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僕は僕がわからない  作者: 古井 今日
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心地よい春 1

はじめての投稿でちゃんと書けているのか不安です。


 教室の窓から心地よい陽が降り注ぐ。春の風がカーテンを揺らしている。まるで夢を見ているかのようだ。特等席を満喫していると、カメラのシャッター音が教室中に響いた。

相崎(あいさき)、いいのが撮れたぞ。」

 先生の満足そうな顔を見て、自分が本当に夢を見ていたことに気付いた。

「うわ。やられたよ。」

 そう返すと、クラス中は笑いで包まれた。現代文の授業では、こうして居眠りをしていると写真を撮られ、後日教務室前の掲示板に掲示される。僕の悔しそうな顔を見ながら

「楽しみにしておけよ。」

と、先生が言ったところで授業終了のチャイムが鳴った。



昼食の時間には友人の岩崎晴也(いわさきはるや)塩崎奏太(しおさきそうた)と一緒にお弁当を囲んで食べている。

「さっきの飯島先生、(うい)が寝てる横でお日様の力が偉大だなあとか言ってたぞ。あの見た目でお日様だってよ。」

 晴也がけらけらと笑いながら楽しそうに話している。

「なんで起こしてくれなかったんだよ。」

「いや、先生が何度も声をかけていたのにお前が起きなかったんだよ。」

 晴也はそう言うと、お弁当箱いっぱいに敷き詰められたブロッコリーを口いっぱいに頬張った。ブロッコリーは最近の彼のマイブームらしい。筋トレに効果があるとかなんとか、言っていた気がする。

「初の写真が掲示されたら、女子たちが喜ぶって晴也が言ってた。」

 今まで黙々と食事をしていた奏太が、お弁当箱の蓋を閉じながらそう呟く。僕は黙って晴也を見つめる。無言の圧力を感じた晴也が口を開く。

「この前さ、中学の時の同級生から久々に連絡が来たと思ったら、初の連絡先を教えてくれって内容でさ。さっきも何人かほかのクラスからお前の顔を見に来ている女子がいたし、モテモテアイドルは困っちゃいますな。」

 晴也は少し嫌味っぽくそう言った。カバンから取り出したiPhoneの黒い画面に自分の顔が映る。僕は生まれつき右目が濃い茶色で左目が薄い茶色をしている。オッドアイ、と言えばかっこよく聞こえるが、虹彩異色症というやつだ。おまけに肌は白く、髪の色も薄い茶色をしている。この見た目は、人の目を引くらしい。

「俺ばっかりモテちゃって、ごめんね。」

 調子に乗っているふりをしてこう言うと、

「うわ、むかつく。いいなあ、初はいいなあ。」

と返ってきた。いいなあ、か。僕は晴也が羨ましかった。言ってはやらないけれど。



 学校とバイトを終え、帰宅する。家へと続く階段は、すっかり錆びついていて体重をかける度にミシミシと音を立てていた。玄関の扉を開けると、静かな暗闇が広がっている。明かりをつけ、カバンを無造作に放り投げると、冷蔵庫に入っている夕食をあたためる。時計の針は22時を指していたが母はまだ帰ってこない。

 僕は母と二人で暮らしている。父は僕が3つか4つの時に他界した。その後、母方の祖母も一緒に暮らしていたが小学生の頃に他界した。生活を支えるために母は遅くまで働いている。夕食とお風呂を終え、身支度を済ませると、課題をしながら母の帰りを待つ。

 いつもはそうしていた。


 ―――いつもなら。




 カーテンから微かにこぼれた朝日の光で目が覚めた。目を開けると、そこにはいつもと違う風景があった。見たこともない立派なベッドに身を預けていたことに気づく。僕は飛び起きた。



「・・・ここは、どこ?」




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