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第4話 新スキルを獲得しました

 もう一度フィールドに来た私達は、早速考えていた戦術を試してみることにした。


「メイさん、さっき伝えた通りにやるよ。私が合図したらよろしくね」


「OK! それじゃあ準備して待ってるよ」


 これは2人だからこそできる作戦だ。メイさんに確認をとったところで、私は購入した武器――光線銃を片手に翼を展開した。

 翼を展開すると、周囲で狩りをしていた人たちがこちらを一瞬見た気がした。不人気能力ということを知ってからは少し視線も気になってくるけど、だからと言って弱いわけではないことを見せつけてやる!


「今からみんなを驚かせるよ!」


 そう言って私は一気に飛び出した。目標は田んぼの上を飛んでいる蜂達だ。自由自在には程遠いけど、真っ直ぐ飛ぶことくらい今の私には簡単にできる。

 翼をはためかせて急加速した私はすぐに翼を解除、勢いがある内は前に進み続けるからだ。こうすることでTPの節約になる。


 そして距離が近づいた蜂達に、次々と光線銃で光線を撃ち込んでいった。もちろん、光線一発で倒せるような調整なんてされていない。そうなると撃ち抜かれた蜂達が反撃のため私に向かってくる。

 そんなことは想定内だ。そこで私は再度翼を展開する。


「ぜやあああ!」


 翼が出現すると、私に接近していた蜂が翼に当てられて一度仰反った。その間に私は一気に後方に向かって飛んだ。

 メイさんのところまで戻ったところで翼でもう一度羽ばたくことで停止して、それから合図を送る。


「今だ!」


「任せて!」


 メイさんは頷くと私が飛んできたルートに火の柱を発生させる。すると、私を追いかけてきていた蜂達がそこに飲まれていき、次々と粒子に変わっていった。

 そんな蜂達に向けて一言送ろう。


「飛んで火にいる夏の虫ってね」


「なんとなく意味が違う気がするけど……、まあいいか。状況にはピッタリだ」


 そうそう、細かいことは気にしない。作戦が上手く行ったところでもう一度行ってみよう。


「またお願いね!」


「ああ!」



 TPが切れるまで蜂狩りを繰り返したところで、私達はステータスを確認していた。

 さて、目的のスキルは……あった!


「その様子だと、想像通り取得できていたみたいだね」


「うん! 『羽弾』と『翼撃』の2つが出てたよ!」


 この戦術はスキル習得を目的にしていたものだ。

 翼を何度も使うことが『翼の消費TP軽減』の取得に繋がっていたということから、プレイスタイルが能力に影響を与えてくることを考え、遠距離攻撃をできる武器を片手に突撃した。


 遠距離攻撃と向かってきた蜂に対して翼をぶつけることを繰り返した結果、目論見通り無事に2つのスキルを取得できたというわけだ。これで遠近両方に対応できるはずだ。戦いやすさも大きく変わってくるだろう。


「2つも! すごいね!」


 メイさんもそのことを自分のことのように喜んでくれているが、これはメイさんの活躍があってのことだ。メイさんの能力を見てなければ考えもしなかった。

 自分ひとりでは翼の発動時間を考えるとすぐにTPが尽きて蜂たちに囲まれていたはずだ。


「メイさんのおかげだよ! こっちの練習ばかり付き合ってもらって悪いね」


「気にしないで! ツバサの活躍を見たい私が好きでやってることだから」


 そう言ってもらえると嬉しい。その分私もメイさんを手伝っていこう。

 それにとメイさんは続ける。


「周りを見て、ボクたちの狩りの速度と比べてどう思う?」


 言われて見てみると私達が一気に数体焼いていたのに対して、一体一体相手にしている人が多い印象を受ける。


「とても早い!」


「そういうこと! 翼のおかげで狩りにくい田んぼの上の敵を一気に集めて来れるから、とても効率よく狩りができていたんだよ。何ならまたやりたいくらいだ。おかげで超能力を強化するポイントがたくさんだ!」


 不人気能力だと侮っていた人たちも、見ていたのならこの結果にはきっと評価も改めるはずだ。

 戦果の確認も終えて一段落したところで、ゲームを起動してからずっとログインし続けている。一度街に戻ったところで、今日のゲームを終了することにした。


「そろそろいい時間だし、私落ちるよ」


「……もう、そんな時間か。ボクもそうするかな」


「それじゃあまた明日も一緒にいいかな?」


「もちろんさ。新しいスキルも見ないとだしね。時間と場所は――」


 また一緒にゲームをする約束をして、ログアウトした。



 そして翌日、メイさんに指定された場所である昨日のお店に来ていた。

 どうやらメイさんが先に着いていたようだ。


「お待たせ」


「ボクも今着いたところだよ」


 テンプレ挨拶をしたところで、今日の目的を確認していく。


「ここを待ち合わせ場所にしたってことは、何かお考えがあるのでしょうメイさん?」


「フフフ、鋭いねツバサくん。今日は回復アイテムとそれから装備を購入して、フィールドの奥を目指そうと思っているよ」


 あ、私のおふざけに乗っかってきた。

 ……それよりもフィールドの奥って!


「まだ早くない!? スキルも見てないんだし!」


「だから所持品を揃えようとね! ボク達なら行けると思うんだ」


 私のこと評価してくれているみたいだ。そうなってくると嬉しいし、昨日メイさんはたくさん手伝ってくれた。やるしかないね!


「そうだね! 私も頑張るよ!」


 TPやHPの回復アイテムを買い込んだ私達は、服屋に向かった。服屋と言えば普通の服が売ってそうなイメージだけど、どの服もしっかり防御力を強くしてくれるみたいだ。


 メイさんは濃い赤の上着に黒のズボンと炎使いらしさが溢れる服装をパパッと選択したけど、私は少し迷って白のパーカーに白のズボンにした。


「……驚きの白さだね」


 私の選択に少し驚いてるみたいだけど、自分のことを白くし過ぎたため他に似合うのがなかったから仕方ない。 


 ともあれ、初期服を卒業した私達は3度目のフィールドへ。


「ひとまずしばらくは道なりにだね。敵が出てきた時に新スキルを見ていくって形にしよう」


「はーい」


 メイさんの指示でしばらく歩き続けたところで、どこからか犬型のモンスターが飛びかかってきた。


「ガルル!」


「ツバサ!」


「分かってるよ!」


 早速新スキルを使えということだ。

 私は翼を展開し、『翼撃』のスキルを発動。すると翼が少し伸びて、近づいてきていたモンスターを突き飛ばす。

 そこに今度は『羽弾』のスキルを発動して3枚の羽を撃ち込んだところで、モンスターは粒子となって消滅した。


 蜂を倒す時には光線で貫いて翼で叩いて焼いてもらうという過程が必要だったのを考えると、中々の威力だったと思う。メイさんの反応が気になって顔を覗いてみると、顎に手を当てて少し考えた様子だった。


「……ツバサ、今のTPを見てみて」


 言われて見てみると、物凄い勢いで消費されていたことが分かる。倒した時にすぐ解除したはずなのに、すでに半分しか残っていない。

 そんな私を見てメイさんはやっぱりねと呟いた。


「大きな力を常時発動している翼経由の技は、さらにTPを食う仕様になっていたか……、やたらと威力が大きいと思ったけどこれは……」


「ええ……そんなー」


 私達ならやれると思った矢先、出鼻を挫かれた気分だ。

 どうしよう……。

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