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僕は僕がわからない  作者: 古井 今日
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目が眩むほどの真っ赤に燃える夕日が、1日の終わりが近いことを告げる。明日こそは学校に行かなくてはいけない。そんな焦りから、スクールバックにせっせと荷物を詰めていた。友人からのメッセージも返した。忘れてしまったころの自分は、既読だけつけていたようで、心配のメッセージが多く届いていた。親友の奏太そうたからは毎日毎日その日にあった授業の内容を事細かに書いたメッセージが届いていた。

「まめだな・・・。」

思わず笑みがこぼれる。今までの悲しみや不安が少し和らいだ気がした。待っていてくれている、そう感じた。


「うーちゃん、入ってもいい?」

扉の向こうで女の子の声がした。扉を開けると、そこには色白で丸い目が印象的な髪の長い女の子が立っていた。

「えっと・・・初めまして、かな。お母さんから聞いたよ。私、ゆりの。うーちゃんとは元々いとこだよ。でも、今日から私はお姉さんだから!よろしくね!」

そういうと「ゆりの」という女の子はぎゅっと手を握ってきた。

「あ、相崎初あいさきういです。よろしくお願いします。」

戸惑いながらも、笑顔で挨拶をした。情けないことに少しひきつっていたが…

「もう~知ってるよ。本当は、この前自己紹介したしね。あ!敬語なんて使わなくていいからね!」

「ああ・・・そうなんだ・・・お姉さんということは、年上なの?」

「うん。私はうーちゃんの2こ上で今高校3年生だよ。」

「そうなんだ。そのうーちゃんって呼び方は?」

「かわいいでしょ!」

「ああ・・・そうかな、はは。」

相手のペースに飲まれているのは気づいていたが、それに抗う余裕は今の自分にはなかった。

「明日学校行くって聞いたけど、もう大丈夫なの?」

「自分の覚えている記憶と今じゃ時間が経っているし、そろそろ行かないと授業追いつけない。気持ちの整理は時間がどうにかしてくれるかなって思ってるんだ。行くよ、学校に。」

そう言うと彼女は優しく笑って

「じゃあ明日、駅まで私が案内するね!うーちゃんの学校と最寄り駅が一緒だから、途中まで一緒に学校に行こう!」

と言ってくれた。彼女のご好意に甘えて、道案内をしてもらうことになった。


その日の夜はなかなか寝付けなかった。母が亡くなったこと、記憶のない日があること、明日からの生活、考えてしまうことが多すぎた。自分の知らぬ間に消えた母。もう一生会うことが出来ないと考えるとぽろぽろと涙が溢れてきた。実は自分の知らないどこかで生きているのではないか、そう思いたかった。生きていることを必死に願いながら、いつの間にか眠りについていた。

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