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なろうラジオ大賞2

偽物「私とあなた」

作者: shoundo

「ガシャーン」


真っ二つに割れたそれは、国宝の楽茶碗。


引率の先生が、その場にへたり込む。


修学旅行の最中、友人の背中を押した私が悪いようだ。


少しして、警察がやってきた。


「君、こちらに来てもらえるかな?」


「私?私がやったの?」


何をしたのか、よくわからない。


実感もない。


この夢のようなふわふわした状態が、現実味を持ったのは、警察署についてからだった。


◆◆◆


「ここは、どこですか?」


「警察署の留置所です。あなたは重要参考人になります。」


「今後、どうなるのでしょうか?」


「御実家のある北海道の警察署へ移送されます。」


私は、恐怖で震え出した。


「今日はもう寝なさい。」


◆◆◆


翌朝、留置所で目を覚まし、そのまま北海道まで移送された。


少し警備が緩くなった。


もはや考えている暇はない。


私は、走り出した。


「こら待て、逃げるな。」


後ろから聞こえる声を無視し、何度か細い道を駆け抜け、空き家に入り込んだ。


そこには、先客がいた。


私に似た格好、同じ体格の人物だった。


「私が二人いる。」


ここで、恐ろしい計画が私の頭をよぎった。


◆◆◆


「見つけました。道路で転んでいます。気を失っているようです。」


複数の警察が、私と似た格好をした人物を連れて行った。


私は一人、空き家から一部始終を覗いていた。


「これからどうしよう。」


そこには、誰かの持ち物が置いてあった。


そして私は別人になった。


◆◆◆


3年間、私はあちこちを転々としながらアルバイトをした。


割と幸せな生活が送れそうになった時、私と同じ格好をした人物が目の前に現れた。


「見つけた。もう逃がさない。」


何かで頭を殴られ、私は意識を失った。


◆◆◆


気が付いた時、私は、椅子に座り、目隠しをされ、後ろ手に縛られていた。


「ここは、どこですか?」


「ある廃ビルの地下室です。3年間の苦痛を味わっていただきます。」


私は注射を打たれた。


「食事は点滴で充分ですね。さて、このビルは、明日取り壊されます。」


部屋の電気が消されたようだ。


「私は、あなたとして生きていきます。あなたは、私として死んでください。」


意味が分からなかった。


「さようなら、私。」


◆◆◆


翌朝、工事の音が聞こえた。


「誰か、誰かいないですか!」


私の最後の言葉は、誰にも届くことはなかった。

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