02 転移エルフの変貌
半鐘も待つことなく、アレックスから返事が届いた。
周辺の防御をどうするか、ハリハルタやサガストへの被害をどう防ぐか、そんな話し合いをしながら昼食を終えたアキラの前に、ひらりと魔紙が舞い降りる。
「細目のヤツ、なんだって?」
「……地下に潜れ、だそうだ」
「転移魔術陣を使って来るのか。てことは誰かと一緒なのかもしれねぇぜ」
生粋のエルフは神出鬼没だ。アレックス一人なら転移魔術陣など使わない。それをあえて転移魔術陣でということは、自力転移できない誰かを同行している可能性が高い。
「敵じゃなきゃいいんだがなぁ」
「警戒しとこーぜ。この前みてーに、いきなり攻撃されるかもしれねーし」
ナナクシャール島に転移した直後に殺されかけた記憶は、まだ三人にの記憶こびりついていた。
狩猟服をしっかりと着込んだコウメイとシュウは、錬金薬のストックを確認し、剣を持った。ミシェルのローブを身につけ、耳飾りを外したアキラは、二つの杖に魔力を満たす。備蓄食料の芋類を盾にされたリンウッドも、ローブの上から守りのアミュレットを身につけて三人に続いた。
「まだ来てねぇようだな」
階段から地下をのぞき込んだコウメイは、足を忍ばせて地下室をすすんだ。備蓄食料の一角を抜け、絨毯の手前で足を止める。
奥にある転移魔術陣はまだ起動していない。
シュウとリンウッドは備蓄食料を背に立ち、コウメイとアキラは壁を背に魔術陣に向かう。それぞれが武器を手に、ゆったりと構えて待ちの態勢に入ってすぐだった。
魔術陣が魔力を帯びた。
波紋のように広がった魔力が、端で跳ね返され中央に集まる。
瞬きの間に転移は終わっていた。
「どなた、です?」
見知らぬエルフだった。それも二人。
一人は銀みを帯びた濃紺の髪の、気の強そうな女性エルフだ。濃紺の瞳が周囲を見渡し、アキラを見つけて目を細める。
もう一人は白髪の老人エルフだ。銀紺に支えられてようやく立っている状態だ。
銀紺のエルフがアキラに問う。
「アレックスの弟子やな?」
「……不本意なのですけどね。貴女は?」
「時間あれへんのや、これ頼むで」
アキラの問いを無視し彼女は老エルフを放り出した。
よろける彼を受け止め顔を上げると、彼女はすでに転移していなかった。
「なんだ、ありゃ」
「アキラ、知り合いかね?」
「アレックスの関係者みたいですが、はじめての方ですよ」
リンウッドに問われてそう返したアキラは、支える老エルフを見下ろした。こちらもはじめて見るエルフだ。ずいぶんと衰弱している。
診察をしようとするリンウッドを止めたのは、回復した老エルフに攻撃される可能性を考えたからだった。アキラの知る老エルフたちは人族を忌み嫌っていた。規格外とはいえ人族の医師に手当されて矜持が傷つき、逆ギレで攻撃されてはたまったものではない。かといって衰弱した老人を放置はしにくい。
どうしたものかと迷うアキラの目が、老エルフの黒くて脅えのにじむ目と合った。
その瞳に、身をすくめる様子に、面影がよぎる。
「もしかして……サカイさんですか?」
「あ、う……う、ん」
息をするのがやっとという状態の老エルフは、アキラに思い出してもらえた安堵から、か弱く笑んで気絶した。
+
酒井優司。それが老エルフの日本での名前だ。
「俺らよりかなり前に転移してきたって日本人か?」
「そうだ。確か俺たちが生まれる十年以上前に日本から引きずり出されて、俺たちが転移するより百五十年前のこの世界にエルフとして放り出された一人だ」
「ややこしいな」
時の女神の救済は時間の流れを複雑にしている。
痩せ細った体と老いた姿、しかもいきなり倒れたのだ。まさか事切れたかと慌てて客間に運び込み、リンウッドが治療に当たっている。女性エルフに置いていかれた彼は、肉体的にも精神的にも酷く衰弱していた。息をしているとわかって胸を撫で下ろしたが、突然のことにどう扱っていいかわからない。
居間で治療が終わるのを待つ三人は、サカイの存在に頭を悩ませていた。
「なんでサカイさんはここに置いてかれたんだろーな?」
「銀紺のエルフは時間がないと言ってたが……逃げてきたのか、どこかに向かう途中だったのか」
「まさか面倒の種を押しつけていったんじゃねぇだろうな?」
相手はエルフだ、可能性はある。
サカイが根源になるような厄介事とはいったい何だろう。エルフの領域から追い出さねばならないほどの何を、彼はしでかしたのか。推測でアレコレ論じていても無意味だ。本人の口から聞くしかない。アキラはうんざりしたように息を吐いた。
エルフとの面倒事を思って気鬱なアキラとは異なり、コウメイとシュウは他に気になることがあった。
「なー、エルフの寿命って、千年近くあるって聞いてたよな?」
「ああ。けど……見えねぇよな?」
「どー見てもヨボヨボのじーさんだぜ」
転移した時期を計算してコウメイが唸る。
「サカイさんが二十代で転移させられたとしたら、まだ二百二十歳くらいのハズだぜ」
「なんで三百越えてるアレックスのほうが若ーんだよ?」
サカイは七十、いや八十代の後半ぐらいに見えた。頭髪のほとんどが白いし、皮膚の重みで垂れた瞼が目を隠している。深いシワと濃い色素斑が皮膚の至る所に見られた。幻影の耳飾はしていなかったので、あれは彼のありのままの姿に間違いない。
アキラは悠縁の森のワンルームで背を丸めていたサカイの姿を思い出した。
「以前会ったときの彼は、三、四十代くらいに見えたんだ。体つきももっとがっしりしていて……」
五十数年ぶりと考えれば妥当な老いだが、それは彼がエルフでなければの話だ。エルフ年齢で二百二十歳ほどのサカイは、背丈は変わらないものの、痩せ細って歩くのも覚束ない。どうしてあんな姿にと眉をひそめるアキラを、コウメイとシュウがまじまじと見る。
「もしかして、この世界の生粋のエルフと、転移エルフじゃ寿命が違うんじゃねぇか?」
「細目から何か聞いてねーのかよ?」
「……聞いてない」
だが可能性としては考えられる。もしかしてそれがエルフの領域を出された理由だろうか。
増え続ける疑問に締めつけられるような息苦しさを感じて、思わず窓の外を見た。
空が紫茜に染まり、カカシタロウの影が長く伸びている。
コウメイが室内の魔道ランプを点けた。
「ひとまず、夕飯作るか」
「腹が減ってちゃ戦争はできねーしな」
「何と戦う気なんだ……」
呆れ顔の二人に、シュウは珍しく真顔で首の後ろを掻いて返した。
「わかんねーけど、なんかさ、この辺りがゾワゾワしてんだよ」
「……昼間の火弾、か?」
「アレがまた襲ってくるかもしれねぇってのか?」
「だからわかんねーって。けど、備えあれば憂いなしっていうじゃねーか」
コウメイとアキラは顔を見合わせ、小さく頷いた。サカイが現れるまでは、次なる火弾を想定して準備しようとしていたのだ。今は途中で放り出したそれを終わらせるのがきっと最善だ。
「敵がエルフなのか、別者なのかはわからねぇが、シュウの勘を無視はできねぇな」
「薬草を収穫してこよう」
「俺はアマイモ三号と見回り行ってくるぜー」
リンウッドに声をかけて、三人はそれぞれ動き出した。
「火力最大級、加えて重量もあるみてーだ。どーやったら止められるかなー」
シュウは火弾の落下地点を見回り、見逃している手がかりはないかと目を凝らして探る。
アキラは採取できる薬草をかき集め、研究室にこもった。戦いになるならば錬金薬のストックは必要だ。
「他に何を作ればいいかな……」
リンウッドの魔武具をあさり、予備の飛行魔布と、結界魔石や使えそうな攻撃魔術式を書き写した魔紙を量産してゆく。
台所のコウメイは、リンウッドに頼まれた病人食と同時進行で夕食を作りつつ、保存食の備蓄確認を急いだ。
「作ってる猶予があればいいんだがなぁ」
二度あることは三度ある、とのことわざが現実になるのを、これまで何度も経験しているのだ、いつ戦いがはじまっても不思議ではない。
「最悪、赤ハギさえ炊ければどうにかなる。鍋と塩を確保しとくか」
野営飯には慣れている、魔獣肉でも野草でも、材料さえあれば食べられるように料理する自信があった。
自分たちの夕食は昼間と同じ握り飯にした。卵焼きと野菜スティックには自家製マヨネーズを添える。サカイには赤ハギ粥だ。転移後エルフの領域に引きこもっていたというのなら、きっと米を喜ぶだろう。
空に星が瞬いてしばらくしたころ、シュウが見回りから戻ってきた。コウメイは研究室からアキラを引っ張りだし、リンウッドの許可を得て客室に夕食を運んだ。
+
目覚めていたサカイの顔色は良かった。だがコウメイとシュウを見て脅え、身を守るように毛布をたぐり寄せている。二人に続いて入ってきたアキラを見てほっと息をつき、弱々しい笑みを向けた。
「この二人は警戒しなくても大丈夫ですよ。同時期に転移した私の仲間です」
「……同時期にですか?」
アキラが押しのけた眼帯と鉢巻きの若々しさを警戒するように、サカイの視線が険しくなる。シュウが鉢巻きごとサークレットを外してケモ耳を見せた。
「狼? 獣人で転移したんですか?」
「おー、ケモ耳だぜ、似合うだろ?」
獣人族もエルフ族と同じく若作りだと知っていたサカイは、安心したように体の力を抜いた。
「食事をとりながら、話を聞かせていただいてもかまいませんか?」
ずらりと並んだ握り飯を見てサカイの顔が気色ばむ。興奮と物欲しさとがせめぎ合っているようだ。
「ご、ご飯が、存在していたなんて!」
「あんたはコッチな。ずいぶん長い間飲まず食わずだったんだろ? 固形は危険だぜ」
コウメイにやんわりと握り飯を遠ざけられて切なげに眉を寄せたが、とろとろの粥の椀を渡されてすぐにサカイの気持ちは盛りあがった。匙を握る手は興奮に震え、粥を食んで涙を浮かべる。
「んぐ……う、美味い。米だ……ごはん、だ」
「もっとゆっくり食えって。お代わりあるし、取り上げたりしねぇよ」
粥を喉に詰らせかけても、サカイの手は止まらない。
泣きながら粥を食むサカイの背を撫でながら、リンウッドが診察結果を説明した。
サカイの衰弱は長期間の飢餓状態が原因だった。おそらく十数日間にわたり飲まず食わずだったのではないかとリンウッドは診ていた。緊急に回復させねば命が危ういと錬金薬を使ったが、治療薬や体力回復薬との相性が悪すぎて効果はほとんどなかった。しかし魔力回復薬は面白いほど効いた。衰弱死寸前のサカイがこの短期間に回復したのも、魔力回復薬の大量摂取により体内の魔力量が満ちたからだった。
「ご老人に使ったのは、魔力回復薬が三本だ……」
リンウッドが低く告げた事実に、驚いてアキラが視線を向ける。コウメイも気づいたようで、渋い顔でサカイを見つめている。耳飾りをつけたアキラですら、枯渇状態からの回復には最低でも五本は必要だ。耳飾りを外していれば、どれほど必要かは想像したくもない。それと比較すると、サカイの魔力量はエルフにしてはあまりにも少なすぎた。
サカイの老化の原因を知りたいコウメイは、どうなのかとリンウッドに小声でたずねる。
「もしかして、魔力量で老化のスピードが違うのか?」
「わからん。比較例を知らんのだ……ご老人に聞いてはみるが、当人も理解していないと思うぞ」
おそらく答えを知っているのは生粋のエルフ族だけだ。真相は誰かにたずねなければわからない。
「ご老人……サカイどのの現在の体は、長命な魔術師の末期と似た状態だ。体の魔力を蓄える力が弱まっておる」
それは死期がそれほど遠くないことを意味している。
アキラは息を呑み、コウメイとシュウも反応をうかがうようにサカイを見た。
粥を食べながらリンウッドの診断結果を聞いたサカイは、そうか、と残念そうに呟いた。
「こんな美味しい米が食べられるのなら、もっとはやく悠遠の森を出れば良かったな」
自ら閉じる覚悟もなく、故郷の自室を模した小さな部屋で、ただ終わるのを待ち続けていた彼は、死が近いと聞いて安堵していた。お代わりをもらった粥に未練はあるが、それを支えに生き抜こうというほどの気概はないようだ。
二杯目の粥の途中で満腹になった彼は、名残惜しげに匙を置き息をつく。食事、それも懐かしい米粥を食べた満足感からか、顔に精気が戻ってきていた。
「事情を聞かせていただいてもかまいませんか?」
「僕が知っていることは少ないですよ」
アキラの問いに彼は申し訳なさそうに目を伏せる。
サカイはエルフ族に囲われていたが、決して存在を認められていたわけではない。一人の老エルフの慈悲で生かされていたに過ぎず、エルフ族の社会には詳しくなかった。
「どうして長期間の絶食状態だったのですか?」
「僕の感覚ではほんの二、三日だったんですけどね。ブレイディさんに隠れていろと押し込まれた場所から出られなくて……」
ある日突然、サカイを保護しているエルフ族の長老の一人が、彼をワンルームから引っ張り出し、よくわからない場所に閉じ込めたのだ。
「そこは薄ぼんやりとした膜のようもので覆われていて、外の様子は影のようにしかわかりませんでした」
「出られなかったのですか?」
「どうやっても僕には出口が見つけられなかったんです……そのうち喉が渇いて、空腹が耐えられなくなって」
どこを探しても膜に継ぎ目や裂け目は見つからない。どれだけ歩いても終わりのない覆いに、サカイは早々に脱出を諦めたのだという。
「たぶん 僕がいると邪魔になる何かが起きたんだと思うんですが……」
それは何かとたずねるのは躊躇われた。
エルフ族内のゴタゴタを知れば、それに巻き込まれる可能性は高くなるだろう。だがすでにサカイを押しつけられており、知らないままでは身を守れなくなる。
迷いに迷って、アキラは差し障りのなさそうな疑問を口にした。
「……貴方を連れてきたあの女性エルフはどなたですか?」
銀紺色のエルフ女性とは面識がない。アレックスに送った魔紙の返事に、何故彼女とサカイが現れたのか。
「ああ、ヘルミーネさんですね。僕を救出してくれて、ここに送ってくれたんです」
面識はないが聞き覚えのある名前だった。
「エルネスティのかーちゃんかよ!」
「押しかけ女房エルフか!」
二人の大きな声にサカイの体が脅えてはねる。黙って聞いてろと二人を睨んだアキラは、サカイには穏やかな表情を向けて詳しくたずねた。
「彼女とはお知り合いなんですか?」
「僕じゃなくてブレイディさんの娘さん? いやお孫さんだったかな? 最近よく顔を見かけるようになって」
人族の男の押しかけ女房になったエルフは、夫を亡くして出戻り、母だか祖母だかの家に転がり込んでいたらしい。
「てことはレオナードのねーちゃんだな?」
「長老の子か孫ってことは、エリート家系の坊ちゃんかよ」
「エルフ族にはあまりそういう概念はないようだけど、間違ってはいないかな」
魔力量が多く強いエルフが長生きし、長老となって一族を率いている。その血筋であるレオナードが次期族長と目されるのも当然だった。
「みなさん、レオナードさんと親しいんですよね?」
「顔見知りレベルですよ、親しくはないですね」
サカイの疑問に、引きつった笑みで即答したアキラだ。
「そうなんですか……アキラさんが次代派だから僕はここに連れられてきたのだと思ったんですが」
サカイは残念そうにため息を吐いた。
次代派とは何だ?
コウメイが剣呑な笑みを浮かべ、シュウが面倒くさそうに顔をしかめる。アキラは静かに立ち上がると「ゆっくり療養してくださいね」と労りの言葉をかけてそれ以上の会話を打ち切った。
安全な場所、顔見知りの存在、懐かしい米粥、そして満腹感からか、サカイの瞼が重く上下していた。
アキラの言葉で彼はゆっくりと枕に頭を預け、すぐに目を閉じた。
+
リンウッドとともに客間を出た三人は、居間に戻ってしかめっ面を付き合わせていた。
「アキラ、何故話を打ち切ったのだ?」
もっと詳しく聞きたかったリンウッドが不満そうにアキラを詰める。
「サカイさんは眠そうでしたし、あれ以上聞けば関わらざるを得なくなりますよ?」
「次代派だっけ? 派閥名なんてのが出てくるんだ、絶対に面倒事に決まってるだろ」
「次期族長候補だつってたヤツが次代派ってーことは、族長はやっぱり族長派かなー?」
「エルフ族で下剋上がおきてるっぽいな」
「レオナードと親しいなんて勘違いされたら、絶対に飛び火してくるに決まってます」
エルフ族の覇権争いになど関わって良いことなど何もない。見知らぬエルフが置いていったサカイを仕方なく保護しただけで、我々は無関係で貫き通すのだとのアキラの主張に、リンウッドは呆れ顔を向けた。
アキラからアレックスに魔紙を送り、その返事の直後にサカイが送られてきたのだ、無関係は通用しないだろう。
「……もう手遅れのような気もするがな」
ぼそりとこぼされたリンウッドの声を、三人は聞こえなかったことにして、今後のサカイをどうするのか話し合った。
「そりゃ客間はあるけどな、いつまでもとどめとくわけにはゆかねぇぜ?」
アキラは面識があるかもしれないが、コウメイとシュウには初対面の相手だ。ましてやエルフ族の厄介事を持ち込んだかもしれないのだ、たとえ老い先短い老人だとしても、長くとどめておきたくはない。
「けどよー、じーさんに復活したんだから出てけって言いづれーよなー。迎えにこいってヘルミーネさんに連絡できねーのか?」
「彼女につながるのはアレックスかレオナードだぞ」
どちらの魔紙も預かっているが、厄介事の中心人物を呼ぶのはやぶ蛇が過ぎる。かといってサカイから連絡してもらうのも恐ろしい。
「そういやサカイさんって魔術はつかえんのか?」
「おそらく使えない、と思う」
悠遠の森でもサカイが魔力を使うのを見た覚えはないし、エルフ族に求められる魔力の上納ができていないとも聞いている。自己魔力がほとんどなく、ナナクシャール島で討伐もできないのならば、身を守る魔術は皆無に違いない。
アキラの意見にリンウッドも力強く頷いた。
「並のエルフ程度の魔力を持ち、魔力操作ができていれば、たった十数日で魔力が枯渇することはなかったはずだ」
「となると、言っちゃ悪ぃが、足手まといだぜ」
謎の火弾攻撃が解決したわけではない。もし再び火弾が襲ってきても、自分たちにはサカイを守る余裕はない。
「……やっぱり、もう一度アレックスに連絡するしかないのか」
自ら巻き込まれに行くような気がして嫌でたまらないが、仕方がない。
アキラが文面を考え、魔紙に書き記そうとした、そのときである。
もはや聞き慣れつつある爆音が響いた。
ぐらりと地面が揺れ、アキラがたたらを踏む。
「またかよっ!!」
「いーかげんにしろよな!!」
コウメイとシュウは剣を手に飛び出した。
「リンウッドさん、サカイさんを地下へ。あそこが一番安全です!」
ブレイディではないが足手まといは隠しておいたほうがいい。そう指示したアキラは、必要な魔武具や錬金薬の瓶を腰鞄に詰め込んで二人を追いかけた。
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