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壱の魔術  作者: 川犬
第1章
14/38

梅雨前線停滞中-13

宿題が……

 俺は、身を少しだけ低くかがめる。


 その様子をコノハは見て、また笑った。まるで、天使エンジェルのように。


「そう。正解です」


 俺は、こぶしを握っている力をさらに増す。そして、貫き通すような目でコノハを見る。


「……なぜだ」


「うふふ、なぜって言われてもあなたみたいな私の敵に教えるわけ無いじゃないですか。バカなんじゃないですか」


 俺は、隣で俺のせいで隠れているのがばれてしまい仕方が無く立ち上がっているマイの言葉を思い出す。



 ――かなり言いにくいんだけれど秋色コノハよ。



 あの時、その言葉を聞いて俺は誓った。そいつを助け出すと。救い出すと。


 俺の目は、コノハの目をはっきりと捉える。


「…ああ、俺はバカだ。大バカだぜ…。なぜなら、そんな今の逃亡者ディサーターであるお前を救おうとしているんだからな」


 コノハは、約2秒沈黙したが、すぐにあざ笑いながら、

「ハッ!救う?何を言っているんですか。あなたはものすごく変わっている人ですね」


 コノハはロッドを構える。俺とマイも身を低くかがめ、いつでもそのコノハのどんなものかも知らない魔術の攻撃をよけられるようにする。


「知ってます?このロッドには私の魔石が埋め込まれているんですよ」


「……だから、どうした」


「うふふ……。あなたはやはり知識が浅すぎますね。いいです、教えてあげます。普通の何の加工もされていない魔石では強くなるには時間がかかります。しかし、このようにロッドに埋め込むような加工すると――」


 コノハは俺たちにロッドを向けると小声で何かを詠唱した。そのすばやい詠唱は、たとえ聞こえるくらいの声を出されたとしても、なんといっているか理解が出来ない。


 コノハのロッドの先端が青く燃え出した。その青い炎は、徐々に球体に形を変化させていく。それもあっという間だった。


 ボウボウ燃える青炎球は――、俺の方向へ野球でプロの投手ピッチャーが投げるようなスピードで飛んできた。


 俺はとっさに目を閉じて一瞬のうちに集中する。そして、

水よ俺の手にウォーター集まり盾化せよシールド!!」


 詠唱をした。


 俺の周りから水があふれ出てきたかと思うと、それは俺の前に盾になるように集合する。丁度そこに青炎の球体が命中した。


 シュウッという音と共に水は蒸発し、炎は消える。相打ちだった。


「このように、最低レベルの魔術を使っただけでもこんな威力になるんです。そうです。このロッドに埋め込まれた魔石は、なんと魔力をおよそ2倍まで増幅させることが出来るんですよ」


「……」


 俺は唖然とした。


 ……今のコノハの魔術が本当に初級魔術だとしたら、魔力が2倍に増幅されるというのは本当だ。なぜなら、俺がさっき使ったウォーターシールドという魔術は中級魔術だからだ。


 俺の隣にいるマイは、コノハに向かってこう言い放つ。


「あんたはもう捕まるしかないのよ!捕まりなさい!!この逃亡者ディサーターが!」


 コノハはマイの存在に初めて気がついたような笑みを漏らして、

「あなたには用はない。私が興味を持っているのはこの子のほうなんです」


「なッ!…ッァアアーー!!なめんじゃないわよ!!」


 マイの目つきが変わった。その目つきを俺はまだ見たことがない。マイの怒り狂った時の目つきを。


 マイは、手を前にかざして、


氷よアイス無数の氷刃となり敵を突き刺しニードルつくしなさい!!」


 マイの手から無数の小さな氷が発生し、鋭くとがっていく。


 俺はその時のコノハを見た。その時のコノハは、……なぜか恐怖に目を覆い尽くされたように震え上がって目を閉じていた。その光景を見た俺は昔の自分と重ね合わせた。


 ……遠い昔、俺がまだ7歳だった時、俺は両親と夜道を歩いていた。その時の夜空は雲だらけで雨まで降っていた。月明かりのない完全な暗闇の中で、俺のちょっとした不注意で大型トラックに衝突しそうになり、恐怖のあまり震え上がって倒れこんでしまった。だが、俺の両親は俺を突き飛ばし、代わりに両親が大型トラックの犠牲になり、……死んだ。俺は泣きじゃくった。それから先のことは、覚えていない。


 もし…もし、あの時俺が不注意なんて起こさなければ、両親は今でも元気に俺と楽しく生活を送っていただろう。だから、もうあんな不注意なんて起こすわけにはいかない!


 俺は、すぐ近くにいるマイのほうへ急いで駆け寄って、

「やめろ!それだと、コノハを殺してしまうぞ!!」


 マイを突き倒した。それに驚くマイの手からは氷は拡散する。


「うふ、うふふあははは!!」


「な…!?」


 コノハは、笑っていた。悪魔デビルのように。


 コノハは、死という恐怖におびえ震えてなんかいなかった。あの時の俺のように。


「…どうなって、やがる」


「幻影よ。あんたにあの逃亡者ディサーターは幻影を見せる魔術を使ったのよ…」


「…くそ。すまん、マイ」


「別にいいわ。それより、も!」


 今度はマイが俺を突き放した。そして、マイも俺とは反対方向へ移動する。その中間地点、俺とマイがいた場所に小鳥の形をした赤い炎が直撃した。そこは廊下側のドアがある場所でドアが勢いよく吹っ飛ぶ。


 マイはこっちに向かって叫ぶ。


「ボーっとしてちゃだめ!」


「分かった!」


 俺は叫び返しながらも、コノハに向き直る。コノハは、もうすでに次の魔術の詠唱を終えていた。


「ッくそ!詠唱が早すぎる!」


 コノハの詠唱が早すぎて、こちらの詠唱が間に合わない。それはつまり、俺とマイが魔術を唱えることが出来ずに、圧倒的に詠唱を高速で唱え続けているコノハが優勢ゆうせいだということだ。


 どうすればいい?考えるんだ俺!


 俺は、コノハの連続魔術をよけながらも、思考をする。


 コノハの魔術の詠唱スピードは恐ろしく速い。これをどうにかするためには、つまり魔術の詠唱するスピードを下げればいいのだ。


 だが、どうやってスピードを下げる?俺の魔力の属性は水属性だ。しかし、水魔術ではおそらく攻撃系の魔術と防御系の魔術しかないだろう。……なら、基本魔術には?


「おいマイ!詠唱のスピードを下げる魔術ってあるか?」


 マイはこちらを見ずに即答する。


「あることはあるんだけれど、残念ながら私は知らない!」


 コノハは、俺とマイの短い会話を聞いて、詠唱をやめた。そして、悪魔デビルのように微笑んだ。


 いつからか知らないが息を切らしだしている俺とマイは、動けないでいた。


「そんなことを仮にしたとしても無駄ですよ?なんなら、私が私自身にその魔術をかけてみます?」


 そういった後に、

口の動スローきよ遅れてマウス


 コノハに光の粉がかかる。コノハに付着した光の粉は蒸発するように消えていった。


「こ…れ…で…ど…う?」


 さっきとは明らかに話す速度が違うコノハは再びロッドを俺たちに向けてきた。


 俺は、コノハの詠唱スピードは下がったはずだと認識してしまった・・・・・・・・


「うおぉおおおぉぉッ!!」


 俺は、詠唱に時間がかかる魔術を使うよりも拳で殴ったほうが早いと思いコノハの腹めがけて、突っ込む途中で――


「あぶない!!ウッ!?」


 マイが炎の玉に直撃して吹っ飛んだ。一瞬何が起こったか俺は分からなかった。


初のバトルシーンです。それにしても、バトルシーン描くのってけっこう難しい…

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