
次に俺の椅子がたまに誰かに蹴られる。もちろん後ろから。
最後に、ハジメシネシネシネ……と呪いのお経が聞こえてくる。ああ、寿命が縮んだよ。たったの0,00000001秒な。
とりあえず、なんだか授業も後ろが気になって集中できないので、1時限目終了時に速攻後ろを振り向いた。ばっと振り返るとマイが軽く肩を反射的に動かす。
「な、なによ」
「……お前は誰かと話をしたりしないのか」
そんな質問にマイは虚を突かれた様できょとんとしている。
「今までの学校もそうして誰とも会話をしなかったのか?」
「な、そんなわけないじゃない。それに私はまだ転校してきて1日もたっていないのにどうやって友達作れと言うの」
おそらく、こいつは前の学校でも友達が少なかったと思うな。誰でもそう思うだろう。何せこいつは不機嫌オーラを常に発して周囲のものを近づけさせないような雰囲気を醸し出している。それのせいで、未だに誰もこいつに話しかけてこない。身長も低いしな。あ、それは関係ないか。
「そうか?俺の感覚だと普通、転校生がきたその日にはいろいろなやつが興味シンシンで話しかけるようなものだと思うのだが。……俺が友達にでもなってやろーかぁー??」という感じで、わざとらしくからかうような口調で言った。
「う、うるさいうるさいうるさい!」
パクるな。あと、そのネタは知っている人と知らない人がいるから。
「もうどっかいってくる!」
このお嬢様は、無理やり話を切り上げると、席からいきなりバッと立ち上がり、ぶつぶついいながら去って行った。その時のそいつの横顔は、不機嫌そうだったがほんのり紅潮していた。
はて、フラグがたったのか。……というより、いつ俺はそんなフラグを立てるようなことを言った。言っていない……と断言できる。いや、断言する。ということは、そっちのことであいつは、顔を紅潮させたのではなく、ただ単にあのちょっとした口論だけで疲れて紅潮させたのだろうか。そういうことになると、あいつの体力が心配だな。あいつは体育が苦手だ。…そんな気がする。
そんなわけで、俺も暇になってしまったので、席から立ち上がり、なんとなーく廊下のほうへ移動してみた。
この話はおそらくマイワールドよりも長くなるんじゃないかなあと思います。マイワールドが現在、約60分なので……おそらく少なくとも200分以上にはなると思います。(タイヘンダ