Color 1 始まりの光(7)
ブレイムが消えた地面の上に、手の平ほどの大きさの、黒い石が残っていた。
美しく磨かれた六面体。そして、吸い込まれてしまいそうなほど深く、魅惑的な闇の色。
その石は痙攣するように細かく震え、少しずつ這うように動き出す。まるで、この場から逃げ出そうとするように。
「やれやれ。表が随分と騒がしいと思えば……」
廃墟のような館の、木の扉が重く厳めしい音を立てながら開き、白いシャツの襟が風に揺れる。
眼鏡をかけた黒髪の青年が、柔和な笑みを浮かべたまま、ゆったりと館の中から現れた。
青年の白い靴が庭の砂利を踏む。
黒髪の青年は眼鏡を外すと、薄い笑みと共に細い目を見開いた。
青年を包んでいた空気が、滑らかな絹から青白く静かに燃える炎へと変わる。
そして青年は薄紫色の石を取り出すと、ふわりと片手で包み、小声で何かを口走った。
突如、手の中の石が光る。
青年が腕を振ると、大人の手の平いっぱいの長さを持つ、薄紫色の細い針が一本、放たれた。
その針は黒い石の中心に命中すると、石は悲鳴のような軋んだ音を立てて脆く砕け、風にさらわれるように消滅する。
ふうと息をつき、黒髪の青年は切れ長の涼しい目元で、地面に倒れる二人を見下ろした。
「さて……どうしたもんかな」
静かに呟くと、黒髪の青年は不敵な笑みを浮かべた。