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炎の様な男


 朱色の髪の男はこちらに向かって勢いよく突進し、拳を俺の顔面目掛け突き出す。

「うわっ」

俺は大袈裟に斜め後ろに跳び退き、男の右拳を回避するが、男はすぐさま左拳を繰り出し、俺の頬に命中する。

「グッ」

「オイオイ、こんなもんかよ!こんな弱かったらスフィーダの名に相応しくないぜ!?」

後ろに蹌踉(よろ)けた俺は体勢を立て直し、鎌を呼び出す。

「来い、死神の鎌!」

死神の鎌なら精神に攻撃できるから傷つけないで倒せるかもしれない・・・!

「何だ!?その鎌、どっから出しやがった!?」


 慌てる男を置き去りに、俺は鎌を振り下ろす。


 ザシュッ


「うっ!」

男は後ろに回避するが、腹部に鎌が掠かする。

「グッ・・・何もない空間から武器を出した・・・?てめぇ、『前科者(・・・)』か?」

前科者?俺は前科はないぞ?

「俺に前科は無いぞ??」

「あぁ?あくまでシラを切るつもりか?」


 男は腰の後ろからガントレットを取り出し、装着する。そして、ガントレットの両拳をガン!と打ち付け合う。

「ハッ!」

声と共に、男のガントレットに火炎が灯る。

「なんだ!?」

いきなりガントレットに火が着いた!油や火が近づいた様子はなかったのに・・・!まさかガントレットが打ち付け合う事で発生したのか!?火打ち石みたいに!?


「あのガントレット、なんだかヘンな感じだ。」

「リヒト!?」

リヒトが現れ、男のガントレットを睨みつける。

「あの炎は普通の炎とは違う。今の君じゃあ当たったらゲームオーバーだよ。」

「マジか。まだ死にたくねぇんだけどな・・・リヒト!最初に会った時みたいに俺を回復させられるか!?」

「・・・。後一回ってところだね。」

じゃあその後一回をどう使うかが重要だな・・・。俺は男の方へ向き、鎌を構える。


「行くぜ!」

男は突進し、俺の顔目掛けて拳を繰り出す。俺はそれを首を傾け余裕を持って躱すが、

「熱っ!」

熱い!1メートルは離れていた筈なのに!一体何度あるんだ!?男は俺を追い詰めるように乱打を繰り出す。


 頭、腹、腕、顎、頭、腕、足、耳、胸、腹、腕、頭。

俺はそれを紙一重で躱していくが、徐々に掠る様になっていき、段々と皮膚が(ただ)れていく。 

「オラッ!」

強力なストレート。俺はそれを鎌で防ぐが、五米メートルほど吹き飛ばされ、鎌はドロドロに溶けた。男は空中(上)へ跳び、ガントレットの拳心(けんしん)を合わせる。

「飛んでけ!」

ガントレットの入れ口から炎がジェット噴射され、ロケットの様に迫り来る。まるで隕石だ。


 集中しろ・・・。鎌を再生させるんだ。鎌の溶けた部分から炎に包まれ、鎌が再生していく。ガントレットが眼前に迫る。

「今だ!リヒト!」


 ドオオオン!


 ガントレットが爆発し、街中から悲鳴が聞こえる。

「ついカッとなっちまった・・・。チッ・・・、この技を使うと(しばら)く能力が出せなくなるんだよな・・・。まあ、流石に(たお)せてるだろ。」

男は爆発の方向をチラリと見る。

「なにっ!」

俺は爆炎の中から飛び出し、鎌を振り被る。

魂喰(たまぐ)い!」

男の胸を切り裂く。

「ぐはっ!」

だが、男はフラつくだけで倒れなかった。

「な・・・、なんであの爆発の中で無傷なんだ?けど、浅かったな。」


 男はこちらを向き、構える。

「オラァ!」

拳を振り被り、突進してきた。その途端、

「うっ!」

男は頭を押さえ、苦しそうに(もだ)える。

「精神攻撃・・・?クソッ・・・、タレ・・・。」

男はドサッと倒れ込み、気絶した。


「はあ・・・なんとか倒したな・・・」

鎌を消し、その場に(しゃがみ)込む。

「それにしても・・・、一発の技でこんなに疲労感が出るとはな・・・」

「まあまあ、よくやったじゃん。今のは君より圧倒的に格上の相手だったよ。僕の回復を使ったとはいえ、凄いと思うよ。」

コイツ・・・なんだかんだで(ねぎら)ってくれるよな。結構良い奴なのか?

「おう、サンキュな」

「それにしても君、初めてなのに鎌術をぶっつけ本番で成功させるなんてすごいじゃん!君、死神の才能あるんじゃない?」

そう言って、リヒトはうざったしく俺の周りをキョロキョロとして俺を色んな角度から観察している。

「はぁ・・・()らねぇ才能だな・・・」


 リヒトと会話していると、コツコツと足音が聞こえてきた。リヒトはすぐさま姿を隠した。

「すみません。うちの団員が失礼をしました。」

近づいてきたのは、蘭色(シアン)の髪の眼鏡をかけた人物。目の下にクマがある様で、苦労性だと言う事を彷彿(ほうふつ)させる顔をしている。

「団員って・・・この朱色の髪の人の事ですか?」

「はい・・・。ご迷惑をお掛けしました。この部下は短気で思い違いが多くて・・・。ところで、このビルに何の用ですか?」


「ここの組織に入りたいんですが・・・」

そう言うと、男は目を見開き、頭上に『!』マークが出た様な顔をしていた。

「レオナルドを倒すほどの方なら大歓迎ですよ。」

レオナルド?この朱色の髪の男の名前か。

「ですが・・・一応入団試験がありますので、それを突破すれば組織に入団できます。どうしますか?」


 ・・・願ってもない状況だ。試験がなんなのかは分からないが、やらなければ前に進めない!

「やります!」


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