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If I wasn't me 俺が俺じゃなかったら  作者: VIKASH
Longevity and Misfortune-寿夭禍福
16/24

「16」 Beyond Measure―測定不可能

We(私達は) Are(いつだって) Always(あなたの心の中に) In(いる) Your Heart―




 『 ―――二の足を踏んではいられないわ。』



  『今だからできることがあるんだ。今しかできないことが。』



   『羽撃(はばた)け、天使達よ。闇を穿(うが)て同志達よ。』



    『後継者となるホープに継ぐ、我々こそが希望だ。』



 似ている。だが、違うな。この声は、ヴァイヴァロスとはまた違う。まるで、何世紀も前から俺に語りかけているみたいだ。


 そして、全員違う声だ。今のところ、四人の声が確認できた。

 こんなの聞いて、冷静じゃいられないぜ。誰が聞かせてる。発信源はどこだ。どんな機械で俺に話しかけてる。どんな能力で俺に聞かせてる。もしくはさっきのアイツなのか?

 いや、にしては声が多いぜ。それに、最初に聞こえた声は女だった。多重人格の可能性も考えられる。なんだよこれ。もう一度言うぜ。なんなんだよこれ。


 ひでえことしやがる。見せんなよ。俺の頭に知ってるはずのない記憶が流れ込んでくる。鮮烈な叫び声。轟く銃声。なんだよこれ。見たくない。もう、たくさんだ。


 そういった途端(とたん)に、消え失せていく。

 まるで意思を持っているかのように、俺に優しくしてくれている。見せる必要があったのか。これを人類の誰かに伝えればいいのか。

 いや、それも違うな。

 でも、なんだろうな。忘れちゃいけねえ気がする。

 さっきの記憶は、一体………

 それに、意味深長な言葉達。どの言葉も意味不明だ。「今」「天使」「同志」「ホープ」「希望」この言葉に関連性があるのか?繋げてみるか?しかし、繋がらないよな。何かを黙示(もくし)しているのか?答えはわからないままだ。俺には、誰かに(たず)ねる(いとま)もないんだからな。


 にしてもよ、なんだって?俺が、この俺が希望?勘違いも(はなは)だしいぜ。何かの間違いだ。送る相手を間違えたのか。真意は、わからねえが。

 俺はホープじゃねえ。


 歴史也(れきふみや)だ!


(いな)むのか》


 まだ、何かわからねえ。何も言えねえよ。ヴァイヴァロス。


《そうか》





Walk(壁に) Into(ぶつかる) The Wall―




 そんなことより、俺達を(さえぎ)るようにして割って入ってきた、謎の人物。

 コイツに俺と王子は肩を叩かれた。ポンっと音がしたんじゃないかと思うくらいにな。それぐらい軽かった。いつからいたんだよ。俺たちは、話に夢中で、足音や気配に気付けなかった。

 でも、待てよ。思い返してみる。足音なんてしたか?


 でもさっきの声、聞き覚えがあるんだよなぁ・・・


 俺は、この声をどこかで聞いている。

 それだけは、間違いなかった。

 つまり、俺はコイツを知っている。と、いうことだぜ。


 眼前にいるコイツは・・・見た目を言い表すと、これは・・・白を基調としたスーツに、赤・黄色・緑・青。その四色が流線型を描くように、スーツに刻まれている。そして、胸にデカデカと描かれた。「G」のアルファベット。顔は隠れている。


 誰なんだ・・・?


「これは、これは。歴史也さん。」


 何故か拍手をしている。何の真似だ?


「茶番もここまでだ。

「目的を遂行するためには知る必要がある。

「正体がなんであろうと………関係ない。

「しかり、任務の邪魔をするなら、それ相応の対処を施す。」


 目的・・・何だろうか。(いま)だ、はっきりとしない。敵なのか。味方なのかさえも。敵だったら、逃げる。

 いや、王子の力でなんとかする。方法はいくらでもあるんだよ。こっちは、チートとチートだぜ。

 さあ、どんな手段でくるつもりだ。見せてみろよ。




           『言葉一つで、足りた。』




 また、語りかけてくる。なんなんだよ。一体。言葉一つ?なんの話だよ。二の句も継げない。とでも、言いてえのかよ。言葉は足りてもなぁ。俺には、敵を圧倒するような力が足りない。敵を(あざむ)くような、賢さや知恵が足りない。そして、今の俺には仲間が足りない。三人寄れば文殊の知恵。あと一人でもいいから、欲しいんだ。そうだ。人員がまるで足りていない。

 ふと、考えちまう。ここに橙星(あかせ)がいたらと………


『それ相応の対処を施す。』


 その言葉がどうしても、頭から離れなかった。

どんな対処なんだ。攻撃か。捕縛か。はたまた………

 まるで、誰かが念じたテレパシーを聞かされているみたいに、半強制的に頭に反芻するその声。

この状況を受け入れるしか、俺の頭の中の選択肢には、残されていなかった。


「降参する………」


 え?


 王子?


 何言ってんだよ。


 降参って、負けを認めたのか?


 まだ、戦ってすらいないのによ。この人が誰か知ってるのか。


 知っててその判断なら懸命だな。


 でも俺は運命に抗いたい。


「…そうか。王子真夏。」


 名前まで知ってるのかよ。にしても、なんで王子は、包帯を巻いたまんまなんだよ。触れないほうがいいのか。もしかして、ラブシンドロームなんて本当にあるのか?いや、まさかなぁ。




             『正体が知りたいのか?』




 え?まただ、声が聞こえる。さっき聞こえた声のどれかだ。




『彼は、Mr.Gだ。我々の意志を継ぐもの。その意志は、独立戦争の頃から、変化していないんだ。』




《忘れるな、君はその名前を1度聞いている》


 ヴァイヴァロスの言っていることは、何よりも正しいってこと―――俺が一番わかってた。そうだ。だけどよ、独立戦争だって?いつの話をしてんだよ。



『生命、 自由、幸福追求の権利を求めて。』



 言ってる意味がさっぱりわからねえが、一つだけわかったことがある。ヒントは橙星(あかせ)の口にしていた言葉からだ。


『あのマイクロンにも、Mr.Gにも、トランセンドにも、アズにも、アプフェルにも勝てなかった。

『なにせ、あのセブンスターがいる。』


 この名前は、この面々は、全員ジャディシャルズなんだよ!


 俺は一度目の当たりにしたことがあるよな。マイクロンという男を。橘涼将(たちばなりょうすけ)は、完膚(かんぷ)なきまでに敗北を(きっ)していた。


 もっと聞いておくべきだった。攻略サイトや、攻略本を見ずに、めちゃくちゃ難しいゲームをやるようなもの。


 つまり、時間が掛かる。王子は戦いたくなかったのか。理由がわかないが、降参すると言ったのは確かだ。


 しかも、順番通りじゃねえか?マイクロンそして、Mr.G。橙星は未来人だ。ひょっとすると、俺たちにとって今である。過去の俺たちからすれば、未来の今に先回りして、彼らと戦ったんじゃねえのか?違うのか?わからねえが。一つ言えることがある。俺はひとりじゃないってことだ。隣には、降参はしたが、王子がいる。王子の人を操る力は最強だ。それプラス、俺の時間操作。この2つがあれは、きっと倒せる。


Are(本気) you(ですか?) serious?」


「I know(知っていますよ). May(あなたたち) you(が強い) be(ことを) strong. But(でも、) that(勝てない) doesn't(と決まった) mean(わけじゃない) we can't win. Power(勝敗を決める) is(のは) not(力だけ) the(じゃない) only thing that determines victory or defeat. It's(気持ち) also(もだ!) a feeling.」


「王子、聞いてるか?聞こえるか王子!

「なんで、応えねえ!反応しろよ!

「お前さ・・・

「俺を必要としているって言ったよな。

「本当はこんなこと言いたくもないけどよ。

「事態が事態だ。

「俺を利用しろ。

「頼む!返事してくれ!

「俺を使え。

「頼むからよ。

「俺を使ってくれ………


 これが、Mr.Gかよ。雰囲気がヤベエ。負けたら、骨折じゃ済まなそうだな。


「・・・」


 王子は、他所(よそ)の家に来た犬のように、ピクリとも動かず、喋らねえんだ。

 なんでだよ!

 こんな時、感情的にもなるよな。怒り………とは、また違うが。思い通りにいかない現実に嫌気(いやけ)がさす。


「なあなあなあ、Mr.G。」


「なんだ?」


「あんたよ。」


「ん?」


「誰なんだよ。」


「そうか。忘れたか?」


「じゃあ、質問を変える。」


「なんだ。」


「俺と戦ってどうするつもりだ?」


「戦う必要がある。」


「これは、無意味と呼ばれるものじゃないのか。」

「そこに、是非は問われるのかよ。」

「一切合切を捨て去った俺は、ここに意味があるとは思えねえな。」


「…そうか。」

「意味が欲しいか?」


「あぁ、そうだな。見いだせるのか?」


「…そうか。では、こうする。」

「気づいてるんだろう。」


「なにをだ?」


「私が、ジャディシャルズの一員であることを。」


「そうだな。知ってる。

「とある未来人がな、教えてくれたんだよ!」


 正体は、分からねえ。誰なんだよ。




―The Gate() Was() Opened―





「『OVERDRIVE(オーバードライブ)』」


 始めやがった。どんな攻撃だ。

 

 どっからでも、かかってこい。もしもの時は止めてやる。


 ヴァイヴァロス。頼む。




















            ◁SLOW DOWN▷





















「まて………………」


 喋れるのか!?


 時間を減速した。いわば俺だけが、普通の速度で動ける状態。


 これは、一度行っている。その一度とは、ウィリアムことマイクロンと戦った時。意図せず行ったんだ。


 感覚だけで言えば、周りの人間は、カメラのシャッターを一枚一枚丁寧に見ている状態で、その中で行動していることになる。


 俺は、そのフィルムを連続で一秒間に何百枚も再生し、アニメーションを見ているような状態のはずなんだが………どうなってやがる。

 まさか、追いつけるのか。


 オーバードライブってまさか・・・


 加速――?


「まだ………………」


 どうなってる。ありえねえだろうよ。


 一秒を一分に正すと、60分の1。てことは、0.01秒。

 それなのに、なぜだ。つまりだ、こういうことか。俺にとっての一秒が相手にとっての一分であり、相手にとっての一分は、俺にとっての一時間。で、間違いないはずだ。


「ほんき………………」


 やっぱり、本気なんだろ?俺には追いつけない。俺は、魔法は使えないが、時間の魔術師という言葉が相応(ふさわ)しいかもしれない。


 そういや、王子はどうなった?


 あれ?いない?どこだ?どこなんだ?


 Mr.Gは俺めがけて、追ってくるが亀みたくゆっくりだ。


 にしても喋れるなんてな。計り知れないぜ。


「じゃない……………」


 顔が隠れているからな。表情は読み取れないが、この声で喋ってるのがはっきりとわかるぜ。


 今しかないんだ。


 王子を探す。


 あの、ならず者を見つけねえと。


 だが、いない。どこに消えた。


 俺はまた、ひとりなのか。


 兎と亀の亀は、最後まで走りきった。油断大敵なんだよな。俺は兎かもしれねえ。

 なぜなら、俺の肩にMr.Gの手が触れていた。

 気づいた時には遅かった。


《解除する》




















              ◁REVERT▷


















「待てって!」


「まだだ。」


《相手は、銃を所持しているが敵意は感じられない。おそらく、君を試している》


 ふっ。先に言ってくれよ。怖すぎるだろ。引き金引かれたらお釈迦じゃねえかよ。


「何者だ?」


 マジかよ。


「俺か?」


 一応聞き返しておく。


「そうだ。」


 わかったぜ。


「答えてやるよ。」

「ただの高校生だ。」


「そうか。」

「認めてやる。」

I'm(俺は) the fastest(地上最速の) man(男だ) alive.だが、私よりも速いな。」


「本気じゃねえけどな。」


「ほう。」

「ジャディシャルズに入らないか?」


「構わねえ。」


「と、言いたいところだが」


生憎(あいにく)、先客がいる。」


「どこだ?Korea(韓国)か?China(中国)か?まさか、連邦ではあるまいな。」


「なわけねえよ。ここだ。」


 俺は、親指を床に向けると、「ここ」と示した。


「AMTだな。やられたな。使者が来る。私は失礼する。歴史也だったな。」


「ああ。」


「数字は好きか?」


「普通だな。」


「HERO=Kの正体ではないか。わからんな。」


「じゃ…あれ?」


 いないな。消えたか。


And(そして) you(あなたは) don't (僕に)notice(気づかない) me.」


 次から次へとよぉ。世紀末かよ!


 え、ちょっと待ってくれよ。行動を当てられた?


 ま、まさかな。そんなわけねえよな。はは。





One() After(から) Another(次へ)





Make(不可能) the() impossible(可能にする) possible.」


That’s us(それが僕達だ).]


「日本語で頼むぜ。」


「エリオット。」












番外編

「肉」Share―相席


 ある日のことだった。俺は、ファミレスでミックスグリルを頼むと、四人席であろう場所に鎮座し、注文を終えてから、数分経つとまだこないものかと、考えあぐねていた。


「申し訳ございません。ただいま満席でして、相席でもよろしいですか?」


 横から声が聞こえた。店員が繁盛しているがゆえに、断っていた。


「ええ、構いませんよ。」


 構いませんよ?え?なんだって?おっと、これは予想外だった。普通なら、「違う店にするか」「他人と顔を合わせて食事はしたくない」等の、余計な考えが浮かぶ。

 「構いませんよ。」と言った男はそういったことは考えないたちなのだろう。俗に変人ともいう。もしくは、気にしていないのか。


「チキンステーキを一つ。お願いします。」


 チキンステーキか無難な選択だ。この店の人気メニューであるハンバーグだが、チキンステーキも捨てがたいのだ。うまいと評判だ。


「すいません。席が空いていなかったので。」


「気にするなよ。ここは自由の国じゃねえが、自由なことの方が多いだろ?」


 おっ、来たな。


「お待たせしました。ミックスグリルとチキンステーキでございます。」


「さんきゅ。」


「ありがとうございます。」


 俺は、手を挙げてミックスグリルを受け取ると、チキンステーキを相席してる奴に渡してやった。


「ハンバーグに目玉焼き、ウインナーもついてるんですね。」


「まあ、雑食でな。チキンステーキ…うまそうだな。」


「食べますか?」


「遠慮するぜ。あんたに悪いだろ。」


「そうですか。少しいいですか。」


「なんだ。」


「ミックスグリルは、異なる主張を表していると思うんです。例えば、世論とか。」


「へぇ。」


 俺は、食いながら相槌をうつ。


「で、チキンステーキは結論なんですよ。」


「合理的な結論。だから、ひとつにまとまっている。あ、気にしないでください。意味を持たせるのが、好きなんですよ。どんなことにも。意味がある。」


 やっぱり、変人か。相席して、チキンステーキを合理的な結論とは言わねえだろ。なんか言っておくか。


「うまいこというな。このミックスグリルもうまいがな。」


「どうも。」


その男は、チキンステーキに手をつけていなかった。


「食わねえのか?」


「待ってる人がいるんです。」


「そうか。俺からの感謝だ。受け取ってくれ。」


 俺は、千円札を渡すと、相手は戸惑っていた。


「受け取れませんよ。」


「いいんだ。使ってくれ。足りなかったか?」


「いえ、では。」


「おう。」


「ありがとうございます。」


 俺が、会計を済ませて、自動扉を出ようとすると、一人の男とすれ違った。


「ごめん。ごめん。おまたせ。」


「待ってないので、おまたせと言わなくて大丈夫ですよ。けいさん。」


「いやあ、マルチバースって―――」


 もう少し聞きたくなったが、どうも不格好だったんで。店を後にした。マルチバースってなんだろうな。

 まあ、相席もたまには悪くないな。ふっ。俺が、鼻で笑うとズボンのポケットが不自然に膨らんでいた。手を入れてみると、千円札が入っていた。


次回までどうぞよしなに。

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