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やたら長い人生のすごし方~隻眼、エルフ、あとケモ耳~  作者: HAL
3章 ウナ・パレムの終焉

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07 初心者向け野外講習 後編


 昼食後は急遽決めた狩りの実地講習だ。勝手に予定を変えてしまったが、ギルド職員は嫌な顔一つせず、今日一日はお任せしますと全権委任状態だった。

 大人と少年たちでは狩場は異なる。アキラは大人たちをコウメイに任せ、自分は少年たちを率いて森に入った。マサユキとケイトが護衛を兼ねて同行している。


「君たちは普段どんなふうに角ウサギを狩っていますか?」

「角ウサギを探して、見つけたらリックが追いかけるんです」

「俺が一番足が速いんだぜ」

「リックが追い付いて捕まえたのを、ガイが絞めるんです」


 少年たちが持っているのは拾った棒で作った棍棒だ。刃物を持っているのはガイだけだが、それもほとんど手入れのされていない短剣だ。アンの持つ解体用のナイフの方がよほど切れ味は良さそうである。その鈍らに近い短剣で角ウサギをしとめ、解体は一番上手なアンが引き受けるのが彼らの狩りのスタイルだった。


「角ウサギはどうやって見つけていますか?」

「それは森を歩いて探してるけど……」


 アキラがわざわざ問うということは、何か特別な見つけ方があるのだと気付いたハリーが、ぐっと唇を噛みしめて辺りを見回した。


「獲物があらわれるのを待っていては、日々の収入は安定しません。巣を狙うか、おびき寄せるんです」

「死肉を置いておく方法なら聞いたことあるぜ」

「それは銀狼やワーム、ゴブリンなどを狙う時には有効ですが、角ウサギにはあまり効果のない方法ですね」


 木漏れ日の明るい場所でアキラは足を止めた。


「近くに角ウサギの群れがいます。わかりますか?」


 雑草の茂みや灌木へ入って探すのではなく、この場から動かず探しなさいと言われた少年たちは、背伸びをしたり首をあちこちに向けながら緑の間に見える毛皮を探した。


「み」


 見つけた、と声を上げそうになって手で口を押えたガイは、アキラの裾を引っ張って注意を引くと、木々の間に見える雑草の茂みを指さした。その先を視線で追ったハリーやリックも、風もないのに草が大きく動いているのに気づき、その向こうに赤茶けた毛皮を見つけた。大小まじった十羽ほどの群れが草を食んでいる。


「お見事ですね」


 反射的に飛び出しそうになるリックの肩を押さえたアキラは、地形を観察しなさいと言った。


「ウサギが逃げにくい場所を見つけて、全員で囲んで狩ってみてください」

「地形……」


 地面や灌木、そして木々を見て考え込んでいたハリーが、仲間を呼んで耳打ちをした。一つ一つ指さしながら出される指示に頷いてから、彼らは角ウサギに気づかれないようにそろりそろりと場所を変える。アキラのいる場所から見える木と木の間にガイが身構えて立ち、残る三人は大きく回り込んで等間隔に並んだ。


「やれっ」


 ガイの合図で三人が角ウサギの群れに襲いかかった。

 瞬発力のあるリックが一番手前の角ウサギに飛びかかかり、がっちりと押さえ込んで捕獲する。

 襲撃から逃げようと飛んだ方向にはガイが待ち構えていた。

 向かってくる角ウサギの頭に短剣を叩きつける。

 逃げ道を塞がれた数匹が樹木を蹴って方向を変えるが、そこには棍棒を振り回すハリーとアンがいる。


「えいっ!」

「やーっ」


 少年の力では一撃必中とはゆかない。だが強打された角ウサギは地面でヒクヒクと痙攣している。それをガイの短剣がとどめを刺していった。


「おい、こっちのもやってくれよ!」


 後ろ脚に腹を激しく蹴られながらも捕まえて離さない一羽にとどめを刺して狩りは終わった。


「すげぇ……すげぇよっ!!」

「四羽も狩れたなんて、初めてだ」


 残りには逃げられてしまったが、いつもは一羽を狩るのが精いっぱいだった彼らにしてみれば、空から獲物が降ってきたのと同じくらいの奇跡だった。


「なかなかいい采配でしたね。ハリーは観察眼があるようですが、何故この場所に角ウサギの群れがいたのかわかりますか?」

「偶然じゃないんですか?」


 違います、とアキラは首を振った。


「私はここに角ウサギがいると知っていたから、君たちを案内したんです」

「近くに巣があるんですか?」

「いいえ、この場所をよく観察すればわかりますよ」

「ここを……?」


 少年たちはウサギが隠れていた雑草の茂みを凝視した。日当たりの良い森によく見られる、何の変哲もない背の高い雑草たち。「わかんねぇ」とちぎっては投げ捨てるリックの横で、ハリーが突然しゃがみ込んで草をかき分けた。


「これですか、この薬草!」


 雑草の中から縁の黒い草を摘み取って掲げたハリーの目が輝いていた。


「正解です」


 少年が摘んだのはトラント草、麻痺薬の材料となる薬草だ。


「角ウサギはこの薬草を好んで食べます。闇雲に森を探して歩くよりも、トラント草の生えている場所を覚えておけば、時間をかけることなく群れを見つけることができます」


 ハリーを囲んだ少年たちは、彼の持つトラント草の特徴を覚えようと真剣な目で見ている。


「獲物を探すコツを憶え工夫して狩れば、毎日安定した収入を確保できるようになります。これは角ウサギだけではありません、周囲を観察し、行動の結果を考える癖をつけてください」

「「「「はいっ!!」」」」


 数日分の稼ぎをわずか半日で得る策を知った少年たちの顔は、どれも明るく喜びに満ちていた。


「センセイが板についてるわね」

「教えるの上手いなぁ」


 楽しげに解体する少年たちから離れた場所で、ケイトとマサユキは何とも言えないため息をついていた。


「私たちじゃああはゆかないわ」

「妹たちに教えていたので、慣れてるんですよ」


 面はゆさに照れるアキラの言葉にケイトが目を丸くした。


「もしかして、妹さんも事故ってこっちに?」

「ええ、飛ばされた場所が離れていたので、合流するまでは苦労しました」


 何でもない事のように笑っているアキラだが、少年たちへの的確なレクチャーを見ていたマサユキたちは、これは彼らが実際に経験して発見した秘訣なのだろうと察した。


「妹さんは一緒に冒険者してないの?」

「三年前に結婚して街暮らしです。俺たちはどうにもひとところに落ち着けなくて」

「ああ、そんな雰囲気だよね、三人とも」


 冒険者暮らしを満喫しているというか、凄く馴染んでて自然だとマサユキが言い、ケイトは「シュウさんとかすごく楽しそうだよね」とため息を吐く。彼女が冒険者という身分(仕事)を苦手としているのはアキラも感じ取っていた。


「日本人のクセというか、転移してきた時に条件反射のように冒険者になりましたけど、向いてないなら続ける必要はないと思いますよ?」


 解体の現場を見ないようにと顔を背けているケイトは、生理的に血が駄目なのだろう。そんなハンディを抱えて無理に冒険者を続けなくても、この世界には発想と工夫で金を稼ぐ手段はいくらでもある。アキラがそう言うと彼女は眉を寄せた。


「私これでも職人登録してるんだよ。秋から冬にかけては露店で作ったものを売ってるし。でも春夏は冒険者するしかないの」

「季節限定の店ですか?」


 秋冬にのみ需要のある商品と聞いてもピンとこない。


「私編み物が得意なの。セーターとかひざ掛けとかショールとか、マフラーに帽子に、そういうのを編んで売ってるの」


 なるほど、確かに春と夏では売れないだろう。


「今の時期は毛糸を買うために冒険者で稼いでるの」

「売り上げで材料費を出せないのですか?」

「大儲けできるわけじゃないから、生活費に消えちゃってるわ」


 あの三人組冒険者たちほど困窮しているわけではないが、余裕のある生活をしているわけではないらしい。


「コウメイくんの眼帯もファッションじゃないっていうし、狩りが上手なのも納得だけど、ちょっと羨ましいな」


 同じ三人でも自分たちはなかなか思うように成果を上げられないのだと、マサユキは恥ずかしそうに頭を掻いた。


「俺の攻撃魔術はコントロールがイマイチでね、命中率は五十パーセントもないんだよ」

「水魔術でしたよね? 」

「俺、ウォーターランスしか使えないんだ」


 ギルドに認められた魔術師の使える魔術が一つだけというのはありえない。驚くアキラの視線から顔をそむけたマサユキは、悔しそうに杖を握りしめた。師匠にも恵まれず、魔術教本を読み解けない彼では、それ以上の魔術を習得することができないのだろう。


「凄いんだよマサユキ、水の槍でばーんって一発で魔物をしとめるんだから」

「狙いを外さなければ、だけどね」


 バカの一つ覚えのくせに命中率も低いなんて情けないよと項垂れたマサユキに、アキラは余計なお節介かもしれないと思いつつ声をかけていた。


「……私も水魔術はあまり得意ではなくて、よかったら今度一緒に練習しませんか?」


 自分よりも年下に教えを乞うのは屈辱かもしれないとアキラは遠慮がちに申し出たのだが、しばらく俯いていたマサユキは意を決して「頼む」と言った。


   +++


 コウメイに連れられて森の奥へと進んだ冒険者たちは、木々の間隔が程よく開いたそこで足を止めた。


「魔猪を一頭しとめた時の予想収入はいくらか、わかるか?」


 皮が二百ダルに肉が百五十ダル、農家からの討伐報酬がある場合はそれもプラスされるのでだいたい三百五十から四百ダルを稼ぐことができる。ウェイドやステラらはすぐに答えられたが、落ちこぼれ三人組はギルドの買取価格を覚えていなかった。


「角ウサギ五、六羽分の儲けだ」


 一日に二羽も狩れれば大儲けな彼らにとって、三日分の稼ぎと聞いても魔猪を狩ることには消極的だった。


「ちょっと前に大ケガした時に、錬金薬買うために武器を売ってしまったしな」

「棍棒じゃ魔猪は無理だぜ」


 荒事に慣れた三人でも魔猪を今の装備で倒せるはずがないと諦めていた。


「あんた達くらい腕力があればいけると思うぜ、試してみろよ」

「はぁあ?」

「無茶言うなよ」

「お、きたぜ魔猪だ」


 シュウが追い込んできた魔猪が突進してきた。

 慌てふためく三人を叱咤したコウメイは、ロニーを捕まえて魔猪の軌道に突き出した。


「なにしやがるっ」

「盾構え!」


 コウメイが威圧を込めて命じた。

 魔猪よりも強く恐ろしい気配にビクッと身体が反応する。迫る魔猪、背を向ければ突きはねられると覚悟を決め、彼は木の盾に身を隠した。


「肩を入れて、腰を落とす!」


 飛んできた指示通り、反射的にロニーの身体が動く。


「踏ん張れ!」

「ふんっ」


 腰を落とし足に力を入れた瞬間、ズドン!! と重く激しく魔猪がぶつかった。


「うおぉーっ」


 三人の中では最も身体が大きく力のあるロニーは、魔猪の突進を耐えきった。頭からぶつかった魔獣が脳震盪を起こして地面に転がった。ヒクヒクと痙攣している今がチャンスだとコウメイは及び腰で棍棒を構えていた二人の尻を蹴った。


「今だ、殴れ」

「お? おおっ!」

「頭を狙えよ、連続して叩け」


 顎、首、耳の後ろ、と彼らは魔猪を取り囲んでその頭部を連打した。盾を横に置いたロニーも攻撃に参加する。男三人による強打の連続で決着はすぐについた。


「止め!」


 コウメイの声で三人の動きがピタリと止まった。

 滅多打ちにされた魔猪は、頭蓋骨が折れ、顎が割れ、喉を潰されて絶命していた。


「……すげぇ」

「まさか、だぜ」

「魔猪が棍棒で倒せた」


 刃物でなくても魔猪を狩れると知った三人は大喜びで解体しようとナイフを取り出したのだが、コウメイがそれを止めた。


「あんたらの解体下手過ぎる。解体料を払った方が儲かるはずだから、血抜きだけしてそれ以上は手をつけるな」


 少し厳しめに言い含めたコウメイに反論することもなく、三人は「あんたが言うんならその通りにするぜ」と大きく頷いて、早速魔猪の喉元を切って血抜きをはじめた。

 転職組の三人の表情は引きつっていた。街暮らしで狩猟などほとんどしたことのない彼らには、ロニーたちのような力任せの狩りは絶対にできない。


「先月まで勤め人だったあんたたちに同じことは要求しねぇよ」


 青ざめている彼らにそう言って安心させたコウメイは、解体の練習に使った角ウサギの角をウェイドらに渡した。


「角をどうしろと?」

「そいつで突かれたら身体が痺れるのは知ってるだろ」

「それが?」

「短時間だが魔猪を麻痺させれば、とどめを刺すのは簡単だろ」

「それはそうですが……」


 魔猪にどうやって角を突き刺すのか、それが難しいのだ。どうやるのかは自分たちで考えろとコウメイに突き放された三人は、周囲の様子をうかがいながらぼそりぼそりと意見を出しはじめた。


「なあ、コウメイが狩るところ、見せてもらえないか」


 そう言ったのは見学がてら同行していたヒトシだ。右目を失うほどの修羅場を潜り抜け、街の熟練冒険者と同じかそれ以上の雰囲気を漂わせるコウメイは、同じ転移者だというのに格が違う。その実力に対する純粋な好奇心からヒトシは「手本を」と重ねて頼んだ。

 棍棒と転職たちも奇抜な狩猟を教えるコウメイがどんな狩りをするのか興味津々のようで、ヒトシの頼みを後押しするようにコウメイを見つめている。ギルド職員にまで前のめり気味に乞われたコウメイは戸惑いを誤魔化すように頭を掻いた。


「別に普通の狩りだと思うぜ?」

「いやいや、あんたが普通の狩りするわけねぇだろ、なぁ?」

「何か特殊な方法があるんですよきっと」

「私たちにこんな変な狩りをさせるんだから、珍しい方法に決まってるわ」


 コウメイは彼らの手持ちの武器で魔猪をしとめる方法を提案しただけなのだが、妙な誤解が生じてしまったらしい。どうしたものかと思案しているところに、木々の向こうからシュウの声が響いた。


「そっち行ったぜーっ」


 ドッドッドッ、と地面を蹴る複数の音が耳に届いたのと同時にコウメイは剣を抜き、迫る足音の方へと向きなおった。遅れてヒトシやロニーらが武器を手に身構える。


「来たっ」


 魔猪が三頭、団子のように固まって疾走してきた。

 悲鳴を上げて転職三人が木の後ろに隠れ、棍棒三人組は自分たちの獲物を守るように固まる。

 ヒトシは絶好の機会だとばかりに「頼んだぜ」とコウメイに譲った。


「しかたねぇなぁ」


 狩猟冒険者ならここは連続で矢を放つところだが、コウメイは討伐冒険者だ、屠り方も自然と魔物討伐寄りになる。

 コウメイは先頭を走る魔猪の首をすくい上げるようにして斬りつけ、その体を後続の二頭にむけ蹴り放った。衝撃で転んだ一頭の前足を踏み折り、たたらを踏んで滑るもう一頭に剣先を突き入れる。首深く刺さった剣を力任せに抜き、地面でのたうつ魔猪にとどめを刺して終わりだった。


「シュウ、三頭は多すぎ。危ねぇだろ!」

「悪りー悪りー」


 追い込みが下手だと文句を言うコウメイに、魔猪の後から戻ってきたシュウが愛想笑いをふりまきながらあたりを見回した。


「問題ねーじゃん。ちゃんと屠れてるし」

「練習なんだから一頭ずつにしろって言っといただろ」

「んなこと言ったってよー、群れの中から一頭だけこっちに追い込むの難しいんだぜ」


 コウメイが三頭全部を屠ってしまったため、練習用の魔猪はいなくなってしまったらしい。今から場所を移動して探すのは難しいだろうと謝るコウメイに、ウェイドたちは驚きから覚めないままに首を振った。


「すげぇの見ちまった……」

「あっという間に魔猪三頭だぜ?」

「ひとりでやっちまったよ」

「何でこんなところで燻ぶってんだろう、いくらでも出世できるよな?」


 領主の私兵やどこかの街の憲兵、活躍によっては王都守護の兵士になることだって不可能ではないだろう。冒険者のままではもったいないとウェイドたちは呟いていた。


「参考にもならねぇ狩りだったろ?」

「確かに、真似はできないな」


 複数の魔猪の急所を的確に狙い、最小限の動きで屠る手際の良さ。いったいどれだけの経験を積めばあんな動きができるのか、剣の血を拭うコウメイを見るヒトシの顔が引きつっていた。

 転がる死骸を軽々と持ち上げ木にぶらさげると、手際よく血抜きをはじめるシュウからも得体の知れない強さを感じる。凶暴な魔獣の追い込みは、盾やロープを持った冒険者が数人がかりで行うものだ。それをたった一人で、しかもコウメイの言葉を信じるなら、一頭ずつ頃合いを見てこちらへ誘導していたのだ。そんな離れ業は普通の冒険者にはとてもできない。


「あんたら、強いんだな」

「それなりに、な」


 褒められ慣れていないのかコウメイは照れたように笑いながら魔猪の解体をはじめた。その横ではシュウが地面に穴を掘っている。何のための穴かとたずねれば、血のしみこんだ土や、不要な内臓などを捨てるのだという。


「普段は撒き餌にするんだが、今日はあくまでも講習だからな、安全第一だよ」


 魔猪の皮を剥ぐ手つきも、骨から肉を削ぎ落すナイフさばきも滑らかで迷いがない。お手本のような解体作業を一同は瞬きも忘れて見入ったのだった。

 薬草採取の初心者講習からずいぶんと逸脱してしまったが、一日で学ぶには十分すぎる内容に、冒険者たちもギルド職員も皆一様に満足げな様子である。

 森の出口を目指して歩きながら、ヒトシはコウメイの肩に腕を回し、ニッコリと笑んだ。


「今夜の飲み会で武勇伝を聞かせてくれよ」

「飲み会?」

「講習の後でゆっくり話しようぜって言ってただろ」


 思惑ありげな笑顔のヒトシを警戒しつつ、コウメイたちはアキラと合流したのだった。


   +++


 初心者向け野外講習は好評に終わった。

 見学していたギルド職員からは、ぜひ継続して定期的に開催してほしいと望まれたが、予定が詰まっているからと断った。見学していた職員らがいれば似たような野外講習は可能だろう。


 この時を機に底辺冒険者たちの健康と収入は、わずかだが上向いていった。旅費を貯めたステラは故郷に帰る前に挨拶におとずれ、サミアンは冒険者向けの商売をはじめたと宣伝を兼ねて顔を出し、ウェイドは勤め先が決まったと報告にやってきた。

 たまに森で遭遇するロニーたちは、武器を買い直すだけの金が貯まったというのに今も棍棒での魔猪狩りを続けているようだった。

 少年たちはアキラを見かけるたびに「先生」と駆け寄ってその日の成果を報告してくる。慕われて悪い気はしないもので、アキラはそのたびに小さなアドバイスをするのだった。


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[一言] ロニーたちが棍棒を気に入ったのは、棍棒でも魔猪を倒せる成功体験からでしょうか。それとも、ナイフで討伐すると皮の値段が変動するから?
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