序章:舞台の幕が上がる
町が燃える。木造の商店がごうごうと燃え、道に広がる露店は跡形もなし。
人は惑う。炎から逃げるもの、思い出に逃げるもの、あるいはただ茫然に立ちすくむもの。
空は黒。すすけた灰が空を埋め尽くす。
一人の少女がいた。どこでも買える鋼の剣を両手で持ち、震えた体を叱責し、涙を流しながら巨悪に立ち向かう少女がいた。
少女と巨悪の戦いはあっさりと終わった。
あっけない終わり。
一人の平凡な少女には巨悪なんて倒せないのだから。
一組の男女が草原で目を覚ます。
「また、か……」
黒目黒髪の冒険者ウィルは、見えるが見えないものを見る。
「どうしたの。ウィル」
金髪碧眼の少女アリアは黒髪の冒険者に声をかけた。
「託宣がきた。次の町は辺境都市だ」
「わかった。支度をするね」
「すまない。アリア。また危ない目に合わせることになる」
「いつも言ってるけど謝んなくていいよ。幼馴染でしょ」
二人の冒険者は足を辺境都市の方向へ向ける。
その歩みに惑いなし。
豪華絢爛でありながら、どこかよそよそしい雰囲気を醸し出す建物。
王が住まう城。その一角、謁見の間に軍人が整列していた。
「地方騎士団団長エドワード」
「ここに」
「辺境都市に巨悪の兆しありの予兆が出た。よって、勅令を下す。巨悪を撃て。民から平穏を遠ざけさせるな」
「イエス。マイロード」
ここにひとかどの騎士も立ち上がった。背中に悲劇の業と救済の感謝を背負った騎士がいざ立ち上がる。
向かうは辺境都市。巨悪が芽吹く都市。
舞台袖に役者は勢ぞろい。
無力な少女。未来視の青年。救済の騎士。そして、巨悪。
集うは辺境都市フランセーズ。
これより舞台の幕は開かれた。
とりあえず第1章は毎日更新を目指します。
プロットはできているので大丈夫なはず……。
処女作なので勝手がわかりませんが、気合と根性で書かせていただきます。