無魔術師-1
さあさあ新章開幕ー!
第二章、「無魔術師」のあらすじ。
とりあえず、コノハを止めることができた俺、加納ハジメとマイはコノハの所属していた組織についての情報を得る。そして、その組織がなんとマイの祖国であるオルタースを占領する計画を立てていることが判明した!さらに、新たな別の組織までもが第3者として割り込んでくる!果たして、俺はそれらを阻止することができるのか。はあ、面倒だな。
10センチメートルほどの奇形の植物がまだらにぼうぼうと生えているある丘で、一人の青年が口笛を吹いていた。一定の間隔で同音のメロディが聞こえてくる。
その青年は、1つのでこぼこした星しかない真っ暗な空を見上げていた。彼は、騎士を思わせてしまうようなシルバー色の軽防具をまとい、首からペンダントのようなものを提げていた。
それは魔石。
青年は、星嵐石を持っていた。その魔石は、普通の魔石発掘場では手に入らない珍しい1品で、時折その闇色の魔石は僅かに光り輝く。蛍のようなその光を放つということは、その魔石がどれだけ強力なものであるかの証だ。
暗闇の空を見上げている青年は、その真っ暗な空の先に何かを捉えたようで、口笛をやめた。
「ふふ」
青年が浅く笑ったその時、風が、ゴォッッ!という轟音を立てて、吹いてきた。その風は止むことなく、絶えず吹いてくる。
しかし、青年は金と銀が混合したような髪がバサバサ揺れようとも何も動じずに、ただ空を見つめていた。
「キュイ、こっちだよ」
そんな風に軽く、そしてやさしい口調で青年が叫ぶと、今度はキュウゥーーという何かの鳴声が空に響き渡った。そして、青年の元に、真っ暗な空から滑空してくる白い何かが見えた。その白い何かは、蛇に足をつけたようなものではなく、恐竜に羽を生やした、そんな感じだ。
ドラゴンであった。
そのキュイと呼ばれたドラゴンは、青年を再確認すると、青年の目の前に翼を下ろした。白龍という言葉がふさわしい立派で巨大なドラゴンは、青年になついていた。
キュウゥーと鳴き声を上げ、青年に頭をこすり付けている。青年は嫌がる素振りを見せず、ただ苦笑していた。
「キュイ、僕はまた人を殺すことになりそうだよ」
さりげなく青年は、そう言った。キュイは言葉が通じるようで、どうしてと言っているかのようにキュゥウ?と首を少しかしげている。
青年は、キュイの頭をなでた。彼の表情には、僅かに悲哀が含まれていた。
「僕の組織はいつからああなっちゃったんだろうね。昔はあんなじゃなかった」
その疑問に言葉を発することのできないキュイは、答えることができなかった。
ふっ、と金銀髪の青年は口元をゆるませた。
「まあ、仕方がない。俺の居場所はあそこしかないんだ」
風がいつの間にかやんでいた。
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今は、6月上旬。いや、中旬に入ったところだ。
上旬の上旬辺りに、マイと出会い、コノハの暴走を止め、その後、なぜか同居することになったコノハとマイが、ぬわんと下着やらなんやらが向こうの世界にあり、この世界には今着ている1枚しかないと言いやがって、俺がその下着を買いに行かされる、いわばパシリ扱いされていた。それも特殊の!
俺は、自分の部屋でテレビのニュースを見ていた。マイとコノハはニュースを見ていない。彼女らは、……とっても言いづらいのだがおれの両脇に寝ている。
どうしてこうなったのかは、割愛させてもらおう。いや、させてくれ。もうあんな惨劇を思い出したくない。どうしても、知りたいってのなら第一章を見てくれ。…ん?第一章?おれは何を言ってるんだ?まあいい。
今は深夜で、俺は両脇に年頃の女性を寝かせて、音量をぎりぎり聞くことのできるという取っても聞きづらいところまで下げて、ニュースに見入っている。
『―――です。西風高校の洪水事件はいまだに謎のままです。次のニュースは―――』
俺は、はあ、と溜息をついた。
ニュースの内容はさっきのを聞いてもわかるが、西風高校、つまり俺の通っている高校で、グランドがなぜか湖化しているというものだった。おかげさまで今日まで休校だ。
なぜそうなったのか、誰がそんなことをしたのかは…言いたくはないが俺とコノハが戦っている途中に俺が上級魔術である「リヴァイアサン」を使用したからである。
その魔術は不完全だった為か、普通なら地面にぶち当たったところから蒸発していくところが、蒸発せずにそのまま湖状にたまってしまったらしい。不完全だというのは、マイ後日談で判明したことだ。
それにしても…、と俺は思う。
今更ながら思ったのだが、なぜあの時、俺の弱泡石という最弱級の魔石で上級魔術なんか、それも、どうやって1発で成功させられたのだろうか。言っておくが、まだあの魔術は1度も練習していない。ましてや、マイからもらった超簡易なんとかかんとかっていうのも読むどころか見てすらいない。ずっとポケットの中にいれっぱなしだった。
マイは、確か前に俺に才能はないと言っていた。ふざけたコントのような会話の中だったが。
俺は、真後ろにある窓から外を見た。三日月が1つ見える。1つ、だ。そして、でこぼこなんてしていない。
異世界では、空に名も無いでこぼこした星が浮かんでいた。それを俺は思い出した。
あの世界では、魔石さえ持っていなければ街の中にすら入ることができなかった。そして、人と会話すらできず、コミュニケーションが取れずにいた。
そんな世界とはもうおさらばだ。面倒臭い。あの世界に行くということは、つまり俺はまたマイに任務とやらで何かしらの事件に巻き込まれるわけで、それでコノハのような犠牲者が出るのだ。そう、俺の部屋に住ませるというあってはいけない事故の。
そのようなことを考えていた俺は、思わずマイの寝顔をちらっと見た。
マイの寝顔は妖精の静止画のような妖しさがあった。肩まで伸びた茶色い髪の毛は、枕の上に無造作に散っている。くりっとした目を閉じて、すやすやと寝息を立てていた。身長がやや低いマイではあったが、俺がちらっと見てその可愛さに後悔したのだからそれは本当だ。
マイの寝顔を見た後に、ほぼ反射的に、マイとは反対のベッドで寝ているコノハの寝顔を見てしまう。
正確にいえば、見とれてしまう。
コノハの寝顔は、マイとはまた違っていた。勿論、マイも可愛らしいのだが、コノハに神聖さというものがある。マイが妖精ならば、コノハは天使のようだった。コノハの規則正しい計算された表情はどれもこれも、男性陣が飛びつきそうなものばかりだ。これもまた、ぐっと来てしまう。
俺は正面を向いて大きな大きなため息をついた。
この部屋には小さめのベッドが3台横に並べられている。それでも、広い一室なので大丈夫カナー、と思っていたのだが、意外とぎゅうぎゅうになった。もう、この部屋にいる状態=ベッドの上にいる状態。だ。
この光景が当たり前になってしまうのか…。慣れって怖いな。
ニュースが天気予報に変わったところで、俺はテレビの電源を切った。急激に闇の世界が広がって、なんだか眠くなってきた。
寝る前に、俺がどうしてこいつらの真ん中に寝ることになったのか勘違いされないように説明しておこう。真ん中に寝ろと言ったのは俺ではなく、マイだ。コノハだ。その二人だ。俺じゃない。本当に俺じゃない。
それで、俺はどうしてそうやって真ん中に寝なきゃいけないんだと2人に問えば、ゼロの使い○じゃないんだから、それぐらいは可哀想でだとのことらしい。何か別の真意はこいつらにはないと俺は見て、しぶしぶいやいや真中に寝ることになったのだ。はあぁぁ………。はあぁぁぁぁぁ…………。
何度も、心の中でため息をついてしまう。俺を見て、何いいい!?絶好の狩り場じゃねえかだとか考えてるやつ、殺す。俺を見て可哀そうだと思ったやつ、許す。
まあ何はともあれ、俺は、深夜1時9分56秒に就寝した。今日も一日御苦労さま、俺。
とりあえず、プロローグ的なところからスタートです。
それにしても…更新する時間が最近ありません……
まず、スケジュールを言いますと、英検(済)→模試→漢検→学年末試験っす
学年末テストが2月中旬ごろなのでかなりのハードスケジュールです。
追い込まれましたwwww
うむ、どうしよ