23 アルフォンス・ロン・ニーベルメア
医薬師ギルドのギルド長室にこもった四人は、途中で購入した料理をつまみながら、報告、連絡、相談の作業に集中していた。
「彼女がウェルシュタント国の第五王女に間違いないというのなら、マジックバッグの視察に来たのは第三王子アルフォンス殿下だ」
生まれも育ちもニーベルメアであり、医薬師ギルド長として国内情勢にはそれなりの知識と情報網を持つサイモンが断言する。さっぱりわからないという顔の三人に、サイモンは教師の顔で講釈をはじめた。
「国王には成人した王子が三人、王女が一人いる」
第一王子のクリフォード王子は三十歳、王太子として国政の中心で政務にあたっている。王太子妃との間に二人の子供がいるが、どちらも王女だ。
「わが国では王位継承権は王子にのみ与えられるため、王太子妃が男子を生むまでは、第二王子は婚姻を控えている」
二十八歳の第二王子ライオネルには婚約者がいない。王太子に男子がいない状態で国内貴族から妃を迎えれば、オルステインのような内乱を招く可能性があるからだ。かつては他国から縁談を持ち込まれたこともあった。ウェルシュタント国からコーデリア王女との婚姻話が持ちかけられたのは、ちょうどクリフォードが結婚したばかりで時期が悪かった。王太子妃は二代前に王家から降嫁した姫君の血筋で、国内でも絶大な権力を持つ公爵家の令嬢だ。王太子夫妻に子供がいない時期に他国の王女を迎え入れれば、様々な憶測が飛び交うのは間違いがない。下手をすれば一つにまとまっている貴族が割れかねないという懸念があった。かといって一国の王女との縁組を断るのは難しい。結果、年齢が釣り合うアルフォンスをと理由を付けコーデリアの婚約がととのった。幼い姫君が成人し婚姻可能になるまでの時間稼ぎをしたのだ。
「会ったコトねーのに結婚すんの? 俺無理だー」
「何処の国も王族ってのは大変だな。自由に結婚もできねぇのかよ」
「王族の結婚は政治だ。庶民と同じに考えるのは違うということだろうな」
「庶民でも商家や職人は、財産や技術を残すために取引に重きを置いた結婚をする、よくあることだよ」
サイモンの言葉を聞いたシュウは「夢がねー」と嫌そうに口を尖らせた。
「王が我を通した結果が今のオルステイン国の姿だ。王位継承権を争って国内貴族がいくつもの派閥に分かれての内乱常態だぞ、国を治める立場なら慎重にならざるを得ないだろうな」
「しっかし、北の端っこまできてあのお姫さんに会うことになるとはなぁ」
「第二王子が結婚を控えるほど慎重なのに、第三王子は姫と結婚したんですね」
コーデリアとの間に男子が生まれれば、後の火種になりかねないと誰も止めなかったのだろうか、というアキラの疑問に、「ウェルシュタント国からの強い要請があったらしい」とサイモンは複雑そうに答えた。
「当初の予定ではコーデリア王女は十五歳で嫁いでくる予定だった。それを二年も伸ばしては流石にウェルシュタント国が痺れを切らしたんだ。適齢期の王女の結婚を先延ばしにするとは何事か、とね」
コーデリアとの結婚で一時は国内貴族が割れかけたそうだ。独身の第二王子を差し置いて先に婚姻を結ぶというのは、王位継承権への野心かと批判も多かった。これ以上引き延ばせば国家間の問題になりかねないと、外交を担当するライオネルが国内貴族を説得した。アルフォンスがクリフォードに男子が生まれるまでは子供を作らないと宣誓したため、王位継承権を持つ王族全員の承認を得て三年前に結婚したのだそうだ。
「お二人の仲睦まじさは有名だよ、子供が持てないというのは寂しいだろうね」
夫婦仲が良くて幸いだが、アキラたちにとってそれはどうでもいい情報だ。
アルフォンス王子は騎士団を統括しており、本人も騎士として一団を率い何度も戦場で活躍している。各地の兵舎視察に国内を飛び回っている彼なら、ウナ・パレムへ視察に来るのも不自然ではないが。
「近衛騎士団の騎士団長が直々に試作品を見にくることが重要なんだ」
「マジックバッグの用途はやっぱり軍備品の運搬だろうなぁ」
「この国って戦争しそーなのかよ?」
そんな雰囲気は感じられないと不思議そうなシュウらに、サイモンはため息をついて答えた。
「我が国は黒炎石の輸出と、国境線の争いで、この十年の間に四度ほど隣国と戦をしている……アルフォンス殿下が自ら視察に来るということは、近々五度目の戦も近いな」
「うわー、物騒っ」
「もしかして毎回同じ理由で戦争してんのか?」
「開戦のきっかけは異なるが、目的は一つだよ。ニーベルメアとオルステインの西の国境線だ」
サイモンは大陸地図を取り出すと、山脈沿いの西国境を指でなぞった。
「この山脈は大陸で唯一黒炎石を産出するんだ。ニーベルメアとしては採掘した黒炎石をここの港からヘル・ヘルタントやウェルシュタントに輸出したい」
黒炎石は燃える石だ。石炭のようなものらしいが、火をつけると丸一日燃え続け、煙も殆ど出ないため、冬場の燃料として貴族や富豪に重宝されているそうだ。
オルステインは細長く広い領土を持つが、その国境線は鉱山のふもとに引かれていた。山脈が途切れたそこには巨大な湖がある。
「国境線がここにあるせいで、坑道を西側に開けることができないんだ。採掘した黒炎石はすべて東側から運び出し、北の渓谷を越えて港まで運搬しなくてはならない。国境線をここの、湖から伸びる川の向こうまで移動できれば、西に坑道をつなげる」
そうすれば港までの運搬コストはかからなくなるし、西側の坑道の位置によっては、黒炎石を直接船に乗せて湖から港まで船で運べるのだ、時間も大幅に短縮できる。
「この国境をめぐって小競り合いは頻繁に起きているが、殿下が動いたとなると、早ければ年内に戦がはじまるかもしれんぞ」
「そんなにすぐ戦争になるのかよ?」
ニーベルメアの収穫期は終わり、戦に必要な食料は準備ができている。これから収穫期を迎えるオルステインに攻め込めば、相手国の物資も奪えるのだ、時期としては悪くはないだろう。
「まあ流石にこの冬というのはないだろうが、次の冬はどうか分からんね。今はオルステイン王家が揺れている、この隙を狙った計画があったとしても不思議ではないよ」
オルステイン王家のお家騒動は他国にまで知れ渡っている。ニーベルメアとしてはこの隙に国境線を引き直すか、いっそオルステインを亡ぼし併合してしまえばいいという意見もあるらしい。ギルド長会議で「噂」として耳に入れていた情報だが、軍事を統括する第三王子がマジックバッグに注目したのだ、噂が現実味を持ってきたとサイモンは顔を歪めた。
「となると、マジックバッグの完成度が問題になってきそうですね」
「使えると判断されれば、戦略に組み込まれるのは確実だぜ」
国家間の争いなど自分たちには関係ないと切り捨てることは難しい。マジックバッグを通じてマサユキやケイトが巻き込まれている。ミシェルが調査を命じたのも、国境情勢があったからだろう。自分たちがどこまで関わることになるのか、少しばかり不安を感じた。
「戦争には加担したくねぇな」
「この国って徴兵制度はありましたか?」
「国に出兵を命じられた領主が領民を徴兵することはあるが、領民でない冒険者を徴兵することはできない。傭兵として雇うことはあるがね」
それを聞いてコウメイたちは胸をなでおろした。自分たちは魔物を相手に戦えても、国益や私益のために人間を殺す戦いはできない。
「五日後の試用実験ですね。そこでなんとか設計書と契約書を手に入れたいですが……」
サイモンの助手として堂々と魔法使いギルドに潜入できるチャンスは、この一回きりだろう。試用する側ではなく、治療要員として待機する身で設計書を目にする機会はあるだろうか。何か良い口実はないだろうかと考え込んだアキラに、サイモンは張りつめたような声でたずねた。
「アキラ、そのことなのだが、君はコーデリア妃殿下に違う名を名乗っていなかったかね?」
やはり忘れてはもらえなかったかと、アキラは苦笑いを浮かべた。
「……私はウェルシュタントでは死んだことになっています。彼女に生きていると知られるのは不味いんですよ」
いったい何をやらかしたのかねとサイモンは眉間を押さえた。
「咄嗟の偽名かもしれんが、魔術師証は誤魔化せんぞ。王族と同じ部屋に入るということは、確実に魔術師証を検められる」
「灰級魔術師のアレンも実在しますから問題ありませんよ」
アキラは懐から何枚もの魔術師証を取り出した。アレン名義の身分証は二つ、サイモンの弟子として同行するなら灰級錬金魔術師の身分証が使えるだろう。
「……全て本物ではないか」
扇状に広げて見せられた魔術師証は、サイモンの目にも正規発行のものにしか見えない。
「ミシェル殿はきみを諜報員として育てているのか」
「違います!」
とんでもない誤解だとアキラが声を荒げた。
「これは師匠たちに押し付けられた試験や課題をこなして合格を貰うたびに渡されたんです。普通は一つにまとめるなんて知らなかったし、誰も教えてくれなかったんです」
アキラの場合、まとめると色々と面倒くさいことになりそうだから、それぞれ発行しておくわ。こちらの方が使い勝手はいいわよ、うまく利用しなさいね、と微笑んでいたミシェルの笑顔が、今なら策略めいた含み笑いだったとわかる。
「まあ……良かろう。錬金魔術師は魔道具や薬魔術を総括した魔術師職だ、今は薬魔術の修行中なのだと言えば怪しまれることもあるまい」
何が良いのかはっきりさせたいアキラだったが、話がそれてるぞとコウメイが止めた。
「ところでその試作品って、どの程度の完成度なのかわかってんのか?」
「マサユキさんの話では、程遠いそうだが」
「未完成品で王族が納得するのかねぇ」
「これまでかかった時間と資金を考えると、難しいだろうな」
王族の視察をきっかけに、開発に拍車がかかるか、これ以上は無駄だと支援を打ち切られて頓挫するか。
「ミシェル殿はどちらをお望みなんだ?」
「分かりません、調査報告に対しての返事は来ていないので」
彼女の指示は、本部に未報告で開発されている魔武具の設計書の入手、資金の流れと関与している魔術師の特定、後援者の洗い出しとその目的を調査せよ、だった。それをどうしたくて調べているのかはわからない。唯一返事が来たのはマサユキたちの契約魔術の破棄に関するものだけだった。
「多分、判断するための決定打になる情報が得られてないのだと思う」
「それって」
「設計書を確かめる必要があるな」
中心になっている魔術師も、資金の流れと後援者も報告済みだ。まだ得られていないのは肝心の魔武具の設計書のみ。だがサイモンの助手として同行するアキラに、それを目にするチャンスはないだろう。
「……サイモンさん、あの道を使わせてもらえませんか?」
「あれ、かね……」
ふいっと彼の視線が、執務机の背にある書棚を見た。
「駄目だ」
サイモンは許可を出さなかった。アキラの望みは不法侵入、それは犯罪行為だ。フランクらが犯罪を行っており、正式に捜査権を持った者が通行許可を求めたのなら、サイモンは了承しただろう。だがフランクらは魔武具を開発しているだけであり、その行為は犯罪ではない。むしろ忍び入って設計書を盗もうとするアキラの行為が立派な犯罪だ。ミシェルのお墨付きもないのに、医薬師ギルドが加担することはできない。
「アキラの独断には頷けんよ」
「わかりました、他の手段を考えます」
正式に領主から命令が下されれば、その内容に合わせて打ち合わせようと決めた。アキラは王族情報の礼を言って、二人とともに医薬師ギルドを辞した。
熟考した返事が受け入れられて安堵したサイモンだったが、三人の姿が見えなくなると不意に不安が襲ってきた。やけにあっさりと引き下がったが、何か裏があるのかもしれない、と。アキラらを見送ってギルド長室に戻ったサイモンは、地下道への入り口に魔術錠を重ねがけしたのだった。
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深夜の間に雪が降り、翌日の日射しですぐに溶けるといった日が続いた。朝晩の冷え込みは身体の芯へと染み入る。市場ではあたたかなスープを売る屋台や、厚物の古着の店が賑わっていた。ケイトの出店した編み物製品の店にも多くの女性が押し掛けていた。
「ひざ掛けを一枚ちょうだい」
「マフラー、どっちがいいかしら」
「毛糸の帽子ください」
「腹巻あるかしら?」
こまごまとした小物から、ひざ掛けやショールといった大物までが次々と飛ぶように売れている。
「すげーな、大人気じゃねーか」
「これを専業にしても大丈夫そうだぜ」
「ありがと。でも流石にこれ一本は無理よ。編み物は時間かかるし、春から少しずつ作ってた物をこの時期に全部売るってだけなのよ」
販売の手伝いに駆り出されたコウメイとシュウは、自分たちの着ているベストと同じものを欲しがる客に「着心地が良く温かいですよ」とデザイン違いの購入をすすめ、毛糸の帽子の選択に迷う客には「あなたにはこちらがお似合いです」とさり気なく値段の高い方を買わせた。
「意外だわ、接客が上手い」
「お菓子作りの上手い仲間と、服とかバッグとか作って売る仲間がいたからね。露店で店番はよく手伝ってたんだよ」
「あれで鍛えられたよなー」
ケイトの売る編み物は小さな工夫に魅力があった。たとえば帽子や手袋にマフラーといった小物には、立体的に編んだ花のモチーフをつけて女性客の目を引いていたし、ベストやショールや膝掛けといった大物には、上手く色糸を挿し編んで一つとして同じものがなく、選ぶ楽しさがあった。なにより彼女の商品は、他の編み物の店よりも値段が少し安い。安い生成りの毛糸をベースに、値段の高い色糸をアクセントに使うデザインでコストを下げていた。
「モデルがイケメンだと売れるわね~」
コウメイの着ているベストと同じものが欲しいという女性客は何人もいたし、シュウの着こなしを真似ようとした男性客もベストを購入していった。
「品がいいから勧めがいがあるぜ」
「モノが良くなきゃ売れねーよ」
久しぶりの接客仕事で懐かしい思い出がよみがえったのか、二人は照れを誤魔化すようにケイトの編み物を売りまくった。あまりにもハイペースで売れたので商品が足らなくなり、ケイトは翌週の露店用に残してあった品を慌てて取りに戻ったくらいだ。
「全部売ってもいいのか?」
「売れ残る方が困るし、お金も貯めなきゃだしね」
そう言って彼女は接客中のシュウを見た。この街を出ていく決意をしたのだから、少しでも逃走資金を稼ぎたかったし、彼女には三十万ダルもする欲しいものがあった。
「この中に去年の売れ残りも交じってるの」
ケイトは片目を瞑って「お客さんには内緒よ」と悪戯っぽく笑った。赤い糸で編んだ花のついた帽子や、縁をレースのように飾り編みしたマフラー、余りの色糸を使ったモチーフをつないで作った座布団など、どれもコウメイの目には売れ残りには見えなかった。
七の鐘が鳴る前にはケイトの露店から商品がなくなった。早じまいをして商業ギルドに敷き布を返却し、次週の出店をキャンセルする。
「手伝いありがとう。お礼に晩御飯奢るわよ」
「雪花亭?」
「そう。最近はみんなでご飯食べてないし、アキラくんに聞きたいこともあるしね」
マサユキもお店に直接行くって言ってたからと、ケイトは二人を少し強引に引っ張って広場を出たのだった。
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雪花亭に向かう途中に寄った医薬師ギルドでは、アキラが薬局の窓辺で優雅にお茶を飲んでいた。茶と菓子を楽しむ横顔に見惚れた何人もの女性が、薬局へふらふらと吸い込まれていった。しばらくすると小さな茶葉の包みを手に、頬を赤らめて幸せそうに帰ってゆく、そんな光景を目にした三人は顔を見合わせた。
「アキラくんって誘蛾灯みたいね」
「女の子は蛾かー」
「せめて蝶って言ってやれよ……」
薬局ではマリィが友達同士と思われる女性二人を接客中だった。
「こちらは窓際の彼が飲んでいる薬草茶で、気持ちをスッキリとさせる薬草が使われています」
「この前のお茶とは違うのね。前に買ったのは甘い香りがしていたけれど」
「それは花豆茶ですね、身体を温める効果があるし香りも甘くて人気です」
「あの、彼が一番好んでいるお茶はどれかしら?」
「それならこの魔力回復茶ですね。彼は錬金薬作成で魔力を使った後にいつも飲んでいますよ。あ、魔力を持たない方が飲んでも問題ありませんから」
「ではその二つをいただくわ」
「私は三つ全部ね」
「お買い上げありがとうございまぁす!」
マリィの満面の笑顔とひっくり返る声に、窓際の方から冷たい空気が流れてきた。「今年は寒くなるのが早いですね」などと話しながら女性客らを送り出したマリィは、扉を閉めてアキラを振り返った。
「もうっ、もう少し愛想よくしてくださいよっ。笑顔のサービスくらいしてくれてもいいでしょ」
「笑っているつもりだが」
「目が笑ってない!」
昼食後からひっきりなしに様々な茶を飲まされているのだ、水腹は張るし、作り笑いで表情筋は強張るし、常に誰かの視線にさらされて気が抜けなかったのだ、これ以上の笑顔は無理だとアキラはそっぽを向いた。
「ずいぶん稼いだみたいだな」
「コウメイさんが販売用のお菓子を作ってくれたら、もっと儲かったんですよ?」
「いや、俺は菓子職人じゃねぇし」
女性客のほとんどがアキラが食べているお菓子も欲しがっていた、お菓子と茶葉をセットにすれば特別価格で利益を上乗せできるのにと悔しがるマリィにコウメイは詰められ、シュウはアキラの正面に腰をおろして菓子をつまみ、ケイトはカウンターに飾られている薬草茶の説明書きを興味深げに読んでいる。のどかでまったりとした空気は長くは続かなかった。
「医薬師ギルド長、サイモン殿はおられるか?」
薬局の扉を激しく叩いたのは、騎士二人を従えた領主の家令だった。ギルド長室に迎え入れられた家令は、領主の家紋の入った封書を開け、淡々と命令を伝える。
「明後日、四の鐘に魔法使いギルドに参ぜよ。高貴なる方を治療するやもしれぬため、正装にて参ずること。また弟子であるアレンなる魔術師を必ず帯同するようにとのご命令である。ともに無礼を働かぬよう、心して務めよ」
サイモンの返事など当然聞くこともなく、読み終えた命令書を渡してすぐに家令は帰っていった。
「とうとう来たーって感じだなー」
「弟子だって無理やりついていく手間が省けたじゃねぇか。『アレン』をご指名ってことは、間違いなく姫さんも来るぜ?」
「アキラ、君はウェルシュタントで何をしたんだね?」
「……」
執念というよりも怨念だ。国境を越えた悪縁に、アキラは怖気を感じずにはいられなかった。




