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16 三つの秘密基地と二つの契約魔術



 カビ臭かった空気が、一瞬にして古い図書館のような独特の匂いにかわる。魔力の光が消えた転移陣から出たそこに、五日ぶりの友人たちが待っていた。

 アキラを見てほっとしたように微笑んだジョイスとは反対に、コウメイは仏頂面だ。


「お帰り。けど遅ぇぞ」

「ただいま。予定通りの日程で戻ったはずだが……」

「ドミニクさんに聞いてるぞ。ずいぶん楽しそうに遊んでいたらしいじゃねぇか」


 何のことかわからないとアキラは首を傾げたが、コウメイに睨まれたシュウは顔を背けた。


「お疲れ様です。本当に一週間もかからずにトレ・マテルまで行って帰るなんて、驚きです。とんでもない移動手段だったそうで……お二人にしかできませんね」


 ジョイスの労りの言葉でコウメイが青筋立てている理由に気づいたアキラは、火に油を注いではまずいと、さりげなく前髪で額を隠した。文句は後で聞くとコウメイを遮ってジョイスに魔紙の束を渡す。


「ケギーテとマーゲイト、それとトレ・マテルの写しです。改変術式について両ギルドから連絡はありましたか?」

「叩き台が送られてきています。僕では読み込むだけで精一杯でして、検証はこれからです」

「術式はドミニクさんからですよね」

「ホルロッテ殿からも届いていますよ。帰ってきたばかりですし、もう深夜です。試作は明日にしましょう」


 アキラはすぐにでもドミニクの改変術式に目を通したかった。だがこの数日で年齢相応に老け込んだように見えるジョイスの疲労困憊ぶりと、睨みを利かせるコウメイには言い出せない。

 アキラたちは転移室を出てギルド長室に上がった。裏口へ回る際に激しく壊れた建物を見て目を丸くする。厚布で覆い隠し、魔術警備を張り巡らせたギルドの様子に、不在の間に何があったのかと問うた。


「アキが愉快な旅をしている間に、こっちも色々あったんだよ」

「詳しいことはコウメイさんに聞いてください。改変術式については明日、昼前にうかがいますので」


 四日前には厳重に見張られていた裏口だが、今は騎士や街兵の気配はない。コウメイたちが上手くやったようだ。ジョイスはフードを深く被り、昼食時にたずねていくと約束して自宅へ帰っていった。


「こっちだ」


 コウメイの誘導で建物の影を追いかけるようにして歩いたアキラとシュウは、袋小路の奥にある小さな飯屋に入った。


「ここは?」

「潜伏場所だな」


 魔法使いギルドの爆撃犯の疑いがあるとして、冒険者のミキはギルドに探されている。街の宿には泊まれないし、澤と谷の宿もまずいということで、この四日はずっとここに潜伏していた。


「ぶはっ。コーメイ、手配されてんのかよ」

「俺たちの行動をコウメイだってどうこう言えないじゃないか」

「うるせぇ。こっちは権力者を仮想敵にして策略めぐらせたり、すげぇ大変だったんだよ。空の旅にはしゃいでたシュウと、ドミニクさんと魔術陣攻略を楽しんでたアキに文句の一つくらい言ったってバチ当たらねぇだろ」


 仕事を楽しくこなして何が悪いのか。そう反論したかったが、据わった目つきのコウメイが相手ではやぶ蛇になる。無言で目を逸らした二人は、明らかに流行ってなさそうな飯屋の二階に落ち着いた。


   +++


 外見とは裏腹に快適な住環境が整った二階の寝室から外の様子をうかがって、アキラはどうやってこんな場所を見つけたのかとコウメイに問うた。

 袋小路には安さだけが売りの飯屋の客ぐらいしかやってこない。狭い路地の行き止まりに長く留まれば住人に警戒されるため、騎士や兵士の見張りも踏み込めない。潜伏するにはなかなかの好立地だ。

 アキラの問いに、コウメイは苦笑いで羊皮紙を差し出す。飯屋の権利書だ。所有者名はコウメイの名前がしっかり記されていた。


「……いつの間に買ったんだ?」

「俺じゃねぇ。ヒロが暗躍する用に買ってたのを、俺に押しつけやがったんだ」


 こんなのもあるぞ、と見せられたもう一枚にはアキラの名前が記されていた。


「薬店の、権利書?」

「アキにぴったりだろ」

「何を考えているんだヒロは」

「えー、いいなー。俺の隠れ家はねーのかよ?」


 二つの権利書を羨ましがるシュウだが、深魔の森の彼の私室は汚部屋寸前の状態だ。寝室の管理もできないのに別荘を維持できるのかと指摘されてシュウは口をつぐむ。

 深魔の森の家はともかく、成り行きで手に入れてしまったマーゲイトや、滅多に訪れないダッタザートの薬店をどうやって管理すればよいのか。アキラは困惑の顔を向けた。


「断れなかったのか?」

「アキのお節介が原因らしいから、仕方ねぇよ」


 息子(ユウキ)たちに引き継がせられない莫大な使途不明金をどうにかしたくて、ヒロは役に立ちそうな物件を探し購入したのだ。


「莫大な使途不明金?」

「アキの仕送りだよ。魔法使いギルドに送金するついでに、サツキちゃんにも送ってただろ」


 仕送りを使途不明金扱いされたアキラは嫌そうに顔をしかめる。

 深魔の森での生活にはそれほど現金はかからない。なのにアキラたちの現金収入は街の腕利き冒険者よりもかなり多かった。薬草や錬金薬の売上に、菜園や果樹園の収益、討伐した魔物素材の売却益。そしていくつか保有している魔術権利からの収入もあった。それらの中から結構な金額を、ダッタザート魔法使いギルドの支援と、妹が経済的に困ることのないように何十年も送金してきた。


「妹思いのアキの気持ちは無碍にできねぇけど、ヒロのプライドは刺激されてたと思うぜ」


 現金が届くたびに、満足に妻子を養っていないと言われているようで複雑だったはずだ。貯め込んだ仕送りは意地でも手をつけず、アキラたちのダッタザートでの拠点を用意するために使ったのは、ヒロなりの意趣返しでもあるのたろう。


「じゃあこの古くてきったねーのもヒロの嫌がらせかよ?」


 どうせならもっと清潔で利便性のいい拠点が良かったと感想をこぼすシュウに、コウメイはニヤリと笑って返した。


「外観は汚ぇが、ここは面白くて癖のある隠れ家だぜ」

「クセ?」

「一階の厨房奥に隠し扉がある」

「マジか!?」


 一瞬にしてシュウの表情が好奇心に満ちる。


「マジだ。反対側にあるアキ名義の薬店の納戸に繋がってるぜ。こっそり抜け出すのに便利だろ」

「秘密の抜け道かよ? ヒロもいいセンスしてるじゃねーか」

「……ヒロはいったい何をしようとしていたんだ?」


 ワクテカするシュウとは反対に、物騒な仕掛けを知らされたアキラは強くこめかみを押さえた。


「元冒険者副ギルド長の人脈と経験を活かした裏稼業?」

「そんな危ない男に妹は任せられない。サツキと別れてもらうか」

「サツキちゃんに嫌われるぞー」

「冗談はともかく、ヒロも今回のことがなかったら、ここを使うつもりはなかったみてぇだぜ」


 魔法使いギルドやジョイスとコズエ、澤と谷の宿のヒロとサツキと全く関係のない会合場所がどうしても必要だったのだ。表向きは赤の他人であるコウメイとアキラの所有となっている建物は、領主の監視や密偵に隠れて情報交換するのにちょうど良かった。


「それで、俺たちが出かけている間に、コウメイはどんな悪巧みを働いていたんだ?」

「秘密の抜け道使って追っ手から逃げたりしたのかよ?」


 呆れ顔のアキラと期待でゆるんだシュウの顔が続きを促す。


「悪巧みなんかしてねぇし、追いかけっこもねぇよ」

「だがジョイスさんの表情に諦観のようなものがうかがえたが、進展があったんだろう?」

「あったぜ」


 ニヤリと笑んだコウメイは、ギルドの爆発から傀儡魔術による逆スパイを送り出すまでを説明した。アキラは思い切った爆破工作に目を見開き、密偵の正体とハニートラップに嫌悪感を示し、領主への反撃手段を聞いてジョイスの心労を思った。


「……悪巧みなんてかわいらしいものじゃなかった」

「怖ーよ、コーメイのキレっぷりが怖ー」

「俺よりベサリーのほうが怖ぇよ。自白剤が効かねぇんだぜ、どう考えても裏稼業の専門家だ」


 彼女はどんな拷問にも決して口を割らなかったし、強い自白剤への耐性もあった。敵に捕らわれ、重傷で命の危険もあるという状況で、主人に重要情報を伝える手段や脱出の機会を探り続けていた。両足が折れていなければ脱出されていたに違いない。恐るべき精神力だ。


「傀儡魔術がなきゃ手詰まりだったぜ」

「……無茶をしたな」

「あんな密偵を飼ってる領主には、絶対に太い釘を刺さなきゃならねぇだろ。多少の無茶も仕方ねぇって」


 ベサリーの口から雇い主を聞き出せなければ、確証のないままダッタザート辺境伯に対処することになっていた。それでは思い切った対抗策は取れないし、後手に回る可能性もあったのだ。

 長年魔法使いギルドに潜伏していたベサリーが、半死の状態で持ち帰った情報なら疑わないだろう。


「為政者はそんなに甘くないぞ」

「領主が裏を取るのは織り込み済みだ。時間稼ぎできりゃいい」


 その間にベサリーに持ち帰らせた策の検討がはじまれば、こちらにも余裕ができるだろう。自信に満ちたコウメイの意見に、アキラは懐疑的だ。


「準備につぎ込んだ時間と資金を、領主は無駄にしないんじゃないか?」

「無駄にならねぇ提案をしてあるんだぜ。騙し打ちみてぇに魔法使いギルドを利用するよりも、正攻法で現王家をつついたほうが独立後の内政も外交も楽になる提案だ。無視はできねぇよ」


 現王家に従ったままでは、東側も巻き添えに国力が低下しかねない、その危機感から行動を選択したダッタザート辺境伯は愚かではない。ならば魔法使いギルドとの敵対が悪手であると理解させれば良いのだ。


「その障害になるのが、領主の軍師なんだよな」

「軍師?」

「転移魔術陣とかの情報を領主に漏らした魔術師だ。そいつの正体をつかんで何とかしてぇんだが、いい案ねぇか?」


 辺境伯がどこからか勧誘してきた、魔法使いギルドに属していない、素性のわからない魔術師。その人物がいる限り、魔法使いギルドと転移魔術陣が再び狙われる可能性破があると、コウメイもジョイスも考えていた。


「そいつが何の目的で転移魔術陣を狙ってるのか、ハッキリさせとかねぇと安心できねぇ」

「……あまり、知りたくはないな」


 アキラの顔色がどんよりと曇った。魔力のない者を転移室へ侵入させる巧みすぎる手腕から、かなり切れる魔術師だろうとアキラは予想していた。おそらくギルド長クラスの魔術師だ。そんな物騒な魔術師の謀とは無縁でいたかった。

 無意識に感じる息苦しさから逃れるように上着を脱ぎ、襟元を緩めるアキラの左手を目にしたコウメイが、剣呑な気配とともに目を細めた。


「なあ、アキ。契約魔術が消えてる理由、説明してくれるんだよな?」


 にっこりと笑んだコウメイが、咄嗟に隠そうとする手首を掴んだ。ダッタザートを発つまで、確かに手首に巻き付いていたはずの術式が消えていた。何故だ、とコウメイが問い詰める。


「いつ消したんだ? どうやって?」

「あ……これは、マーゲイトで」

「ミシェルさんに会ったのか?」


 アキラの腕を丁寧に調べて、傷も残っていなければ体調も悪くはないそうだと確かめ、円満に契約魔術を解除したと判断したようだ。


「あー、違うって。これはマーゲイトのエルフがやったんだよ」


 返事を迷う様子を見せたアキラよりも先に、シュウが口を開いた。エルフと聞いて再び表情を険しくしたコウメイが、詳しく聞かせろと続きを促す。


「マーゲイトの、エルフだと?」

「そーなんだよ。実はシンシアちゃんがい、痛ーっ」


 余計なことまで喋られる前にと、密かに緊箍児をキュッと締めつけたアキラは、鉢巻きの上から頭を押さえるシュウを押しのけた。


「これはだな……」


 愉快な空の旅についての詳細を省略し、言葉を選びつつ、アキラはマーゲイトに降り立ってからの出来事を語った。


「へぇ、マーゲイトが改変しねぇって決めたのは聞いてたが、まさかエルフとの契約まで捨てるとはなぁ」

「転移魔術陣やエルフを研究したい魔術師にとっては、契約は絶対に必要かもしれないが、そうでない魔術師にとっては足枷でしかないからな」


 実際、多くの魔術師から、エルフとは無縁のトレ・マテル魔術師ギルドは支持されている。ペイトンに移転した魔法使いギルドも、その役割はごく当たり前の職業ギルドとして存続していた。


「マーゲイトが放棄されたのはわかったが、それとアキの契約魔術が消えたのとどんな関係があるんだ?」

「魔法使いギルドの代わりにときどき転移魔術陣をメンテナンスしろと……契約魔術があるからと断わったら、それなら……と」

「親切にエルフが契約魔術を消してくれたっていうのかよ……罠じゃねぇよな?」


 あの腹黒の一族が、親切心から便宜を図るなんて考えられない。何か裏があるのでは、あるいはアキラが何かを隠しているのでは、と疑いたくなるのも当然だ。

 コウメイはサークレットを押さえる涙目のシュウと、いつもより露骨に笑むアキラの顔を交互に見て、隠し事があると確信した。


「……アキ?」


 顔を近づけるコウメイから逃げるように体を引いたアキラは、視線を泳がせながら前髪の乱れを指先で整える。

 その不自然な仕草を見た途端、コウメイはアキラの額に勢いよく息を吹きかけた。

 前髪が乱れ、面食らったアキラの額が露わになる。


「その額のヤバそうな模様は何だ?」

「あ、いや、これは」

「どう見ても何かありそうな印じゃねぇか。何やってんだよ!?」


 慌てて両手で隠しても手遅れだった。隠さずに全部吐け、とアキラとシュウを正座させたコウメイは、省略されていたアレコレも含めて全てを聞き出した。


「なんで断わらねぇんだよ……」


 全てを知ったコウメイは、やっぱり自分がついていくべきだった、と頭を抱えた。

 何度も痛い目にあってきた契約魔術から解放されたのはめでたいが、だからといって厄介なモノと引き換えるのはどうなのか。魔術師ではないコウメイにだって、ミシェルよりもエルフとの契約のほうが危険なのはわかる。


「ブラッドリーっつったっけ、あのエルフにカビくせーボロ屋を放置したらどーなるか説明されてさー、もったいねーだろ?」

「状況から判断して、放置しておくほうが有害だと思ったんだ」


 コウメイの顔色をうかがうように、アキラは転移魔術陣の変異の法則を説明し、陸の孤島のままにしておくには仕方がなかったのだと繰り返す。

 そんなアキラの言い訳を鼻で笑ったコウメイは、握り拳でアキラのこめかみをグリグリといたぶった。


「どうせ実験とか検証とかいろいろ楽しめそうだ――って考えたんだろ?」

「そんなことは……」


 ない、と否定したいが、凄みのある笑顔のコウメイが怖くてできない。アキラの視線がシュウに助けを求めるが、正座による痺れで限界も近いシュウは、コウメイの言うとおり、と頷くばかりだ。

 コウメイのお説教は、アキラとシュウの足の痺れが限界を迎えるまで続いた。


   +


 痺れで悶絶しながら己の軽率を反省するアキラとシュウの懇願に溜飲を下げたコウメイは、説教を終わらせて二人にコレ豆茶とブルーン・ムーンの焼き菓子を出す。


「コーメイの説教ってねちっこいと思わねー?」

「……疲れた体にサツキの菓子が染みる」


 答えにくい問いかけを無視したアキラは、ピナと蜂蜜のシロップを塗った焼き菓子を口に運ぶ。ほのかな酸味としっかりとした甘さの菓子によって、強行軍だった数日間の疲れが癒やされた。


「痛みとか、不調とかは感じてねぇんだな?」

「ああ、何もない」


 左手首に術式が巻き付いていたときと同じで、額にできた契約の印らしきものからも何も感じない。だがコウメイはアキラの言葉を信じきれないようだった。


「あちこちの魔法使いギルド長と面識はあるが、誰もデコにアキみてぇな模様はなかったじゃねぇか」

「時間が経ったら消えるんじゃねーの?」

「契約直後だって、そんな印はなかったぜ」


 以前、コウメイは目の前でジョイスがエルフと契約するのを見ている。ダッタザートの転移魔術陣の管理者と認められ、額に魔力をぶつけられていたが模様は残らなかった。


「それ、本当に契約魔術なのか?」

「さあな……エルフに聞けばわかるんじゃないか?」

「アレックスに聞くのかよー」


 シュウが嫌そうに首を振った。腹黒陰険細目が正直に吐くとは思えない。他にもこちらから接触できるエルフは何人かいるが、コウメイはエイドリアンは絶対に呼ばないと言うし、レオナードは答えを得るための対価が高くつきそうで躊躇われる。


「体調に変化はないし、魔力的な変調も全くないのだから、しばらく様子見で良くないか?」


 長い人生、これからもエルフと顔を合わせることはあるだろう。異変さえなければ、そのときに問うのでも十分だというアキラに、コウメイは仕方なしに頷いた。


「それしかねぇか。けど少しでも違和感あったら言うんだぞ。リンウッドさんにも相談しろよ」


 心配性も過ぎると呆れるシュウの隣で、心配をかけたと自覚のあるアキラは素直に頷いていた。



おまけ


 大きな小腹を焼き菓子で満たしたシュウは、権利書二枚を手に嬉しそうだ。


「いやー、たった一週間で二つの秘密基地と一戸の別荘手に入れたなんて、俺らもセレブっぽくなったよなー」

「飯屋は俺の名義だし、薬店とマーゲイトはアキだぜ」

「コーメイの秘密基地は俺の秘密基地だし、アキラの別荘も俺の別荘でいーだろ」

「ジャ〇アンか」

「アキラ、俺にマーゲイトちょーだい」

「転移魔術陣を壊されるから駄目だ」

「壊さねーよ。ケチケチすんなって」

「そういえばヒロはシュウ名義の不動産を用意してなかったのか?」

「俺は聞いてねぇな」

「シュウでは管理できないとヒロが判断したんだろう」

「馬鹿にすんなよなー」

「営業権付きの不動産は面倒だぞ。税制も特殊だし、行政舎の検査もあるし」

「シュウに店つき物件を任せたら、一ヶ月以内に営業停止食らいそうだぜ」

「俺はフツーの家でいーんだよ」

「普通の家屋だってシュウに管理は無理だろ?」


 深魔の森の私室の荒れ様を嫌というほど知っている二人は、シュウに隠れ家を与えたらゴミ屋敷まっしぐらだと頷き合っている。おそらくヒロも同じ結論に達したはずだ。


「俺だって秘密基地の一つや二つ、ちゃんと管理できるぜ」

「寝室の床からゴミを排除してから言え」

「ゴミじゃねーよ、立派な戦利品だ」

「整理整頓して在庫を把握できていないのならただのガラクタだぞ」

「くそー。いつか俺だけの隠れ家をゲットしてやる!」

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