Color 1 始まりの光(6)
地面が揺れる。
巨大な黒い影の化け物――ブレイムは、気を失って動かなくなった守護に背を向けると、亜姫を包み込んだ卵型の影に手を伸ばした。
手のひらが大きく布のように広がり、その卵形を飲み込もうとする。
しかし、その背後から大地を強く蹴る音。巨大な腕を白銀の閃光が貫き、斬りつけると同時に吹き飛ばした。
その衝撃でブレイムがバランスを崩して倒れると、地面が大きく揺れ、もうもうと土ぼこりが舞う。
巨大なブレイムと亜姫を包み込んだ影の間に、白銀の髪を夕焼けに照らされた守護が立ちはだかる。
その右手には一振りの、抜身の刀が握られていた。
鍔のない、黒漆塗りの拵えと刃紋は直刃。
そしてその刃は黄昏を浴び、より燦然と輝く。
みちみちっ、と切りつけられたブレイムの口の辺りが音を立てて開き、身の毛がよだつような野太い雄叫びを上げた。
雄たけびは空気を震わせ、守護の髪やシャツを揺らすが、守護は怯むことなく金色の瞳で睨みつけ、低く腰を落とす。
地面を蹴り、真っ直ぐにブレイムへと立ち向かい、跳んだ。
刃はブレイムの頭上に食い込み、そのまま一直線にその巨体を叩き斬る。
一閃にブレイムは一瞬動きを止めたが、真っ二つに両断されたその姿は光に包まれると弾けるように消え、同時に、亜姫を包みこんでいた黒い影も共にかき消えた。
影の中からは亜姫が、声も無く地面に倒れ込んだ。
「おいっ! 亜姫……!」
亜姫は気を失っているが、怪我をしている様子もない。
守護は咄嗟に駆け寄ろうとしたが、その一歩を踏み出した瞬間、膝の力が抜け、そのままその場に倒れこんだ。
疲労感が、どっと波のように押し寄せてくる。瞼が重く、声も出ない。
そして、抗いようの無い眠気に指一本動かせないまま、守護はそのまま目を閉じた。