梅雨前線停滞中-9
新たに登場するキャラクターとは…?
暗闇の洞窟は……暗かった。とにかく暗かった。こういうときほど、猫やトラやライオンなどの動物の目をうらやましく思ったことは無いだろう。
猫やトラやライオン…というより、ほとんどの夜行性の野生生物の目は紫外線というものが、見えるお陰で、夜でも周りを見ながら、行動できるらしい。
そのことをうらやましく俺は思うので、魔力で何とかならないのだろうか、とマイをそっちのけにして、腕組みをしながら、考え出す。
マイは俺の名前を何度も呼んでいたが、反応を示さないということを認識したのか、俺の耳のそばまで吐息がかかってしまうくらい口を近づけて、大声で、「ハジメ!!」と叫んだ。
俺は、耳をマジな顔をしながら、押さえた。いったん思考を中止する。というより、強制的に中止される。
「す、すまん。で、ここが魔石発掘場なのか?真っ暗で、洞窟の中だってこと以外、何も分からないのだが」
「まずこっちの話を聞けーッ!」
「どわッ!?わ、分かったから耳元で叫ぶな!」
「…ったく、まあいいわ。…それじゃあ、まず、人を探すわよ」
「人?…いや、俺達は魔石探しにきたんじゃないのか。人探しはそのあとでいいだろう」
「…あんたバカ?こんな真っ暗なところで魔石探しなんて出来る訳が無いじゃない。だから、暗くても魔石を探すことの出来る人を探すのよ」
「お前の魔術じゃ魔石は探すことが出来ないのか」
「う、うっさいわね!当たり前なことを言わないで。大体あんたがこの私を突発的に魔石発掘場に行こうと急かしてきたんだから、何の準備も出来ていないのよ」
「そうだったのか。じゃあその魔石を探してくれる人を探そう」
「正確には魔石を探すのを手伝ってくれる人なんだけれどね」
そこで一旦話は中断し、俺とマイは、まずは誰でもいいから人を探すことにした。俺は、目で探すよりは、大声で誰かいませんかと叫んだほうが早いと考え、実行に移した。
「誰かいませんかー!」
すると、マイの笑い声が聞こえてきた。それに少しだけ腹を立てた俺は、どんな感じで笑っているのか分からないマイに、
「何がそんなにおかしいんだ」
「あははッ!この世界で日本語が通じると思ってるの?」
…。…。…。…。…。確かに。
結果的に言うと、俺はこの世界の人達から見て、まったく意味不明なことを言っている変なやつと認識されるようなことをしていたのである。
くそう。この世界で日本語が通じる訳が無いということをすっかり忘れてたぜ。
そして、俺は溜息をついた。
俺の声は確かにこの洞窟全体(予想)に届いたのだが、おそらく返事をしてくる奴は、ほぼ皆無といっていいだろう。そう思っていた。そう思っていたのだが、
「いるぞー。今そちらに向かう」
…………………………。マイが絶句している。俺も絶句している。反応できない。対応できない。理解できない。意味分からない。これは夢か。夢なのかーッ!?分からん。ここは異世界だよな。え?これは、ネタ?それとも、マジ?教えてくれよ、作者さん!!いや、作者さんじゃなくてもいい。読者さん!!これはどういうことだーッ!?!?
しばらく、俺とマイが固まっていると、炎が燃えているのが見えた。それは、松明のような物だった。そして、その松明のような物を持っているのは……、
「お前達か?我を呼んだのは」
男言葉を使う長髪で赤髪の女性だった。
身長は、俺と同じぐらいで、大人な女性だ。顔は、これまた年上を思わせるような顔立ちで、西洋人だか日本人だか区別がつかないような顔立ちでもあった。
服装は、モンスターハ○ターチックな赤い軽防具らしきものを着ている。いや、着ていると言うよりは、装備しているの方が正しい表現技法だ。
もし、この女性が姉妹で妹か姉かといったら、どう考えても、妹ではなく姉だと皆答えるだろう。
俺とマイが無言で、その女性を凝視していたので、女性は困ったような仕草をして、
「ああ、そういうことか。我はお前達の世界に何度か行ったことがあるのだよ。だから、こうしてこの言語を使うことが出来るんだ。理解したか?」
俺とマイは同時に大きな安堵の息を吐いた。なるほどそういうことか。
俺は安堵の息を吐いた状態のままで、マイはその女性のほうに向き直った。
「分かったけれど…名前は?」
「ルフィーナ・レイチェンベルだ。長いから略して、ルフィと呼んでい――」
「それじゃあ、ワンピ○スの著作権に触れるかもだから、ルフィーナって呼ぶことにするわ」
うんその通りだ。麦藁帽子のあのゴム人間とキャラがかぶってしまっては、らららのらだ。もうおしまいだ。まあ、目の前のやつとゴム人間とは性別からして違うのだが。
「……?著作権?何だそれは。……まあいいか。じゃあ、ルフィーナと呼んでくれ。それで、我に何をしてほしいのだ?魔石の発掘か?」
それには、今まで無言だった俺が答えた。存在感をアピールするためにもな。こんな性格じゃない?いいんだそういう細かいこと。
「ああ、そうだ。どんなんでもいいから、魔石の発掘を手伝ってほしい」
「どんなんでもいい…?お前は本当にそれでいいのか。そういえば、名前を聞いてなかったな。名はなんという」
俺は名乗り出るように、一歩前に出て、
「俺は、加納ハジメだ」
マイも俺に続いた。
「私はマイ・エクセンス。あ、ハジメにはまだ言ってなかったけれど、朝垣っていうのは、偽名だからね」
マイの本名はそんな外国人みたいな名前だったのか。意外だな。どうでもいいが。
ルフィーナは、コホンと咳払いをした。
「では、ハジメ。お前は本当にどんな魔石でもいいのか」
「ん?いいぞ」
「……そうか。分かった。なら、お前達の足元のすぐ下ににひとつ魔石が埋まっているぞ」
「掘っていいか」
「ああ、もちろん」
うおー。かなり早く発見できたな。では早速掘ろうじゃないか。
俺はスコップを…スコップが無いので手で地面をほろ……地面が鉄のように硬かった。
ルフィーナは、「ははは!」と朗らかに笑った。
「ハジメ。ちょっとどいてろ」
「え?わ、わかった」
俺は、横へ移動した。
ルフィーナは、俺がどいたのを確認すると、
「風よ大きな渦となり地を破壊しろ」
ゴォーゴォー、と風の音が鳴り響いて、風が集まってきた。ルフィーナが持っている松明の火が消える。
まさか、それで地面を削る気か。そんなことをしたら、大事な大事な魔石までもが、破壊されるんじゃないのか。そんなことになったら、俺は壁に頭を打ち付けてやる。
風の渦は、地面に打ち付けられ、地を砕いた。砕けた岩片が俺の体に少し当たる。そして、風が分散して渦が消えた。
マイは驚いたような表情をしている。ような気がする。気がするというのは、松明の火が消えてしまって再び暗黒に包まれたからである。
「す、すごいわ。ルフィーナは風属性の魔石を持っているのね…」
「ああ、封風石という魔石だ」
「封風石!?そんな魔石であれだけの威力の魔術が使えるの!?すごいじゃない!!」
ルフィーナというお方は、どうやらかなりすごい人らしい。
マイが、魔石がどうのこうのと言っているところから、希少価値の低い魔石を所持しているのに、威力の高い魔術が使えるから、すごいというのだ、と俺は推測する。
ここは、話をあわせて、俺も相槌を打つ。
「確かにすごいな」
「あれ?ハジメって魔石の種類について知ってた?おかしいわね…。私、そんなこといったかしら…」
「う。い、言ってた言ってた。俺は言ってたと断定するぞ」
「いや、やっぱり言ってなかったと思うわ。…あんたって、知ったかぶりするのが趣味なの?」
「って、な!そ、そ、そんな訳が無いだろう!俺は、確かにお前の説明を聞いたぞ。うん聞いた聞いた。絶対聞いた!」
「ないないないない。そんなわけ無いわ!私は言っていないわ」
「お、俺が記憶を消去したんだ!きっとそうだ!」「あんたに魔力なんてものは無いんだから、ありえない!」
「ち、違う!か、科学の力だ!科学の力で記憶を――」
「あんたは、インデ○クスの記憶を消去しようとしている科学の力を手に入れたステ○ル=マグヌ○なの!?」
「ま、魔術師が科学の超能力を使うだけで死ぬんだぞ。俺は、ス○イルじゃない!」「意味不明な方すみません!!このことは忘れてください!」
そんな口論を俺とマイは継続していると、ルフィーナは苦笑した。
「お前ら、本当に仲がいいんだな」
「「なっ」」
俺はそんな訳が無いだろうと言い返し、マイは、無言だった。
…あれ?マイさーん、何か言い返してくださいよー。どうしたんですかー?暗くてよく見えないですけど、顔を赤らめてなんかいませんよねー?と俺は心の中で叫び狂う。
なんとなく、いつものように、マイが顔を赤らめているような気がしたので俺はそう思考した。悪いか。
ルフィーナは松明に火を灯し直し、辺りが明るくなった。
「それで、魔石はいらないのか」
「ああ、いる」
「それじゃあ、後はお前達で魔石を入手しておいてくれ。我は、もう行く。ある任務についていてね」
「わかった。またあった時はよろしくな」
ルフィーナは行き際に、意味深な発言をした。
「ふふ……彼女を失うなよ」
俺は、なんとなく分かったと言った。
その言葉がどういう意味を成すかなんて、その時の俺には到底理解なんて出来なかった。
隣では、マイが下を向いていた。
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