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12 サガストへ



「どうですか、今日の成果」

「うまく採取できてると思うけど、いくらになりますか?」


 夕暮れに森から帰ってきた鞠香と祐也は、背負っていた籠をアキラの前で降ろした。それぞれ採取してきた薬草を並べアキラの評価を待つ。

 アキラは丁寧に薬草を検分し、さらさらと評価と買取価格を板紙に書き記した。


「こちらのサフサフ草の根は少し細いですね」

「ちゃんと親指の太さのを選んだのに?」

「説明するときに祐也さんの親指を基準にと教えましたよね? 彼より指が細いのだから、一回り太いサイズを採取するべきでした。買い取り価格は三割減です」

「ええ、厳しいよ」


 間違えやすいセタン草とヤーク草の束には、何枚か雑草がまじっていた。鞠香は駆け出しとしては優秀な薬草冒険者と言えるだろう。


「祐也さんの採取したセタン草に一枚雑草がまじっていました。ヘルテルの木の皮はもう少し厚く広く採取してください。この赤い部分をきれいに削ぎ取れていれば評価は高くなりますが、この状態だと半額というところですね」

「そんなぁ。アキラさん、厳しすぎます」


 今日こそ満点が取れるはずと自信満々で採取を終えた二人は、査定結果の板紙を渡されてがっくりとうなだれた。


「他所に持ち込んでもいいのですよ? けれどリンウッドさんは私よりも厳しいですからね?」

「……この金額でいいです」

「サイン、します」

「はい、お疲れ様でした。交代で洗い場を使ってください。すぐに夕食ですから手早くお願いしますね」


 二人の署名を確かめて、これまでの板紙と一緒に束ねる。

 元気良く洗い場に向かう後ろ姿を眺めていたシュウが、アキラを振り返って呆れたように言った。


「その査定、厳しすぎるだろー」

「これでも甘いくらいなんだぞ、リンウッドさんはこの半額しか出さない」

「アキラもおっさんも基準が高すぎだって。フツーに町に持ってったらもっと高く買ってくれるのに」


 受け取った薬草を丁寧に処理してゆくアキラに、シュウは「ケチケチするな」と文句を言う。森で活動する二人に付き添う彼は、祐也と鞠香がどれだけ努力しているかを見ている。新米の彼らに専門家の仕事を求めるのは酷だ、と口を出さずにいられない。

 アキラはシュウの抗議を冷たい目で押し返した。


「最初からハードルを低くしてどうする。高みを目指した方が成長できるのに」

「だから段階踏んで教えりゃいーだろ」

「シュウはギルドに薬草を依頼するのが、高品質の薬草を求めている専門家だと忘れてないか?」


 冒険者ギルドは討伐の苦手な冒険者や、町中の仕事では食いつなげない新米のために薬草採取の仕事を作っている。最低限の基準を満たしていれば買い取るが、実はその大半が廃棄処分になっていることは知られていない。冒険者ギルドで販売されている錬金薬の材料は、お抱えの薬草冒険者が納品する専門家基準の薬草に頼り切っているのだ。


「ギリギリの冒険者への福利厚生の意味合いはわかるが、廃棄される薬草がもったいないじゃないか。それに下の基準に慣れてしまったら、あの二人はギリギリの冒険者で終わってしまう」


 ただでさえ厳しい世界なのだから、困らないだけの知識と技術は教えてやりたい。


「シュウだって二人を鍛えたがってたじゃないか」

「まーな。どっちかに討伐冒険者の適性があったら、俺が食いっぱぐれねーくらいに鍛えるつもりだったけど、どっちも向いてねーってわかったし」

「細かいことに気のつく鞠香と几帳面で真面目な祐也は、薬草冒険者のほうが適性がある。だから鍛えているだけだ。二人も嫌がってないだろう?」

「そーだけどよ……うん、そーだよな」


 自分が苦手とする分野だから余計に厳しく感じられたと気づいたシュウは、恥ずかしそうに頭を掻いた。


「そろそろ肉を焼きに行かなくていいのか? リンウッドさんに任せていたら芋尽くしだぞ」

「あー、そーだった。せっかく狩ってきた魔猪を焼かねーと」


 シュウは慌ててバーベキューコンロに向かった。薪を突っ込み火をつけ、鉄板に油を塗って、と手慣れたものだ。鉄板が温まるのを待つ間、魔猪肉を食べ応えのある厚さに切ってゆく。

 その背にアキラのいつもの台詞が追いかけてくる。


「野菜も一緒に炒めろよ」

「俺は肉を切るのに忙しーんだよ」

「安心しろ、レト菜と赤芋は切ってある。シュウは肉と一緒に炒めるだけだ」


 彼らが戻ってくる前に準備していたのだろう、洗って切り分けた野菜を山盛りにしたザルを手にアキラがほほ笑んでいる。


「安心できねーよ」

「育ち盛りの二人に偏った食事はさせないからな」

「へーへー。ま、肉野菜炒めならいーか」


 押しつけられた野菜ザルを端に置いて、シュウは再びかたまり肉を切ってゆく。

 これから炒めるぞというところで鞠香がやってきた。


「手伝いします。肉野菜炒めですか?」

「おー、頼むぜ。肉はコレ使ってくれ」

「そっちのお肉はどうするんです?」

「ステーキにするんだよ」


 ちゃっかり自分用の肉を焼きはじめるシュウを、食器やカトラリーを運んできた祐也も呆れ顔で見ている。


「芋も少し焦がしてくれ」

「このままでも美味しそうですよ?」

「焼いた方がもっと美味い」


 茹で芋の鍋を持ってきたリンウッドが、ペロリとめくれた丸芋の皮をむいて鉄板にのせてゆく。それを半分に切り、軽く焦げ目をつけ、塩を振り、皿に取り分けてからバターを落とした。


「「「「「いただきます」」」」」


 半野営飯で腹が満たされた頃合いを見て、アキラが鞠香と祐也に巾着袋を差し出す。

 思わず受け取った二人は、両手で支えねばならないほどの意外な重さに驚いた。


「お疲れ様でした。それは二人がこれまでに採取したり狩った素材を査定し、私が買い取りした代金です」

「え……こんなに?」

「どうして?」


 戸惑う二人をしっかりと見つめ、アキラはまろやかな笑顔をうかべた。


「町にいるコウメイから、準備が整ったと連絡がありました。そろそろ普通の人の中で暮す訓練に移りましょう」


 アキラの言葉に、鞠香と祐也はまるで見捨てられたと言わんがばかりに顔を強張らせている。


「ま、まだ薬草も覚えきっていないし、狩りも下手くそだし、もう少しここで訓練したいです」

「菜園の手伝いも果樹園の仕事も頑張りますから、ここに居させてもらえませんか?」


 すがるように請う二人に、アキラは笑顔のまま首を横に振った。


「最初に三ヶ月と約束したのを覚えていますか?」

「はい……」

「でもまだ一ヶ月残ってます」

「それでは三ヶ月後すぐに、森の外の世界で生きられるのですか? 町のルールを覚える必要はないと?」


 そうではない、と鞠香は頭を振る。電気もガスもない原始的な生活だというのに、彼女らは毎日を楽しく暮してきた。居心地の良いこの場所から去りたくない、ずっと住みたい。だがアキラの笑顔には、鞠香の甘えを許さないという厳しさがあった。


「鞠香さんが避けたい二人は、ハリハルタの町を出ました。街道を北に進み、国境を越えてヘル・ヘルタント国の田舎村を目指すそうです」


 克也と大地がこの国を離れると聞いて鞠香は安堵した。だからといってここを出て行くのは、アキラに見捨てられるのは辛く悲しい。


「二人にはハリハルタの南にあるサガストという町で、普通の町暮らしを学ぶ場所を用意しました。彼女が身元を保証してくれるので、身分証もすぐに手に入るでしょう」

「……」

「町での一ヶ月の間にどうしたいのか決めてください」


 アキラは堅く強い声で言い渡し、二人に背を向ける。薬草園へ向かう背中を見つめる鞠香と祐也の肩を、シュウが励ますように叩いた。


「最初から期間限定って約束だっただろ?」

「そうだけど、そうだけど……」

「予備知識のねーところに飛び込んでいくのは怖いよな。でも俺らは二人が困らねーようにちゃんと鍛えたんだ、心配ねーよ」

「本当に、困らない?」

「あー、もしかしたら困るかも知れねーけど、鞠香も祐也も高校生だろ。言葉は通じるんだし、文字だって読める。わからねーことがあれば誰かに聞けばいいんだし、どーにかなるって」


 カラリと明るく背中を押されて少しだけ元気が出たような気がした。それでも不安の全てを拭い去れはしない。無理をして笑っているような顔の二人に、シュウは「絶対に秘密だぞ、いいな?」と念を押して顔を近づけた。


「サガストの町で二人の面倒見てくれる人はな、こっちに放り出されたとき五歳だったんだ」

「え……」

「五歳って、え?」


 シュウは唇の前で人差し指を立て「俺が知ってるって絶対に秘密にしてくれよ」と念を押した。


「この世界の成人年齢は十二歳だ、それまで彼女は孤児院で暮した。孤児院ってのは全寮制の職業訓練学校みてーなトコロなんだ。見知らぬ人に囲まれて五歳から一人で頑張ったマユは、今は幸せに暮してる」


 驚く二人にシュウがニカッと笑いかける。


「五歳の子どもにできたんだ、高校生の二人が人見知りするなんて言わねーよな?」


 ぐっと言葉に詰まった二人だ。

 アキラもシュウも好意で住まわせてくれて、いろいろなことを無償で教えてくれたが、赤の他人だ。自分たちがいることで、彼らは本来の仕事もできていないだろうに、嫌な顔ひとつせず、二人の自立のためにさまざまな便宜を図ってくれている。


「ここでわがままを貫くのは、克也や大地と一緒ですね」


 それは嫌だと、二人は顔を上げた。


「が、頑張ります」

「子どもに負けてらんないです」

「イイ子だ!」


 ガシガシと頭を乱暴になで回された二人は、くしゃくしゃになった髪を整えながら夕食の後片付けを手伝った。


   +++


 早朝に出発した一行は、三日かけて深魔の森を出た。


「前よりずっと楽だった気がする。体力ついたのかな」

「森の歩き方を覚えたからですよ。疲れないペースが身についているんです」


 二人の前を歩くアキラが、草原の向こうに見える街道を指し示した。


「街道はしっかりと整備されていますから、迷うことはありません。町は必ず街道沿いにありますから、進む方向さえ間違えなければたどり着けますよ」

「草原を突っ切るけど、周りに注意しとけよー。このあたりは暴れ牛の縄張りだから、遠くにソレっぽいのが見えたらすぐ逃げるんだぞ」


 自分の体ほどもある大きな荷物を背負ったシュウは、大剣を抜いて南の草原を警戒するように見渡した。


「今日は狩るなよ」

「わかってるってー、こっちに来ねーように警戒してるだけだって」


 いつものシュウは、問答無用で荷物を放り出し暴れ牛の群れに挑んでゆく。本当にわかっているのかと、アキラの猜疑の視線がシュウを見張っている。

 明るい空の下に進み出た鞠香と祐也は、眩しそうに空と草原を見渡した。

 この二ヶ月の間、森の家から見あげていたのは、緑に縁取られた限られた空だった。いま目の前に広がるのは、空からつながる山と草原の景色だ。


「気持ちいい」

「うん、空って広かったんだね」


 空には薄い雲が流れ、太陽が眩しく輝いている。

 丈のある雑草が風に吹かれて波打った。雑草の頭が風でうねると、黒っぽい獣の集団がチラチラと見えた。あれが暴れ牛だろうかと背伸びをする鞠香をシュウが遮った。


「あんまり見るんじゃねーぞ。あいつら視線に敏感だし、こっちが弱いって判断したら容赦なく突っ込んでくるからな」

「スペインの闘牛を見たことありますか? あんな感じで牛の集団が突進してきますから、街道から見えても直視しないようにしてくださいね」


 アキラは暴れ牛に背を向け街道に向かう。丈の高い雑草をかき分けながらしばらく歩くと道が現れた。


「これが街道ですか?」

「街道って、国道みたいな道なんですよね?」

「田舎の農道っぽいなぁ」


 不安そうな二人に、シュウは田舎の街道はこんなものだと笑う。


「町に近くなると石畳に変わります。よく見てください、道の両端に石で縁取りされているでしょう。これが街道である証拠です」


 踏み固めた土の道を煉瓦で縁取りした街道は、轍でデコボコとしており、下手をすると森の中よりも歩きにくかった。


「石壁で囲われているのが町、壁ではなく木柵等で囲われているのが村です。町によって違いはありますが、門は二の鐘で開き、八の鐘で閉じます。採取などで町の外に出たときは、閉門時間に余裕をもって帰ってくるように心がけてくださいね」

「壁の外で野宿はやめとけよー。魔物が襲ってきても絶対に門は開かねーからな。助からねーぞ」


 鐘の数は聞き逃さないようにしようと祐也が拳を握った。


「身分証のない人が町に入るときは、入町税を徴集されます。出入りのたびに税金を払っていてはもったいないので、町に入ったらすぐに身分証を作りますよ」

「税金っていくらなんですか?」

「町によって異なりますが、確かサガストは二、三十ダルくらいだったと思います」


 二人は財布の中をのぞき込み、銅貨の数を数えた。


「身分証ってどこで作るんですか? 役所?」

「冒険者ギルドです」

「「おおっ、冒険者ギルド!」」


 弾んだ声とキラキラした目で素直な反応を見せる二人に、シュウはわかるーと何度も頷いた。


「保証人がいれば身分証は即日発行してもらえますが、いない場合は五から十日ほどの調査期間の後、問題がなければ発行されます」

「その調査って、何を調べるんですか?」

「犯罪者ではないか、貴族ではないか、といったあたりですね」

「貴族だとマズいの?」

「冒険者ギルドの規約に、貴族に冒険者証を発行しない、とあるんです」


 戸籍のない者や事情があって名前を変えなくてはならない人、孤児やさまざまな理由で困窮している人たちの救済も目的にしている組織は、ときに権力や貴族と対立することもある。そう説明すると二人は深く納得したようだ。


「ちなみにこの世界で姓を持つ者は貴族とみなされます。ギルドの申請書には名前だけを書いてくださいね」

「名前は、偽名でもいいの?」

「かまいませんよ。ただ呼ばれて返事ができないと怪しまれますから、あまり現実の名前とかけ離れたものはオススメしません」


 祐也は名前をそのまま、鞠香はマリにすると決めた。


「その名前、ゲームでも使ってたの?」

「まさか。そっちはニシナって名乗ってた。でもさすがにHNをこれからずっと使う名前にはしたくないよ」


 何かの偶然で克也と大地に「ニシナ」の名前が届いてしまえば、鞠香が生きていると知られてしまう。名前そのままも微妙なため、この世界の庶民的な名前に聞こえるように、鞠香のマリを使うと決める。

 遠くで鐘の音が聞こえた。


「ええと、七つだから七の鐘?」

「そう。だいたい鐘と鐘の間は二時間くらいと覚えておくといい」


 閉門まであと二時間と聞いて、二人の足が自然と速くなる。閉め出される前に辿りつきたいと焦る二人に、シュウが大丈夫だと言った。


「鐘の音が聞こえるってことは、町が近いってことだ。マリの足でも余裕で間に合うから心配すんな」


 程なくして壁が見えはじめると、二人はほっと胸を撫で下ろした。

 門にできた列の後ろに並び、財布を握りしめて順番を待つ。アキラとシュウに続いて門兵に名前と目的を聞かれ、身分証の提示を求められた。


「森で魔物に襲われたときに荷物をなくしたのでありません。冒険者ギルドで発行してもらいたくて来ました」


 あらかじめ打ち合わせていた説明をして、薬草の束を詰め込んだ荷袋の中を見せると、経験不足な冒険者のよくある失敗だと門兵は納得したようだ。それぞれ銅貨三枚を支払ってすんなり町に入った。


「これから冒険者ギルドですか?」

「いや、それは明日だ。先に君たちの教育と身元保証を引き受けてくれた人物に紹介する」


 シュウの言っていた五歳で転移した人だ。緊張で二人の背筋が伸びた。

 素朴な田舎の町並みを、アキラの背を追いかけて歩く。たどりついたのはやさしい雰囲気のある小さな店の前だった。


「薬屋さん?」

「ササオカ、さん、ていうんですか」

「薬魔術師の工房と店だ。冒険者ギルドへも錬金薬を卸している――こんにちは」


 小さなベルのついた扉を開けてアキラが店にはいる。その後に恐る恐ると続いたマリとユウヤは、ふわりと漂ってきた乾いた不思議な香りに気がついた。


「いらっしゃい。お待ちしていました、師匠」

「師匠はやめてください。今回は無理を言いました、面倒をかけます」

「とんでもない、やっと恩返しできて嬉しいわ」


 女性の声があまりにも嬉しそうなので、アキラの背に隠れていたマリはひょっこりと顔を出す。

 カウンターテーブルの向こうにいたのは、黒い髪の中年女性だった。小柄で痩せているが、その表情はあたたかい。


「すごい棚だ」


 ユウヤは彼女の背にある大きな薬棚の美しさに圧倒されていた。長く引き継がれてきたのだろう、威厳と歴史を感じる古い薬棚は、きれいに磨かれており艶がある。


「紹介します。こちらはササオカ薬店の店主であり、町の薬魔術師でもあるマユです。マユ、こちらの二人がお願いしたマリとユウヤ」

「よ、よろしくお願いします!」

「お願いしますっ」


 並んで深々と頭を下げるマリとユウヤを、マユは楽しそうな笑顔で迎え入れた。


   +


 宿屋で部屋を借りるというアキラとシュウを、自宅に泊まるようにと引き止めたマユは、たくさんの夕食で四人をもてなした。

 マリがフードをおろしてエルフの特徴を見せ、ユウヤがマントを脱いで背中にある大きな翼を見せても、マユと夫のレオンは少しばかり驚いた顔をしたものの、歓迎の様子に変化はなかった。


「マリもユウヤも師匠に鍛えられているのでしょう。薬草採取の手伝い、期待しているわ」

「頑張ります。でも、大丈夫かな」

「僕たち、アキラさんに一度も満点もらったことないんです」

「私もよ。師匠は厳しいものね」


 わかるわ、とマユが同意したことで二人の緊張がほぐれたようだ。

 不本意そうに唇を尖らせるアキラを横目で見ながら、シュウは彼女の暮らしに笑顔があることを嬉しく思った。

 マユは冒険者の夫と二人暮らしだ。成人した息子は薬草冒険者をしており、今はハリハルタを主な活動場所にしている。夫は深魔の森の浅い場所で狩猟を中心に活動中、マユは夫を護衛に薬草を採取し、店で売る薬品を作ったり冒険者ギルドに錬金薬を納品して暮していた。


「ハリハルタで用事を済ませてきます。それまでマユから必要なことを学んでください」


 翌朝早朝に発つと聞いて不安がったマリとユウヤをなだめて、アキラとシュウは開門と同時にサガストを発った。



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