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やたら長い人生のすごし方~隻眼、エルフ、あとケモ耳~  作者: HAL
9章 奔放すぎる療養記

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202/402

楽しい奈落ピクニック



 厨房の改装はわずか三日で終わった。最新の魔道調理器具がそろった厨房で、コウメイは毎日忙しく料理を作らされている。さすがに毎食は嫌だと交渉し、夕食のみで手を打ってもらった。

 ドワーフらの仕事は金華亭の二階に移り、ミシェルの希望する書庫や研究室や居心地の良い寝室が作られている。


 コウメイはドワーフらの胃袋を満たす合間に、シュウとマイルズを伴って討伐に出ていた。エルフが目印を付けた魔物は人型だけでなく、大蛇にも稀にいるとわかったため、彼らの探索範囲は広がった。冒険者らから巻きあげる分と、マイルズの頑張りのおかげで、食料庫の鍋には少しずつ虹魔石が貯まりつつある。


 単独討伐を禁止されているシュウは、マイルズの老後資金稼ぎに付き合うことも多い。シュウは案内のつもりで彼と森に入っているのだが、端から見れば気持ちのままに暴走しがちなシュウのブレーキ役として、マイルズが上手く立ち回っているように見えた。大所帯の冒険者集団を率いていた経験は伊達ではない。


 アキラは町にいる間は松葉杖を操って歩き、空飛ぶ座布団の使用を控えるようになった。使うのは薬草採取のため森に入るときぐらいだ。面白い魔道具だとドワーフやアレックスの興味を集めてしまい、対応が面倒になったというのもあるのだが、決定打はリンウッドの一言だった。


「脚の筋肉が落ちたら、義足と釣り合わなくなるぞ」


 残された左脚が衰えては、右義脚だけでは身体を支えきれない。均整の取れていない両脚では全身を支えられず、影響は胴や首にも出てくるだろう。両足で立ち、歩き、走りたければ、残っている脚を鍛えろ。リンウッドの厳しい言葉をうけ、アキラは真面目にリハビリに打ち込んでいる。


 空飛ぶ座布団の設計書を、ミシェルは計算高く、アレックスは愉快そうに目を通した。


「ええなぁ、ワシも一つ欲しいわ。もっと大きいん作ってくれへん?」


 このくらいの、と彼が両手を広げて示した大きさは、どう考えても長椅子の座面サイズだ。寝転がったまま移動する気らしい。ぐうたらを極めたいなら自分で作れと笑顔でお断りした。


「アキラ、これは島を出ても使うつもりかしら?」


 そう問うミシェルの表情は厳しい。


「義足が完成すれば不要ですし、大陸で使うことは想定していませんが」

「それならいいけれど……もし島の外で使うつもりなら、ギルドに登録してからにしなさいね」


 座布団に組み込まれた魔術陣は、人を乗せて運ぶ以外にもさまざまに応用の利くものだ。島の外で普及させるつもりならアレ・テタルに登録を、嫌ならばダッタザートにと彼女は熱く語った。


「これは大陸の物資運搬に革命をもたらすわ。不用意に人目に晒して奪われないようになさいね」

「革命ですか……気がすすまないのですが」

「あら、安定して収入を得られる権利は幾つ持っていてもいいと思うけれど」

「ミシェルさんが革命とまでいうのだから、物流関係で儲かるのは間違いないでしょうけれど」


 だが面倒だ。

 ミシェルが保有するさまざまな魔術権利は、弟子に相続するという態でいくつもの架空の人物を経由させ、再び彼女自身が取り戻していた。アキラの名で設計図を登録すれば、そのうち似たような工作が必要になってくる。


「あなたの好きにすればいいわ。けれど無料で公開するのだけは止めなさい。真面目に研究する魔術師らに不利益を与える悪い前例になるわ」


 商売下手な魔術師らが今以上に困窮するのは、元魔法使いギルド長としては見過ごせない。こんこんと説教されたアキラは、空飛ぶ座布団の設計図を秘匿すると決めた。


「いつかは誰かが似たような魔術を編み出したらどうするの?」

「全く同じ魔術設計であれば、その方に使用料を支払いますよ」


 義足が完成すれば空飛ぶ座布団を使用する予定はないのだ。欲のないアキラの返答に、残念だとミシェルはため息をついた。


 定期航路が復活したことで安価で入荷できるようになった酒が、美味い料理とともに金華亭で振る舞われるようになったせいか、二階の改築も早々に終わり、残るはアレックスのガラクタ置き場だけとなった。


「面倒な設計だな」

「鉱族にしかできない仕事ですわ」

「そりゃなぁ、こんな狂った魔術を組み込める下地は、人族の職人には無理だろう」


 金華亭のテーブルに図面を挟んで向かい合うミシェルとオッサムは、互いにどれだけの完成度を求めているかを探りながら詳細を詰めている。


「素材が足りない」

「では獲ってこさせましょう」


 獲る人間に了承は得ていない返答だったが、当事者は誰も反対しなかった。


   +


「というわけで、奈落にヒュドラを狩りに行くことになったぜ」

「おー、久しぶりだなー」

「奈落の魔物なら魔術が必要だ、俺も行くぞ」


 ドワーフのまかない係に飽きていたコウメイは、二泊三日の討伐遠征を楽しみに準備しているし、シュウは主治医(リンウッド)から一日の服薬量を守れるならばと条件付きの許可をもらい張り切っている。アキラは昼行灯のお守りはうんざりだと反対を押し切った。


「……待ってくれ、ヒュドラというのは、迷宮都市で稀に出没する、あのヒュドラか?」


 三人の遠征支度の様子が、幼い子供がピクニックを楽しみにする姿に見えたマイルズは、壮絶に顔を歪めて首を捻る。コウメイらと出会った後に迷宮都市でしばらく討伐に参加していた彼は、一度だけヒュドラと戦った経験があった。

 九つの頭と手足を持ち、すべての首を同時に落とさねばすぐに再生する厄介な大蛇系の魔物だ。マイルズが参加した討伐では二人が犠牲になり、五人が身体が欠損するほどの重傷を負う悲惨な戦いになった。そんな魔物の討伐に、たった三人で向かうというのも信じられないが、彼らの鼻歌交じりの様子も常軌を失っているとしか思えない。


「ヒュドラを三人で倒せるわけがないだろう」

「三人じゃねぇぜ、四人だ」

「なに?」

「おっさんも行くんだよ」


 それは死の宣告のように聞こえた。思わず反論しようと口を開けたマイルズだったが、断言するコウメイの、さも当然という顔に、一言も声を発することができない。


「せっかく奈落で討伐する口実が出来たんだぜ。虹魔石が狩り放題じゃねぇか」

「虹持ちの魔物に私たちは直接手を下せませんが、サポートはしますから」

「羨ましーなー、虹持ちの魔物は倒しがいあって楽しいんだぜ」

「……虹持ちのヒュドラを俺に狩らせるな」

「ヒュドラが虹魔石を持ってるとは限らねーよ」

「これまでの傾向ですと、サイクロプスと剣竜に多かったように思います」

「どっちを狩りてぇ?」


 どちらもお断りだ、という言葉を飲み込んだ。

 マイルズは彼らと契約魔術を結んでいるが、命を寄こせと強要するような彼らではない。弾むような口ぶりで討伐を心待ちにしているのは、演技ではなく、これが彼らの素なのだ。そう理解したマイルズは、腹の底から湧いた笑いを抑えられなかった。


「はははっ、お前らという奴は……歳を取る前に再会したかったな」


 どんな難しい依頼も、どれほど強く凶悪な魔物の討伐も、純粋に楽しめる若いころに彼らと出会いたかった。六十になったばかりの老体では、彼らとの共闘を思い切り楽しめない。マイルズはそれが悔しくてならなかった。


「サイクロプスは迷宮都市で経験があるが、剣竜ははじめてだ。はじめての魔物は面白いし、剣竜の素材があれば新しい剣の発注もできる」


 冒険者として生きてきた彼は、その楽しみを再び思い出させてくれた彼らに感謝した。人生の最後の最後まで、存分に楽しむとしよう。


「年寄りをこき使うんだ、しっかりサポートしろよ」


 吹っ切れたマイルズは積極的に野営支度に手を貸し、早々に準備が整った彼らは、翌日、奈落へと出発したのだった。


   +++


 いくら慣れているコウメイらでも、奈落に降りる前に消耗すれば負傷リスクが高くなる。常にシュウが威圧を振りまき魔物を追い払いながら南下した。

 そろそろおやつが欲しくなるころに奈落の入り口にたどり着いた彼らは、その日は下降を中止した。これから夜になるというタイミングでいきなり奈落の魔物を相手にするのは、マイルズには厳しすぎたからだ。池の横にテントを張り、人食い魚を釣って遊び、夕食を狩ってのんびりと一晩をすごす。


 翌日、海面に反射する朝日に目を細めながら、彼らは半円状に崩れ落ちた森を見下ろしていた。滝から落ちる水は、地上にたどり着く前に霧雨にかわる。水平線からのぼる太陽から虹が伸びているように見えた。


「それで、どうやって下りるんだ?」


 美しい景色に見とれたのは一瞬だ。崖っぷちから奈落をのぞき込んだマイルズは竦む足を叱咤するように爪先に力を入れる。


「いつもは飛び下りるんだけど、おっさんは無理だよなー」

「……人族は死ぬだろう?」

「素で飛ぶのはシュウだけだぜ。俺らは魔法の補助がある」


 転落死は免れそうだと安堵したマイルズは、アキラが腰をおろしている座布団に目をやった。


「そのクッションにかけたような魔法か?」

「原理は同じですね。大きな風膜で身体を支え、安全に着地させるんですよ」


 大胆で大雑把だが、とても彼ららしいと小さな笑みがこぼれる。


「お先にーっ」


 背負っていた荷をコウメイに預け、剣を抜いたシュウが真っ先に奈落へ飛び込んだ。その身体は見る見るうちに小さくなり木々の緑に吸い込まれて消える。

 シュウの残した荷を担いだコウメイが、頼むぜとアキラの肩を叩いて地面を蹴る。アキラは間髪入れずに杖を突き出し、風膜魔法を撃つ。落下するコウメイを追い抜いた魔法は、彼を受け止め、その落下速度を緩やかにした。


「なるほど。シュウが着地点の安全を確保し、コウメイが荷を運ぶのか」

「次はマイルズさんですよ」

「死なないとわかっていても、これは度胸がいるな」


 大きく息を吸ったマイルズは、故郷の海に飛び込むつもりで地面を蹴った。

 座布団を操作するアキラは、はじめてのマイルズを支えるように速度を合わせ、並んで降りながら、先行する二人の着地点を探した。

 アキラとマイルズが降り立ったそこでは、コウメイとシュウがホブゴブリンの死骸を埋めていた。


「ホブゴブリンが五体……ここは上位種が群れるのか?」

「そりゃ、ミノタウロスに蹴散らされたくねーんだから、ホブも群れるしかねーだろ」

「鎧竜も剣竜も単独で相手するのに厳しいのは、俺らもホブも同じだしな」

「君らの口ぶりだと簡単そうに聞こえるんだが」

「んなわけねぇだろ。ここはシュウの威圧じゃ追い払えない魔物のほうが多いんだ。ガチガチになられても困るけど、あんまり気を緩められても面倒見きれねぇぜ」

「奈落とはそういう場所なのか……肝に銘じておこう」


 かつては新人の冒険者に向かって自分も同じような注意をしていたものだと懐かしく思いつつ、マイルズは剣を構え、あたりの気配に馴染もうとする。

 ホブゴブリンの死骸を埋め終えたアキラは、方角を確認してヒュドラの縄張りのあたりをつけた。


「以前は西の海岸寄りの魔素だまりでよく湧いていた。変調がないなら今回もその付近を縄張りにしているはずだ」


 できれば魔核から出現したてのタイミングで狩ってしまいたいがそれは高望みだろう。せめて年季の入っていない若い個体を見つけられれば戦いは楽になるのだが。彼らは島の四分一を占める奈落を、可能な限り戦闘を回避しながら南西へとひた進む。

 威圧を全開にしたシュウが先頭を、その後ろに魔法で先手を打つためにアキラが続き、マイルズを守るようにコウメイがしんがりだ。シュウの威圧で追い払えない魔物は、アキラの魔法で惑わしたり、俊敏なシュウが囮になって遠ざけるなどして戦いを避けたが、すべてを回避しきれるものではない。


「悪い、犬の鼻は誤魔化せなかった」


 眩惑の魔術に失敗したアキラは、即座に雷攻撃に切り替えて三つの頭を持つ犬を牽制する。


「ケルベロスか、一匹なら大丈夫だ。シュウ、背後に回って動きを止めろ」

「まかせろ!」

「マイルズさんは左の頭を。アキはそのまま牽制で」


 素早く真正面に走り出たコウメイは、黒い剣身を揺らして挑発し、ケルベロスの視線を自身に集める。

 三つの頭が同時にコウメイに牙を剥いた。

 その隙をマイルズが斬りつけ、背後に回ったシュウが脚を砕く。

 四つ足の魔物は脚を一つ潰したところで機動力はそれほど落ちない。

 蛇のような尾がシュウを打ち払おうとしなる。


「うおっ、あっぶねー」


 寸前で飛び退いたシュウの剣が、鞭のように打ちしなる尾に絡め取られた。

 そのまま綱引きのように引き合っていたが、一つの頭部が潰されて暴れはじめたケルベロスを押さえていられなくなった。


「残る脚も潰せ!」

「了解っ!」


 抗うのを止めたシュウは引き寄せる力を利用してケルベロスの尻に肉薄し、勢いのまま腰を斬りつける。

 付け根から尾がちぎれ飛び、腰骨が砕けた。

 後ろ脚を潰されたケルベロスは、天を仰ぎ牙をむき出しにする。


「喉を潰せ! 仲間を呼ばれるぞ!!」


 アキラが風刃を撃ち、コウメイとマイルズが喉を斬りつける。

 遠吠えが漏れる寸前に喉を裂かれたケルベロスは、己の血に咽せ、仲間に助けを求めることなく事切れた。


「……一頭だけなら、ケルベロスもそれほど難しい魔物ではないのだな」


 もちろん自分一人では倒せなかっただろう。コウメイとシュウの戦力、そしてアキラの魔法の援護があってこそだ。迷宮都市でしか討伐経験のないマイルズは、ケルベロスの難易度を上げていたのは迷宮特有の眷属アンデッドらのせいだったかと息をついた。


「休んでる暇はねぇぜ。血の臭いに面倒なのが集まってくる前にここを離れねぇと」

「素材がもったいないが、命あってだな」

「そーいうこと」

「シュウ、魔石は回収したのか?」

「もっちろん。なかなか色の濃い大魔石だぜ」


 虹でないのは残念だが、これだけ高濃度の大魔石は大陸なら数千ダルにはなるだろう。

 剣の血を洗った四人は、ケルベロスの死骸を埋めずにその場を離れた。死骸に誘われて近隣の魔物が集まっている間に、少しでも移動距離を伸ばすのだ。

 アキラの魔術で血の臭いの流れを操作しながら、彼らはヒュドラの巣を求め走った。


   +


 ヒュドラが湧きそうだと目星を付けた魔核が視界に入る位置に結界魔石を置き、そこで彼らは腰をおろした。火を囲み、補給と休息を取る。野営飯だとコウメイが用意したのは、干し肉とクッキーバー、そしてスープだ。


「ここでも煮炊きをするのか」

「この島は温暖だが夜は少し冷えるからな。温かい物が欲しいだろ」

「もっと殺伐とした討伐になるだろうと覚悟していたんだ。便利だな、結界の魔道具というのは」


 マイルズはアキラが設置した結界魔石を羨ましげに眺めた。空を飛ぶ座布団といい、アキラの持つ魔道具は便利で快適すぎる。隠し持っているのはもったいない、現役のころに結界の魔道具があれば討伐はもっと楽になっただろうにと愚痴がこぼれた。


「今からでも公開するつもりはないのか? 儲かるぞ?」


 ミシェルと同じ台詞でそそのかすマイルズに、アキラは苦笑いで首を横に振る。こればかり作らされる未来しか思い浮かばない。そんなのは嫌だ。 


「この結界魔石は完璧じゃないんです。私の力以上の魔物には効果が薄いし、特にここの魔物には六割ほどの効果しかありません」


 アキラよりも強い魔力を持つ魔物など大陸には存在しないだろうと思ったが、賢明にも彼は言葉にしなかった。

 結界魔石の効果が六割なら交代での見張りが必要だ。コウメイはマイルズとシュウに夜半から日の出までをまかせた。彼とアキラは日暮れから夜半までだ。


「げっほ、ぐほっ。うぇ……じゃ休むぜ、お先に~」

「何かあったら遠慮なく起こせよ」


 本日分のフレッシュジュース(数種類の薬草を粉砕し果汁で飲みやすくした処方薬)を咽せながら飲み干したシュウは、火から少し離れて真っ先に横になった。マイルズも横になって目を閉じる。二人はすぐに寝息を立てはじめた。

 パチリパチリと弾ける焚き火から顔を背けたアキラは、板紙を手に木々と薄闇の向こうで魔素を噴き出す魔核を見つめている。


「ミシェルさんのオーダーは、ヒュドラの皮と肉と血を残らず持ち帰れだったよな?」

「丸ごと持ち帰ったほうが手間がかからないが、今のシュウに丸投げするのは不安だ」


 ヒュドラは小さな個体でも、ヘルハウンドより一回り以上も大きい。いつものシュウなら余裕で運べるが、今回はリンウッドから獣人の力を使うなと厳命されている。解体するしかないが、そうすると血を残さずに回収は無理だ。

 解体せずに運ぶ手段にできそうなのはと、コウメイがアキラの座る座布団に視線をやる。


「その座布団には載らねぇよなぁ」

「俺が座る場所がなくなる」


 アキラが触れて魔力を流さねば座布団は浮かないし移動もしない。


「ヒュドラを吊り上げられねぇか?」

「俺の腕がもげる」

「シュウじゃねぇと無理か……その座布団、ギリギリ座れそうだな」


 手荷物を乗せられるようにと少し大きめに作った座布団は、無理をすればもう一人なら腰を掛けられる。だがシュウは絶対に大人しく座っていてはくれないだろう。興奮して滑り落ちる巻き添えをくうか、バランスを崩してしがみつかれ一緒にひっくり返るか、うっかり手を滑らせて積荷を落とし台無しにするか。ありありと目に浮かぶようだとアキラは眉間を揉む。


「どれも嫌だぞ」

「とりあえず、討伐終わってから考えるか……きたようだぜ」


 コウメイに手を叩かれて顔をあげたアキラは、魔核の光が強くなっているのを確かめた。活性化した魔核の気配を感じたのだろう、結界の外を鎧竜やヘルハウンド、ホブゴブリンの集団が通りすぎる。

 魔物らは魔核から出現する存在を捕食するために集まっているのだ。


「シュウ、マイルズさん、起きてくれ」


 ピリッとした気配で目を覚ました二人は、条件反射で剣を抜いている。


「おー、勢揃いじゃん」

「なんだ、これは」

「知ってるだろ、魔核から出現する魔物は、全身が出きるまでまともに動けねぇって」


 戦って食料を得るよりも、魔核から与えられる食料を襲ったほうが楽だと知っている魔物らが集まっているのだ。


「出現したのがヒュドラじゃねぇなら放置、ヒュドラだったら連中を一掃だ」


 どうやって!? と叫びたいのを堪えたマイルズは、らんらんと瞳を輝かせる三人の横顔を頼もし気に眺めた。



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