閑話 ミシェルの休暇
「お仕事の邪魔をしてごめんなさいね」
いるはずのない女性がギルド長室から出てきたと驚く店員に微笑みかけてから、ミシェルは出口の一歩手前で足を止めた。
「アレックス、わたくしに同行するのならその色をどうにかなさい」
「それはミシェルもやろ。紫んは他におらんし?」
「濃紺もでしょう?」
ウナ・パレムには多くの魔術師がいるし、街の住人も彼らの階級については他地方の人々より知識がある。二人のローブの色は、それだけで巨大な看板を背負っているようなもので、隠密の行動には適さない。
ミシェルは腰にさげていた紫魔石の杖を持った。竜の鱗を花びらのように重ねて魔石を包んだ、なんとも優美な杖でローブを撫でると、淡い藤色の布地が光沢を持った灰色に変わる。ミシェルの選んだ色を見て、アレックスが「ほなワシは黒やな」と同じように杖でローブの裾を叩いて色を変えた。
「あなた、本当に真っ黒が似合うわね」
「よう言われるわ。ほんでこれから三日間どないすんねん?」
「視察よ。情報収集は必要ですもの」
色を偽装した二人の魔術師は、朗らかな顔で医薬師ギルドの扉を開け街に踏み出した。
「なんや気に入らんなぁ」
大通りの街灯を見上げたアレックスは、細い目をさらに細めて眉間を揉んだ。昼間の街灯は沈黙していたが、監視と盗聴の魔道具は密かに動き続け人々の声と姿を集めている。
「そうね、少々厄介だわ」
いくらローブの色を変えていても、顔まで変えたわけではない。知る者が見れば誰であるかは一目瞭然だ。こそこそと街を探っている姿を残したくなかった。
「高みから見下ろされるん、腹立つし」
アレックスは鼻歌を歌いながら指先をクルクルと動かした。途端にパリン、パリンと街灯が物理的に破壊されていく。突然頭上から鉄くずや水晶片が降ってきて驚いた人々は、魔法使いギルドに連絡を、いや憲兵に通報が先だと騒ぎはじめた。
「派手にやり過ぎよ。魔術式を改変するだけですむでしょうに」
ただでさえ塔の異変で忙しい魔術師たちに、街中の街灯修理を押しつけるのはかわいそうだ。顔をしかめたミシェルに睨まれても、アレックスは平然と指を回し続けている。
「せやかて、こっちの方が簡単やし、撹乱にはちょうどええやろ」
色は最下級に誤魔化したとはいえ、気品の漂う婦人と謎めいた迫力のある男の二人組は、街ゆく人々の視線を集めていた。それらの目を逸らせ記憶から消すには、他に目立つものを用意するしかない。実際、人々は頭上で破裂する街灯を見あげるのに忙しく、ミシェルとアレックスの存在は忘れ去っているようだった。
「壊すもんは数が限られとるんや、はよ行こ」
次々と街灯が弾け壊れる混乱の中を進んだ二人は、人目につくことなく街門をくぐり出たのだった。
+
十一月のウナ・パレムは積雪に取り囲まれていた。街壁の内側は除雪が行き届いていたが、一歩街を出れば一面が白い。
「わたくしの腰まで積もった雪なんて初めて見たわ」
「へぇ街道はちゃあんと雪かきしとるんやな。けど、ぬかるんでて歩きにくいわ」
広く整備された道の両端に山積みされた雪の壁の間を進み、街道から離れる際には雪を溶かして道を作りながら森を目指す。
「んで森にはいって何するん?」
「狩りに決まっているでしょう?」
木々が傘の役目を果たし、森の中の積雪量はそれほど多くはない。雪のない腐葉土や倒木の付近には、魔獣や魔物の足跡が数多く残されていた。冒険者の訪れが途絶えた森で快適に冬を越しているらしい。
「ゴブリンにワーラット、あとは大黒蜘蛛あたりを間引いておきましょう」
足跡を追って巣を見つけるなり、彼女は杖を一振りした。
倒木を立て重ねた巣ごと、ゴブリンの群れが一瞬で殲滅する。
「オーバーキルやで」
「そう、かしら?」
「見てみぃ、周りの岩盤までえぐれとるやんか。森は一晩で再生せぇへんのやで」
呆れ気味にアレックスが指し示したそこは、ゴブリンの巣だけでなく周囲の木々までなぎ倒され、地面が陥没し、魔物の残骸が一面に散らばっている。
「討伐は久しぶりなのよ、少し調整が狂っただけだわ」
ほほほ、とわざとらしい笑い声をあげたミシェルは気まずげに視線を逸らせた。駆け出しの頃には仲間の冒険者とともに討伐の旅暮らしをしていた。その当時の感覚で攻撃魔術を撃ったのだが、結果は血肉の海である。若い頃よりも魔力量が増え威力が増しているのを計算に入れていなかった彼女のミスだ。
「……ちょっと強すぎたけど、狙いは外していないのだから及第点としておきましょう」
「せやなぁ、魔石と証明部位をきっちり残しとるんはさすがや思うで」
血の海の中からそれらを拾い集めたアレックスは、次の巣に向かって歩き出すミシェルを追った。
肥大しあふれかけていたゴブリンの巣を二つに、魔獣を汚染しかかっていたワーラットの集団、そして魔素をため込んで人面への進化を遂げる寸前だった大黒蜘蛛を屠ったミシェルは、閉門時間直前に街に戻った。
一度に大量の討伐部位を押しつけられた冒険者ギルドは数人がかりの計算に忙しそうだ。
「申し訳ありませんが、魔石の買い取りはできかねるのです」
査定職員の申し訳なさそうな声に「承知している」と笑顔で応え、ミシェルは売店で必要な物を買い求めると、紹介された宿に部屋をとった。
「こない庶民的な宿でええの?」
豪邸で暮らし、執事やメイドに世話をされているミシェルが、個室とはいえ冒険者の安宿で我慢できるのかとアレックスは疑いの目で見ている。
「言ったでしょう、わたくしも若い頃は大陸中を討伐して回っていたと」
「お嬢様の接待討伐やと思うとったわ」
「そんな迷惑な冒険者なんて恥ずかしいだけよ」
汚れを落として身体を清め、冒険者ギルドで購入した狩猟服に着替えたミシェルは、ざわつく宿の食堂でヴィレル酒と暴牛の芋煮込みを堪能していた。向かいに座ったアレックスも彼女に付き合って酒を注文し、ちびりちびりと楽しんでいる。
女冒険者を装ったミシェルと黒級の魔術師の二人組は、当人らの思惑とは裏腹に注目を集めていた。周囲のざわめきにも動じない豪胆さ、荒事にはほど遠い繊細な容姿に、背筋の伸びた凜としたたたずまい。とても見た目通りの存在とは思えないのだ。興味を持った何人かが近くの席に移り聞き耳を立てたのだが、何故か二人の会話はため息すらも聞こえてこなかった。
興味本位の視線の主らを横目で牽制し口元をほころばせたアレックスは、赤い魔石を指先でもてあそびながらミシェルにたずねた。
「明日も討伐なんや? 仕事熱心やなぁ」
「封印がなくなった影響がもう出はじめているのよ。今のウナ・パレムはそれを知らないし、わたくしはまだ教えるつもりはないの。知ったとしても対処できないでしょう?」
一見、いつもと変わらぬように見えるが、今のウナ・パレム魔法使いギルドは崩壊寸前だ。統率する者がいないのだから、情報を与えても何もできないだろう。組織として行動を起こせるのは、各地のギルド長が集結し、フランクを更迭して新しい責任者を据え、その後の方針が決定してからになる。だがそれでは遅いのだ。
「アキラたちがいてくれれば助かったのに……あなた、本当に三人の居場所を知らないの?」
「言うたやん、ワシ雪山で酷い目に遭わされてんで。そっから別行動や、今どこで何しとるかも知らんわ」
「この街に力を借りられそうな冒険者はいなのよ。せめてアレ・テタルから何人か呼び寄せたいわ……どうかしら?」
転移魔術陣が破壊されても、転移する方法はある。アレックスの協力さえ得られれば、だが。
安酒だ、安飯だと文句を言いながらも、カップを空け料理を平らげている彼は、向けられたほんのりと火照った笑みに、腹黒さ全開の笑みで返した。
「アレは今回限り、ミシェルだけいう約束やで」
エルフとの契約は厳格なものだ。例外は存在しないし、させない。分かっていたことだと肩をすくめたミシェルに、アレックスはヴィレル酒を瓶で注文してからにやりと笑った。
「それに、手下おったらジブン猫脱げんやろ?」
「あら、わたくし猫なんて」
「美貌の陰った中年女の高慢と自惚れほどウザいもんあらへんで? 森で風刃ぶっ放しとるジブン、えろう楽しそうに笑うとったし、素直にひとりで暴れとったらええんと……っ痛いわ!」
「あら、ごめんなさい。ちょっと脚を組み替えただけなのよ?」
「白々しいわぁ、踵でグリグリしよったくせに」
痛む右脚を引き寄せたアレックスは、給仕が届けたヴィレル酒をミシェルが受け取る前にかっさらうと、瓶の口を直接くわえて一気に飲み干した。大好物の酒を奪われた彼女は、淑女にはあるまじき形相と言葉遣いで「陰険腹黒細目野郎」と罵った。
「あなた、本当に嫌な奴ね」
「お互い様やわ」
テーブルの下で激しい攻防を繰り広げながら、二人は酒を飲み料理を追加し、その日の収入の大半を散財したのだった。
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翌日もミシェルは雪壁を溶かし進み、昨日とは違う森で魔物を相手に暴れ回った。それに付き合うアレックスは、攻撃魔術の射程外にて魔石と証明部位の回収が可能になるまで待機である。
「真面目やなぁ。どうせ連中が揃うたら調査討伐になるんやろ? 雪と壁がある間は街もそない危なないやろし、ほっといてええんちゃう?」
「街は無事かもしれないけれど、村はそうとも言えないでしょう」
防護壁はただ石を積み壁を作れば良いというものではない。魔除けの術を抜け穴のないよう計算された間隔で埋め込む工事は技術が必要で、徴集した労役人では綻びができてしまう。専用の職人と魔術師が協力して作り上げる壁の費用も高額で、設置義務のない村で防護壁を整備しているところは皆無と言っていい。
「この湧きぐあいだと、どこかの村が襲われるのも時間の問題でしょうね」
「せやかてジブン一人でどうにかでける規模ちゃうやろ」
この地方の責任者が対処すべきことであり、ミシェルが背負い込んで躍起になる必要はないとアレックスはあきれ顔だ。
「せっかく仕事から離れたんやし、休暇や思てのんびりしてもええんやで?」
そのつもりでアレックスは転移魔術陣を運んでやったのだ。臨時会議がはじまれば寝る暇もないほどの忙しさになるだろう。せめて数日間だけでも責任を忘れて好きなことをすればいいのだ。
「買い物するんやったら荷物持ちするし、観光したいんやったらガイド呼ぶで?」
この地方担当の暇人をこき使えばいいのだ。
「あら、わたくし存分に休暇を堪能しているわよ」
狙いをつけた魔物に杖を突きつけたまま顔だけを向けた彼女は、開放感に満ちた笑顔をみせた。
「買い物はどこでもできるし、観光は皆がそろってからすることになると思うわ」
「討伐もあとにしたらええやん」
「……皆がいたら羽目を外せないじゃない」
大陸の魔法使いギルドの頂点に立つ紫級の錬金魔術師のイメージは、隙なくすべてに余裕綽々と対処してみせ、何事にも動じず部下を率いる凜々しい姿だ。長年かぶり続けた猫は己の一面ではあるのだが、とても疲れる。執務机に縛りつけられていると、ふと懐かしい冒険者時代を思い出し、あの頃のように思い切り魔術を撃ちたくなるのだ。
「アレ・テタルでは絶対にできないことですもの」
ミシェルの杖は一輪の花のようだ。花床のような魔石を、竜の鱗が重なり包んだ形状をしている。彼女が魔力を注ぎ込むと、魔石から押し離され鱗が開くのだが、そのさまは大輪の古代花が開花したように美しく幻想的に見えた。だがその美しさとは裏腹に、魔石から放たれるのは特大の攻撃魔術だ。彼女が放った風刃は、両手で握った杖先で見事に操られ、木々の間をすり抜けながら、魔物だけを的確に容赦なく屠ってゆく。
「器用やなぁ」
「わたくし攻撃魔術師としても紫級なのよ」
最近は錬金魔術師としての活動しか見せていないが、彼女のルーツは攻撃魔術師である。仲間とともに大陸中を駆け回っていた若かりし頃は「惨滅の女神」なんて二つ名で恐れられていた事もあった。
開放感に満ちたミシェルを微笑ましげに見ていたアレックスは、魔物を殲滅する彼女の背に軽く声をかける。
「その勢いで大陸制圧してくれたら、ワシもいろいろ楽になるんやけどなぁ」
ミシェルにはそれだけの力があるのだ。
「ちょっと頑張ってみいひん? ワシも手伝うで?」
笑顔で提案したアレックスの鼻先に、魔力の満ちた魔石が突きつけられた。今にも暴発しそうなほど大量の魔力が、魔石を突き破ろうとして激しく光を放っている。
「冗談やで、冗談。せやからその照準、ワシから外してくれへん?」
彼女は積雪どころかありとあらゆるものを一瞬で溶かしそうなほどの怒りの眼で彼を睨んでいた。その花開いた杖の先では、溢れんばかりの魔力がピシピシと魔石を砕きそうな音を立てている。
「あなたの口から出る言葉はすべて本心でしょう?」
風刃よりも切れ味が良く鋭利な緊張が二人の間にあった。
「わたくしが大陸を制圧したら、あなたは大喜びでわたくしを殺して同胞を呼び寄せる。そうしてこの大陸は数百年ぶりにあなたたちだけの大地になる、そうでしょう?」
「さすがやなぁ、ようワシを理解しとるわ」
拍手するように手を打ち鳴らしたアレックスは、発動寸前の魔術を奪い取って消滅させた。力を失った杖の鱗は、ぱたぱたと閉じ蕾に戻ってゆく。
「理解できているものですか。契約で縛ったわたくしは抗えないのよ、なのに何故命じないの?」
大陸の覇者となり人族を一人残らず滅ぼせ、と。
アレックスとの間に結ばれた契約はそれを強要できる。彼が命じれば、彼女の意思とは無関係に、身体が動き魔力は人々を襲うだろう。そのための契約ではないのかと問う彼女に、アレックスはひらひらと手を振って答えた。
「そら、ワシがおもろないからに決まっとるからや」
「面白くない、ね」
「せやで。あれは長老の趣味やねん。けどワシは好かんのや。おもろないから」
「……あなた、長老の名代なのでしょう? そんなことを言ってていいの?」
「耄碌しかかっとるジジイの命令なんざほっとき。ワシに託した時点で期限を区切らんかったジジイが抜けとるんやし」
長老との契約だからミシェルを縛った。だがそれ以外の約束はないのだから、少しでも面白おかしく楽しめる方向に舵を取る。それがアレックスのやり方だ。
だらりと杖をおろしたミシェルは、蛇蝎を見るかのごとく眼を細め眉をしかめた。
「つまり、わたくしが自発的に大虐しなければ、面白くない?」
「やっぱりワシのことようわかっとるやん」
アレックスは彼女を契約で縛ることで時間を止め、悠久と孤独に耐えきれなくなる瞬間を待っているのだ。
「……悪辣すぎるわ」
ミシェルは深々と息を吐き、杖を構え直した。魔石に力を注ぎ、作り出した炎の玉を叩きつけるように放った。炎の玉はアレックスの右頬をかすり、背後に湧いていたワーラットに命中した。疫病をばらまくワーラットの死骸は焼却処分が原則だ。
「なぁ、ジブン、もしかしてワシ狙うた?」
「あら、まさか。あなたが死んだらわたくしの命も終わるのでしょう? まだまだこの世に未練はたくさんあるのよ、自殺なんてとんでもない」
朗らかに微笑む彼女は、次々と炎の玉を打ち出してはワーラットを屠っていく。
「ほら、灰になる前に証明部位を取ってちょうだい」
「無茶いわんといて、ぼうぼうに燃えとるやろ」
「あなた自分から言ったじゃない、暇だから証明部位集めを手伝う、任せておけ、って」
「あー、言うたわー、確かに言うた!」
口約束も立派な契約だ。エルフは契約を絶対に履行する、そういう種族なのだ。ミシェルとの約束には何の罰則もないけれど、守らねばならない……そういう生き物なのだ。
「ほんま、おもろいわぁ」
ニヤニヤとした、知らぬ者が見れば悪巧みにほくそ笑んでいるようにしか見えない表情で、アレックスはワーラットの尾の回収に励んだのだった。
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ウナ・パレムの周囲には多くの村がある。ミシェルは村に近い森を優先的に回っては、人々に危害を加えそうな魔物を間引いていった。朝のうちに隣接する村々の森をハシゴし、昼過ぎには街道沿いの積雪をものともしない魔物を狩り、閉門ギリギリに街に戻るのだ。
三日目の昼下がり、街から南の方角にある小さな森でオーガの一団に囲まれたミシェルは、どの魔術を使うべきかと悩んでいた。わずかな木々の向こう側には人家がある、周囲への影響を考えれば大きすぎる攻撃魔術は使えない。だが威力を落とせばオーガを一撃で屠るのは難しくなる。十を越える魔物に囲まれた状態で打ち漏らしては己の身が危険にさらされかねない。
「どないするん?」
「斬るわ」
ミシェルは杖を両手で持ち構えると、竜の鱗に向けて魔力を流した。力を得た鱗が長く伸び、剣のように姿を変える。その表面は魔力を帯びて鈍く輝いていた。
「けったいな杖やな。槍になりよったわ」
自身の錬金魔術師としての持てる技術をすべて注ぎ、己の戦闘スタイルに合わせて製作した杖だ。これを持っている限り敗北はないと自信を持てる彼女の大切な相棒だ。
「余裕はないわ、避けなさい!」
軸足を起点に駒のように素早く回転したミシェルは、取り囲み一斉に襲いかかってきたオーガを一閃した。鱗剣が魔物の胴を斬り、剣の延長線上に伸びた光の刃が、鱗の剣先が届いていないはずの魔物まで裂いた。
血しぶきが降る中、傘のように風膜を張って自分とミシェルを血の雨から守ったアレックスは、転がる死骸の数を数えた。
「十五か、角と魔石で結構な荷物になりそやなぁ」
手近な屍から回収をと踏み出したところで、野太い雄叫びが割り込んだ。
「お助けしますぞーっ」
雄叫びに続いて金属が擦れる音と、重く雪を踏み固める音が森の外から近づいてくる。
「なんやの?」
「あの音は……ドミニクの装甲人形だわ。もう着いてしまったのね」
各国のギルド所長らにあてた召喚状に記した今日。呼びつけたのはミシェルだが、間に合うとは思っていなかった。彼らの到着は明日の早朝になるだろうと予想していたのだ。
「どないすん?」
「休暇は終わりね……街に戻るわ」
少しばかり残念そうに微笑んだ彼女に、アレックスが灰色のローブを差し出した。狩猟服のうえからそれを身につけ、杖の魔石で布地を撫でる。銀糸の繊細な刺繍は、流れるような薄紫色の生地にこそ映えた。
「アレ・テタルの女帝の完成や」
細目のつま先を軽く踏んで報復した彼女は、大きく息を吸い込んで気持ちを切り替えると、村人からミシェルの危機を聞いて駆けつけたドミニクらを笑顔で迎えたのだった。
注釈
・ガイド=エディ
・古代花 → 古代蓮のイメージです
・惨滅の女神 → オーバーキル(笑顔)だったから
遅くなりましたが、ウナ・パレムの閑話その1です。
その2もなんとか3月中にアップしたいと思っています。




